2020年3月16日 報道ステーション

2020年3月16日 報道ステーション

3月16日の報道ステーションのレポートです。
今回は新型コロナウイルスへの経済対策に関する放送を取り上げていきます。
検証するのは以下の点です。

・様々な論点を提示した放送であったか

まずは放送内容を見ていきます。
パネルを用いた部分は要約にて紹介します。
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【パネル解説】(要約)
 コロナ感染拡大に伴い、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)と日本銀行が今回緊急の金融融和政策を打ち出した。その内容は、FRBは政策金利の引き下げおよび日本円にして75兆円分の国債の買い入れを行う、対して日銀はETF(上場投資信託)の購入額を6兆から12兆円に倍増し、大手企業、中小企業ともに資金繰りを支援するというもの。これらの政策の狙いは景気対策というよりも、金の流れを強化して金融市場の安定を確保することにある。
現在、金融市場は長い間低金利が続いており、これがコロナをきっかけにはじけてしまうと経済が相当悪化し、リーマンショックのような状況が起こりうる。今回の日米の金融政策は金融危機を起こさないための時間稼ぎの政策といえる。

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【コメンテーターによる解説】
富川悠太アナウンサー(以下富川アナ):後藤さんはどう捉えられますか?

後藤謙次氏(以下後藤氏):消費税非常に格好よくて分かりやすいんですが政府・自民党の中では否定的な意見が圧倒的ですね。逆に百害あって一利なしだと言う人さえいるんですね。消費税をやるには税制改正が必要だし国会審議から更に末端のレジに至るまで全てのシステムを変えなきゃならない。即効性はほとんどないわけですね。だからむしろ、財務省なんかは感染症の拡大が終わった後に、人と物の金が動きやすくなるためにそのときに後押しするための政策を今からやっておいたほうがいいだろう。消費税は落ち着いたときに議論する話だということで現在は否定的ですね。

富川アナ:これも先の話だと思いますがキャッシュレス決済ポイント還元について。

木内登英氏(以下木内氏):キャッシュレスの拡大どちらもあまり効果としては薄いのかなという感じがしますね。

富川アナ:そして今週中に対応策をまとめるというところに含まれると思いますが公共料金の猶予・減免これはどうですか?

木内氏:本当に困っている人を助けるというセーフティーネットの策としてはいいと思いますが消費者もそうですが全ての人にお金をばらまくとか支援するということではなくてあくまでも限られた資源をコロナウイルス対策封じ込めに使うべきでありプラス最低限のセーフティーネットを使うと。本格的な景気対策はむしろ、そのあとに考えるべきかと思います。

徳永有美アナウンサー:後藤さんそうなってくると、実際今、政府は何が求められているか。いろんな対策があると思いますがピンポイントで身動きが取れていないという方々にダイレクトに伝えることも大事になってきますよね。

後藤氏:今回は対処療法だと思います。木内さんがおっしゃったように今回のコロナは二面性があると思うんですね。コロナ対策と大きなマクロの経済対策。当面、コロナの問題についていえば例えば観光業界とかあるいは困ったフリーランスの人とか個別の人に対象療法を1つ1つ潰しながらやっていく。これが基本だと思いますね。そのうえでマクロ。木内さんが若干お話になりましたがひょっとしてバブルがもうはじけ始めているんじゃないかと。こういう大きな中でどう取り上げるか。今日夜G7の首脳会合がありますがこれも個別の対応というよりはG7の首脳同士が世界経済の現在の立ち位置を共通認識を持ちましょうということなんですね。恐らく木内さんがおっしゃったように将来の金融危機に対してどう対応するか。その合意を得るその二面性からいえばコロナは対処療法というふうに思います。

富川アナ:木内さんありがとうございました。

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【検証部分】

放送では経済対策はウイルスの封じ込め政策が終わった後に本格的に行うべきであるとし、消費税の減税などのマクロ的な経済対策は将来の金融危機に備えて行うべきであるという論調でした。

この放送では、消費減税は即効性がないなど、否定的な面のみが取り上げられていました。

確かに消費減税は行われたことがないため、メリットは分かりにくいかもしれません。
消費減税のメリットを見るために、消費「増税」で起きたデメリットについて見ていきましょう。

デメリットの最たるものは経済成長率がマイナスになることです。
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内閣府が9日発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比1.8%減、年率換算では7.1%減だった。速報値(前期比1.6%減、年率6.3%減)から下方修正となった。
≪日本経済新聞2020/3/9 19年10~12月期GDP改定値、年率7.1%減に下方修正
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL05HCB_V00C20A3000000/≫
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続いて消費税が5%から8%へ上がった2014年の経済成長率について見ていきましょう。

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内閣府が20日発表した2014年度の実質国内総生産(GDP)は前年比1.0%減と、世界金融危機の余波が響いた09年度(2.0%減)以来5年ぶりのマイナスとなった。消費増税後の4~6月期、7~9月期と2期連続でマイナス成長だったことが響いた。年度後半からは持ち直しの動きも出たが、前半の大幅減を埋められなかった。
≪日本経済新聞2015/5/20 14年度は5年ぶりマイナス成長 GDP前年比1.0%減
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS20H0O_Q5A520C1MM0000/≫
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消費増税が経済成長率に影響していることは間違いないでしょう。

消費税の増税は所得税と異なり、所得に関係なく増税となります。
そのため、所得の低い人から支出を減らし、生活苦に陥ります。

ちなみに14年の消費増税では税収も増えませんでした。
消費税による税収は上向いたものの、上記のように景気が落ち込み、所得税と法人税の税収が芳しくなかったためです。

後藤氏は「消費減税は即効性がない」としていますが、これだけ経済に与える影響が大きい消費税の減税を効果がないとするのは早計でしょう。

むしろ、新型コロナウイルスの影響で人とモノの流れが鈍化している中、後藤氏の主張するような「例えば観光業界とかあるいは困ったフリーランスの人とか個別の人に対象療法を1つ1つ潰しながらやっていく」だけでは景気対策として不十分ではないでしょうか。

以上から「消費減税のメリット」という論点が欠けていた放送といえます。

このような放送は以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けて参ります。

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