TBS「サンデーモーニング」、2019年9月8日放送回の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① 韓国での日本製品不買条例案可決と曺国氏の聴聞会について報道された部分
② 「風を読む」にて炎上商法とメディアについて報道された部分
③ 9月11日実施の内閣改造について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② 「風を読む」にて炎上商法とメディアについて報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
【VTR要約】
日韓の対立がエスカレートする中、それをさらに煽るような動きが目立っている。大手出版社が雑誌に掲載した記事が厳しい批判を浴びている。
ナレーション(一部抜粋):2日月曜日に発売された小学館の週刊ポスト。嫌韓よりも減韓、断韓などと銘打ち、関係を断ち切って困るのは日本よりも韓国だとする論を展開。さらに、 “怒りを抑えられない韓国人という病理”。そう題して、韓国の医学界のリポートを根拠に、韓国成人の半分以上が憤怒調節に困難を感じており、10人に1人は治療が必要と言った記事を掲載したのです。
この記事に作家らが相次いで懸念を表明。批判を受けて小学館は謝罪コメントを公開した。去年、新潮45に掲載された自民党杉田水脈議員の寄稿とその後の特集記事にも批判が殺到し、雑誌はその後休刊となっている。大手出版社の雑誌でこうした事例が相次いでいる背景には、昨今の出版不況がある。篠田博之氏は「強いことを言うと受けるんじゃないかという誘惑に駆られている」と指摘。炎上商法はメディア以外の様々なところでも目に付く。NHKから国民を守る党の丸山穂高議員が竹島について「戦争で取り返すしかないんじゃないですか?」とTwitterに投稿。丸山議員は5月にも北方領土をめぐり戦争に言及し厳しい批判を浴びたにもかかわらず同様の発言を繰り返した。
世間の注目を集め社会を誤った方向に導く例は過去にもあった。1942年、日本はミッドウェー海戦で大敗を喫したが、大本営はその事実を隠し戦況が有利に進んだかのように発表。メディアも虚偽の事実を報じ、国民の敵愾心を煽り続け国民の戦意高揚を図った。背景には政府による言論統制もある一方、営利のために演出していた事実もあった。五野井郁夫教授は「もっと過激にやろうと戦争が起きている。しかしそれが民主主義を壊す行為だと気づいていない」と指摘。
憎悪や差別を煽る意見や出来事が目につく今、改めてメディアの姿勢が問われている。
【コメンテーターの発言】
姜尚中氏(要約):日本か韓国か、生産性があるかなどの友敵思想が出てくる背景には「本音で語ろうよ」というニヒリズムがあると思う。でも建前のない社会はあり得ない。建前崩しがずっと行われているが、建前は社会が目指すべき規範・理想を描いている。ニヒリズムには必ず心の中に空虚があって過激に語るが、実は内容は何もない。空虚な熱狂に惑わされるとナショナリズムへと駆動していく。どこかで建前に戻らなければいけない。
大宅映子氏(全文): 私やっぱり、メディアっていうのは正しい情報って言おうと思って。正しいっていうのは価値観が入ってしまうので、要するに我々に真実を伝えてくれる義務があるんですよ。で、私達の方も、今、姜さんがおっしゃったみたいに、本音がいいじゃん。本音がいいのよっていうに、ものすごいトランプが支持されてるのもそこですよね。ポリティカルコレクトなんてそんなもん、けったくそ悪いわって。で、我々の方も、どんどん偏った自分の好きな情報にばっかり突っ込んでいいですよと、そのギスギスした形になりますよね。で、私は、私達は偏った情報に行ってしまっている結果、昔もっと広く深く常識とか教養とかというものをもってたのに、それがすごく薄くなってる。で、そのフェイスかフェイクニュースじゃないかみたいな判断力もおかげで薄れてしまうって、なんか悪いサイクルに入ってしまっているんじゃないかなって気がしています。とりあえずこっちが強くならならなくちゃ。判断力もつようにならなくちゃっていうふうに思っています。
岡本行夫氏(要約):僕も大宅さんの意見に賛成。たまたま先週、韓国でいろんな人と話をしたが本当に良い人達で、みんな今は日韓関係の悪化に心を痛めていた。週刊ポストの記事は見出しの取り方と活字の大きさで問題になっているが、分断工作を煽っている一番の張本人は文在寅大統領と韓国政府。ただ日本政府もそれに踊らされているところがないのかと思う。日韓が話し合わなきゃいかんという出口戦略を認識してほしい。
谷口真由美氏(全文):雑誌も、テレビもだと思いますけど、最近見てた貧すれば鈍するってこういうときに使うんだなっていう、言葉をやっぱすごく思い浮かべますね。悪口でも何でも言ったら「売れんねんと。だから悪口言うねん」っていうのって姜さんのおしゃる建前って言うので言うと、「本音がええ」って言い出したら、本音は者愛人間悪口と憎悪表現しかないのかっていう話になるんですよね。そんなことはないでしょ。だからやっぱりそこは、昔尊敬される大人っていうのは深く考えたり静的な人だったと思うんです。だから「悪口言う人嫌い」っていう人私はたくさん知ってたんですけど、最近は、悪口をいう人が良い人っていう本音を語る、なんか大人としてなんか良い人だみたいな風潮があって。そうじゃないだろっていうところを形成していくのがメディアだと思うんですよね。やっぱメディア内部にも良心的な方はすごくたくさんおられて、その方たちがむしろメディアの内部でしんどい思いをしてるとしたら、見てる側の我々がやっぱりそういう方を支えなきゃなっていう気にもなります。
松原耕二氏(全文):一昨日、実は番組で、あの私が担当している番組で、その韓国からの観光客が減ったある地方のある会社の社長さん。対馬ですね。中継で聞いたんですが、その最中実は電話がすぐ鳴りはじめて。事務所にですね。出たら「売国奴」と。つまり韓国のお客さんを商売しているだけで売国奴って、もうひっきりなしにかかってくるわけですね。もしそこでメディアのそういう、加担してる部分があったりしたとしたら、これ本当にいけないことだなというふうに、まあ過激な表現とかですね。というふうに思いましたね。私はあの、真実は小さな声で語られると思うんですね。姜さんがおっしゃったように、空虚なことこそ声高にみんな語りたがるし過激な言葉が必要になってくる。だから、一人ひとりがですね、そういう声高な言葉語り、そして、まあ過激な言葉を疑ってかかること。そして何より我々メディアの人間こそが、過激な人間を使いたくなったり声高に語りたくなったら、それはいかんぞと。そこを戒めるべきだなというふうに思いますね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の4点です。
1、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
それぞれ順を追って解説します。
1、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
大宅氏は今回の報道で、以下のように述べています。
大宅氏(抜粋):私達の方も、今、姜さんがおっしゃったみたいに、本音がいいじゃん。本音がいいのよっていうに、ものすごいトランプが支持されてるのもそこですよね。ポリティカルコレクトなんてそんなもん、けったくそ悪いわって。で、我々の方も、どんどん偏った自分の好きな情報にばっかり突っ込んでいいですよと、そのギスギスした形になりますよね。で、私は、私達は偏った情報に行ってしまっている結果、昔もっと広く深く常識とか教養とかというものをもってたのに、それがすごく薄くなってる。で、そのフェイスかフェイクニュースじゃないかみたいな判断力もおかげで薄れてしまうって、なんか悪いサイクルに入ってしまっているんじゃないかなって気がしています。とりあえずこっちが強くならならなくちゃ。判断力もつようにならなくちゃっていうふうに思っています。
要旨をまとめると、
・トランプ米大統領が支持されるのは、人々が本音を優先するあまりポリティカルコレクトネスなどの常識を疎かにしてしまった結果だと言える。
・その結果、判断力が薄れフェイクニュースなどに騙されるようになってしまった。メディアは真実を伝える機関として判断力を強く持ち、こうした流れに対抗すべきだ。
というものです。
しかしながら、
・アメリカの雇用や経済の再生、不法移民の取締を始めとした治安の保護などを強く訴える姿勢が評価され、トランプ米大統領が支持された側面がある。また、ポリティカルコレクトネスを「常識」とする姿勢は極めて政治的に偏ったものである。
・メディアによる偏向報道や放送法違反などが横行しているため、フェイクニュースに対抗する真実を伝える機関としてメディアを無批判に捉える姿勢は事実に即しているとは言えない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での大宅氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
谷口氏は今回の報道で、以下のように述べています。
谷口氏(抜粋):雑誌も、テレビもだと思いますけど、最近見てた貧すれば鈍するってこういうときに使うんだなっていう、言葉をやっぱすごく思い浮かべますね。悪口でも何でも言ったら「売れんねんと。だから悪口言うねん」っていうのって姜さんのおしゃる建前って言うので言うと、「本音がええ」って言い出したら、本音は者愛人間悪口と憎悪表現しかないのかっていう話になるんですよね。そんなことはないでしょ。だからやっぱりそこは、昔尊敬される大人っていうのは深く考えたり静的な人だったと思うんです。だから「悪口言う人嫌い」っていう人私はたくさん知ってたんですけど、最近は、悪口をいう人が良い人っていう本音を語る、なんか大人としてなんか良い人だみたいな風潮があって。そうじゃないだろっていうところを形成していくのがメディアだと思うんですよね。やっぱメディア内部にも良心的な方はすごくたくさんおられて、その方たちがむしろメディアの内部でしんどい思いをしてるとしたら、見てる側の我々がやっぱりそういう方を支えなきゃなっていう気にもなります。
要旨をまとめると、
・貧すれば鈍するという言葉があるが、売れるから悪口を書くというメディアの姿勢はまさにこれである。
・「本音で話すことがいいことだ」ということになると、「人間は本来悪口や憎悪が本音なのか」という話になるが、そうではないはずだ。
・昔は尊敬される大人と言えば深く考えたり知的な人が多かったので悪口は嫌われていたが、今は悪口を言っている人は本音を語るのでいい人だ、という風潮がある。こうした意見に反対していくのがメディアの役割だ。
というものです。
しかしながら、
・日韓対立が高まるなかでのメディア露出増加を「お金の為」「貧すれば鈍する」と揶揄する姿勢は事実に基づいたものとは言えない。
・韓国への批判を「悪口」と一緒くたにする谷口氏の主張は事実に即したものとは言えず、また政治的に公平とも言えない。
・「昔の尊敬される大人」「今の尊敬される風潮」などの主張には一切根拠がない。また、メディアの役割を一方のみに絞る発言は政治的に公平とは言えない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での谷口氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日本のメディアや国民は韓国への不満を煽ったり、暴言を厳に慎むべきだ」「炎上商法のような世論煽りは良い結果にならないのでやめるべきだ」「本音を言うのではなく、綺麗事でもいいから理想を言うべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
アナウンサー(抜粋):2日月曜日に発売された小学館の週刊ポスト。嫌韓よりも減韓、断韓などと銘打ち、関係を断ち切って困るのは日本よりも韓国だとする論を展開。さらに、 “怒りを抑えられない韓国人という病理”。そう題して、韓国の医学界のリポートを根拠に、韓国成人の半分以上が憤怒調節に困難を感じており、10人に1人は治療が必要と言った記事を掲載したのです。
など、こうした姿勢が顕著にみられる発言もありました。
ですがこの問題に関しては「週刊ポスト記事の中身は冷静な分析が多く、病理についても韓国医学会のリポートを引用しただけだ」「炎上目当てで報道が過熱したのではなく、韓国のやったことが炎上しているだけだ」「理想ばかりを無責任に主張するのではなく、現実問題や本音の部分をどう解決するかを考えるべきだ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。中編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 「風を読む」にて炎上商法とメディアについて報道された部分における
検証4「松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
ならびに
③ 9月11日実施の内閣改造について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。
① 韓国での日本製品不買条例案可決と曺国氏の聴聞会について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。