1月31日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。
・EU離脱のメリットについて触れられていたか
まずは放送内容を確認していきます。
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【スタジオ】
小木逸平アナウンサー:こちらはつい1時間ほど前のイギリス議会前の様子です。EU離脱まで10時間を切ったわけですけれどもいまだに残留派と離脱派がこのように言い合いをしているような様子が繰り広げられています。国民投票から3年半。ようやく実現する離脱ですが国内はまとまらないままです。
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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):EU本部があるベルギー・ブリュッセル。イギリスとの別れを惜しみユニオンジャックの色でライトアップされました。
大平一郎記者:議会前では、離脱派の人そして残留派の人たちが言い合いをしています。
最後の日まで分断が続いています。最後の日まで分断が続いています。
ナレ:イギリスはあと10時間ほどでEUから離脱となります。今年の末までは移行期間としてEUの関税ルールが適用されますがそれまでに各国との新たな貿易協定を模索することになります。皮肉にも、EU離脱はイギリスという国そのものの分裂を引き起こしかねない事態をもたらしています。
(スコットランドで行われた独立を求める民衆のデモ映像)
ナレ:イギリスを構成する1つスコットランドで独立を求める声が高まっています。
スコットランド独立派の市民『私たちはヨーロッパの国です。EUから恩恵を受け、もたらしてもいます』
スコットランド独立派の市民②『未来を自分たちで決めEUの一部になるためです』
ナレ:独立を望む理由の1つはEUに依存するスコットランド経済にあります。財政の要であるスコッチウイスキーは3割がEUへの輸出です。もし、EUへの輸出に関税が設けられればスコットランド経済に大打撃となることは避けられません。
ラナルド・ワトソンさん(スプリングバンク蒸留所)『EUがビジネスの主戦場である以上、そこで被害を受ければ経営方針の見直しを迫られます。スコットランドの人々の多くはEU離脱に反対票を投じました。でもイングランドが賛成票を投じたので、私たちは離脱せざるを得なくなりました』
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【コメンテーターによる解説】
森川夕貴アナウンサー(以下森川アナ):3年半以上経って離脱にはこぎつけたわけなんですけれどもこれから始まる移行期間のうちにやらなければいけないことまだまだ課題は残っていますよね。
野村修也氏(以下野村氏):今年の年末までにまず、自由貿易協定が結べるかどうかが最大の焦点ですが結局、今までどおり関税をゼロにすることができればイギリスとともに離脱する北アイルランドとそれからEUに残存するアイルランドの間には関税の問題はなくなるわけですね。しかし実際、イギリスはカナダがEUと結んでいるような貿易協定があるんですけど自国の商品やサービスを守るために一定の関税をかけたいという人たちがいるんですよね。そうなりますとEUのほうから乗れないという話が出てくる可能性があるわけです。更にイギリスは今まで、EUの中にいたことでイギリスの企業に課せられていたさまざまな規制を緩和することによってなんとか競争上、優位な状況を作ろうというふうに考えているんですね。そうしますとEUのほうから見ればいいとこ取りじゃないかということになってやはり、なかなか前途多難というところが出てくるんですよね。
森川アナ:EUとイギリスの関係も気になりますけど日本には、どういった影響があるんでしょうか?
野村氏:日本は今、EUとの間では2018年に貿易の協定を結んだわけですけどもイギリス、抜けますから今度はイギリスとまたなんらかの貿易協定を結ぶことになるわけです。EUと同じものであれば大した影響はないわけなんですが実はイギリスの中にはなんとTPPに参加したらどうかという意見があるんですよ。これは、アメリカに対する牽制球なんですけれども。場合によってはこれに乗りますとアメリカがもう1回TPPに戻ってくる可能性が出てきますのでそういう意味では日本もこの問題について少し戦略的に対応していく必要があるのかなという感じもしますよね。
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【検証部分】
今回の放送ではイギリスがEUを離脱することに関して、EUの観点に立ってEU離脱のデメリットが大きい、といった論調でした。
しかし、物事にはデメリット・メリットが当然あります。
今回の放送ではEU離脱のメリットについてほとんど触れられていませんでした。
EU離脱のメリットは、規制が緩和されること、またそれが民主主義的に決定できるという点です。
国際政治に詳しいアナリストの渡瀬裕哉氏は、ブレグジットについて以下のように述べています。
少し古い記事ですが、EUを考える上で重要な点に触れています。
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EU市場にアクセスできなくなると脅しをかけるEU官僚たちは、非民主的なEU機構を率いる重商主義者そのものであって、国際紛争を何度も引き起こしてきたブロック経済の亜種のようなものを堂々と主張していると捉えるべきです。
(中略)
離脱派のボリス・ジョンソン元ロンドン市長が発表した英国の民主主義を守りながら自由貿易を推進するという主張は「非現実な良いとこ取りだ!」としてメディアで批判されましたが、彼の主張は極めて真っ当な主張であって批判される理由は全く見当たりません。
むしろ、「巨大な市場へのアクセスのためには民主主義が制約されるべきだ!」とか、「民主主義を守るために自由貿易は止めても良い」とか、それらの主張が目指すべき理想として適切なはずがないのです。
《引用 渡瀬裕哉 批判されるべきは「英国」ではなく「EU」じゃないのか?
選挙ドットコム https://go2senkyo.com/articles/2016/06/30/20704.html》
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自分の国の規制を含む経済政策の一部を国外の組織であるEUに左右されることを好まない人も多くいます。その結果が国民投票によるブレグジットに結びつきました。
今回の放送で触れられていたEU諸国との経済関係については確かにデメリットもあるでしょう。
しかし、自由貿易を望む国はEUの中にもEUの外にもあります。
グローバルが進んだ現代において、EUという枠組みがそぐわないと論じる向きもあります。
このようなブレグジットによるメリットやEUの問題点に触れないことは以下の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けて参ります。