2020年12月6日 サンデーモーニング(後編)

2020年12月6日 サンデーモーニング(後編)

12月6日のサンデーモーニングのレポート後編、中国と国際社会の関係について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・政治的に公平な報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】(要約)
 中国外務省の報道官が、オーストラリア兵がアフガニスタン人の子どもにナイフを突きつけている画像をツイッターに投稿した件を巡り、オーストラリア政府は謝罪を要求。しかし中国側はこれを拒否する。また、オーストラリアのモリソン首相が新型コロナの発生源について独立調査を主張し中国が反発するなど、両国の対立は深まっている。
 中国の強硬姿勢はオーストラリアだけに留まらない。1日には安全保障を理由にハイテク製品などの輸出管理を強化する法律を施行。これには中国企業への禁輸措置を強化する狙いがあると見られる。また、中国の海上保安機関である海警局の権限を定める草案を公表し、その中で停船命令に従わない外国船に対し武器の使用を認めており、日本の漁船への影響が懸念されている。
 こうした中国の強硬姿勢に対し、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国の外相が東京で会談。インド太平洋構想の推進に向け、中国への対応を念頭に連携を強化することで一致した。
 情報通信の分野では、イギリスが中国の通信大手ファーウェイの製品を段階的に廃止すると発表。フランスやスウェーデンでも同様の動きが見られる。
 人権分野では香港の民主活動家・周庭さんに実刑判決を下したことについてアメリカ、イギリス、台湾などが相次いで批判した。大統領選で勝利を確実にしているバイデン氏は同盟国と連携し中国に対応していくとするなど、中国を巡る包囲網は広がりつつある。

【コメンテーターによる解説】(一部要約)
田中秀征 氏:武力と経済力で影響力を拡大しようという中国の姿勢が見え見えなので、そういう方向じゃやっていけないと早く気づいてほしいですね。一国帝国主義で他の国と生き方が違うんです。尊敬される国になろうっていう方向づけをして転換してもらわなかったらうまくいかないですよ。アメリカはそういう(他国から認められる)方向で歩んできたわけじゃなく、自然に大国になってきた国で、最初はモンロー主義で孤立をいとわずやっていた。中国の場合は意図的にやってますからね。(要約)

大宅映子 氏:中国は軍事費用を使って経済的にも伸びてきて、西側の組織にいれれば民主化も進むんじゃないかという期待があったんですけど、力をつけたら違う方向に行ってしまった。台湾・香港の問題、人権問題、言動統制がある。いまの貿易が各国が経済的に絡んでいてお互いに失ったら生きていけない形になっているなか、解決はすごく難しいことだろうと思うんですが、中国・台湾の方と話を聴いていると、日本人が婉曲にものを言うのに対し、彼らはむき出し方の言い方がすごい。ここにわたしは何かある気がしています。(要約)

安田菜津紀 氏:最後に出てきた人権問題が特に私は重要だなという風に思っていて、そうですね、特に今は国家安全法が香港に導入されてしまっているので、収監された民主活動家たちの刑期が後付でどんどん伸ばされてしまうんではないかっていうことも懸念されていると思うんですよね。これまでトランプさんは中国政府に対して強く出てきたイメージがやはり強いので、香港だったりあと台湾なんかからも少なからず支持するような声ていうのは上がってきたんですけれども、こと人権問題に関しては必ずしも積極的に関与強めてきたわけではない。むしろ真逆な発言をしてきたことっていうのもあったと思うんですよね。なので次期政権になった時に、そうした問題、意識でもアプローチができるかどうか。それは連結する日本にも同時に求められてくることではないかなという風に思います

藪中三十二 氏:中国は急激に大国になった。大国ぶった振る舞いになっているけど、同時に経済が失速してるもんだから、余裕のなさもあるんですね。世界では中国に対して良くないとする人が70%以上いる国が多いです。アメリカでもこの3年間で47%から73%に変わっている。だからバイデン政権ができても必ずしも関係が良くなるわけではないと。これを中国がよくわきまえて、もう少し国際的にいろんな国と仲良くしようっていう風になっていかなきゃいけませんね。(要約)

青木理 氏:みなさんおっしゃる通り、非民主的な政治体制とか人権の問題とか覇権主義とか軍拡とか、日本の場合だと領土の問題とか、懸念だらけなんですけれど、一方で最大の貿易相手なんですよね日本にとってみると。しかもコロナでその傾向も強まってるって言うんですよ。だから上半身とは別に下半身はばっちり結びついちゃっているという状況の中で、さあどうするかっていうことなんですけども。中国の変化とか気づきっていうものに国際的に協力していくことも必要なんでしょうけれど、一方で地域の平和と安定のために独自にコミットメントしていく必要もあるのかなと。僕なんかに言わせればやっぱり韓国あたりと仲良くしながら、中国とアメリカと、中国とも対峙するみたいな考え方が必要なんじゃないかっていう気はしますけどね。

【検証部分】
今回は中国の強硬的な姿勢とそれに対する国際社会の反応について報道された部分を取り上げました。
今回問題となるのは、安田氏、青木氏の発言が政治的に公平ではないという点です。該当する箇所を確認します。

安田氏の指摘の中で該当するのは、「これまでトランプさんは中国政府に対して強く出てきたイメージがやはり強いので、香港だったりあと台湾なんかからも少なからず支持するような声ていうのは上がってきたんですけれども、こと人権問題に関しては必ずしも積極的に関与強めてきたわけではない。」という部分です。安田氏によると、トランプ政権は人権問題に対しては消極的な姿勢だったのです。
しかし、トランプ政権は中国における人権問題にも取り組み続けています。安田氏の指摘しているように、香港の問題におけるアメリカの中国に対する批判的な姿勢は、民主主義や法の支配といった基本的人権を守るために不可欠なものが失われつつあることへの危機感を表したものでした。また香港をめぐる問題以外にも、トランプ政権下でウイグル人権法が成立しました。この法は、ウイグル族への弾圧や人権侵害に関わった人へのビザ発給の停止、資産凍結などの措置をとるという内容です。このような法律を制定して制裁を科すという措置は、かなり強硬な態度を表すものといえます。
ですから、安田氏の指摘するような人権問題にトランプ政権は消極的だったという指摘は、公平な分析であるとはいえません。

次に青木氏の発言に関してです。青木氏の発言の中で該当する箇所は、「中国の変化とか気づきっていうものに国際的に協力していくことも必要なんでしょうけれど、一方で地域の平和と安定のために独自にコミットメントしていく必要もあるのかなと。僕なんかに言わせればやっぱり韓国あたりと仲良くしながら、中国とアメリカと、中国とも対峙するみたいな考え方が必要なんじゃないかっていう気はしますけどね。」という部分です。青木氏は、中国への対応のために韓国と協力する必要がある。そしてアメリカとも対峙する姿勢で臨むべきだとしています。
しかし青木氏の発言の中ではなぜ韓国を協力相手として選ぶのか、そしてなぜアメリカとも対峙しなければならないのかについての説明がなされていません。日本にとって韓国は対中関係において協力する最良のパートナーなのでしょうか。
現在の日韓関係は決していいものとはいえません。例えば慰安婦問題、徴用工問題などでは、韓国側は日韓の間で合意されたはずの事項を何度も反故にしたり、国際法を無視した措置を講じたりしてきました。また、韓国は歴史的に事大主義的な傾向にあり、中国との関係が密接であったことを考えれば、今後も情勢次第では協力関係が簡単に失われてしまうリスクが高いといえます。
そしてそれ以上に疑問視しなければならないのは、日本がアメリカと対峙するべきだという主張です。日本にとってアメリカは最大の同盟相手であり、日本の安全保障体制を考える上でもなくてはならない存在です。中国に対峙することを考えたときにも、国力の面でも、対中国における利害関係の面でも最良のパートナーであるといえるのではないでしょうか。
しかし青木氏はこのような面を無視して、韓国を味方にし、アメリカと対峙するべきだと一方的に主張をしています。

今回の報道では、安田氏、青木氏から、トランプ政権は人権問題に消極的である、日本は韓国と手を結びアメリカと対峙するべき、といういずれも政治的に公平ではない主張が見られました。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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