2020年4月5日 サンデーモーニング(前編)

2020年4月5日 サンデーモーニング(前編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年4月5日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① NY州の医療崩壊の危機について報道された部分
② 東京都の経路不明のコロナウイルス感染者の増加について報道された部分
③ 「風をよむ」にてグローバリズムの在り方について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① NY州の医療崩壊の危機について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
新型コロナウイルスの感染拡大が続くニューヨーク州では、クオモ知事が「もしあなたの地域が医療の危機的状況になければニューヨークにきて私たちを助けてほしい」と医療従事者に悲痛な訴えを行いました。セントラルパークには感染者を受け入れる野外病院が設置されました。ニューヨークにある病院の現状を日本人医師は休み返上で働いているがそれでも人手が足りない、地獄絵と表現しました。院内感染も起きるなど過酷な医療現場に身を置く日本人医師は日本について危機感をつのらせています。
水曜日、医療危機的状況宣言と書かれたパネルを掲げた、日本医師会の会長。新型コロナウイルスの感染拡大により、日本でも医療崩壊の危機が迫っていると警鐘を鳴らしました。都内最大規模の院内クラスター感染が起きた永寿総合病院は、感染者140人・死者は12人に登っており、医療従事者の4割が感染しているため、治療に当たる人が不足しかかっています。さらに医療従事者の不足だけでなく、重症患者のための集中治療室も危機的な事態に陥る可能性があります。日本の集中治療室のベッド数は、医療崩壊の起きたイタリアよりも少ないのです。金曜日、日本医師会の横倉会長は安倍総理と会談しスピード感のある対応を求めました。
東京都では、新型コロナウイルス用に750床のベッドが確保されています。現在704人が入院中、重症は22人で多くは中等症・軽症です。軽症患者については、金曜日に厚生労働省が自宅や宿泊施設などで療養する方針を示しました。都は合わせて4000床の確保を目指しているといいますが、まだ大きな開きがあります。入院が必要な患者はおよそ2万500人になるという厚労省の試算もあり、目前に迫る医療崩壊を回避するための早急な対応が今、求められています。
スタジオでは、感染者が急増した場合に不足が懸念されている人工呼吸器やECMOと呼ばれる体外人工肺装装置について詳しく解説された。

【コメンテーター発言内容】
関口氏(要約):なぜ日本はこんなに遅れているのか、足らないのかと思ってしまう。

岡田氏(全文):まずは医療資源というのはそんなにすぐには増産できないんですけれども、ここで注意すべきことはピーク時に2万500人と言っているのは東京都だけですね。ですから圧倒的にベッド数が足らないということになります。ですから、重症な人のICUも足らないけれども、人工呼吸器も足らないけれども、それよりも中等症、軽症者を受け入れるベッド数も足りない。ピーク時には当然のことながら軽症じゃない人も自宅療養を余儀なくされる状況があるということです。それで今、これを回避するために大阪とかいろいろな地域で借り上げの宿舎だとか、隔離施設とか、そういうものを造ろうとしているんですけれどもまだまだ足らないという状況があるわけです。ICU、つまり人工呼吸器のようなものが圧倒的に足らない、そうすると助けられる命も助けられない、そうすると致死率がはね上がるわけですね。今問題になっているのは永寿総合病院もそうなんですけれども、院内感染が非常に多発しております。昨日は慈恵医大も外来をストップと。それから予定されていた外科的な手術ももう延期ということが言われています。ということは今まで私たちがコロナ以外のルーチンの医療も受けがたくなる。お医者さんや看護師さんも当然感染しやすくなる、こういう中で、非常につらいスパイラルに入っているというのが現状です。

仁藤氏(全文):日本でもコロナの影響が深刻化して長期化していることからふだんから社会的に弱い立場に置かれている人たちがますます苦しい状況に置かれていると思っています。非常時は子どもとか女性への暴力も深刻化するためその国連の女性機関も救済措置をと呼びかけているんですが、私たちが支援している10代の女性たちも家にいる時間が長くなることで、身体的な虐待も性虐待の率がすごく高まって、精神的な負担もすごく増大している状況です。日本でもDVや虐待の相談というのが増えていますし世界でもそうなんですけど、私たちのような民間シェルターもそういう必要とする人が増えたときに受け入れ態勢をどうしていくのかということと、もし感染者が出たときにほかの利用者たちをどうやって守っていくかということ、それも全部自分たちで予防・対策しなきゃならないので民間に丸投げではなくて、考えてほしいなということも思います。ふだんから目を背けられてきた問題、弱い立場に置かれた人たちの存在ということ、そこの苦しさが顕著に表れてきているので居場所がない人たちの支援態勢というのをもっと強化していく必要があると思ってます。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、岡田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、岡田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
岡田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

岡田氏(抜粋):まずは医療資源というのはそんなにすぐには増産できないんですけれども、ここで注意すべきことはピーク時に2万500人と言っているのは東京都だけですね。ですから圧倒的にベッド数が足らないということになります。ですから、重症な人のICUも足らないけれども、人工呼吸器も足らないけれども、それよりも中等症、軽症者を受け入れるベッド数も足りない。ピーク時には当然のことながら軽症じゃない人も自宅療養を余儀なくされる状況があるということです。それで今、これを回避するために大阪とかいろいろな地域で借り上げの宿舎だとか、隔離施設とか、そういうものを造ろうとしているんですけれどもまだまだ足らないという状況があるわけです。ICU、つまり人工呼吸器のようなものが圧倒的に足らない、そうすると助けられる命も助けられない、そうすると致死率がはね上がるわけですね。今問題になっているのは永寿総合病院もそうなんですけれども、院内感染が非常に多発しております。昨日は慈恵医大も外来をストップと。それから予定されていた外科的な手術ももう延期ということが言われています。ということは今まで私たちがコロナ以外のルーチンの医療も受けがたくなる。お医者さんや看護師さんも当然感染しやすくなる、こういう中で、非常につらいスパイラルに入っているというのが現状です。

要旨をまとめると、
・厚労省が発表している、コロナウイルスの最大感染者数は東京都だけの数値であり、ピーク時には圧倒的にベッドや医療機器が足りず自宅療養を余儀なくされる。大阪などでは借り上げの宿舎や隔離施設を設立しようとしているが、他の地域では足りていない。
・このような状況が続けば、致死率は上昇し、院内感染が横行する。
というものです。

しかしながら、
・大阪だけでなく、東京都を含む各都道府県においてホテル等を利用して、軽症者を一時待機するホテルを確保しており、岡田氏の「大阪府以外の都道府県には病床数やホテルが足りない」という主張は政治的公平ではなく事実に反している恐れがある。
・また、宿泊施設に隔離される患者は比較的軽度の患者であり、高齢者や基礎疾患を持っている方、妊婦の方々などの致死リスクの高い方は優先的に入院することが可能である。つまりこれらの施策は、コロナウイルスによって死亡者を増やさない、医療崩壊を防ぐ取り組みである。その為、岡田氏の「自宅待機を余儀なくされ、致死リスクが高まる」という主張は、事実に明らかに反している。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での岡田氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
仁藤氏は今回の報道で、以下のように述べています。

仁藤氏(抜粋):日本でもコロナの影響が深刻化して長期化していることからふだんから社会的に弱い立場に置かれている人たちがますます苦しい状況に置かれていると思っています。非常時は子どもとか女性への暴力も深刻化するためその国連の女性機関も救済措置をと呼びかけているんですが、私たちが支援している10代の女性たちも家にいる時間が長くなることで、身体的な虐待も性虐待の率がすごく高まって、精神的な負担もすごく増大している状況です。日本でもDVや虐待の相談というのが増えていますし世界でもそうなんですけど、私たちのような民間シェルターもそういう必要とする人が増えたときに受け入れ態勢をどうしていくのかということと、もし感染者が出たときにほかの利用者たちをどうやって守っていくかということ、それも全部自分たちで予防・対策しなきゃならないので民間に丸投げではなくて、考えてほしいなということも思います。ふだんから目を背けられてきた問題、弱い立場に置かれた人たちの存在ということ、そこの苦しさが顕著に表れてきているので居場所がない人たちの支援態勢というのをもっと強化していく必要があると思ってます。

要旨をまとめると、
・コロナの影響により、社会的弱者にいる人達がますます苦しい状況に置かれている。
・家に滞在する時間が長くなり、身体的虐待・性虐待の発生率が高まり精神的負担が増加している
・このような人達を守るために、政府は民間に丸投げしないでほしい。

というものです。
しかしながら、
・日本においてコロナによって虐待やDVが増えたという明らかな根拠は現時点においてなんら存在しておらず、事実に反する恐れがある。
・そもそも、虐待やDVに対応するのは各都道府県の児童相談所、婦人相談所が対応するものである。また、民間シェルターに関しても自治体から委託されて運営されている団体が多く、仁藤氏が主張する「DVや虐待対応を民間に任せっきりにしている」という主張は事実に明らかに反し政治的に公平ではない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での仁藤氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「入院を希望する患者入院できるように病床数を増やすべきである」「医療機器が圧倒的に足りない」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「医療機器は簡単には増産できないのだから、今ある資源で医療崩壊を防ぐ方策を考えるべきである」「医療崩壊を防ぐために軽症者は自宅や施設での療養で済ませるべき」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 東京都の経路不明のコロナウイルス感染者の増加について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 「風をよむ」にてグローバリズムの在り方について報道された部分

については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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