2018年7月8日 サンデーモーニング

2018年7月8日 サンデーモーニング

※自民党総裁選期間に限り、報道監視レポートを全会員の皆様に公開しております。

サンデーモーニング、2018年7月8日放送回の検証報告です。

今回の報告では、
・オウム真理教元幹部の死刑執行に関して報道された部分
・文科省の局長逮捕に関して報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのかを公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

最初に検証するのは、米朝首脳会談関連について報道された部分となります。
では、さっそく放送内容を見ていきましょう。

水野真裕美アナウンサー(以下、水野):お伝えします。松本智津夫死刑囚を含むオウム真理教の元幹部7人の死刑が執行。謎を残したまま、事件は終わっていくのでしょうか。

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【VTR】
・オウム真理教の教祖・松本智津夫死刑囚と元幹部の死刑囚ら、7人の死刑執行が同じ日に行われた
・松本智津夫死刑囚と元幹部2人は東京拘置所で死刑執行
・大阪拘置所では2人、広島と福岡の拘置所では1人ずつ死刑執行
・1995年3月20日の地下鉄サリン事件は、史上初の大都市での化学兵器サリンによる無差別テロ事件で、死者13人、負傷者約6300人だった
・坂本堤弁護士一家殺害事件、の松本サリン事件、脱会をめぐるトラブルで仮谷清志さんを死亡させた事件など、一連の犯行で死者27人、元幹部13人が死刑判決
・オウム真理教は、1984年に設立された前身団体であるヨガ教室から発展した
・「最終解脱」「ハルマゲドン」などの思想に若者たちが共感し、最盛期の信者は1万人超
・幹部信者は高学歴・高度な専門知識を有し、“省庁”を組織する疑似国家を作り上げていた
・公安調査庁は、オウム真理教の後継団体「アレフ」など3つの団体を立ち入り検査
・「アレフ」と「山田らの集団」の施設で松本元死刑囚の写真などを確認し、一部で「麻原帰依」が進んでいるとみられる
・死刑執行を受けて、ドイツ大使館は「死刑を非人道的かつ残酷な刑罰として否定する」とコメントを発表し、フランス政府やEUなども同様の声明を発表した
【VTR終】
——-

司会 関口 宏(以下、関口):死刑が確定している中で、今回執行されたのが。

水野:この7人ですね。金曜日に死刑が執行されました。

関口:このオウム。我々もあの当時、え、まさか、え、まさかってことの連続だったと記憶しております。一応ちょっとまとめておきましょうか。

水野:中でも、教団の凶悪性を象徴するのが1989年の坂本堤弁護士一家殺害事件、94年の松本サリン事件、95年の地下鉄サリン事件です。その特徴なんですが、世界と人類の救済のためなら、殺人も許されると、教義の中で殺人を許していたということです。やがて教団は武装化を進めていき、自ら化学兵器サリンを製造・使用。そして、日本の犯罪史上例のない大規模テロを実行しました。

関口:これ松原さんは、取材も非常に苦労しながら、ねえ、やりましたね。

松原 耕二(以下、松原):そうですね。まあでも、取材者として、というのもありながらですね、同時にやっぱり、なんか、この事件は、ずっと、なんか自分のことなんですね。私、ちょうど今回も、死刑になられた方、だった人、同じ世代もやっぱいるわけですよね。当時は若者だと言われてた人達。で、振り返ると、高度成長とともに育って、物質的なものが世の中で大きな顔をして、で、バブルという頂点をある種迎えて崩壊する。そして、世紀末もあったんですね。だから思い出すとものすごく漠然とした不安がすごくあったとは思うんですね。でも、なぜ、自分と同じ世代の人間たちが、しかも優秀な人達がなぜ、あんな、こんな組織にですね、崇めとられていって、引き込まれていったのか。服従の心理なのか。なぜそのシステムが出来上がったのか。VTRにもありましたけど、私も、松本智津夫死刑囚の裁判に結構行ったんですけれども、でも、やっぱり何も語らないわけですよね。だから結局どういうふうにして服従のシステムができたかが全く分かってないんですよね。だから、そういう意味では、本当に幹部たちまで、死刑に今する必要が本当あったのか、もっと、裁判って形じゃなくても、聞いて次の教訓を、次の世代に活かすことはなかったのかと。その思いが私は拭えないですね、個人的には。

関口:何故そうなってしまうのか。姜さんどうお考えになられます?

姜 尚中(以下、姜):やっぱり、麻原彰晃って人はもう、万死に値すると思うんですね。で、やっぱり、これによって区切りがついたって方もいらっしゃると思います。ただこれは、今回やっぱり、まあ、詳しくは分かりませんけど1911年の大逆事件のときは、十数名処刑されてるんですけれども。

関口:何のときですか?

姜:大逆事件というですね。

関口:ちょっと、もうちょっとそれを詳しく。

姜:これは、明治天皇を殺そうとしたという、まあひとつ濡れ衣に近かったんですけども、それ以来の死者の数じゃないかなと思うんですね。で、戦後4人ぐらいが永久戦犯で処刑はされてますけど、これはまあ、アメリカがやったことですから。で、私は、やっぱりどうしても今回、この処刑がイベント化されて、ある種の非公開の公開処刑みたいな。つまり、完全に密封された空間の中で、しかし処刑っていうのはもう大っぴらになって、それがこういう形でっていうのは、やっぱり納得がいかないものがありますね。だからその点で、サリン事件のときの、河野義行さんっていう方が。

関口:はい、松本。

姜:ええ、松本。でまあ、自分の奥さんも結局最後は亡くなりましたけれど、彼自身は、やっぱりオウムのそういう若者たちと交流を持った。そしてやっぱりそれを知ろうとしたってことですよね。ですからさっき森さんが言ったように、やっぱりこれは知らなきゃいけないし、そのためにはまあ、少なくとも6人の幹部は生かして、彼らから徹底して、やっぱり、どうしてこういうことをやったのか。やっぱり調査すべきだったと思いますよね。

関口:目加田さんも一言。

中央大学教授 目加田 説子:はい。あの、姜さんが今ご指摘なさった通りで、だと思うんですけれども、今までは、どんな重大な、凶悪事件でも、死刑執行が終わった後に、執行されましたってことが発表されてたわけですよね。ところが今回は、その事前リークのような形で、メディアにも伝えられてたことによって、その7人が処刑される過程がリアルに速報でテレビなんかではスーパーで出たりですね、あるいは、携帯・スマホに速報に入ったりという形で、本当になんていうんでしょう、ニュースを受け取る側が、公開処刑にこう、立ち会っているようなですね、なんとも本当にこう、気持ちの悪いというか。まあ、驚きと、それからまあ、恐怖を禁じ得ななかったですね。で、先程、ドイツやEU、イギリスなどが声明を出したってありましたけれども、やはり日本は世界の、死刑制度を廃止しようという趨勢の中で言えば、数少ない国なんですよね。そうするならば、なんで諸外国はそういう判断をしているのかっていうことを含めて、もう一度日本で死刑制度を存置するべきなのかということも、議論する必要があらためてあるなあ、ということを思いました。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、松原氏の発言に事実と異なる恐れがある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている恐れがある

それぞれ順を追って解説します。

1、松原氏の発言に、視聴者に誤った印象を与えかねない内容が含まれている

松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。

松原氏(抜粋):なぜ、自分と同じ世代の人間たちが、しかも優秀な人達がなぜ、あんな、こんな組織にですね、崇めとられていって、引き込まれていったのか。服従の心理なのか。なぜそのシステムが出来上がったのか。VTRにもありましたけど、私も、松本智津夫死刑囚の裁判に結構行ったんですけれども、でも、やっぱり何も語らないわけですよね。だから結局どういうふうにして服従のシステムができたかが全く分かってないんですよね。だから、そういう意味では、本当に幹部たちまで、死刑に今する必要が本当あったのか、

要旨をまとめると、
・オウム真理教は、信者を服従させるシステムが全く分かっていない
・それなのに幹部たちまで処刑する必要はない
というものです。

しかしながら、オウム真理教がどのように信者を取り込み、拡大していったのかということはすでに解明がなされています。実際、オウム事件を長年にわたり取材してきたジャーナリストの江川紹子氏も、「そういう人たちは、裁判をちゃんと見ていないし、裁判に関する記録や報道も丹念に読んでいないのだろう。裁判は、判決公判だけ見ればすべてが分かる、というものではなく、また、裁かれたのは、麻原だけでもない。彼を含めて192人のオウム関係者が起訴された。その裁判を通し、事件の動機も含め、刑事事件としての真相は概ね明らかになっていると言える」と発言しています。

よって、今回の松原氏の発言は「真相が明らかになっていないにもかかわらず、オウム真理教の元幹部らの死刑を執行した」というミスリードを生む恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

今回の放送では、この問題について全体を通して「今回の死刑はおかしいのではないか」「死刑は残酷ではないか」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「死刑は治安維持のために必要」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで不起訴はおかしい、という論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」、並びに同第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

続いて、文部科学省の高官が収賄容疑で逮捕された件についての報道を検証したいと思います。
それでは、放送された内容を見ていきましょう。

関口:はい、続けていいですか?

伊藤友里アナウンサー(以下、伊藤):はい、お伝えします。文科省高官が収賄の疑いで逮捕。見返りは、息子の不正入学です。

——–
【VTR】
・教育行政をつかさどる文部科学省の佐野太科学技術・学術政策局長が受託収賄の疑いで逮捕
・特捜部によると、官房長だった去年5月、東京医科大学が私立大学の支援事業の対象校に選ばれるよう便宜を図った見返りとして、今年2月、受験した息子を合格させてもらった疑い
・問題となった支援事業は、文部科学省が特色のある研究に対して費用を支援する「私立大学研究ブランディング事業」
・東京医科大学は、去年11月に私立大学研究ブランディング事業の対象大学に選定され、3500蔓延の補助金を受けていた
・佐野容疑者に支援事業の対象校に選ばれるよう依頼したとされるのは、東京医大のトップ臼井正彦理事長と鈴木衛学長
・2人は浪人中だった息子の入試の点数を加算し、医学部に合格させた贈賄の疑いがもたれており、事情聴取に対し大筋で不正を認めている
・東京医大は、臼井理事長と鈴木学長の辞職を発表
・文科省のエース中のエースと呼ばれていた佐野容疑者は、科学技術・学術政策局長を解任された
・野党側は、私立大学の支援事業の対象校を選ぶ有識者会議議事録の公表を求めた
・野党側は、内閣不信任決議案の提出も視野に入れ、徹底抗戦の構え
・しかし与党は、カジノ整備法案や、議員定数を6増やす公職選挙法改正案が参議院で審議入りし、今の国会で成立させる構えを崩していない
【VTR終】
——-

伊藤アナ:はい、東京地検特捜部によりますと、佐野容疑者は、東京医科大学を支援対象校として選んでもらえるよう便宜を図った見返りとして、自分の息子を大学に合格させてもらったという疑いがあります。佐野容疑者は、大学側と直接はではなく、知人を通して、この選定を要請されたといいます。で、この支援事業。文科省の私立大学研究ブランディング事業というんですが、2016年度に始まりました。個々の大学の独自性や魅力を高め、発信するのを支援する制度で、1校あたり、目安として年間2000万円から3000万円が支給されます。で、初年度。2016年度は応募198校から40校が選ばれ、東京医科大学は落選しました。翌年、2017年度は応募188校から60校が選定され、そこに東京医科大学は入って3500万円をうけました。こういった流れなんですね。

関口:何か豪雨のニュース、オウムのニュースでこれが影に隠れちゃいそうなんだけど、これは大きいことが起こってるわけですよね、涌井さんどうお考えになりますか?

造園家・東京都市大学教授 涌井 雅之:これはですね、3つの問題が相乗的に起きてるっていうことですね。ひとつは一体何かっていうとですね、官僚っていうものの矜持の劣化。2つ目はですね、要するに、官僚をグリップする、ガバナンスで省益にこだわらない、グリップするっていう、いわゆる内閣が、人事権を強化した、それとの化学反応。3つ目はですね、大学の危機。これだと思うんですね。で、一つひとつご説明しますとね、我々の仲間の官僚っていうのは皆やっぱりその、志が高いんですよ。そして、自分に得を求めようっていうか、得を高めることを一生懸命やってる。ところが今のうりが、有能な、その場をしのげる官僚っていうのがですね、重宝されるようになってる。これが内閣、人事局含めて、いわば、省益にこだわりやすいっていう、いわゆるこの、グリップしてですね、そうするとなんとか忖度とかですね、そういうことになっちゃう。大学は大学でですね、少子高齢化でものすごい経営の危機を感じてるんですよ。とりわけ医大だとか歯科大学だとかですね、職能を育てなきゃいけない大学ってのは非常に厳しい状況になるだろうと。すると、どうしても補助金が欲しいわけです。そうすると、その、こうした方向にすり寄ってしまう。この3つがですね、非常に悪い結果になったと思いますね。で、そこに大きな問題の底流があるっていうことをしっかり我々は見つめなきゃいけないと思います。

関口:松原さん、このニュースどうですか?

松原:そうですね、まあ一部ですけども、まあオウムやってこれをちょっとという。ただ、あの、私思うのは、先ほどあった有識者会議っていう決め方の一つだと思うんですね。つまり、例えばですね、森友学園のときも、学校認可の議事録を全部読むとですね、行政側は事務局長として入って誘導して結果ありきなんですよね。だから、別の審議会のある学者さんに聞いたときにですね、もう百戦錬磨の役人がこう説得されるとボロリといっちゃうと。だから結局、民主主義っていうのは、手続きだけ踏んで体裁整えてもう中身がなければ、全然、実は民主主義ではないわけですね。今回その、有識者会議で何が行われたか、まだ全く分かってませんが、どうもその、審議会も良いそういう人ばかり集めたりですね、もうほんと形ばかりになってることが先程からものすごく目立つなあと。これがすごく気にかかりますね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは次の2点です。

1、涌井氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

それぞれ順を追って解説します。

1、涌井氏の発言に、事実と異なる恐れのある内容が含まれている
涌井氏は今回の報道で以下のように発言しています。

涌井氏(抜粋): ところが今のうりが、有能な、その場をしのげる官僚っていうのがですね、重宝されるようになってる。これが内閣、人事局含めて、いわば、省益にこだわりやすいっていう、いわゆるこの、グリップしてですね、そうするとなんとか忖度とかですね、そういうことになっちゃう。

要旨をまとめると、以下のようになります。
・現政権が内閣の人事権を強化したので、その場をしのげる官僚が重宝される
・その結果、政権への忖度などといった問題が発生する

確かに、政府は内閣人事局の設置などを通して人事権を強化してはいます。
ですが、「内閣が人事権を強化した」から「その場をしのげる官僚が重宝されるのだ」という一連の主張には因果関係が全くありませんし、そうした因果関係を示す根拠もありません。また、そうした環境が忖度を生んだという因果関係を立証する根拠もありません。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、松原氏の発言に、事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で以下のように発言しています。

松原氏(抜粋):今回その、有識者会議で何が行われたか、まだ全く分かってませんが、どうもその、審議会も良いそういう人ばかり集めたりですね、もうほんと形ばかりになってることが先程からものすごく目立つなあと

要旨をまとめると、
・有識者会議や審議会という場では、優秀な役人側に簡単に説得されてしまう
・今回の審議会について、まだ何もわかっていないが、そういう人ばかり集めているから形ばかりになっている
以上のようになります。

ですが、優秀な役人が優秀な説得をするのは至極当然のことですし、そのような役人が多いことを以て審議会や有識者会議が形だけになっているというのはあまりに暴論です。論点があるのであれば当然反論をすべきですし、議論が役人主導になってしまうのは役人に反論できない学者側の責任ではないでしょうか。また、まだ審議会や有識者会議について何もわかっていない状態でこのような決めつけを元に意見を主張するのは、視聴者に事実と異なった印象を与えてしまいかねません。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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