サンデーモーニング、2018年12月2日の検証報告です。
今回の報告では、
・秋篠宮殿下が「大嘗祭(だいじょうさい)」への公費支出について発言された件について報道された部分
・米国にて不法移民のキャラバンに催涙弾が使用された件について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第2章第4条と照らし合わせて検証します。
最初に検証するのは、秋篠宮殿下が「大嘗祭(だいじょうさい)」への公費支出について発言された件について報道された部分となります。
では、さっそく放送内容をみていきましょう。
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【スタジオ】
橋谷能理子アナ:お伝えします。皇室の行事に関する秋篠宮様の発言が、議論を呼んでいます。
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【VTR】
・記者会見で、秋篠宮さまは皇室行事について問われると、大嘗祭を国費で賄うことに疑問を呈した
・平成の大嘗祭は約22億円が公費で賄われた
・大嘗祭は宗教色が強いため、憲法の政教分離の原則に反するとの指摘がある
・しかし政府は、大嘗祭は公的な性格があるとして来年の大嘗祭も公費で行うことを決めている
・秋篠宮さまは、宗教行事は内廷費(私的な費用)で賄うべきであると訴え、宮内庁の山本長官が“聞く耳を持たなかった” と批判
・皇族が政府の決定への苦言を呈される異例の事態に波紋
・首都大木村教授は、「基本的にはプライベートな皇室の宗教儀式であるため、政教分離の観点からは筋が通らない」と述べた
・一方、京都産業大学所名誉教授は、「政府の方針はかなり合理性がある」と述べた
・これに対し菅官房長官は、「改めて何らかの対応をすることは考えていない」と発言
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【スタジオ】
橋谷アナ:国の予算に計上されます皇室の費用については、この3つに分かれています。各宮家の生活費などの皇族費、そして天皇や皇太子家向けの生活費などの内廷費は、宮内庁が管理する公費ではなく、皇室の私的費用とされます。宮廷祭祀の一部も賄われていまして、この毎年行われる新嘗祭も内廷費で賄われています。一方、宮廷日は、公的な活動に必要な経費なので、宮内庁が経理を行って公費に当たります。平成の大嘗祭は、宮内庁の公費である宮廷費から支出されたんですけれども、政府は来年の大嘗祭もこれを踏襲して、宮廷費で賄なうことを決定しています。これに対して、秋篠宮さまが、大嘗祭について、ある意味宗教色の強いものなので、天皇家の私的な費用にあたる内廷費で賄うべきと主張しました。皇族が、このように政府の決定に異を唱えるのは異例のことです。
関口氏:大嘗祭ってのはここに書いてありますが、一世に一度、新しい天皇が誕生したときに行われる。
橋谷アナ:はい。
関口氏:さあ、この発言について皆さん、どうでしょうか。
寺島実郎氏:これはあの、秋篠宮の発言っていうのはこれ、重いと思うんですね。政教分離だとかですね、民主天皇制っていうものに対するある種のこだわりっていうかですね。これ、ちょうどですね、昭和平成と戦後の天皇がね、ものすごくその象徴天皇制の定着っていうものにこだわり努力してこられたっていうかですね。その延長線上のなかでね、秋篠宮発言っていうのを考えたときにですね、これからの我々の議論にとってすごく重要なポイントがあるんですね。つまりね、今、憲法改正なんて議論があって、例えば自民党の憲法改正草案。憲法改正第一条ですよ。天皇を国家の元首とするって、日本国の元首とするっていう改正案が、自民党の中から出てきてるわけですね。で、それに対して我々は象徴天皇制って時代を生きてきたわけですけども、天皇制の在り方ね、日本の中に、明治期の絶対天皇制に対して強襲、ノスタルジアをもってる人たちもいるわけですよね。ですから、元首に戻そうっていうようなね。で、我々はですね、天皇制っていうものに対する長い歴史を考えたときにですね、君臨すれども統治せずじゃないですけども、政治権力としてよりもですね、国民をまとめていくときの、まさに象徴天皇制のようなね、本来の天皇制の長い歴史の中で根付いてきたんだっていうことを考えたときにですね、天皇制の在り方を考えなきゃいけない今、大きな転換点のところで、非常に大きなことをですね、彼はみんなで考えようじゃないかってことも含めて言っておられるんだなって僕は受け止めますね。
関口氏:かもしれませんね。元村さん何かお感じになりますか。
元村有希子氏:そうですね、やはり、今の陛下、それから皇太子さまが言えないことを、自分が代わりに言いましたというようなメッセージと私は受け止めました。ただ、秋篠宮さまも来年には、皇嗣なられるわけですね。そうすると、またまたそれは立場が重要になってきて、言いたいことを言えなくなるというふうに考えられたのかなと思いますが、ただ、ちょっとびっくりしたのは、あの、何の考慮もしませんと、官房長官が言ってることですよね。せっかくの問題提起、そして開かれた皇室をちょっと象徴するような言動をですね、政府としては水に流すということがあっていいのかなという、そこもちょっと心配になりました。
関口氏:松原さん。何かありますか。
松原耕二氏:私はあの、天皇陛下のビデオメッセージがありましたね、退位の。あれをちょっと思い出したんですね。つまり、通底するものがあるんじゃないかと、今回の大嘗祭の発言とですね。それは皇室の中での、先ほど寺島さんがおっしゃいましたけど、象徴天皇制っていうのは国民の支持があってこそ続けられるんだっていう強い思いだと思うんですね。あのときも天皇陛下はですね、被災地を訪ねるなどして、国民に寄り添ってこその象徴であると。そうじゃないと象徴足り得ないと、強い思いで一人で考え抜かれたんだと思うんですね。しかし政府にそれを伝えても、何も動かない。だからしびれを切らして国民に直接訴えかけたわけですね。今回も根っこにあるのは、国民の理解を得られないかもしれないし、そうして本当にいいのかと、理解を得られるのかという強い危機感だと思うんですね。ですからまあ、先ほどもありましたけども、政府がですね、そういう議論をちゃんとしないで、このまま済まそうとしたならば、あるいは、皇室の思いと政府の思いの違いをですね、修正しようとしないとしたらですね、これからも私は皇室からの異議申し立てみたいなものは、続くんじゃないかという気がしますね。
関口氏:皇室の方々には、何か時代に沿って、変えられるものは変えてほしいっていう思いがどっかであるんでしょうね。
松原氏:そうですね。でも保守系の人々の中には、天皇陛下はもう祈ってさえいればいいんだって人もいるわけですよね。そういうのには多分、賛成、まったく皇室の中からできないんだと思うんですね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、寺島氏の発言に視聴者に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体が一つの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
寺島氏の発言に、事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。
寺島氏(抜粋): 天皇を国家の元首とするって、日本国の元首とするっていう改正案が、自民党の中から出てきてるわけですね。で、それに対して我々は象徴天皇制って時代を生きてきたわけですけども、天皇制の在り方ね、日本の中に、明治期の絶対天皇制に対して郷愁、ノスタルジアをもってる人たちもいるわけですよね。ですから、元首に戻そうっていうようなね。
要旨をまとめると、
・自民党のなかから天皇を国家元首とする動きがある
・これは明治期の絶対天皇制に対する郷愁が背景にある
・今までの象徴天皇制と大きく違う方向性である
というものです。
しかしながら、
・国家元首と絶対王政は全く違うものである
・明治期は「絶対天皇制」などという絶対王政のような状況ではなかった
・自民党の改憲案についても、名目が変わるだけで実態はほとんど変わらない
という、発言の内容と相反する事実があります。
よって、今回の氏の発言は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
この報道全体が一つの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「秋篠宮殿下の意向を政府は尊重すべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「皇族の意向を制作に反映することは象徴天皇制に反する」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げられませんでした。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
続いて、米国にて不法移民のキャラバンに催涙弾が使用された件について報道された部分となります。
それでは、放送された内容を見ていきましょう。
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【VTR】
・中米諸国からアメリカへの移住を目指すキャラバンの一部500人に、メキシコの検問所に殺到した
・アメリカ側の警備当局は、催涙ガスを使用
・トランプ大統領は、「野蛮な連中が殺到してきたから催涙ガスを使わざるを得なかった。合法的な入国でない限りアメリカに入ることは許されない」と発言
・メキシコ側では、収容施設に数千人が待機したまま
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【スタジオ】
関口氏:西崎さん、これ、どう収めましょうかね。
西崎文子氏:これはあの、国境地帯だけで解決できる問題でもありませんし、それからここにきてる人たちはあの、トランプ大統領が言うような野蛮な連中ではなくて、やはり本国の経済状況の悪化と、それから暴力ですよね。そういったものに追われてきてるわけですから、そこを、長い目で見ればそこに対応していかないと、どうにもならないと思います。
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以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、トランプ大統領の発言について、事実と異なる恐れのある翻訳がされている
2、この報道全体が一つの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
トランプ大統領の発言について、事実と異なる恐れのある翻訳がされている
トランプ大統領は今回の報道で、以下のように述べたと報道されています。
トランプ大統領(翻訳): 「野蛮」な連中が殺到してきたから
しかしながら、この時トランプ大統領は英語で
トランプ大統領(英語): because they were being rushed by some very “tough” people
と発言しています。
つまり、「tough」を「野蛮」と翻訳している、ということです。
Toughには様々な意味があり、そのなかには「無法な、無類な」「ごろつき」などといった意味も存在しています。しかしながら、その意味としてもっぱら使われているのは「タフな、頑固な、しぶとい、骨が折れる」といった「対応が難しい」という意味合いで、そこに「無法な」「野蛮な」という意味はありません。
つまり、意図的に印象の悪い意味を訳語にあてがうことで、トランプ大統領があたかも不法移民を差別した発言を行ったように演出した可能性があります。
これは事実を歪めて報道した恐れがあるだけでなく、政治的公平性を大いに欠く編集であり、視聴者に誤った認識を与える偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
よって、今回のVTR編集は放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」、ならびに同第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
この報道全体が一つの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「不法移民に催涙弾を使うことは問題がある」「根本的解決をすべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「正当な手続きを経ない者の入国を認めないのはまったく正当な対応だ」「アメリカが他国の情勢に干渉すべきではない、国内事情を優先すべきだ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げられませんでした。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が今回の報告となります。今回の放送では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。