2019年8月25日 サンデーモーニング(前編)

2019年8月25日 サンデーモーニング(前編)

TBS「サンデーモーニング」、2019年8月25日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 横浜市がカジノ誘致に名乗りを上げた件について報道された部分
② 韓国のGSOMIA破棄について報道された部分
③ 防衛省の予算増額について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 横浜市がカジノ誘致に名乗りを上げた件について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
 横浜市がIRの誘致を正式表明し、横浜市の市民が怒りの声を上げた。林市長は、観光収入の伸び悩みと高齢化による税収への不安を誘致の理由に挙げている。2年前の市長選ではIR誘致を白紙としていたが、経済効果などから誘致に踏み切ったという。これに対し、地元経済界の大物であり、与党の有力政治家とも太いパイプをもつ横浜港運協会・藤木会長が反対の声を上げている。カジノ業界大手のアメリカ企業ラスベガス・サンズは大阪でのIR参入を見送り横浜などへの参入に力を入れる方針を表明した。ラスベガス・サンズ会長のアデルソン氏はトランプ大統領の有力支持者とされる。日本でIRを展開する場合、法令によりカジノ区域の面積はIR施設全体の床面積の3%までと決められているが、横浜市の調査では「治安が悪くなる」「ギャンブル依存症になる」などの否定的な意見が肯定的な意見を上回っており、横浜市の決断に波紋が広がっている。

【アナウンサーによるパネル説明】
・IR誘致を表明していたのは大阪府・和歌山県・長崎県の3か所で、その他に6都市が誘致を検討している
・IR整備法では全国で最大3か所までIRを誘致できる
・ラスベガス・サンズは横浜が誘致を表明した当日に大阪への参入を見送り、東京・横浜の開発に力を注いでいくと表明

【コメンテーターの発言】
田中優子氏(全文):カジノ誘致っていうふうに言うんですが、実際にはIntegrated Resort、統合型リゾートですから、レストラン、ホテルなどなど、こういうものを統合したものなんですね。その中の一つがカジノです。ところがこの問題は、賭博は違法だってことです。現時点で違法です。刑法185条から187条までで、違法とされています。で、この日本人のカジノ・賭博への抵抗感なんですが、江戸時代からありまして、江戸時代では、非常に重い罪だったんです。盗みとともに。過料これ、罰金だけじゃなくて、何度もやると流罪にもなり死罪にまでなります。そして、幕府がどうしても止めたいために、負けて、金銭とか衣服取られたらば、申し出てくれれば、もう無罪にしてやってその上、取り返してやるよっていう法令まで出すんですね。ま、それでも止まらないんですけども、しかしそういうふうに重罪だった理由があります。それはやはり、詐欺など。サイコロに細工などして。詐欺を含む組織犯罪になりやすい。それから、他の犯罪に走る。これ、お金失ってしまいますからね。他の犯罪でお金を取り戻そうとする。そういう傾向があったからなんですね。で、現在でももちろん問題点があって、江戸時代と同じようにギャンブル依存症。それからマネーロンダリングが行われるのではないか。それともちろん暴力団の介入ですね。で、そういうようなことがありますので、もちろん政府としては、これにいろいろと新しい手を打とうとしていまして。そして、カジノ管理委員会を設置するとか。ギャンブル等依存症対策基本法。これも作りました。で、それで解決するかどうかがよくわからないということなんです。で、その本来観光ってのは何なのかってことを考えてみると、本来の観光はその都市の自然環境だとか個性だとか。人だとか。そういう人、そういうモノに出会って新しい、こう衝撃を受けて、で、視野を広げるってことなんですよね。でも、このカジノの場合には、まずお金ってことなんです。で、地方よりも都市型に今、傾きつつあるという情報がありますよね。ですから、都市ではとにかくお金を儲けなければならないという、そこまで日本の財政って悪化してるんじゃないかなって思うと同時に、お金お金だけでいいんだろうか。というふうにも思います。

関口宏氏(全文):辺さん、韓国もだいぶ失敗してますよね。

辺真一氏(全文):そうですね。まあある意味では、カジノ先進国といっても過言じゃないです。半世紀前からやってますからね。ですけどもね、そんなに外国人、お金使ってませんですよね。例えば17か所ぐらいあるんですけども、16か所が、いわば外国人専用。1か所だけですね、韓国人、出入りできるんですね。で、売上見ますとね、これ、16か所の売上と、韓国人が出入りできるカジノの売上とほとんど同じなんです。外国人使ってないんです。外国人といってもまあ、欧米諸国はあまり少なくてですね、中国人だとか、香港だとか台湾だとか。ここなんですね。で、結果はですね、韓国人の出入りする場所っていうのが、もう治安が悪くなり教育環境も悪くなる。ですから、その、人口のいわばその、離れがあってですね、結局あの、人口減少を招いてると言う。そう考えますとね、そんなにぼろ儲けできるような話じゃないんじゃないかと思うんですねこれは。

寺島実郎氏(要約):日本は実は管理された異常なまでのギャンブル国家。全国津々浦々にパチンコ屋・競輪・競馬がある。そういう中で本当の付加価値の高い観光立国を目指してきた。だからカジノありきのIRにいってはいけない。今が辛抱どころ。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、辺氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

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1、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
田中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

田中氏(抜粋):ところがこの問題は、賭博は違法だってことです。現時点で違法です。刑法185条から187条までで、違法とされています。
で、この日本人のカジノ・賭博への抵抗感なんですが、江戸時代からありまして、江戸時代では、非常に重い罪だったんです。(中略)しかしそういうふうに重罪だった理由があります。それはやはり、詐欺など。サイコロに細工などして。詐欺を含む組織犯罪になりやすい。それから、他の犯罪に走る。これ、お金失ってしまいますからね。他の犯罪でお金を取り戻そうとする。そういう傾向があったからなんですね。で、現在でももちろん問題点があって、江戸時代と同じようにギャンブル依存症。それからマネーロンダリングが行われるのではないか。それともちろん暴力団の介入ですね。で、そういうようなことがありますので、もちろん政府としては、これにいろいろと新しい手を打とうとしていまして。そして、カジノ管理委員会を設置するとか。ギャンブル等依存症対策基本法。これも作りました。
で、それで解決するかどうかがよくわからないということなんです。で、その本来観光ってのは何なのかってことを考えてみると、本来の観光はその都市の自然環境だとか個性だとか。人だとか。そういう人、そういうモノに出会って新しい、こう衝撃を受けて、で、視野を広げるってことなんですよね。でも、このカジノの場合には、まずお金ってことなんです。で、地方よりも都市型に今、傾きつつあるという情報がありますよね。ですから、都市ではとにかくお金を儲けなければならないという、そこまで日本の財政って悪化してるんじゃないかなって思うと同時に、お金お金だけでいいんだろうか。というふうにも思います。

要旨をまとめると、
・日本国内で賭博は刑法によって違法とされているのでIRリゾート建設は問題だ。
・詐欺などの組織犯罪の温床となったり、お金を得るために犯罪に走る傾向があったりしたので、日本では江戸時代から賭博は違法とされてきた。
・現在の日本でもギャンブル依存症の問題やマネーロンダリング、暴力団の介入などが懸念される。日本政府はカジノ管理委員会やギャンブル等依存症対策基本法などを作って対応しているが、これで懸念事項が解決されるとは限らない。
・本来観光とは自然環境や個性、人などに出会い、衝撃を受け視野を広めるというものだ。カジノはまずお金ということになってしまうので、本当の観光とは言えない。
・日本の財政はカジノを作ってまでお金を稼がなければいけないような危険な状況にあるのではないか。
というものです。

しかしながら、
・刑法35条で「法令叉は正当な業による行為は罰しない」と定められており、実際に競馬や競艇といった公営ギャンブルは法律によって違法性が棄却されている。IRリゾートも同様の手法で違法性の問題をクリアする予定なので、田中氏の主張は事実とは言えない。
・江戸時代の日本の治安状況を根拠に現代日本の治安状況を説明することはできない。
・ギャンブル依存症やカジノ管理委員会といった現行施策を無効とする主張に根拠がない。
・田中氏の主張する「本来の観光」はあくまで田中氏個人の主観的な定義に過ぎない。また、IRリゾートは大型宿泊施設や大規模カンファレンスの会場としての側面を持ち、地域の観光産業を大きく促進させることができるため、カジノでお金稼ぎをすることが目的だとする主張は事実とは言えない。
・IRリゾートを設置する目的は日本の財政健全化ではないため、田中氏の主張は事実とは言えない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での田中氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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2、辺氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
辺氏は今回の報道で、以下のように述べています。

辺氏(抜粋):そうですね。まあある意味では、カジノ先進国といっても過言じゃないです。半世紀前からやってますからね。ですけどもね、そんなに外国人、お金使ってませんですよね。例えば17か所ぐらいあるんですけども、16か所が、いわば外国人専用。1か所だけですね、韓国人、出入りできるんですね。で、売上見ますとね、これ、16か所の売上と、韓国人が出入りできるカジノの売上とほとんど同じなんです。外国人使ってないんです。外国人といってもまあ、欧米諸国はあまり少なくてですね、中国人だとか、香港だとか台湾だとか。ここなんですね。で、結果はですね、韓国人の出入りする場所っていうのが、もう治安が悪くなり教育環境も悪くなる。ですから、その、人口のいわばその、離れがあってですね、結局あの、人口減少を招いてると言う。そう考えますとね、そんなにぼろ儲けできるような話じゃないんじゃないかと思うんですねこれは。

要旨をまとめると、
・韓国はカジノ先進国だが、国内16か所にある外国人用カジノの売り上げと国内1か所の韓国人用カジノの売り上げが同じくらいなので、観光用にカジノを作っても外国人はほとんど使わないことが分かる。
・カジノを作ると治安が悪くなり教育環境も悪化し、その結果人口減少を招く。ぼろもうけできるような話ではない。

というものです。

しかしながら、
・韓国人が韓国国内のカジノをよく利用するのは当然のことなので、外国人用カジノと国内用のカジノが同等の売り上げだから観光用に作るのは無意味という主張は事実に即したものとは言えない。
・日本はIR市場として非常に期待されており、
・マカオやシンガポールなどの先進国でカジノが設置された国々では設置によって人口の減少や治安、教育環境は悪化しなかったため、韓国のケースだけを以て治安の悪化を招くとする主張は事実に即したものとは言えない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での辺氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「治安の悪化などが懸念されるので横浜にカジノを置くべきではないという主張は納得できる」「横浜市長は約束を破っている」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「経済効果や観光へのプラスを考えれば横浜にカジノを設置すべきだ」「横浜市長は白紙としか言っていないので約束を破ったことにはならない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 韓国のGSOMIA破棄について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 防衛省の予算増額について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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