TBS「サンデーモーニング」、2019年10月6日放送回の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① 「風を読む」にて日本社会の国際化について報道された部分
② トランプ米大統領のバイデン前副大統領の捜査要求について報道された部分
③ あいちトリエンナーレの補助金不交付について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
① 「風を読む」にて日本社会の国際化について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
ラグビーワールドカップ1次リーグで日本はサモアと対戦し見事勝利した。ラグビーでは日本国籍がなくても条件を満たせば代表資格を得られるため、メンバー31人中15人が外国出身選手である。日本代表選手のグローバル化はラグビーにとどまらず、今年1月に世界ランク1位になった大阪なおみ選手や、陸上100メートルで日本新記録を樹立したサニブラウン選手、NBAで日本人初のドラフト1巡目指名された八村塁選手も、外国人と日本人の両親に生まれ、彼らの活躍に日本中が熱い声援を送っている。
一方、未だ社会に残る差別や偏見によって、海外にルーツをもつことを理由にいじめの対象になっている人もいる。90年代には政治家から「日本人は単一民族(渡辺美智雄氏)」という言葉も飛び出したが、下地氏はもともと日本は多様性を持った民族だったと指摘している。また、日本で働く外国人労働者は過去最多となり、改正出入国管理法が施行されるなど、日本社会の国際化が急速に進みつつある。
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【コメンテーターの発言】
関口宏氏(全文):世界中がONE TEAMになってしまえばいいのになって今、そんな簡単なことではないのかもしれないけど、確かに日本の中変わってきましたね。日本ってのは割と、厳しかったでしょ。外国人の方がね、日本人に国籍をみたいなのはね。でもその辺の窓口もこれからも広げていかなきゃいけないのかななんて僕は思いますがどうでしょうか。
寺島実郎氏(全文):あの、今回の国会が始まった、その、所信表明演説で安倍首相がね、多様性を大事にするっていうことを盛んに言われてですね、一億総活躍って。額面通りに言えばもっともな話でですね、その通りだと。こういう時代の流れの中でね。だけど一方で今日本が見せてるのはですね、極めて偏狭なナショナリズムへの回帰っていうのかな。で、まあ自国利害の中心主義に世界がなってることに誘われるようにですね。でしかもですね、あらゆる議論の流れが国権主義だとか国家主義。多様性をもつっていうことは民主主義なんですよ。デモクラシーなんです。これには我慢がいるんですよ。いろいろと自分と宗教。あらゆるものが違う人をですね、許容しながら、一体になって進んでいこうって考えているわけです。ですからそういう意味でね、日本が本当にですね、多様性を目指すならね、何を変えていかなきゃいけないのかということについて本気に考えるべき時代に入ったんだなと思います。
大宅映子氏(要約):スポーツや金融関係などバリバリの人は目立つが、普通の労働者に対しても同じように違いを認めて共存する社会に日本が早くなってほしいと思う。
西崎文子氏(要約):どういうときに差別が出るのかを見ておかないと、弱い立場の人達に対して容赦ないところは残ると思う。この間ワシントンのアフリカ系アメリカ人の歴史と文化の博物館を見てきた。アメリカでアフリカ系の人たちは文化・音楽の分野で活躍をしてきたが、同時に彼らは差別も受けてきた。活躍しているときは良いが、アメリカ政府を批判したり差別に対して声を上げると早速叩かれる。そういうことはどこでも起こり得るので、そこもきちっと見ていかなければいけない。
荻上チキ氏(全文):そうですね、社会心理学ですとね、偏見や差別についての研究が随分盛んなんですけれども、その中にあの、接触理論っていうのがあるんです。これは、より多くの、例えば外国人の方とか、さまざまな多様なルーツの方と会って話をして。そうしたことを重ねれば重ねるほど偏見などが取り除かれていくっていう効果なんですね。これは、かつては直接会った効果だけが語られてたんですけども、最近はメディアを通じて知るっていうことも、この接触の効果があるというふうに言われてるんです。だからこういったスポーツ選手などの活躍を通じて接触をすることも大きな一歩ですし、と同時に問われるのはメディアなんですね。それを何か面白おかしく、何か特殊な人が頑張ってるって話じゃなくて、とても身近な生活の背景がそこにあって、日本国の住人として共に暮らしてるんだっていうところをちゃんと伝えていくっていうことが必要になる。最近だとメディアがむしろ、憎悪を煽るような報道や、あるいは放送や、出版をしてしまっていうようなところもあるので、そうしたような接触を促すような報道。そういったものも責任を持ってやっていく必要があるのかなと思います。
松原耕二氏:外国人の受け入れという意味では、日本は私は今二つの顔を持ってると思うんですね。一つはラグビーに代表されるアスリート達が多様化が進んで日本人の意識も変わってるっていうのが一つの顔。もう一つはその一方でやっぱり難民の受け入れに消極的であったり、入管なんかでは外国人に対するやっぱり抑圧みたいなものが報告されていたり。あるいは外国人労働者の拡大の議論を見ていて去年から今年にかけてはですね、やっぱり家族の帯同はまだほとんど許すという感じになってないわけですね。そのもう一つの顔がやっぱりあると思うんですね。そういう意味では、例えば10年ほど前にはですね、自民党の中で融資で、例えばすごく開かれた移民社会を作ろうなんていう呼びかけも提言があったりもしたんですね。でもその自由さってのは今は大分失われていて。政権は、どっちかと今の政権は逆ブレして、保守層への意識した言動ばかりが目立つというのが今特徴だと思うんですね。ですから、二つの顔があるけれども、それをどうやってまあ、一つにしていくのか。特にまあ、政治と行政の分野がやはり僕は意識は遅れてると思っていると。国民に比べてもね。だからそれを一つの意識にしていくという努力を進めない限り、やはり、ラグビー型の社会っていうのは、まだ難しいだろうなという気がしますね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の5点です。
1、関口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、萩上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
5、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
それぞれ順を追って解説します。
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1、関口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
関口氏は今回の報道で、以下のように述べています。
関口氏(抜粋):世界中がONE TEAMになってしまえばいいのになって今、そんな簡単なことではないのかもしれないけど、確かに日本の中変わってきましたね。日本ってのは割と、厳しかったでしょ。外国人の方がね、日本人に国籍をみたいなのはね。でもその辺の窓口もこれからも広げていかなきゃいけないのかななんて僕は思いますがどうでしょうか。
要旨をまとめると、
・世界中がスポーツのように一つになればよい、簡単ではないが日本国内は変わってきた。
・日本は外国人に国籍を与えないなど厳しい社会だったが、そういった窓口もこれからは広げていくべきだ。
というものです。
しかしながら、
・日本のスポーツ選手の多様性は、もっと外国人に日本国籍を与えていくべきだという主張の根拠にはならない。
・世界中の文化、民族、国家などを一つにまとめるべきだという主張や日本国籍取得は厳しくあるべきだという立場を「厳しい社会」とする主張は、政治的に公平ではない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での関口氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。
寺島氏(抜粋):あの、今回の国会が始まった、その、所信表明演説で安倍首相がね、多様性を大事にするっていうことを盛んに言われてですね、一億総活躍って。額面通りに言えばもっともな話でですね、その通りだと。こういう時代の流れの中でね。だけど一方で今日本が見せてるのはですね、極めて偏狭なナショナリズムへの回帰っていうのかな。で、まあ自国利害の中心主義に世界がなってることに誘われるようにですね。でしかもですね、あらゆる議論の流れが国権主義だとか国家主義。多様性をもつっていうことは民主主義なんですよ。デモクラシーなんです。これには我慢がいるんですよ。いろいろと自分と宗教。あらゆるものが違う人をですね、許容しながら、一体になって進んでいこうって考えているわけです。ですからそういう意味でね、日本が本当にですね、多様性を目指すならね、何を変えていかなきゃいけないのかということについて本気に考えるべき時代に入ったんだなと思います。
要旨をまとめると、
・安倍首相は多様性を大事にすると言っているが、一方で今日本が見せているのは極めて偏狭なナショナリズムへの回帰だ。日本は自国中心主義、国権主義、国家主義に陥っている。
・多様性とは民主主義である。これには自分と主義主張の違う人を受け入れる我慢が求められるので、日本が本当に多様性を目指すならナショナリズム的傾向を変えるべきだ。
というものです。
しかしながら、
・日本政府は国際社会や経済協力などにおいて大きな存在感を示しており、日本がナショナリズム・自国中心主義へ回帰しているという主張は明らかに事実に反している。
・日本は言論の自由や参政権が尊重される民主主義国家であり、またこうした権利以上に国家の権力を拡張すべきだという政府の動きも存在しない。したがって国権主義・国家主義に陥っているという主張には全く根拠がなく、事実に即しているとは言えない。
・日本社会に主義主張の違う人を受け入れる我慢がないとする主張や文化的な多様性がないとする主張には何ら客観的根拠がない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日本は異なる文化や考えを持つ外国人を受け入れられず、国籍を与えないなどと閉鎖的な社会だ」「日本は異なるルーツを持つ外国人をどんどん迎えて共存すべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「訪日外国人観光客も増加しており、外国人を拒絶しているわけではない」「文化の違う難民受け入れで治安が悪化したヨーロッパなど、『サラダボウル』が常に正解とは限らない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
① 「風を読む」にて日本社会の国際化について報道された部分における
検証4「萩上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
および
検証5「松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
ならびに
② トランプ米大統領のバイデン前副大統領の捜査要求について報道された部分
については、中編の報告をご覧ください。
③ あいちトリエンナーレの補助金不交付について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
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