サンデーモーニング、2020年5月3日分の検証報告(後編)です。
今回の報告では、
① 緊急事態宣言の全国延長について報道された部分
② 医療現場におけるPCR検査の不足について報道された部分
③ 「風を読む」にてコロナと世界秩序について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
後編で検証するのは、
③ 「風を読む」にてコロナと世界秩序について報道された部分
となります。
では、放送内容を見ていきましょう。
新型コロナウイルスの感染拡大は各国のリーダーの政治姿勢を問う形となっています。
東ドイツ出身のメルケル首相は、国民に強く自由の制限を求めざるをえない状況を前に、その苦渋の選択について「自由を苦労して勝ち取ってきた私にとって、国民に不自由な生活を強いることは絶対に必要な時以外正当化できません。苦難の時こそお互いに寄り添いたいが、今はその反対のことをしなければならない」と国民に語り、国内外から共感の声が上がりました。
一方、ブラジルのボルソナロ大統領は「新型コロナウィルスはただの風邪だ、国民の7割は感染するだろうが、大切なのは経済活動だ」と主張して経済界・富裕層を優先しています。
フィリピンのドゥテルテ大統領は、都市封鎖に批判的な勢力を念頭に過激な行動をとれば射殺すると国民に警告し、実際に検問での射殺も発生しています。
新型コロナで最も深刻な影響を受けたのはアメリカであるという視点から、アメリカの国際政治学者イアン・ブレマー氏は、「各地で権力の真空状態が発生し、世界的リーダーシップがない状態に陥るだろう。それはアメリカ主導の世界秩序を構造的に大きく変化させるだろう」と指摘しました。アメリカでは1-3月期GDPが-4.8%となっていて11年ぶりの低水準まで落ち込んでいます。
さらにアメリカ軍にも新型コロナは影響を及ぼしていて、セオドア・ルーズベルトやロナルド・レーガンなどの空母で感染が発生しています。アメリカ軍の存在感が低下し、中国は見計らったように空母・遼寧による威嚇行動を仕掛けています。
トランプ大統領は新型コロナに関するWHOの姿勢を中国寄りだとして拠出金の停止を宣言しました。さらに新型コロナは中国が流出させたと発言するなど世界のリーダーとしての姿勢に疑問符がついています。対して中国は、これまでに11カ国に医療チームを派遣し、127カ国に医療物資を輸送したと発表し、新型ウイルスに苦しむ国々への支援をアピールしました。 覇権の拡大をうかがう中国と自国第一主義を押し通すアメリカの姿勢の違いが鮮明です。
いずれ新型コロナが世界の秩序を変えたと言われるときがくるのでしょうか。
【コメンテーター発言内容】
関口氏(要約):今こそ、いがみ合ったり覇権争をするのではなく、世界が一つにならなきゃいけない。みんな同じ苦しみを味わってるわけだから。1つになれないのかしら。
寺島(要約):リーダーの言葉ということで、どうしてこういう政策を打つのかといったら、人生をかけた哲学をも国民に語りかけなきゃいけないんだということを、われわれはよく考えるべきだと思うんです。テレワークなんかがこういう形で常態化してきて、デジタルの時代というものに進路を求めようという気持ちが大きく見えるけれども、実は実際にわれわれの生活を支えてくれてるのは医療の現場や物流など、リアルの世界がいかに重要かを別の意味で思い知らされている。恫喝の話におびえているだけじゃなくて、ウイルスというものを正面から見据えて、共生しながら社会を維持していくためにはどういう努力が要るんだろうかということを問いかけなきゃいけないけないときにきている。
安田氏(全文):映像で先ほどもあったように、例えば隣国の中国が存在感を増してきて、日本の中で緊張感が高まっている面もあるとは思うんですけれども、ただ、こうした状況が起こるとどうしても国家間の問題と市民間のことを混同して例えば特定の地域の出身者だったり、国籍者をたたくという行為をどうしても耳にしてしまうんですよね。 例えば中国の感染者の初動の動きの不備というのは批判されてしかるべきだと思いますし、武力によって他国を脅かすことがあってはならないと思うんですけど、ただ、そういった政治責任を、その国の出身者の方々に背負わせてバッシングをするということはやはり理にかなわないことだと思うんですよね。社会が不安に陥っていくときというのはどうしても大きな主語の大きな言葉が一人歩きしがちなんですけれども、国際関係は国際関係で、こうして冷静に見ていく。ただその前提としてウイルスというのは差別のための道具ではないんだということを自覚していくということが礎として必要なんでないかと思います。
萩上氏(要約):国際政治について、米中の比較の動画が紹介されたが、これからはこのような政治というものがむしろ加速をしていくことになると思う。今、コロナ対策で多くの人たちが世界の政策を比べながら自国はどうかということを見る、そうした生活目線で国際比較をするということも獲得している時期だと思うんですね。各国の政治がどういうアピールをしているのか、それは自国民向けにアピールしたいことだけを言ってるのではなくてその背景にあるものがどういったものなのか、見較べていって欲しいと思います。
松原氏(全文):今、世界で大いなる問いはやっぱりこういう危機の時代は権威主義的な、独裁的な体制のほうが優位なんじゃないかと。つまり民主主義のほうが弱くて後退するんじゃないかという見方ですね。確かに、民主主義ということはとんでもないことがあっという間に起きないように手続きを大事にしているから非効率に確かに映るわけです。でもドイツのメルケル首相のように国民に丁寧に尽くすことで信頼を得ている、あるいはニューヨークのクオモ知事のように徹底的な情報開によって信頼を得ている人もいるわけですね。そういう意味ではこのコロナ時代をくぐり抜けて私は、透明で民主的な価値というのは唯一性を持つというふうに信じています。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、 安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、 松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
安田氏は今回の報道で、以下のように述べています。
安田氏(抜粋):映像で先ほどもあったように、例えば隣国の中国が存在感を増してきて、日本の中で緊張感が高まっている面もあるとは思うんですけれども、ただ、こうした状況が起こるとどうしても国家間の問題と市民間のことを混同して例えば特定の地域の出身者だったり、国籍者をたたくという行為をどうしても耳にしてしまうんですよね。 例えば中国の感染者の初動の動きの不備というのは批判されてしかるべきだと思いますし、武力によって他国を脅かすことがあってはならないと思うんですけど、ただ、そういった政治責任を、その国の出身者の方々に背負わせてバッシングをするということはやはり理にかなわないことだと思うんですよね。社会が不安に陥っていくときというのはどうしても大きな主語の大きな言葉が一人歩きしがちなんですけれども、国際関係は国際関係で、こうして冷静に見ていく。ただその前提としてウイルスというのは差別のための道具ではないんだということを自覚していくということが礎として必要なんでないかと思います。
要旨をまとめると、
・隣国の中国が存在感を増してきて、日本の中で緊張感が高まっている面はあるが。このような状況でも、国家間の問題と市民間の問題を混同して特定の地域の人や国籍者を批判する行為を耳にする。
・国際関係は国際関係として、その国の出身者とは別に考えるべきであり、ウイルスは差別の道具ではない。
というものです。
しかしながら、
・政府は、外国人に対して新型コロナウイルスに関する情報の周知を行っており適切な外国人は情報の下で行動することが可能であるし、また現時点において日本人が外国人を差別している事例が多数発生されているとは言い難い。その為、「日本人が、コロナウイルスの影響で外国人を差別している」という安田氏の主張は根拠に乏しく事実に反する恐れがある。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での安田氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。
松原氏(抜粋):今、世界で大いなる問いはやっぱりこういう危機の時代は権威主義的な、独裁的な体制のほうが優位なんじゃないかと。つまり民主主義のほうが弱くて後退するんじゃないかという見方ですね。確かに、民主主義ということはとんでもないことがあっという間に起きないように手続きを大事にしているから非効率に確かに映るわけです。でもドイツのメルケル首相のように国民に丁寧に尽くすことで信頼を得ている、あるいはニューヨークのクオモ知事のように徹底的な情報公開によって信頼を得ている人もいるわけですね。そういう意味ではこのコロナ時代をくぐり抜けて私は、透明で民主的な価値というのは唯一性を持つというふうに信じています。
要旨をまとめると、
・危機の状況では、権威主義的な、独裁的な体制のほうが優位である。民主主義は弱くて、非効率的から民主主義が後退する見方もある。
・しかし、メルケル首相やニューヨークのクモオ知事のように民主主義でありながら信頼を得ているリーダーもいる
・コロナ時代をくぐりけると、このようなリーダーによる透明性がある民主的な価値は揺るがないものとなる。
というものです。
しかしながら、
・安田氏が評価したドイツやニューヨーク州は、コロナウイルスの感染者数で日本と比較すると、ドイツは感染者数16万人死者6000人を超えており、ニューヨーク州では感染者数18万人死者1万5000人以上と、死者1000人以下に抑え込めている日本とは完全に異なる状況である。
・感染者及び死者が日本に比べ圧倒的に多いドイツやニューヨーク州の状況を説明せずに、ドイツやニューヨーク州の政治リーダーを評価する安田氏の主張は政治的に公平ではない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での安田氏の発言は政治的に公平ではない恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「アメリカは中国に対し高圧的な態度を取っている」「アメリカがWHOを批判することは国際秩序に反している」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「WHOの初期対応や度重なる失策が世界の混乱を招いた」「中国が武漢ウイルスが発生した際に隠ぺいしなければ、ここまでの世界的混乱は生じなかったのではないか」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の後編となります。後編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
① 緊急事態宣言の全国延長について報道された部分
については前編の報告を、
②医療現場におけるPCR検査の不足について報道された部分部分
については中編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。