2020年11月29日 サンデーモーニング(前編)

2020年11月29日 サンデーモーニング(前編)

11月29日のサンデーモーニングのレポート前編、新型コロナウイルス第3波とGo Toトラベルの一部除外について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
——-
【VTR】(要約)
 新型コロナの感染が拡大し、新規感染者や重症者の数などが過去最多を更新している。
 スーパーコンピューター富岳のシミュレーションでは、タクシーの窓を開けての換気に効果はあまりなく、エアコンの外気導入モードを使用すれば30秒でほぼ空気が入れ替わることが判明した。
 24日火曜日、札幌市と大阪市を目的地とする旅行をGoToトラベルの対象から一時除外することを政府が正式に決定した。感染が拡大している東京都でも一時停止を政府に求める可能性が出ている。一方、菅首相は専門家の意見を踏まえながらも事業を継続していく考えを示し、26日木曜の会見でもGoTo見直しについては言及しなかった。27日金曜日、政府分科会の尾身会長は「感染拡大地域の人々に移動を控えるよう国や地方自治体が強い方針を出すとき」と発言。翌日28日、菅総理は札幌、大阪を目的地にする利用の一時停止に加え、出発分については利用を控えるよう呼びかけた。なお、東京都の取扱については触れられなかった。

——-
【パネル解説】
 全国の重症者の推移を見ていくと、第1波で最多となった日は328人、GoToトラベル開始後の第2波では259人が最多だった。そしてGoToトラベル東京追加後の現在の第3波では、重症者も急増。27日には重症者440人、そして死者31人と、どちらも過去最多となっている。新型コロナ対策分科会が示した6つの指標のうち、10万人の新規感染者数では、北海道と大阪が「爆発的な感染拡大」を示すステージ4、東京都が「感染の急増」を示すステージ3に達している。陽性率も、北海道、兵庫、愛媛などで高い数値を示した。分科会の尾身会長は、「未知の領域となる初めての冬を経験するということも含めて危機感が非常に重要」と警鐘を鳴らしている。

【コメンテーターによる解説】
関口宏 氏(以下関口氏):今朝も松本先生につながっていますが、何だか先生、私は無理して無理して後手後手に回っているような、そんな印象を受けちゃうんですよ、今いろんな方が考えていらっしゃるんでしょうけど、どうでしょうか。

国際医療福祉大学 松本哲哉 教授(以下松本教授):今のタイミングというのは、本当に感染者が急増しています。そして医療現場にも相当なプレッシャーもかかっています。そういう中で一番の解決策というのは、感染者を減らすことなんですね。それに対して、どれだけ有効な対策が取られているかということが問題になるんですけれども、残念ながら今のところ、GoToトラベル1つとってもはっきりとした全体的に効果があるんじゃないかという方針は示されておりません。あくまで地域は限定的ですし、そういう意味では全国を止めたとしても本当にこのまますぐに感染者が減るとは思いません。ただ、部分的にしか止めないのであれば、その効果はあまりないというふうに考えられます。

関口氏:GoToを止めたとしても、それほど大きな効果はないんじゃないかというご意見ですか?

松本教授:私はGoToトラベルだけが感染者の急増の主な原因だとは考えておりません。旅行以外でも会食ですとか、人と人との接触が結局は積み重なって感染者の増加につながっておりますので、ここで全部GoToをやめたとしても、それによって感染者のこれからガクッと減っていくようなところまで持ち込むのはなかなか難しいと思っています。

朝日新聞記者 高橋純子 氏(以下高橋氏):気になるのが、専門家の方々の危機感の強さと政治の側との乖離なんですよね。政治の側がメッセージを発していない、おっしゃるようにGoToトラベルについてもはっきりしたメッセージとならすでに後手後手に回っている印象をどうしても私たちは受けてしまうわけで、不思議なのは、何で菅さんは記者会見を開かれないのかなと。記者会見を開いて、自分たちの方針を説明するそして国民からの疑問に答えるという国民とのコミュニケーションを図る中で、自分たちがどういう行動をとるべきかという自覚を促していくのが欠かせないと思うので、今は政治がもっと前に出る必要があるのではないかなというふうに思います。

関口氏:政府が強い姿勢で出てこないと、自治体も態度が決められないと?

高橋氏:もちろんそうですね、どっちつかずのあやふやな、つまりメッセージとして何らか政府が発していない状態にあるんじゃないかなと思います。

中央大学 目加田説子 教授:先ほどの尾身会長ですけれどもここまで来ると、個人の努力だけでこの状態を鎮静化することはなかなか難しいとおっしゃっているわけですよね。本当に自治体と政府が責任の押し付けあいをしているようで、個人の努力で難しいと言われている中で我々はどうすればいいのかと、正直言って不安しか募らないですよね。記者会見もされないし、間もなく国会も会期末を迎えますので、本当にわれわれが直接この国のリーダーから事態がどうなっているのか、今後どういう方針で終息させていくのかというメッセージが全く受け取ることができなくなってしまうということがとても不安です。

【検証部分】
今回は新型コロナウイルス第3波とそれに対する政府の対応についての報道を取り上げました。今回問題となるのは、高橋氏の発言が、一面的で偏っているという点です。

高橋氏の発言の中で、「気になるのが、専門家の方々の危機感の強さと政治の側との乖離なんですよね。」という箇所がありました。つまり高橋氏は、専門家は強い危機感を持っているが、政治の側にそれがないと主張をしています。今回はこの発言内容について検証します。

そもそも一口に専門家といってもさまざまな人がいます。医療に関する専門家もいれば、経済関係の専門家もいます。さらには医療、経済といった大きな枠の中にも感染症学、疫学といった様々な分類があり、それぞれに専門家がいます。
専門家の危機感といったときに、どの専門家の危機感を表しているのかは異なります。専門としている分野ごとに、今回の新型コロナに関して見えるものも異なりますし、当然意見もそれぞれの専門性を反映した異なるものとなります。大雑把にいえば、医療関係の専門家からは、強力な措置をとり感染拡大を抑え込むべきだという意見があり、一方で経済関係の専門家からは経済との両立をすべきであり、強力な措置はなるべく控えるべきだという意見があがっています。
政府としては、これらの専門家の全ての意見を反映することはできません。政府のとるべき方針は、これらの意見のどれか一方を過度に重視し、それによって他方の意見を無視してしまうことではなく、様々な専門家の意見の中でバランスを取った政策を進めていくことにあります。

報道にもある通り、現在新型コロナウイルス対策の分科会が設置されています。この分科会は医療、経済の専門家、さらには自治体の首長も参加しています。つまり、分科会の提言はそれぞれの専門家個人の見解とは異なり、医療、経済などを多角的に分析した上での提言となっています。そして、実際の政府の政策はかなり分科会の提言に一致しているといえます。具体的には報道にあったGoToトラベルの一部除外や、今回の報道の後にはなりますがGoToトラベルの全国での一時停止などの措置は、分科会の提言を踏まえての決定でした。
この点で、政府は専門家と政治の間の危機感の乖離という事態は生じておらず、政府は様々な専門家の意見を踏まえてバランスをとった政策を進めることができているといえます。

高橋氏の指摘は、このような事実を無視した一面的な分析に基づいたものとなっています。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

————————————————————————————–
放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
————————————————————————————–

視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

サンデーモーニングカテゴリの最新記事