2020年12月6日 サンデーモーニング(中編)

2020年12月6日 サンデーモーニング(中編)

12月6日のサンデーモーニングのレポート中編、種苗法の改正について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】(要約)
12月2日水曜日・国内で開発されたブランド野菜などの種や苗を、海外へ不正に持ち出すことを禁じる種苗法の改正案がこの日、与党などの賛成多数で可決成立した。この改正法では、新しい品種の開発者が農水省に出願登録する際、栽培地域などが指定できるようになり、海外への不正持ち出しなど悪質な行為は刑事罰の対象になる。また農家が、収穫物から採取した種を次の栽培に生かす自家増殖をする場合にも、開発者の許諾が必要になる。しかしこれを巡っては、海外の企業に種などの権利が独占されてしまい、農家の負担が増える恐れもあり、懸念の声も上がっている。

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【コメンテーターによる解説】
関口宏 氏(以下関口氏):これなかなか表だっては議論されないんだけど、大きな問題ですよね。青木さん。

青木理 氏(以下青木氏):そうなんですね。だから専門家の人に僕も取材したんですけども、海外不正持ち出しっていうのは実は隠れ蓑っていうか、そちらにはあまり効果がなくて、今VTRにあったみたいに、自家採取っていうんですか。つまり1回作物を育てて、その作物から種を取ってまた次の年にそれを植えるっていう、F1という一代限りのヤツが主流なんですけども、この自家採取をしてらっしゃる農家がたくさんいらっしゃるらしいんですね。この種苗法が改正になってしまったことによって、種を買わなくちゃいけなくなってくると。しかもこれ、自家採取したら罰金取られるらしいんですね。そうなってくると、日本の地方の風景を支えてきた田園の小さな農家の人たちが本当に厳しい状況になっちゃうんじゃないか。一方で国際的な種子メーカーみたいなものが非常に儲かるようになっちゃうんじゃないかと。だから大きくいうと新自由主義的なものが農業までついに大きく囲い始めた、みたいなとらえ方をしてる人がいるんですね。だから今後の運用によっては、日本の農業ただでさえ食料自給率低いんですけども、大きな影響を与える可能性があるのでこの問題ちょっと注視していかないといけないですね。

関口氏:種、自家栽培が当たり前だっていう感覚が我々にはあるけど、いつの間か買うものになってるんだね、今の農家の人は。

青木氏:しかも肥料みたいなものとセットで売りつけられるんじゃないか、という恐怖を持ってる人もいるみたいですね。

【検証部分】
今回は種苗法改正を巡る報道を取り上げました。
今回問題となるのは、報道内容が種苗法改正を一面的にしか取り上げていない点です。

今回の報道では、VTR中に農家の負担が増加するという内容が伝えられました。また青木氏の発言からは、種苗法の改正により自家採取ができなくなり、農家を苦しめることになる、さらには日本の農業にも悪影響を与えると指摘しています。

しかしそもそも改正種苗法は、農家の利益を確保することを目的の1つとして制定された法律です。

現在自家採取を行うことができるのは、固定種とよばれる人工的な交配が行われていない種のみです。人工的な交配によって作られたF1種の種子は、自家採取したとしても同じ品質にはならないため、実質的には自家採取はできないものとなっています。

そしてこの固定種は、種苗法で栽培、持ち出しが規制されている種ではないため、ここで同じものとして論じるべきではありあません。固定種を栽培する農家にとって、種苗法の改正は何ら影響を与えるものではありません。

それに対して、F1とよばれる、人工的な交配によって作られる種子は、必ず毎回買わなければなりません。ですから農家にとっては、作物を高く売ることによって種の購入資金を回収しなければなりません。ブランド野菜などの作物であれば他の野菜に比べ高く売ることができますから、それは十分に可能です。
しかし現在、そのようなブランドが十分に保護されていない状況にあります。シャインマスカット、イチゴをはじめとするさまざまなブランドが海外に持ち出され、販売されています。このような海外流出、無断販売によってこれらの種を販売する利益が損なわれ、農家にとっては大きなダメージとなります。

このような現状を踏まえれば、改正種苗法は農家を苦しめるものではなく、むしろ農家の利益を保護するものとなっています。

日本の農業に対する影響を考えたときにも、このような理由から種苗法の改正は農業全体にとってプラスになることが分かります。さらに優良な品種の開発には多大なコストがかかります。そのようにして生産された品種を保護する制度を整えることで、日本での品種開発が可能になり、日本の農業を発展させることができます。

さらには、VTRで指摘されている、海外の種子メーカーに権利が独占されてしまう可能性が指摘されていますが、そのリスクについても客観的に検討する必要があります。
現在日本国内での品種登録は、7割以上が国内開発によるもので、外国企業による品種登録は比較的少数となっています。さらには改正種苗法も、外国企業のみを利するような制度にはなっていないため、そのようなリスクは低いと考えられます。

今回の報道では、種苗法改正の必要性やメリットにはほとんど焦点が当てられず、種苗法により農家が苦しめられ、日本の農業が打撃を受けるという指摘ばかりがなされていました。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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