2019年5月3日 報道ステーション

2019年5月3日 報道ステーション

5月3日の報道ステーションのレポートです。

5月3日の憲法記念日に合わせて安倍総理が発表した声明を取り上げて、報道がなされていました。

5月に入って報道ステーションでは憲法のことが多く取り上げられています。

今回検証する点は以下の2点です。
1.事実を曲げずに放送がなされていたか
2.多くの論点を提示して放送がなされていたか

この2点に関ついて検証していきます。

まずは放送内容を確認していきます。

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【スタジオ】
小木逸平アナ:今日は憲法記念日ですね。安倍総理は都内で開かれた集会でビデオメッセージを寄せまして、来年2020年に憲法改正を実現する考えを改めて示しました。

竹内由恵アナ:ただ国会では改憲に向けた議論は一向に進んでいません。今年の総理のメッセージからは何が読み取れるのでしょうか。

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【VTR】
安倍晋三総理大臣:2020年を新しい憲法が施行される年にしたい。今もその気持ちに変わりはありません。

ナレーション:ただ、安倍総理が思い描いてきた改憲スケジュールは暗礁に乗り上げています。

—-【CM】—
【VTR】
記者:総理、令和最初のゴルフはいかがですか。

安倍晋三総理大臣:楽しんでますよ。

ナレーション:静養中の安倍総理。今日、ゴルフを楽しんでいました。

記者:令和になって初めての憲法記念日。こちらの会場では、憲法改正をめざす保守派の集会が開かれています。そして、今まさに安倍総理からのメッセージが流されています。

ナレーション:改憲を目指す日本会議が事務局をつとめる団体の集会に、安倍総理が今年寄せたメッセージです。

安倍晋三総理大臣:2年前のこの憲法フォーラムでのビデオメッセージにおいて、私は「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と申し上げましたが、今もその気持ちに変わりはありません。

ナレーション:いま、自民党が掲げる改憲案はこの4つの項目です。柱となる9条への自衛隊明記については、今日もこう訴えました。

安倍晋三総理大臣:すべての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えるため、憲法にしっかりと「自衛隊」と明記し、違憲論争に終止符を打つ。私はその先頭に立って、責任をしっかりと果たしていく決意です。

記者:こちら都内にある会場では、憲法改正に反対する人たちの集会が開かれています。この会場、ご覧のように多くの人が集まっています。

ナレーション:今日開かれた護憲派の集会には、野党の党首が顔を揃えました。

立憲民主党 枝野幸男代表:残念ながらこの1年間も日本の立憲主義は後退させられてきました。

国民民主党 玉木雄一郎代表:「自衛隊を書くだけです、何も変わりません」と外に向かって説明をしながら、実は自衛権の範囲を無制限に拡大しようとしているのが今の自民党の案なんです。

共産党 志位和夫委員長:内閣総理大臣が自ら改憲の旗振りをする。このこと自体、憲法違反じゃないですか。

ナレーション:いま国会では、いわゆる“改憲勢力”が衆参で3分の2以上を占めています。この状況に、改憲を求める人たちからは。

ジャーナリスト 櫻井よしこ氏:今初めて自民党与党は憲法改正をすることができる状況にあるんです。ならば、なぜやらないのか。

記者:憲法改正の動きについて、現時点でどう感じていますか。

改憲派の集会に参加 主婦(77):非常にまどろっこしいですよね。何年もこうやって同じ事ばかり繰り返していて。もう少し皆さんが積極的にしていただきたい。

記者:動きの進み具合はどう?

改憲派の集会に参加 自営業(75):遅い。ホップステップジャンプのうちのステップホップですよ。

ナレーション:安倍総理は2年前、こう言い切っていました。

安倍晋三総理大臣:2020年を新しい憲法が施行される年にしたい。

ナレーション:そして去年も。

安倍晋三総理大臣:いよいよ私たちが憲法改正に取り組む時が来た。

ナレーション:安倍総理は自民党の改憲案を去年秋の国会に提出する意欲を示していましたが、いまだ実現していません。国会での憲法論議も停滞したままです。そうしたなか波紋を広げたのが、安倍総理側近の先月の発言です。

萩生田幹事長代行:新しい時代になったら、少しワイルドな憲法審査を自民党は進めていかなければいけない。

ナレーション:この発言で、野党はさらに態度を硬化させました。安倍総理が打ち出すとおり、2020年に新憲法を施行しようとすると、夏の参院選後に議論を加速させ、年明けの通常国会で憲法改正を発議し、秋以降に国民投票を実施するという日程になります。

政治部デスク 足立直紀氏:安倍総理のメッセージは去年までと比べるとトーンダウンしました。これは来年の施行が相当厳しいからなんです。目標通り憲法改正を達成しようとすると、まず夏の参議院選挙で3分の2の改憲勢力をキープしないといけません。そして3分の2をキープできたとしても、既に日程がかなりタイトです。そういった厳しい状況でも安倍総理を支持する保守層の悲願でもあるため、目標は下げられないというのが現状です。

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【スタジオ】
小木アナ:今解説にもあった通り、スケジュール的に言うと2020年の改憲というのはなかなかハードルも高いし厳しいというのであれば、まさにそのスケジュールありきではなくて本腰を入れた議論を、という気がするんですが。野村さんどうですか。

野村修也氏:そもそも憲法というのは、国家の権力というものの使い方を決めて、それを縛るものなんですよね。それを決めるのは国民ということになってるわけなんです。万が一、時代によって憲法の文言がそぐわなくなってきたということがあった場合には、その憲法を無視して権力を行使させるんではなくて、その憲法自体の文言を整えて、改めて権力を縛っていくということが必要なんですよね。今まさに争点になっている自衛隊に関連する9条なんですけども、これについては従来の文言を変えずに、その平和主義を残したまま、新たに第三項を設けてそこに自衛隊を明記しようと。そういう意見が出ている訳なんですよね。これはそもそも自衛隊を創設したときから、自衛隊の存在自体が憲法の文言とそぐわないのではないかという問題があったから、そういう問題意識に基づいているわけです。
しかし他方において、制限的ではあるといえ、集団的自衛権を認めた現在の自衛隊を明記することは、この平和主義を歪めるんではないか。
さらにはそれを、さらに拡大していくんではないかという懸念も示されているということなんですね。自民党は他にも、例えば緊急事態条項ですとか、あるいは教育の無償化について憲法に書くべきだという意見もありますし、他の政党の中には、例えば国民の知る権利みたいなものを新しい権利として、人権として明記すべきじゃないかとか、あるいは地方自治の統治機構を変えるべきだとか、さらには衆議院の解散に関する総理大臣の権限を制限していくような条項を設けるべきじゃないかと。いろんな意見が出てるんですよね。ある意味では憲法というのは国民が定めていくものですから、改正することに賛成する人も、反対する人も、そもそも我が国における国家権力はどのように使われるべきなのかということについて、議論を深めていくことが必要だというふうに思うんですよね。そうしていくことによって、改憲すべきなのか、それともそうじゃないのか、ということの答えが見つかってくる。まずは議論をしてみることが必要なんじゃないかと、私は思います。

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【検証部分】

1つ目の検証点から見ていきます。
事実に基づく放送がなされていたか、検証が必要な発言があったため検証していきます。

とりあげるのは以下の発言です。

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野村修也氏:今まさに争点になっている自衛隊に関連する9条なんですけども、これについては従来の文言を変えずに、その平和主義を残したまま、新たに第三項を設けてそこに自衛隊を明記しようと。そういう意見が出ている訳なんですよね。これはそもそも自衛隊を創設したときから、自衛隊の存在自体が憲法の文言とそぐわないのではないかという問題があったから、そういう問題意識に基づいているわけです。
しかし他方において、制限的ではあるといえ、集団的自衛権を認めた現在の自衛隊を明記することは、この平和主義を歪めるんではないか。
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野村氏が述べている、集団的自衛権が可能な自衛隊の存在を明記した時に生じる「平和主義の歪み」についてこれが事実に基づくものであるか、検証していきます。

そもそも日本国憲法が制定されて以来、平和主義は保たれてきたのでしょうか。

それは否と言わざるを得ないでしょう。このことは拉致被害者が存在することからも明らかです。
国民の平和を守ることができていないのです。北朝鮮に拉致され、人生を狂わされてしまった方はおよそ500人にも上ります。拉致被害者の方々は拉致されて以降、国によって救出されることなく人権を侵害されたままなのです。

また、第二次世界大戦終了後、朝鮮戦争やベトナム戦争、湾岸戦争など多くの戦争や紛争がありました。

これらの戦争で日本どういった行動をしてきたかといえば、アメリカを支援してきたのです。在日米軍基地という基地提供を始め、経済的支援も継続的に行ってきました。
これらの支援は世界では紛争に参加しているとみなすのが、一般的です。

これは考えてみれば当然のことで、アメリカと対峙している北朝鮮から見て日本が中立国に映っているはずがありません。

平和主義が戦後守られてきたというのは一つの見方や主張に過ぎず、普遍的な事実であるとは言えません。
さも日本が憲法9条のおかげで平和が保たれてきたという主張は事実に基づくと言えません。

これは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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次の検証点として、多くの論点を提示して放送がなされていたか、という点について検証していきます。

憲法改正をする意味についての論点です。
放送では以下のような論点が主に取り上げられていました。

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政治部デスク 足立直紀氏:安倍総理のメッセージは去年までと比べるとトーンダウンしました。これは来年の施行が相当厳しいからなんです。目標通り憲法改正を達成しようとすると、まず夏の参議院選挙で3分の2の改憲勢力をキープしないといけません。そして3分の2をキープできたとしても、既に日程がかなりタイトです。そういった厳しい状況でも安倍総理を支持する保守層の悲願でもあるため、目標は下げられないというのが現状です。

野村修也氏:(憲法改正について)いろんな意見が出てるんですよね。ある意味では憲法というのは国民が定めていくものですから、改正することに賛成する人も、反対する人も、そもそも我が国における国家権力はどのように使われるべきなのかということについて、議論を深めていくことが必要だというふうに思うんですよね。そうしていくことによって、改憲すべきなのか、それともそうじゃないのか、ということの答えが見つかってくる。まずは議論をしてみることが必要なんじゃないかと、私は思います。
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これらの主張を要約すると2つの論点があると思われます。

A.憲法改正はそもそも実現可能なのか
B.憲法改正には議論を深める必要がある

論点A、Bの主張に足りない論点として、解説が不十分であることと、野党が憲法審査に協力しないという論点を加える必要があるでしょう。
改正への動き出すにしても、議論を深めるにおいても、本来は議論をする相手であるはずの野党が審議拒否を続けてきた結果憲法審査が進まない現状があります。

また論点Aに関しては、公明党が憲法改正にやや慎重であることも述べるべきでしょう。
自民党としては政権を盤石にするために、公明党と連立を組まざるを得ませんが公明党は憲法改正には消極的です。

また論点Bに関しては、どういった議論を深める必要があるのか、なぜ憲法を変えなければならないのか、という論点が不十分です。

9条改正を行う理由・動機の1つとして、国際法上の位置づけという論点があります。

2015/4/3付の日経新聞の記事を見てみましょう。

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日本経済新聞 2015/4/3付け

政府は3日、自衛隊を「わが軍」と表現した安倍晋三首相の発言に関連して「(自衛隊は)国際法上、一般的には軍隊と取り扱われる」とする答弁書を閣議決定した。「通常の観念で考えられる軍隊とは異なる」としつつ「自衛の措置としての『武力の行使』を行う組織」とした。維新の党の今井雅人衆院議員の質問主意書に答えた。
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この記事でもあるように、国際法上、自衛隊は軍隊として扱われる存在なのです。
しかし、9条では戦力不保持を謳っているため、自衛隊は軍隊ではないと位置づけられています。
この矛盾を解消する第一歩として、憲法に自衛隊を明記するという論点もあります。

憲法9条については様々な論点がありますが、少なくともなぜ憲法改正が必要とされているのかという点については論点整理が必要でしょう。

このように論点を提示せずに、放送することは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会では公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けてまいります。

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