2019年12月8日 サンデーモーニング(中編)

2019年12月8日 サンデーモーニング(中編)

サンデーモーニング、2019年12月8日分の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
① 米国による各国への国防費増加要求について報道された部分
② 「桜を見る会」の文書破棄について報道された部分
③ 「風を読む」にて中村哲氏の死去について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
② 「桜を見る会」の文書破棄について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
金曜日、野党はマルチ商法を展開していたジャパンライフ元会長と安倍首相の父である安倍晋太郎元総理との接点について追及した。1984年、安倍晋太郎外務大臣が国連本部を訪問した際、山口元会長が同行していたことがわかっており、外務省担当者は名簿に当時秘書官だった安倍総理の記載があることを明らかにした。安倍総理は山口氏と個人的な関係は一切ないと述べている。
1956年当時、桜を見る会の招待者名簿は国立公文書館に保管されていたが、安倍政権になって1年未満で廃棄されることになっていた。また、内閣府が廃棄したという資料のバックアップデータが最大8週間残っていたことを菅官房長官が認めた。災害などの場合を除き公文書でないと説明したが、元公文書管理委員会三宅弁護士は「復元できるなら公文書に該当する」と述べている。
野党は40日間の会期延長を求めているが、与党側は応じない方針である。

【アナウンサーによるパネル説明】
・1969年、佐藤総理とニクソン米大統領による沖縄返還合意において、「有事の際は沖縄に核兵器の際持ち込みを認める」という密約があったことが30年以上経って機密解除された公文書でわかった
・バックアップデータが残っている可能性が高い5月21日に共産党の国会議員が資料提供を求めたが内閣府は破棄したと回答していた

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【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(全文):これはあの常識に帰って考えたときにね、税金を使ってやった行事に関する文書っていうのは全部行政文書であり公文書だと我々は思うわけですね。で、行政文書じゃないって誰が判断するのって言ったら、つまり官邸だったわけですね。で、そこでね、コトの本質よく考えてみると、で、つまりですね、我々は官僚主導の政治よりも政治主導の政治の方が良いって言ってですね、政治主導へって流れ作ってそれが官邸主導という形でね、人事さえも中心の人事は官邸が握りって流れを作ったわけですね。これ安倍内閣で。で、そのことによってね、日本の政治のレベルが官邸レベルの政治になっちゃってるわけですよ。で、それより一歩二歩高い多くの英知が結集した政治という方向に行かないっていうかですね、一方で1億総活躍なんか言ってるんですけども、あの中学校のホームルームのですね、キャッチフレーズかっていうくらいのですね、なんかほとんどブラックジョーク化してきた政治っていうのかな。我々自身もそういう政治に慣れてるもんだから、なんか期待値がどんどんどんどん下がってきてね、まあ仕方がないんじゃないかってくらいの空気になっていることが怖いですね。

大宅映子氏(要約):政治行動に関しての情報はすべて国民のもの。やっていることに関して国民に説明する責任がある。情報がなかったら責任が取れないのに、それを放棄している。一番大事なのは透明性。

安田菜津紀氏(要約):バックアップデータが意味をなさないのであれば、最初から復元する気もないとみなされても致し方ないと思う。名簿廃棄の担当職員が障害者雇用の短時間勤務の職員だったという説明があるが、本質の部分は不明瞭なままでなぜ担当者についてだけ詳細な説明ができるのか。「いつかほとぼりが冷めるだろう」という扱いを国民が受けていいのかどうか問われていると思う。

涌井雅之氏(要約):米国の国立公文書館には「過去の遺産は将来の実りをもたらす種」とある。アメリカでは、大統領執務室での発言はすべて音声で記録され保存が義務付けられている。日本も公文書管理法があり同じようなことが書かれている。公文書管理は国民主権という民主主義を守るための基本。そこができてないのは非常に残念。

青木理氏(全文):そこに沖縄密約の話がありますけれど、僕ら新聞記者がもう、そうなんですけれども、要するに日米のその密約が良かったか悪かったかという問題は別としてね、記録がみんなアメリカの公文書で明らかになってきたわけですよ。で、今、涌井さん申し上げましたけど、アメリカは、例えば大統領のその卓上のカレンダーも保存するっていうんですね。なぜならそこにはいろんな記録が入っているからと。最近僕知ったんですけど、トランプ大統領ってのはなんか公文書をね、文書を破いちゃうらしいんですよ。読み終わると。そうすると、公文書官の人たちが、集めて復元してるらしいんですよ。記録で残さなくちゃいけないから。いくら大統領にお願いしても、破れちゃうんだけど、それをしつこく復元するらしいんですね。つまり、まさに本当に公文書ってものに対する意識っていうのが全然違う。日本の場合は敗戦時もそうですよね。日本中でその焼却しちゃったわけですね。で、これなぜかといったら戦犯追及を恐れてたってこともあったらしいんですけれども、結果として密約なんかの文書は全部アメリカで。で、日本は日本から全く出てこないっていうのは一体これ、本当に恥じるべきことだと思うんですね。で、ましてや今ようやく公文書管理法ができたのに、今度は改ざんするわ破棄するわ、そもそも作らないわ。だから僕これ本当にもうあちこちで申し上げているんですど皮肉でも何でもなく、これが果たして美しい国だろうかと。あるいはこれ誰がみても嘘ですよね。あるいは誤魔化しですよね。それを子供が見ていて、この子どもに道徳教育をしようっていうこの政権の今の在り様。道徳教育が必要か必要じゃないかってのは議論があるところでしょうけれども、いやあこの政権の今の状況でそんなこと本当におっしゃれるんですかって本当に問いただしたいですよね。
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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。

寺島氏(抜粋):これはあの常識に帰って考えたときにね、税金を使ってやった行事に関する文書っていうのは全部行政文書であり公文書だと我々は思うわけですね。で、行政文書じゃないって誰が判断するのって言ったら、つまり官邸だったわけですね。で、そこでね、コトの本質よく考えてみると、で、つまりですね、我々は官僚主導の政治よりも政治主導の政治の方が良いって言ってですね、政治主導へって流れ作ってそれが官邸主導という形でね、人事さえも中心の人事は官邸が握りって流れを作ったわけですね。これ安倍内閣で。で、そのことによってね、日本の政治のレベルが官邸レベルの政治になっちゃってるわけですよ。で、それより一歩二歩高い多くの英知が結集した政治という方向に行かないっていうかですね、一方で1億総活躍なんか言ってるんですけども、あの中学校のホームルームのですね、キャッチフレーズかっていうくらいのですね、なんかほとんどブラックジョーク化してきた政治っていうのかな。我々自身もそういう政治に慣れてるもんだから、なんか期待値がどんどんどんどん下がってきてね、まあ仕方がないんじゃないかってくらいの空気になっていることが怖いですね。

要旨をまとめると、
・税金を使ってやった行事に関する文書は全て行政文書であり公文書だというのは常識だ。
・コトの本質は官僚主導から政治主導への転換で、安倍政権は官僚の人事の中心を握ることになった。これが日本の政治レベルを官邸レベルに落としてしまった。
・一億総活躍などと言っているが、中学校のホームワークのキャッチフレーズのようなブラックジョーク化した政治にしか見えない。政治への期待値が下がることが心配。

というものです。

しかしながら、
・「公文書」や「行政文書」の定義や保存期間、処分方法は公文書管理法によって規定されており、「税金を使ってやった行事に関する文書は全て行政文書であり公文書」という主張は事実に即していない。
・官僚主導から政治主導への転換を進めたのは民主党政権(当時)であり、安倍政権によるものだという主張は事実に即していない。また、日本の政治レベルが「官邸レベル」に落ちたとする主張は政治的に公平とは言えない。
・一億総活躍社会の推進と公文書の管理は何ら関係のない問題である。また「中学校のホームワークのキャッチフレーズのようなブラックジョーク」という主張はただの誹謗中傷であり政治的公平性を欠く。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):ましてや今ようやく公文書管理法ができたのに、今度は改ざんするわ破棄するわ、そもそも作らないわ。だから僕これ本当にもうあちこちで申し上げているんですど皮肉でも何でもなく、これが果たして美しい国だろうかと。あるいはこれ誰がみても嘘ですよね。あるいは誤魔化しですよね。それを子供が見ていて、この子どもに道徳教育をしようっていうこの政権の今の在り様。道徳教育が必要か必要じゃないかってのは議論があるところでしょうけれども、いやあこの政権の今の状況でそんなこと本当におっしゃれるんですかって本当に問いただしたいですよね。

要旨をまとめると、
・ようやく公文書管理法ができたのに、今度は改ざんや破棄、そもそも作らないといった問題が起きている。これは皮肉でもなんでもなく「美しい国」とは言えない。
・桜を見る会の文書管理問題は誰が見ても嘘だ、誤魔化しだ。これを子どもが見ている。こんな政権の状態で子どもに道徳教育をすることはできない。

というものです。

しかしながら、
・公文書の作成、改稿や破棄については公文書管理法で規定されており、違法性のない問題について「改ざん、破棄、作らない」というレッテルを張る青木氏の主張は事実に即していない。また、「美しい国とは言えない」という主張は青木氏の個人的な感想に過ぎない。
・桜を見る会の文書管理に違法性があるという主張には根拠がない。またこれを「嘘だ、誤魔化しだ」という言葉を用いて非難する青木氏の主張は明らかに政治的公平性を欠く。
・公文書管理の問題と道徳教育改革の是非は全く関係のない問題であり、これらを一緒くたに議論する青木氏の主張は事実に即していない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「安倍政権が桜を見る会の招待者名簿を破棄したのは公文書の扱いと言う点で問題だ」「与党は野党の会期延長に応じて真摯に対応すべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「公文書管理法に基づいており何ら違法性はない」「野党は桜を見る会に執着していないでもっと重大な問題に時間を割くべきだ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。中編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
③ 「風を読む」にて中村哲氏の死去について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

① 米国による各国への国防費増加要求について報道された部分
については、前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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