2020年6月17日 報道ステーション

2020年6月17日 報道ステーション

6月17日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・様々な論点を取り上げた放送であったか

まずは放送内容を見ていきます。
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【スタジオ】
小木逸平アナウンサー:こちら、ご覧ください。昨日、北朝鮮が爆破しました南北の連絡事務所なんですが、北朝鮮メディアが非常に大きな音とともに爆破されるその瞬間の様子を公開しました。もうもうと煙が立っているのも分かります。そしてビルの壁が崩れていく様子もはっきりと捉えたこの映像を出しているわけですね。更に北朝鮮は金正恩委員長の妹・与正氏が韓国の文在寅大統領について浅はかだと非難する談話を出しまして軍事境界線付近での軍事演習の再開も発表するなど強硬姿勢を強めています。

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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):最近はミサイルを発射しても動画は公開しなかった北朝鮮。それが、今回は…。

(朝鮮中央テレビ ミサイル発射時の映像)

ナレ:昨日、爆破された南北共同連絡事務所。その瞬間映像を公開しました。

朝鮮中央テレビ『今回の“懲らしめ”は我々の最高指導者をけなした連中と反省の意識もない連中に、罪の代価を払わせるための最初の行動だ』

ナレ:強硬姿勢はこれだけにとどまらず南北融和の象徴であるクムガンサンやケソン工業団地への軍部隊の展開を決め軍事境界線付近で軍事演習を再開すると突きつけたのです。これらは3回目の南北首脳会談での共同宣言を反故にしかねないものです。つい2日前韓国の文在寅大統領は…。

文在寅大統領『長い分断と戦争の危機を乗り越えた今の南北関係を再び中断させてはなりません』

ナレ:対話を呼びかけましたが共同連絡事務所の爆破はこの翌日のことでした。爆破を指示したとされるのが金正恩委員長の妹・与正氏。今日、出した談話も厳しい言葉を並べ立てたものでした。

金与正第一副部長の談話『大統領の演説に嫌悪感を禁じ得ない。くずの連中が働いたビラ散布行為とそれを黙認した南朝鮮当局の行為は美化した言葉でうやむやには出来ない。邪悪な言葉づかいで目の前の危機を免れる。実に浅はかで愚かな考えである』

ナレ:そして、韓国側からの大統領特使を派遣するという提案も不純な提案だと拒否しました。ここまで言われれば、韓国もさすがに黙ってはいられません。

韓国大統領府『これまで南北首脳間で積み上げた信頼を根本的に傷つける行為であり、北のこのような分別できない言行をこれ以上許さないとはっきり警告する』

韓国国防省『もし北朝鮮が軍事度行動に出た場合、北は必ずその対価を支払うことになる』

ナレ:強気の姿勢を見せますが北朝鮮問題を担当する統一省のトップが今日、突然辞意を表明するなど混乱も見られます。高まる南北間の緊張。北朝鮮の狙いを朝鮮労働党の元幹部はこのように分析します。

朝鮮労働党元幹部『この2年間米朝や南北首脳会談などで人民の期待が大きくなり、韓国とアメリカに対する幻想ができてしまった。そのガス抜き作業である。(Q.幻想とは?)生活が苦しい人民は南北や米朝交渉に関心が高い。しかし実際に得られたものはない。その責任は金委員長にあるという世論が広まり体制維持の危機を感じた』

ナレ:南北首脳の初めての会談から20年。両国の関係は冷え切ってしまうのでしょうか。元幹部はそうならないとみています。

朝鮮労働元幹部『本音はアメリカに依存せず民族同士でやろうという意味。(Q.挑発はいつまで続く?) 北朝鮮が事態をエスカレートさせて人民の意識を入れ直し、2カ月後は和解モードに切り替えると思う。軍事的挑発は自滅を意味するのでそれはあり得ない』

【コメンテーターによる解説】
徳永有美アナウンサー:ここ数日で本当に緊張関係が高まっているような気がするんですけれどもそういった中で日本は北朝鮮とどのように向き合っていけばいいんでしょうか。

梶原みずほ記者:日本は北朝鮮に対して外交と防衛の両輪を整えてしっかりと粘り強く向き合っていかないといけないと思うんですね。この一方の防衛の部分なんですけど先日、イージス・アショア配備計画がいったん停止になりましたね。コストや費用対効果を考えると河野防衛大臣の政治判断というのは妥当だとは思うんです。ただ、ミサイル防衛の観点から言いますとこれは日本の安全保障にとって実は大問題なんです。日本のミサイル防衛というのはこのようになっていましてあるところからミサイルが撃たれた場合最初に海上自衛隊のイージス艦でそして、次に陸上自衛隊のイージス・アショアでそして最後に航空自衛隊のPAC3で迎撃するというふうになっているんですけどこのシステム自体は完璧ではありません。どこかで漏れた部分があるかもしれない。それをカバーするために何段階にもなっているわけです。そして、相手のミサイルの技術の進歩というのも日々、進んでいますからそういうためにしっかりとしたシステムを作らないといけないんですが今回計画の停止が発表されたのはイージス・アショア陸の部分なんですね。今後の可能性としてどういうふうにしたらいいのかなんですが1つはイージス艦を増やすということもあり得ると思うんですね。ただ、イージス艦というのは海上での作戦が任務であってミサイルの防衛だけではないわけです。そして、来年8隻体制になるんですけどそれでも十分ではないといわれていますし予算獲得から実際に運用されるまで7年ぐらいは最低かかるといわれているんですね。ですので、この空白をどのように埋めていくのかは早急に議論しなくてはいけないことなんです。それと、北朝鮮の狙いというのは韓国とアメリカの関係そして日本とアメリカの同盟関係を分断するということも1つあるわけなんです。ですので日米韓の3か国の枠組みをしっかりと進めるために政府は外交の努力も同時に進めていかないといけないと思います。

【検証部分】

北朝鮮の動向をめぐる報道です。
各国の非常に複雑な思惑が絡みあっている問題であり、今回スタジオでは日本が北朝鮮に対してどのように動くべきかが議論されていました。
しかし、良くも悪くも日本は今回の北朝鮮の動きに関わっていません。

今回取り上げるべきなのは韓国の外交戦略でしょう。
今回の北朝鮮の行動は韓国の外交戦略が定まっていないことが背景にあると考えられるからです。

韓国の文在寅政権は言うまでもなく、親北の政権です。南北融和を訴え、南北対談も果たしました。
2018年9月に行われた南北首脳会談では北朝鮮と寧辺の核施設撤廃を約束しました。
ここで文在寅政権としては北朝鮮への経済支援を行いところだったはずですが、アメリカがそれを許しません。
トランプ大統領は2019年2月の米朝会談で寧辺の核施設廃棄だけでは、経済制裁の解除を容認できないとして、非核化協議は頓挫しました。
アメリカの対応は当然のことで、北朝鮮は何度も国際的な約束を反故にしている国です。
非核化が完全に達成されるまで北朝鮮を信用することはできません。

韓国は北朝鮮融和と米韓同盟の狭間で揺れているのです。
今回の北朝鮮の動きはアメリカとの関係を切れないのであれば、南北融和はできない、というメッセージでもあるのです。

すなわち北朝鮮だけでなく、韓国の動向にも今後注目すべきなのです。

北朝鮮と米韓同盟のどちらを優先するのか。そして北朝鮮の後ろには当然中国の存在があります。

6月25日で朝鮮戦争開戦から70年を迎えましたが、中朝貿易額が5月比2.6倍となっており、そのうち9割が中国から北朝鮮への輸出でした。
北朝鮮と中国の関係は依然深く、構図は70年前と大きく変わりません。米中対立の争点が朝鮮半島なのです。
70年前は韓国・日本・アメリカが北朝鮮・中国と戦いましたが、現代では韓国がどちら側につくのかが重要な論点といえます。

このような論点を取り上げない放送は下記の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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