2020年5月31日 サンデーモーニング(中編)

2020年5月31日 サンデーモーニング(中編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年5月31日放送回の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
① 新型コロナウイルスの第二波について報道された部分
② 「風を読む」にて国家安全法案について放送された部分
③ コロナウイルスの議事録が作成されていないことについて放送された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
②「風を読む」にて国家安全法案について放送された部分となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
27日、香港島中心部に集まったデモ隊。その市民に向け催涙銃を撃つなど強制排除に乗り出した警察は、違法な集会に参加した疑いなどで数百人を逮捕しました。デモ隊が訴えたのは中国政府が制定を目指す国家安全法への抗議。 国家分裂や中央政府の転覆などの行為を禁じる内容で、香港の民主派団体などは香港への弾圧につながるおそれがあると危機感を募らせています。雨傘運動元リーダー黄氏は「国家安全法は去年の逃亡犯条例改正案以上に香港にとって有害なものです。」と述べました。
こうした声をよそに中国は28日、全人代=全国人民代表大会でこの国家安全法を香港に導入する方針を採択し、今後立法作業が行われます。李首相「国家安全を維持するこの法制は一国二制度を安定かつ長期的に継続させるためだ」と胸を張る中国政府ですが、民主派団体のメンバー・周庭さんは「香港がどんどん香港ではなくなる。一国二制度がほぼ一国一制度になってしまって香港人としては納得できない。」と話しました。一国二制度を巡り、中国政府と香港の民主派との間には大きな隔たりがあります。
1997年までイギリスの支配下に置かれた香港。その返還について、中英両国の間で交わされた共同声明で示されたのが、一国二制度という仕組みです。これにより資本主義、自由主義など中国政府とは異なる制度を返還後50年維持しつつ外交と国防を除く高度な自治が認められました。しかし、2047年までまだ27年を残す今、その約束が今回の国家安全法によりなし崩しにされ高度な自治が脅かされる可能性が生み出されました。国家安全法制定が採択されたことを受け、イギリス、オーストラリア、カナダ、アメリカの4カ国は共同声明で一国二、制度の枠組みを傷つけるものだと厳しく批判しています。29日・トランプ大統領は「中国は香港の自治を守るという世界との約束を破った」と述べ、今後中国に厳しい制裁を科すことが予想されます。
19日に閉幕したWHOの年次総会では、コロナ感染を抑え込み、世界的な評価された台湾のオブザーバー参加が認められませんでした。2009年から2016年には参加が認められていましたが、台湾政権が台中強硬路線を取る蔡英文政権に交代するや、参加できなくなっているのです。トランプ大統領はWHOについて、中国が完全に支配していると批判し、WHOとの関係を終了すると宣言しました。
また、豪・モリソン首相が「新型コロナウィルスがどのように発生したのか、独立調査を実施したいと世界が望むのは妥当かつ合理的だ。」と発言し、新型コロナの発生源を探る独立調査を呼びかけると、中国はオーストラリアの一部の企業からの肉類輸入を一時停止することを発表しました。さらに大麦も不当に安いとして80%を超える制裁関税を課しました。この措置とオーストラリアの調査要求の関連は否定しましたが、中国は新型コロナ発生源を巡る調査には特に神経をとがらせているようです。

こうした中国政府の強硬な動きの一方で、イタリアやセルビアなど一帯一路を通じ関係を強化している国には医療チームを派遣するなど新型コロナの感染拡大を機に、国際的な信頼関係の構築に意欲を見せています。

また、中国の空母「遼寧」が沖縄本島と宮古島の間を通過するなど、東シナ海などで活動範囲を拡大させています。さらに国防予算も去年より6.6%増のおよそ19兆2000億円に達することが分かりました。強気な外交で国際的な影響力の拡大を図る中国。新型コロナの感染拡大による混乱で世界が不透明さを増す中、こうした中国の動きをどう受け止めればいいのでしょう。

【コメンテーター発言内容】
姜尚中氏(全文):新しい覇権国家に中国がなるのかどうかですね。その意味では米中の間の新冷戦が始まるのかどうか。それに対して日本はどう対応すべきなのかということがやっぱりポイントになると思うんですね。そのポイントは、尖閣諸島や日本海域への中国の脅威ということは明らかに日本にとっては大きな問題です。 しかし、その抑止力としてのアメリカの軍隊が今度は米中直接対立で、もし局地的な紛争が起きた場合に日本はどうしたらいいのか。つまり日米安保という形でアメリカと運命共同体、しかし、もう一方では経済的には中国を外しては日本の繁栄はありえないと思うんですね。そういうジレンマの中で日本は立たされているわけで私はアメリカンファーストも問題だし、中国の覇権的な拡大はもっと問題だと思いますけれども。やっぱり私は日韓関係を良好にするしか1つの手がかりはないと思ってるんです。 韓国にとってもアメリカと中国の間で股裂きになってるわけですね。ですから今後、日韓のこういう、僕の目から見るとみみっちい消耗戦はやめて、日韓が連携し、あとはオーストラリア、場合によってはEUのドイツをはじめとする緩い連携の中で第三極をつくっていくべきだと思います。今までのような二国間外交に国の運命を預けるのはもうまずい時代です。多国間主義でなければならない。それがやはり日本に任されていることで2頭のくじらがいま戦おうとしているわけですね。その間を自由に飛び回るドルフィンにはなれると思うんです。日本と韓国だけで1億7000万いるわけですよ。世界の第3位と第10位の経済大国ですよ。あとオーストラリア、シンガポールEUと連携しながら第三極を作っていくことが今、とても大切な時期に来てると思います。

田中氏(全文):私も第三極をつくっていくべきだと思います。その前に思い出しておいたほうがいいことがあって、アヘン戦争なんですね。1840年からアヘン戦争をきっかけにして中国ってヨーロッパの列強、それからアメリカ、そして後には日本における満州の支配、こうやって分断され続けてきたんですよ。 今の一国二制度、香港のそれをやめようとしている状況というのは非常に中国は恐れているという気がまだまだします。外国の勢力が香港を通じてやってきてまた分断になるのではないか、あるいは介入されるのではないか。 確かにヨーロッパやアメリカはずっと外国に介入し続けてきましたから、その可能性はあるわけですよね。しかし逆に、香港の一国二制度、自主的に守るとか感染源の調査に協力するというのは世界の信頼を得るうえで大チャンスだと思うんです。ですから、むしろ中国は、世界と協力しながら地球全体を導いていくんだ、そのくらいの誇りを持ってやるべきことをやっていく。偏狭な国家主義に閉じこもらずに、私たちを導くくらいの。それが必要だと思っています。

萩上氏(要約):海外メディアが今の香港の状況は報じられないということがいろんな影響を及ぼすということもあると思います。逆に言えば中国もそれから香港の行政措置もそうしたメディアの対応がどうなのか、取材状況がどうなのか、国際社会がどう報じているのかということも非常に気にしているわけですね。ですのでさまざまなリモートインタビューも含めてさまざまな発信を強化していくことが必要だと思います。

松原氏(要約):去年、香港の親中派の議員に話を聞いた。暴力的なデモには眉をひそめているんですが、でも市民たちには共感し、しかも今の一国二制度を守りたいと思っている。台湾の最大野党、親中派の方に聞いても、香港を見ていると今の中国の一国二制度は受け入れられない。中国が強硬姿勢を貫けば貫くほど香港、台湾の親中派ですら背を向けてしまう可能性がある。これは世界も同じ。脅し、軍事力では決して人の心までは支配できないと思う。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、姜尚中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、姜尚中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
姜尚中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

姜尚中(抜粋):新しい覇権国家に中国がなるのかどうかですね。その意味では米中の間の新冷戦が始まるのかどうか。それに対して日本はどう対応すべきなのかということがやっぱりポイントになると思うんですね。そのポイントは、尖閣諸島や日本海域への中国の脅威ということは明らかに日本にとっては大きな問題です。 しかし、その抑止力としてのアメリカの軍隊が今度は米中直接対立で、もし局地的な紛争が起きた場合に日本はどうしたらいいのか。つまり日米安保という形でアメリカと運命共同体、しかし、もう一方では経済的には中国を外しては日本の繁栄はありえないと思うんですね。そういうジレンマの中で日本は立たされているわけで私はアメリカンファーストも問題だし、中国の覇権的な拡大はもっと問題だと思いますけれども。やっぱり私は日韓関係を良好にするしか1つの手がかりはないと思ってるんです。 韓国にとってもアメリカと中国の間で股裂きになってるわけですね。ですから今後、日韓のこういう、僕の目から見るとみみっちい消耗戦はやめて、日韓が連携し、あとはオーストラリア、場合によってはEUのドイツをはじめとする緩い連携の中で第三極をつくっていくべきだと思います。今までのような二国間外交に国の運命を預けるのはもうまずい時代です。多国間主義でなければならない。それがやはり日本に任されていることで2頭のくじらがいま戦おうとしているわけですね。その間を自由に飛び回るドルフィンにはなれると思うんです。日本と韓国だけで1億7000万いるわけですよ。世界の第3位と第10位の経済大国ですよ。あとオーストラリア、シンガポールEUと連携しながら第三極を作っていくことが今、とても大切な時期に来てると思います。

要旨をまとめると、
・世界の覇権をめぐり、米中の新たな冷戦がはじまる。重要なのは日本の対応だ。
・現に抑止力としてアメリカと運命共同体である一方で、日本は中国の経済力に大きく依存している。
・韓国も同様の状況に置かれている。だから、このジレンマを解消するためには、日韓関係を良好にし、他国と連携し第三極を作っていくべきだ。
というものです

しかしながら、
・米中関係の日本の立ち位置の問題の話において、唐突に主張の根拠として韓国を提示し、「日韓関係を良好にすることが米中関係を良いものとする」というは論理が飛躍しており、事実に反する恐れがある。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での姜尚中氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
田中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

田中氏(抜粋):私も第三極をつくっていくべきだと思います。その前に思い出しておいたほうがいいことがあって、アヘン戦争なんですね。1840年からアヘン戦争をきっかけにして中国ってヨーロッパの列強、それからアメリカ、そして後には日本における満州の支配、こうやって分断され続けてきたんですよ。 今の一国二制度、香港のそれをやめようとしている状況というのは非常に中国は恐れているという気がまだまだします。外国の勢力が香港を通じてやってきてまた分断になるのではないか、あるいは介入されるのではないか。 確かにヨーロッパやアメリカはずっと外国に介入し続けてきましたから、その可能性はあるわけですよね。しかし逆に、香港の一国二制度、自主的に守るとか感染源の調査に協力するというのは世界の信頼を得るうえで大チャンスだと思うんです。ですから、むしろ中国は、世界と協力しながら地球全体を導いていくんだ、そのくらいの誇りを持ってやるべきことをやっていく。偏狭な国家主義に閉じこもらずに、私たちを導くくらいの。それが必要だと思っています。

要旨をまとめると、
・第三極を作っていくべきである。
・歴史的に中国はアヘン戦争をきっかけに分断され続けていたので、中国は香港が中国から脱しようとする状況を恐れている
・逆に、中国が一国二制度を自主的に保護し感染源の調査を協力することは世界の信頼を得るチャンスである。中国は地球を導いていくぐらいの誇りと意思が必要だ
というものです。

しかしながら、
・現在の中国は、名ばかりの自治区として、異民族の新疆ウイグル自治区や内モンゴル自治区などを自治領にし、現地住民の人権や生命を脅かしている状況であることを指摘されている。
・その為、漢民族以外の中国にいる民族の現状を説明せず、「中国は誇りを持ち世界をリードしていくべきである」と主張するのは、政治的公平性を欠く。
・そもそもアヘン戦争時の清朝時代の状況と中華人民共和国の状況は、民族構成からして全く違う。
・その為、過去の清朝と現在の中国を比較し「今の中国は昔のトラウマから、香港が中国から脱するのを恐れている」という田中氏の主張は事実から明らかに反している。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での田中氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日中の関係は良好にすべきである」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「尖閣諸島に対する日本の立場を強く示すべきである」「中国の軍拡に日本も対応できる状況にしておくべきである」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。後編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

③コロナウイルスの議事録が作成されていないことについて放送された部分
については、後編の報告をご覧ください。

① 新型コロナウイルスの第二波について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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