2020年5月11日 報道ステーション

2020年5月11日 報道ステーション

5月11日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・様々な論点を紹介した放送であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【スタジオ】
森葉子アナウンサー(以下森アナ):検察官の定年延長を可能にする法案の審議が国会で始まっています。野党はすでに今年1月に閣議決定した黒川東京高検検事長の定年延長の問題と関連して検察人事への介入につながるなどと批判を強めています。

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【VTR】
国民民主党・後藤祐一衆院議員『「森友」「加計」「桜」そしてこれから4つ目が出てくるかもしれない。その時に黒川検事長のような方が自分を守ってくれる守護神として必要だから、この法案を出したんじゃないですか』

安倍晋三総理大臣(以下安倍総理)『それは全くありません。今回の法改正においては検察官の定年退職にあたってその要件となる事由を事前に明確化することとしておりまして、内閣の恣意的な人事が今後行わるといった懸念はもちろん全くあたりません』

ナレーション(以下ナレ):先週金曜日に審議が始まった検察庁法の改正案。検察官の定年を63歳から65歳に引き上げるもので国家公務員法の改正案とともに議論されています。野党が問題視しているのは63歳までとされている検事長などの役職定年を内閣が定めた事情がある場合には最長3年延長できるとしている点です。今年1月政府は東京高検検事長の黒川弘務氏の定年をこれまでの法解釈を変えてすでに延長しています。

立件民主党・枝野幸男代表『検察庁法改正は安倍政権が、黒川検事長の定年を違法に延長した、脱法的に延長したことを事後的に正当化しようとするものです』

共産党・宮本徹衆院議員『政権の判断で検察幹部の勤務延長ができ、時の政権が恒常的に検察官人事に介入できる仕組みを制度化しようとしています。国民みんなで自粛をして新型コロナと闘っている最中に、自らの権力を守るために悪法を押し通す“火事場泥棒”だと国民に映っているわけです』

ナレ:これに対し総理は次のような答弁を繰り返しました。

安倍総理『今般の国家公務員法等の改正法案の趣旨・目的は高齢期の職員の豊富な知識・経験等を最大限に活用する点などにあり、検察庁法の改正案の趣旨・目的もこれと同じであります』

ナレ:ネット上では、検察庁法の改正案に抗議する投稿が著名人らの間でも広がり470万件を突破しました。

宮本亜門さんのツイッター『このコロナ禍の混乱の中、集中すべきは人の命。どうみても民主主義とはかけ離れた法案を強引に決めることは、日本にとって悲劇です』

【コメンテーターによる解説】
徳永有美アナウンサー:太田さん、黒川さんの定年延長に関してはすでに1月に閣議決定がされているんですが今、ツイッター上で多くの方たちが本当に大きな声を上げていますね。

太田昌克氏:黒川さんの話とは直接関係なくてこれはやっぱり、多くの皆さん本当に今やるべき法案なのか不要不急じゃないの?というそういった素朴な疑問や怒りや不信だと思うんですね。今日、私日本弁護士連合会の会長先生と少し電話で話す機会がありまして彼、こうおっしゃっていました。65歳までの定年延長自体には反対しない。問題なのはトップの検事総長や次長検事それから検事長ですね。役職定年の延長に政治家の裁量権を認めてしまったことだと。検察人事が為政者の思いのままになりかねないと問題を指摘されておりましたね。かねて、三権分立の問題ですね。一応、検察というものは行政府の中ですが控訴提起権を持って裁判を起こせますからこれはやはり司法に近いということでこれが問題にされてきた。政治家らは中立にならないといけないということが指摘されてきました。加えて問題なのは会長も強調されていたんですが検察現場では有能な方、優秀な方々がこういった事態をどうご覧になっているか。政治に振り回されてしまうことなんです。旧知の私の大阪の弁護士元検察のOBに取材してみたんですが、この方もこうおっしゃっていました。今回の制度は政治家の顔をうかがうほんのひと握りの検察エリートのための制度設計になっている。職務の公正さ、厳格さを大きくゆがめて国民の検察組織への信頼をも損ないかねない。大変、憤っておられたんです。検察というのは秋霜烈日です。権威、節操、意思が厳かであることの象徴なんです。検察というのは誇り高いプロの集団だと思うんですね。社会正義を実現しようという方がたくさんいらっしゃる。安倍政権は緊急事態宣言によって私権の制限ということを我々国民に求めてきた。大変苦しい思いをしている国民の方たくさんおられるんです。これも権限の行使。検察官、幹部検察官の任命権は内閣にありますからこれも権限の行使権力の行使なんですね。権力の行使というのは本来大変、恐れ多い気持ちをもってこれを厳粛にかつ誠実に行使するのが権力の行使なんです。恐れ多いとまず思わないといけない。市民の怒りの底流には安倍政権の権力行使があまり誠実さ真摯さがないのではないか。権力、公権力の使い方その道理をはき違えているんじゃないかということを憤っていらっしゃる方も多いと思うんですね。危機において重要なのは市民の政府や政治に対する信頼ですよ。今回のこの法改正がその基盤である政府への信頼を掘り崩すことにならないか私は大変強く懸念しております。

【検証部分】
検察庁法案改正に関する放送を取り上げました。
今回の法案は世論を二分するものとなりました。
反対意見ばかりが取り沙汰されることが多いように思われますが、この件に関しては実に様々な意見を飛び交っています。

例えば、検察官の定年延長は立憲民主党が求めていたものである、というような意見もあります。
立憲民主党の支持母体の一つである自治労などはこの法案が先送りになったことで批判的な意見がでているようです。自治労は地方公務員の労働組合です。

次に政治介入という論点に絞ってこの問題を見ていきます。
今回の放送では安倍政権の検察人事による政治介入ばかりを取り沙汰しています。
太田氏も「検察は行政機関」と一言だけ言っていますが、もう少し言及します。

検察は行政機関です。つまり内閣が人事などに介入しても原則、問題はありません。
しかし、太田氏が述べているように検察は司法の面もあります。
政治家という権力に立ち向かう必要がありますから、中立性も必要です。
それはそうなのですが、ここは議論が必要な点であるといえるでしょう。
太田氏は安倍政権を全否定しているといっても良いでしょう。

どういった議論が必要なのか。
たとえば検察の管理です。これまで検察は数々の問題を起こしてきました。
2009年の郵便不正事件では証拠物件のフロッピーディスクが書き換えられ、当事者の特捜部主任検事と上司の副部長、部長が逮捕されています。
小沢一郎氏の政治資金規正法違反事件では虚偽捜査報告書問題が発覚し、刑事告発を受けています。
このような経緯があるため、検察を管理する必要があるのではないかという意見もあります。
官僚の管理は政治がするしかありません。
政治介入がどこまで認められるべきでどこまで中立性が求められるのか、非常に難しい問題なのです。

こういった論点や意見を十分に紹介せず、安倍政権による政治介入ばかり問題にした放送は以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります

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