TBS「サンデーモーニング」、2020年1月12日放送回の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① 台湾の選挙における蔡英文総統の圧勝について報道された部分
② イランによる民間機撃墜について報道された部分
③ IR汚職問題の進展について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② イランによる民間機撃墜について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
8日、イランの首都テヘラン近郊でウクライナ国際空港のボーイング機が墜落し、176人が死亡した。この事故をめぐり浮上したのが「イラン軍の誤射」疑惑だった。当初イラン側は否定していたが、11日に一転して撃墜したことを認めた。ザリフ外相は犠牲者への哀悼と謝罪を表明する一方、Twitterでアメリカを非難。旅客機墜落の4時間前、イランはアメリカ軍に攻撃を行い、両国は極度の警戒状態にあった。
8日未明、イランはアメリカ軍によるソレイマニ司令官殺害の報復攻撃に踏み切った。アメリカがソレイマニ司令官を殺害したきっかけは、イランによるイラクのアメリカ軍基地への攻撃だった。2日前、アメリカ軍はイラクのシーア派民兵組織への報復攻撃を行い25人を殺害。これに抗議した人たちがバグダットのアメリカ大使館を襲撃した。これに激怒したトランプ大統領は、米軍幹部らから提案された複数の報復手段の中から司令官殺害を選択した。「戦争が始まるのでは」と世界が固唾を飲んで見守るなか、トランプ大統領はその後の演説で報復的な軍事行動はとらず、さらなる経済制裁を課すことを表明。トランプ大統領が軍事報復を見送った理由について共同通信は①イラン側から攻撃直前に発射通告を受けたこと、②スイスの駐イラン大使に「アメリカがイランの報復攻撃に反撃しなければイランは攻撃を継続しない」と伝えていたことをアメリカ政府に届けるよう伝えていたことを挙げている。全戦争を避けたい両国の思惑が一致した形となったが、イランやイラクのシーア派は司令官殺害に強い不満が残っているとされ、火種はくすぶっている。
【アナウンサーによるパネル説明】
・英、仏、独を中心とするアメリカの同盟国と、中、露、イランが対立する構図がある
・安倍総理が中東に出発し、中東情勢の安定化に向け日本ならではの外交を展開すると述べている
・サウジアラビアとUAEはイランと距離を置く関係の国で、オマーンは中立の立場を保っている
・海自P3C哨戒機部隊が中東に出発し、来月には護衛艦一隻も中東へ派遣予定
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【コメンテーターの発言】
藪中三十二氏(全文):ほんとですね、やっぱり一番怖いのは、もう本当に一つ間違えば、全面戦争になったかも分からないというところですよね。その危険っていうのがあって。その結果としてですね、例えばああいう、飛行機が誤って撃墜されると。あれ176人亡くなりましたんですけどああいうことも起きるんだと。あの中に五十数人のカナダ人とありましたけど、あれイラン系の人なんですね。エドモントっていう所に住んでる人達で。大学生が多かったんです。友達が結婚するっていうんでイランにわざわざお祝いに行って。その人たちがみんな帰りの飛行機で死んでしまった。そんな悲劇も起きるんですよね。で、今回危ないのはトランプさんがパッとこう反応するんですね。一番反応したのは大使館が襲撃されたと。あれをテレビで見ていてですね、もっとやれっていうことになったんですね。それについて誰も反対しないと。まあまあ大統領というふうに、そういう人が今いないということです。今回救ったのはスイスでしてね、スイスが間に立ってやり取りをやったと。そうするとイランがミサイル攻撃やりましたけれども、5分間の後に、もう既にワシントンのホワイトハウスに対して、これ以上もうやらないからというメッセージが届いたと。それでまあ一段落したんですけれども、今回起きたのは何かというと、結果的にはアメリカが孤立したと。世界的にはね。そこにある、イギリスフランスドイツとありますけど、世界中がやっぱりアメリカちょっと危ないなと。これから何が起きるかですけれどもね、イランは核開発を引き続きもっとやっていくぞということになっています。そういう中で果たして誰がですね、うまくイランとアメリカ交渉のテーブルにつけることができるのかどうか。その間にまあ、中東の各地でですね、またいろんなことが起きるかもわからない。そうするとまたトランプさんがいろいろ反応するか分からない。これ本当に目が離せない。だから日本もですね、調査云々というので行くんですけれどもね、非常に危ないところだと。外交努力もっとせないかんということになっていきますですね。
仁藤夢乃氏(全文):ニュースでは、国のトップの言動に注目が集まりがちで、その忘れられがちなことだと思うんですけど、そのミサイルが落ちてくるかもしれない地域に暮らしている方々がいて、現地で活動しているNGOのスタッフの日本人の方も、今回緊張が高まるなかで、国外退避せざるを得なくなったり、その実際に支援を必要としている方への影響というのも出てきていると思うんですね。国と国との争いがあったときに、いつも痛みを負うのは弱い立場に置かれた人々だということも忘れてはいえないと思っています。
姜尚中氏(要約):1988年、アメリカは290名乗ったイランの旅客機をミサイルで爆破している。あの時の問題はずっとしこりが残っている。イランは早くこれを認めて、逆に反米のためのプロパガンダに使った方が良い。僕は、戦争は起きないと思っている。トランプは余程のことがない限り戦争しない。今回はある種の出来レースでかなり管理された紛争になっている。イランの中には、シーア派の動きに否定的な人達もいるのではないか。意外とシビリアンコントロールが効いてトランプが再選されれば、北朝鮮のように直接交渉もあり得るのではないか。
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以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、薮中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、薮中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
薮中氏は今回の報道で、以下のように述べています。
薮中氏(抜粋):今回救ったのはスイスでしてね、スイスが間に立ってやり取りをやったと。そうするとイランがミサイル攻撃やりましたけれども、5分間の後に、もう既にワシントンのホワイトハウスに対して、これ以上もうやらないからというメッセージが届いたと。それでまあ一段落したんですけれども、今回起きたのは何かというと、結果的にはアメリカが孤立したと。世界的にはね。そこにある、イギリスフランスドイツとありますけど、世界中がやっぱりアメリカちょっと危ないなと。これから何が起きるかですけれどもね、イランは核開発を引き続きもっとやっていくぞということになっています。そういう中で果たして誰がですね、うまくイランとアメリカ交渉のテーブルにつけることができるのかどうか。その間にまあ、中東の各地でですね、またいろんなことが起きるかもわからない。そうするとまたトランプさんがいろいろ反応するか分からない。これ本当に目が離せない。だから日本もですね、調査云々というので行くんですけれどもね、非常に危ないところだと。外交努力もっとせないかんということになっていきますですね。
要旨をまとめると、
・今回アメリカを救ったのは間に立ってやり取りしたスイスで、イランがミサイル攻撃を実施した5分後にホワイトハウスには「もうこれ以上やらない」というメッセージが届いていた。
・結果的に世界から孤立したのはアメリカだ。イギリスフランスドイツを始め世界中がアメリカの危険性を認識した。
・イランが核開発を再開し、トランプ米大統領も何をするかわからないので、日本は今調査と称して自衛隊を派遣するのではなく外交努力をするべきだ。
というものです。
しかしながら、
・スイスはイラン側のメッセージを仲介したに過ぎず、衝突回避はイランとアメリカ双方の妥協によって為されたものである。
・英仏独をはじめとする関係諸国はイランとアメリカの双方に自粛を呼びかけはしたが、今回のスレイマニ暗殺などについては直接的にトランプ米大統領を批判することしていない。またアメリカが世界から孤立しているという主張には一切根拠がなく、国際社会におけるイランとアメリカの扱いを鑑みれば明らかに事実に反している。
・日本の海上輸送の要であるシーレーンの安全確保のための調査は中東情勢が不安定な今だからこそ必要なものである。またこの自衛隊派遣は外交努力と共存し得る。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「スレイマニ暗殺を始め、アメリカの行動は地域を不安定にするものだ」「イランとアメリカの双方が正面衝突を回避しようとしているので衝突は起きないだろう」という立場に立った意見ばかりが出てきました。
ですがこの問題に関しては「飛行機の撃墜やミサイル発射など、イラン側が問題を複雑化している」「些細なことがさらなる情勢の悪化を引き起こす可能性がある」といった反対の意見があります。
にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。中編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
③ IR汚職問題の進展について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
① 台湾の選挙における蔡英文総統の圧勝について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。