2019年7月21日 サンデーモーニング(前編)

2019年7月21日 サンデーモーニング(前編)

TBS「サンデーモーニング」 2019年7月21日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 貿易上の優遇措置廃止と徴用工問題による日韓関係悪化の現状について報道された部分
② 沖縄県が辺野古への基地移設問題で国を提訴した件について報道された部分
③ 「風を読む」にてトランプ米大統領の「人種差別発言」について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 貿易上の優遇措置廃止と徴用工問題による日韓関係悪化の現状について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
①輸出規制
日韓対立が深刻化している。文大統領は「過去の問題と経済問題を関連させたことは両国関係発展の歴史に逆行する(字幕)」と日本を批判した。これに対し、世耕経産相は「文大統領のご発言にあるような指摘は全く当たらない」と反論した。
韓国で日本製品の不買運動が広がっている。中央日報は文政権を批判した記事を掲載。これに対し韓国大統領府は異例のメディア批判を行った。規制の即時撤回の要求について文大統領は与野党と共同声明を発表したが、最大野党は文政権を批判した。
②徴用工問題
日本は仲裁委員会開催手続の最終期限に韓国側は応じなかった。これを受けて河野外相は南官杓駐日大使を呼び強く抗議したが、南大使は韓国側の解決策を改めて提案。これに対し河野外相は「極めて無礼だ」と非難した。トランプ大統領は日韓問題に関し「もし彼らが私を必要とするなら仲介する」と初めて言及した。

【アナウンサーによるパネル説明】
・韓国政府が日本への態度を硬化させている背景には、政権支持率の上昇がある
・輸出規制に対する韓国政府の対応に関する世論調査では、39%が「適切」、33%が「弱すぎる」と回答
・韓国では来年4月に総選挙が控えており、国民世論を意識していると見られる

【コメンテーターの発言】
姜尚中氏(要約):韓国側は8月24日までに協定解消の通告をしない限り自動延長されるGSOMIAを日本に対する交渉材料にしたいという節があるが、これに触れるとアメリカの逆鱗に触れる。アメリカはイランの問題で有志連合の参加関しボルトン氏が日本と韓国に来る。韓国が積極的に参加し日本側が消極的だとすれば、仲裁をするときのアメリカの心証が変わってくるかもしれない。トランプ大統領は取引と考えて、有志連合への参加を仲裁の交渉材料にすると思う。

谷口真由美氏(全文):そうですね、あの、結局これ。対立して、最終的に誰が何の得をするんだろうかってことを考えると、この行きつく先が、落としどころが見えてるのかどうかっていうのがすごく外交をみてて感じるところで。で、昔から外交って、仮想敵を作ってですね、自分とこの国の人気を、人気とか不満を外国に向けるっていうのはよくやってきた常套手段ではあるんですけど、こんなに近くの国とずーっと揉めてて、何か先にいいことありますかっていうことですよね。それと、両国の市民の感情をやっぱ煽って、支持率を上げようってところなんかも、そんな狡いやり方で上げるなよっていう気はするんですよね。だからやっぱり、どうやって仲良くっていうか、うまくやっていくかっていうことを考えるのが政治なんじゃないのかなっていう気が本当にこの頃します。

青木理氏(全文):物事を結構客観的に見なきゃいけないと思ってて、そこにフリップが出ててね、韓国の世論と選挙を意識してるんじゃないかって話がありましたけれど、今回の輸出規制も、参議院選挙、今日投票日ですけども、公示直前にやっていて、で、政権支持層も野党支持層も、今回の政権の、その措置は妥当だってのが結構多いんですよ。つまり、両国の政権が国民に向けて、こう隣国に対して強く出るっていうことで、こうなんかどうも支持基盤を固めようとしているってっていう節が見えるっていうのが一つ。それから、これ大本で言うと1965年の日韓国交正常化に伴う請求権協定で解決済みじゃないかって言ってるんです。それは一理あるんだけれども、しかし、その個人の請求権はまず消えないっていうことと、当時の韓国っていうのは軍人出身の独裁政権だったんですね。で、ところが冷戦に対してだったから、共産主義国と対峙するために、日本・アメリカの意向もあって、日本の保守政権と韓国の軍事独裁政権がある種政治的妥協しちゃったんです。そのときに、人権問題とかみんな蓋しちゃったんですね。いろんな細かい話を。それが今になって、韓国が民主化されて噴き出してきてるわけですよ。だから日本だけが、しかも日本の過去の悪行って言ったらあれだけど、植民地支配って問題があるんだから、日本がもう解決済みだって言ってふんぞり返って済む問題では僕はないと思うんですよ。だから、両国の首脳がきちんと膝を詰めてかつての政治的妥協をさらにこう、上書きするというか、解きほぐすようなことをしない限り、これはちょっと解決しないですよね。だから両政権の本当に努力にかかっているとしか言いようがないですよね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
谷口氏は今回の報道で、以下のように述べています。

谷口氏(抜粋):対立して、最終的に誰が何の得をするんだろうかってことを考えると、(中略)落としどころが見えてるのかどうかっていうのがすごく外交をみてて感じるところで。で、昔から外交って、仮想敵を作ってですね、自分とこの国の人気を、人気とか不満を外国に向けるっていうのはよくやってきた常套手段ではあるんですけど、こんなに近くの国とずーっと揉めてて、何か先にいいことありますかっていうことですよね。それと、両国の市民の感情をやっぱ煽って、支持率を上げようってところなんかも、そんな狡いやり方で上げるなよっていう気はするんですよね。だからやっぱり、どうやって仲良くっていうか、うまくやっていくかっていうことを考えるのが政治なんじゃないのかなっていう気が本当にこの頃します。

要旨をまとめると、
・この対立外交で最終的に誰が得をするのかが分からない。落としどころが見えない。こんな近くの国と揉めて先にいいことはない。
・仮想的に不満を逸らすのは外交の常とう手段だが、両国政府ともに市民感情を煽って支持率を挙げようとするのは狡いやり方だ。

というものです。

しかしながら、
・貿易上の優遇措置廃止は日本政府が安全保障上の理由で貿易上の優遇措置から韓国を外すというもので、目的は日本の安全保障上の問題解消である。今回の会談は日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置に韓国側が応じなかったことへの抗議であり、目的は徴用工問題の解決である。以上より、「現在の日本政府の措置に目的や利益が存在しない」という谷口氏の主張は事実に即していない。また韓国寄りの立場に一方的に偏っており政治的に公平とも言えない。
・日本政府の対応は安全保障のため、若しくは国際問題の解決のため必要だから行われたものであり、日本政府が国民感情を煽って支持率を挙げようとしている、という谷口氏の現状分析は明らかに事実に基づいていない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での谷口氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):1965年の日韓国交正常化に伴う請求権協定で解決済みじゃないかって言ってるんです。それは一理あるんだけれども、しかし、その個人の請求権はまず消えないっていうことと、当時の韓国っていうのは軍人出身の独裁政権だったんですね。で、ところが冷戦に対してだったから、共産主義国と対峙するために、日本・アメリカの意向もあって、日本の保守政権と韓国の軍事独裁政権がある種政治的妥協しちゃったんです。そのときに、人権問題とかみんな蓋しちゃったんですね。いろんな細かい話を。それが今になって、韓国が民主化されて噴き出してきてるわけですよ。だから日本だけが、しかも日本の過去の悪行って言ったらあれだけど、植民地支配って問題があるんだから、日本がもう解決済みだって言ってふんぞり返って済む問題では僕はないと思うんですよ。だから、両国の首脳がきちんと膝を詰めてかつての政治的妥協をさらにこう、上書きするというか、解きほぐすようなことをしない限り、これはちょっと解決しないですよね。だから両政権の本当に努力にかかっているとしか言いようがないですよね。

要旨をまとめると、
・日韓請求権協定では個人請求権は消えておらず、日本はこれを賠償する責任がある。
・日韓請求権協定は韓国が軍事独裁政権時代に締結されたもので、政治的妥協の産物である。
・日本は韓国を植民地支配した過去があるため、解決済みだなどとふんぞり返るべきではない。
・両国首脳が政治的妥協をして徴用工問題の解決を図るべきだ。

というものです。

しかしながら、
・個人請求権が「消滅していない」ことと、個人請求権問題が「解決していない」かどうかは全くの別問題である。日韓両国は日韓請求権協定で互いに賠償に関する外交上の権利を放棄し、また最終的かつ完全に解決したことを確認している。したがって、個人が請求権を主張できても、その主張は認められず、日本が補償に応じる義務はないとされる。
・また協定締結時、「個人への補償を政府に委託する」という韓国側の提案を受け入れ日本は韓国政府に対して補償をしていることからも、個人賠償の問題は国際問題としては解決されているというのが事実である。
・背景の如何に関わらず条約の内容が優先されることは当然のことで、独裁政権によって締結されたという韓国の国内事情は、国際条約として締結されている日韓基本条約の中身に何ら影響を与えるものではない。
・同様に、韓国併合という過去は、日韓基本条約を無効にするものではない。
・「日本はふんぞり返るべきでない」などと一方的に韓国側の立場に立ち、韓国に妥協すべきだとする主張は政治的公平性を欠く。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日韓外交の最近の問題は選挙目当てで中身がない」「日韓が妥協し合って問題を解決し友好関係の構築に努めるべき」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「日本は安全保障上の懸念から優遇措置廃止を行い、徴用工問題は韓国側の国際法違反が問題である。選挙目当てではない」「安全保障も国際法違反も国家として妥協してはいけない重大な問題だ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 沖縄県が辺野古への基地移設問題で国を提訴した件について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 「風を読む」にてトランプ米大統領の「人種差別発言」について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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