2019年11月17日 サンデーモーニング(後編)

2019年11月17日 サンデーモーニング(後編)

サンデーモーニング、2019年11月17日分の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
① 桜を見る会と長期政権の「驕り」について報道された部分
② 米国によるGSOMIA破棄撤回要求について報道された部分
③ 「風を読む」にて令和時代の天皇制について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
③ 「風を読む」にて令和時代の天皇制について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
 国事行為としての一連の即位の礼の儀式が終わり、14日には即位に伴う行事の大詰めとして大嘗祭が行われた。この大嘗祭については、去年11月、秋篠宮さまの発言が話題となった。秋篠宮さまは大嘗祭の費用を内廷費で賄うべきだと述べられた。大嘗祭にかかる費用24億4000万円は国費で支出されるが、宗教色の強い儀式に国費を充てることに憲法の政教分離の原則に反するのではとの指摘が長年ある。専門家の原武史教授は、大嘗祭の規模拡大について「大日本帝国憲法ができた明治以降、天皇が万世一系という大きな力を持つようになった」と語り、民俗学者の柳田国男氏も著書の中で莫大な経費と労力をつぎ込むことを批判している。
 いま皇室をめぐっては、大嘗祭以外にも議論が避けられない課題がある。戦前の大日本帝国憲法では男子継承の規定が定められており、現在の新憲法の下でもこの考えは引き継がれたが、現在皇位を継承できるのは秋篠宮さま、常陸宮さま、悠仁さまの3人のみ。2004年当時の小泉政権は女性天皇や女系天皇を認める方針を打ち出したが、悠仁さまが誕生したため皇室典範改正は見送られ現在に至った。
 一方、JNN世論調査では「女性皇族」について74%が賛成している。原教授は「奉祝ムードが高まってなかなか議論が深まらない。タブーをなくして幅広い議論が必要」と述べた。
 新しい令和の時代を迎え、皇室をめぐって活発な議論が求められている。

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【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(要約):昭和・平成・令和の天皇陛下が日本国憲法と象徴天皇制にこだわる姿勢を見せておられる姿がものすごく大事。これこそが本来の天皇制にも近いと思う。日本近代史の最大の反省点は廃仏毀釈が行われ国家神道に凝り固まり、日本だけが選ばれた国だという選民思想の中で戦争にまで至ってしまったこと。この反省の中で我々は考えているんだということを改めてよく考えるべき。

大宅映子氏(要約):側室が認められていた時代ですら男子継承は難しかった。政教分離の話も全部表に出してしっかりやらないと。タブーばかりではいつまでも共通意識は出てこないと思う。

姜尚中氏(要約):平成の30年で象徴天皇制を多くの人が受け入れて、象徴天皇が人びとのよりどころになっているが、一方で万世一系という考え方がずっと残っている。多様性を帯びるべきこの時代に、万世一系という考え方と日本の戦後のレジーム(戦後憲法・象徴天皇制)のバランスをうまく取らないと日本型のある種の原理主義になりかねない。万世一系は世襲でカリスマが宿るという考え方。今のグローバル社会の中でこの考え方と象徴天皇制、民主的な国民主権のバランスをどこで取るのかをもっと議論してほしい。

高橋純子氏(全文):先ほど原さんもVTRの中でおっしゃっていましたけれども、やっぱり今天皇制について考えるということをですね、まあ一旦止めてですね、消費している。天皇制を消費している状態。消費、あのつまり、「すげー」とか「かっけー」とかですね、天皇制というものを消費している状態にあるんじゃないかと。私はこれは非常にやっぱりまずいと思っていまして、天皇制っていうものを考え続けていかなければ、やはり日本国憲法の中において国民統合の象徴となっているわけですね。だけど今の政治というのは、なんとなく天皇にですね、その国民統合の部分、つまり一体感みたいなものですね、預けてしまって、国民統合っていうものの状態を象徴するのが天皇なのに、先ほど姜さんもよりどころになっているというふうにおっしゃいましたけれども、天皇をよりどころにするっていうものが常態化するってのは私はあまり健全な状態ではないと思いますので、私達が考え続けて、そしてこの天王星というものをサステナブルなものにしていく。先ほど女系天皇の話もありましたけれども私たち自身がちゃんと考えていかなければならない問題だというふうに思っています。

松原耕二氏(全文):先ほどの大嘗祭、秋篠宮さまが提言されたこと、あるいは女性天皇の問題なんかがやっぱり議論がなかなか進まないのはやっぱり背景に保守層の存在があるんだと思うんですよね。保守層。私、一つ指摘しておきたいのはですね、違和感を感じたんですが、国民の式典というやつなんですが、あれはまあ、お祝いするのは素晴らしいことだと思うんですが、そこに「君が代」をある種思い起こさせる「君という言葉」が本当に繰り返される歌が披露されたり、あるいは「天皇陛下万歳」というのがもう十何回も繰り返される。ずっとそれが続くような、私ある種保守色の強いイベントがですね、ある種国民的なアイドルを登場させてソフトな形で演出されると。こういうのをいきなり我々は目撃することになるわけですね。まあお祝い一色というのはやっぱり考えることを止めさせてしまう面がある。思い出しておきたいのは、3年前の全てのはじまりだったビデオメッセージはこれ、上皇陛下のビデオメッセージ、あれは国民に考えることを促してる、暗に促してるわけですね。我々はやっぱりそれを忘れてはいけないというふうに思いますね。

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、高橋氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

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1、高橋氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
高橋氏は今回の報道で、以下のように述べています。

高橋氏(抜粋):先ほど原さんもVTRの中でおっしゃっていましたけれども、やっぱり今天皇制について考えるということをですね、まあ一旦止めてですね、消費している。天皇制を消費している状態。消費、あのつまり、「すげー」とか「かっけー」とかですね、天皇制というものを消費している状態にあるんじゃないかと。私はこれは非常にやっぱりまずいと思っていまして、天皇制っていうものを考え続けていかなければ、やはり日本国憲法の中において国民統合の象徴となっているわけですね。だけど今の政治というのは、なんとなく天皇にですね、その国民統合の部分、つまり一体感みたいなものですね、預けてしまって、国民統合っていうものの状態を象徴するのが天皇なのに、先ほど姜さんもよりどころになっているというふうにおっしゃいましたけれども、天皇をよりどころにするっていうものが常態化するってのは私はあまり健全な状態ではないと思いますので、私達が考え続けて、そしてこの天王星というものをサステナブルなものにしていく。先ほど女系天皇の話もありましたけれども私たち自身がちゃんと考えていかなければならない問題だというふうに思っています。

要旨をまとめると、
・今の日本人は天皇制について考えることを止め、「天皇スゲー」とか「天皇かっけー」などと消費している状態にある。
・「天皇は国民統合の象徴」とは国民統合の状態を象徴するものが天皇ということだが、天皇にその国民統合の一体感を預けている、天皇陛下をよりどころとすることが常態化しているのは健全ではない。
・天皇制について考え、また女系天皇の話も含めて持続可能なものにしていくべきだ。

というものです。

しかしながら、
・天皇陛下への日本人の尊敬の念を「消費」とする主張は事実に即しておらず、明らかに政治的公平性を欠く。
・「国民統合の象徴」を「国民が統合されている状態の象徴」と勝手に定義する主張は事実に即していない。また天皇陛下の存在によって国民が一体感を得ることが健全でないとする主張は明らかに事実に反しており、また政治的公平性を欠く。
・天皇の正当性は「男系継承」によるものであり、「女系継承」の天皇は存在し得ない。したがって女系天皇の存在が天皇制を持続可能なものにするという高橋氏の主張は事実ではない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での高橋氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。

松原氏(抜粋):女性天皇の問題なんかがやっぱり議論がなかなか進まないのはやっぱり背景に保守層の存在があるんだと思うんですよね。保守層。私、一つ指摘しておきたいのはですね、違和感を感じたんですが、国民の式典というやつなんですが、あれはまあ、お祝いするのは素晴らしいことだと思うんですが、そこに「君が代」をある種思い起こさせる「君という言葉」が本当に繰り返される歌が披露されたり、あるいは「天皇陛下万歳」というのがもう十何回も繰り返される。ずっとそれが続くような、私ある種保守色の強いイベントがですね、ある種国民的なアイドルを登場させてソフトな形で演出されると。こういうのをいきなり我々は目撃することになるわけですね。まあお祝い一色というのはやっぱり考えることを止めさせてしまう面がある。思い出しておきたいのは、3年前の全てのはじまりだったビデオメッセージはこれ、上皇陛下のビデオメッセージ、あれは国民に考えることを促してる、暗に促してるわけですね。我々はやっぱりそれを忘れてはいけないというふうに思いますね。

要旨をまとめると、
・女性天皇についての議論が進まないのは保守層の存在があるからだ。
・「君が代」を想起させる言葉の含まれる歌や「天皇陛下万歳」という言葉が繰り返されたりする保守色の強いイベントを、国民的アイドルによってソフトに演出されていた。
・お祝い一色というのは考えることを止めさせる面がある。3年前の上皇陛下のビデオメッセージは国民に考えることを暗に促すものだ。

というものです。

しかしながら、
・「女性」天皇と「女系」天皇は全く別の議論であり、一般的に問題視されているのは「女系」天皇である。またこうした議論が国民の間で進まないのを「保守層の反発」があるからとする主張は事実に即していない。
・「君が代」を想起させる歌や「天皇陛下万歳」の繰り返しを問題視する姿勢は政治的に公平とは言えない。また祝賀式をアイドルが演出したことを以て「保守色の強いイベントをソフトに演出」などとあたかも大衆を先導しているかのように主張するのは事実に即しておらず政治的に公平とも言えない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「お祝いムードにのまれず女系天皇をはじめ天皇制について考え直すべきだ」「宗教色の強い儀式に税金を投入するのは政教分離に反している」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「女系天皇に天皇としての正統性はない」「天皇制は現行の形で広く支持されている」「最高裁判例などで政教分離に反するとされたことはないので問題ない」「日本の伝統を維持するための出費は当然」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① 桜を見る会と長期政権の「驕り」について報道された部分
については前編の報告を、

② 米国によるGSOMIA破棄撤回要求について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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