TBS「サンデーモーニング」、2020年3月8日放送回の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① 新型コロナ問題にてWHOが最も懸念する国について報道された部分
② 新型コロナ問題における安倍首相の政治判断について報道された部分
③ 河合夫妻逮捕について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
① 新型コロナ問題にてWHOが最も懸念する国について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
感染者が世界で10万人を超えた新型コロナウイルス。韓国では集団感染を引き起こしたとして殺人などの容疑で告発された新興宗教団体の教主が2日、謝罪を行いました。中東ではイスラム教の聖地メッカにあるカーバ神殿に異変が起きています。例年、世界中からイスラム教徒が大挙して押し寄せますが今月はご覧の通り。人々の動きに大きな変化が起きています。カリフォルニア州で緊急事態宣言が出されるなど、感染が拡大するアメリカ。3500人が乗船してハワイからサンフランシスコに向かうクルーズ船で21人の陽性反応が確認される事態となっています。そしてWHOから感染が最も懸念される国の1つとして挙げられた日本。感染者が1000人を超える中政府の専門家会議が驚きの試算を示したのです。月曜日、政府の専門家会議は北海道の感染を巡って驚きの試算を示しました。実際には確認されている感染者数の10倍を超える1000人近い感染者がいるのではないかと指摘したのです。さらに、ほかの感染症と異なる広がりも見えてきました。実は、感染者の8割がほかの人にうつしていないというのです。にもかかわらず、感染は拡大しています。その理由の1つが各地で発生している小規模な感染者の集団、クラスターの存在です。大阪市のライブハウスでは客や関係者、その家族さらに、別のライブハウスの客にまで広がり50人以上の感染が確認されています。その原因について専門家は、感染者が近くでせきなどをしなくても風通しの悪い場所ではウイルスが空気中を漂って感染が起きている可能性があるというのです。一方、検査を受けたくて設けられない検査難民の存在も問題となっています。先月29日の会見で安倍総理は身近な医師が必要と認める場合は、すべての患者がPCR検査を受けられるようにすると表明。おとといから始まったPCR検査の保険適用を巡って安倍総理の発言が波紋を広げています。かかりつけ医の診断によるPCR検査はあくまで今後の目標だと説明したのです。政府の対応の混乱が国民の間に不安を広げています。
【冒頭の橋谷アナの説明】
新型コロナウイルスなんですが、まずはこちらをご覧いただきたいと思います。こちらが先週お伝えした世界の感染者数なんですけれども、1週間前、中国本土は感染者7万9251人でした。こちらが1週間後、現在8万651人となっています。ただ、拡大のスピードがだんだん緩やかになってきています。そして日本なんですけれども、1週間前は感染者947人でしたが、これが1週間たって200人以上増えまして1157人となりました。そしてそのほかの国を見てみますと、このようにどーんと増えまして、90を超える国と地域まで感染が広がってしまいました。中国を見てみますと、このおよそ1カ月で感染者がおよそ3倍ですね。そして日本ではおよそ40倍、そして日本と中国を除く世界各国ではおよそ105倍にまで感染者が増えてしまって感染が広がり続けているんですね。新型肺炎が世界を揺るがす中、国内ではクラスター感染が拡大しています。
【アナウンサーの説明】
保険適用でどうなるかなんですけれども、これまで感染が疑われる患者が検査を受けるにはいくつもの手順を踏んだ上で、必ず保健所を通さなければならなかったため検査が進まないという問題が起きていました。これを解消する目的で6日から保険適用となったわけです。安倍総理はすべての患者がPCR検査を受けられるようになると発言しましたが、このような見通しは現在のところ立っていないわけですね。では何が変わったのかといいますと、今後、国が指定した病院は保健所を通さずに直接、民間の検査会社などに検査を依頼することができるようになったということです。一見手続が1つ減ったように見えるんですけれども、直接検査依頼ができる病院こちらが限られている現状では検査数の増加にすぐ結びつくのか疑問視する声が上がっているんですね。
中国の研究チームの発表によると、ウイルスには2つの型がある。また、これまで症状の出た8割が軽症で、重症が14%、重篤が6%程度。重症の方も、始めは風邪のような症状であった。また政府の対策会議によると、感染者の8割が他人にうつしていない。長時間人と人が至近距離で交わる閉鎖空間は、感染のリスクが高まる。7日に感染が確認された男性は、髄膜炎を発症。もしかしたらこれも新型コロナウイルスの一つの特徴かもしれません。
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【コメンテーターの発言】
元村有希子氏(要約):韓国とか他のアジアの国はSARSやMERSの経験を生かしている。日本はそうした被害を受けなかったので、対応の反省をする機会がなかった。
寺島実郎氏(全文):まあ一週間の展開の中でね、えー習近平中国の主席の日本の訪日が中止になったこと。これがですね、東京オリンピックに向けてのオレンジ色だっていう言い方があるんですね。どういう意味というとですね、WHOがねこれさっきのパネルじゃないですけど90ヶ国以上に広がっているわけですよね。パンデミック宣言というのをねつまり世界中に蔓延してるよっていう宣言をもしWHOがやったらですね、この終息宣言が出ない限りオリンピックなんかできませんよねということになる。
そうすると7月のオリンピックのためには少なくとも5月末くらいまでね終息宣言が出てないといけないと。当然のことながら、一番の震源地である中国が収束してなかったらですね、終息宣言も出せなくなってくる。今はWHO微妙な状況でもって、出さずにいますけども宣言を。これ皮肉な言い方ですけど、中国が終息宣言を出さない限り、WHOもですね一旦出した終息宣言を出せないっていうことになるから。変な話なんですけど、日本のオリンピックの命運っていうのかな、開催できるかどうかをね中国が握っているなんていうような変なパラドックスみたいなことに今なっちゃっているんだって、これ世界観いったら時のですね、まずそれだけちょっと話してみました。
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以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、橋谷アナの発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
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1、橋谷アナの発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
橋谷アナは今回の報道で、以下のように述べています。
橋谷アナ(抜粋):日本なんですけれども、1週間前は感染者947人でしたが、これが1週間たって200人以上増えまして1157人となりました。(中略)WHOから感染が最も懸念される国の一つとして挙げられた日本。
要旨をまとめると、
・日本の感染者数は947人だったが、1週間で200人増え1157人に増加した。
・日本はWHOに感染状況が最も懸念されている国の一つだ。
というものです。
しかしながら、
・1157人という感染者数は日本国内でないダイヤモンドプリンセス号の感染者を含めたもので、正確な日本の感染者数を示していない。
・WHOは3日以降懸念の対象から日本を除外しており、橋谷アナの説明は事実に即していない。
・こうした主張は事実に反しており、また視聴者に日本の感染拡大が実際より深刻であるという誤った認識を与える恐れのある極めて悪質な報道である。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での橋谷アナの発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。
寺島氏(抜粋):まあ一週間の展開の中でね、えー習近平中国の主席の日本の訪日が中止になったこと。これがですね、東京オリンピックに向けてのオレンジ色だっていう言い方があるんですね。(中略)世界中に蔓延してるよっていう宣言をもしWHOがやったらですね、この終息宣言が出ない限りオリンピックなんかできませんよねということになる。そうすると7月のオリンピックのためには少なくとも5月末くらいまでね終息宣言が出てないといけないと。
当然のことながら、一番の震源地である中国が収束してなかったらですね、終息宣言も出せなくなってくる。今はWHO微妙な状況でもって、出さずにいますけども宣言を。これ皮肉な言い方ですけど、中国が終息宣言を出さない限り、WHOもですね一旦出した終息宣言を出せないっていうことになるから。変な話なんですけど、日本のオリンピックの命運っていうのかな、開催できるかどうかをね中国が握っているなんていうような変なパラドックスみたいなことに今なっちゃっているんだって、これ世界観いったら時のですね、まずそれだけちょっと話してみました。
要旨をまとめると、
・習近平国家主席の訪日中止は東京オリンピックにダメージだ。WHOがパンデミック宣言を出せば終息するまでオリンピックができなくなるが、震源地中国が終息宣言を出さなければWHOも終息を宣言できないからだ。日本のオリンピックの命運を中国が握っている。
というものです。
しかしながら、
・習近平国家主席の訪日中止は、中国における新型コロナウイルス感染拡大の終息とは一切関係のない事柄である。
・中国が東京オリンピックの命運を握るとする主張は、中国が政治的な意図で新型コロナウイルスの終息宣言を出さないという根拠のない前提に基づくもので事実に基づいておらず、また政治的にも公平とは言えない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「検査難民が検査を受けられるように検査体制を拡充すべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「検査はあくまでも確定診断用であり、誰でも検査が受けられるようにしてしまうと医療崩壊の恐れがある」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 新型コロナ問題における安倍首相の政治判断について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ 河合夫妻逮捕について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。