2020年7月28日 報道ステーション

2020年7月28日 報道ステーション

7月28日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた放送であったか

まずは放送内容を見ていきます。
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【スタジオ】
小木逸平アナウンサー(以下小木アナ):地上配備型の迎撃ミサイルシステム、イージス・アショアの配備計画停止を受けまして今、再び浮上しているのが敵の基地を攻撃する能力です。今まで慎重論も強かったんですが今、自民党内では、この能力を持つべきだという議論が高まってきています。

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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):今朝、非公開で行われた自民党の会合。

岩屋毅前防衛大臣『例外的な場合にのみ敵基地への打撃が許される。そこを超えると自衛隊全体が攻撃型の体系、装備になっていく』

ナレ:議論されているのは敵基地攻撃能力についてです。敵基地攻撃能力とは相手国が日本への攻撃に着手した場合に戦闘機やイージス艦からミサイルを発射しミサイルの発射拠点など敵の基地を直接攻撃する能力のことです。何をもって日本への攻撃の着手と判断するのか見極めが難しく攻撃が着手されていない段階で行えば国際法に違反する先制攻撃にもなりかねません。専守防衛から逸脱するとの慎重論も根強くこれまで、この役割はアメリカに委ねられてきました。

安倍晋三総理大臣(以下安倍総理)『敵基地攻撃についていえば私の問題意識としては、それをずっとアメリカに頼り続けていいのだろうか』

ナレ:今回、再び議論が高まったきっかけはイージス・アショアによるミサイル防衛計画の突然の白紙撤回です。発表の3日後国会が閉じると…。

安倍総理『我が国の防衛に空白を生むことがあってはなりません。新しい方向性をしっかりと打ち出し速やかに実行に移していきたい』

ナレ:安倍総理は敵基地攻撃能力の保有も視野に安保戦略を見直す考えを示しました。その後の国会閉会中の委員会で日本への攻撃の着手をどう判断するのか問われた河野大臣は…。

河野太郎防衛大臣『その時点の国際情勢、相手が明示されたい意図、攻撃の手段・態様などによるものであり、個別具体的な状況に即して判断すべきもの』

ナレ:具体的な判断基準は示しませんでした。一方、安倍総理の発言を受けて議論を始めた自民党は早速政府に提言を行う予定です。今日議論された政府への提言案では相手領域内で攻撃を阻止する能力を含め早急に検討するとして事実上、政府に敵基地攻撃能力の保有を求めています。北朝鮮など周辺諸国のミサイル技術が向上していることも指摘しました。政府は新しい安保政策の方向性を9月中にまとめる方針です。

【コメンテーターによる解説】
徳永有美アナウンサー:太田さん敵基地を攻撃できる能力についての議論なんですけど、どのようにご覧になっていますか。

共同通信社編集委員・太田昌克氏(以下太田氏):私は本質的な要素が抜け落ちているように思えてならないんですね。といいますのは日本と東アジア全体をどういうふうに平和と安全ですよ。これを長期的にどう、いかにして確立していくか。これが、やっぱり根源的かつ核心的な命題だと思います。単にイージス・アショアがだめだから、別の防御型兵器を買うとか、あるいは平和憲法に合致する形で敵基地攻撃能力を持つとか、何か私には小手先の議論に見えて仕方がないんです。確かに、この2〜3年で日本を取り巻く安全保障環境は非常に悪くなった。米朝交渉の失敗で北朝鮮の核保有がどうも固定化しつつあるんですね。それから最近の米中対立の深刻化でますます中国は軍事路線に走っていくわけです。じゃあ、だからといって敵基地攻撃能力なのかという話なんですね。それを日本が持つことによってどういうリスクがあるのか。このエリアに、どういう否定的な帰結をもたらすかそういうことがきちんと議論されているのかという問題なんですね。抑止力、抑止力といいますと勇ましい議論が横行してしまいますが私は本質をもっと考えなきゃいけない。軍事力もさることながら外交戦略ですよ。どういう外交をこのエリアで進めることで抑止力、安全と平和を築いていくか、まずそこがないといけないんです。そのうえで、軍事力なんですよ。軍事力ありきじゃないと私は思うんです。私はまず外交戦略を論じたうえでそれで軍事力、外交力そして、経済力ソフトパワーで抑止力を構築していく。拙速した結論を急ぐのではなくアジア全体をまさに俯瞰し大局観を持った戦略的な議論で今、政策論議を進めるべき時である。これを機会にしっかりと議論をして。議論は必要です。日本にとって最適な答え、解を見つけていきたいと思います。

小木アナ:そういった俯瞰的な議論も必要ですし、どう考えても相手が日本に向かって確実に撃つぞというのが判断できるのか。

太田氏:探知能力、これ大変高い能力が必要なんですね。

【検証部分】
ここでは、敵基地攻撃能力を日本が保有することの是非について解説していた太田氏の発言について検証していきたいと思います。

太田氏は「日本と東アジア全体」の「平和と安全を長期的にどう、いかにして確立していくか」が「根源的かつ核心的な命題」であるとしています。

その上で「イージス・アショアがだめだから、別の防御型兵器を買うとか、あるいは平和憲法に合致する形で敵基地攻撃能力を持つ」という議論は「小手先の議論」であるとしています。

敵基地攻撃能力を持つことでどのようなリスクがあるのかを議論し、
「外交戦略を論じたうえでそれで軍事力、外交力そして、経済力ソフトパワーで抑止力を構築していく」べきだと論じます。

今は拙速に進めるべき時ではなく、
「アジア全体をまさに俯瞰し大局観を持った戦略的な議論で今、政策論議を進めるべき時」
であると解説しています。

要するに、敵基地攻撃能力の保持は慎重に議論していこうということです。

敵基地攻撃能力や防御型兵器保有などの議論が小手先の議論なのかでしょうか。
太田氏の言う通りに日本を取り巻く東アジア情勢を見ながら検証していきます。

日本にとって最も脅威となってくるのは北朝鮮と中国です。
北朝鮮は日本国民を拉致し、日本海に向けてミサイル実験を繰り返し、核兵器の配備まで進めています。
日本には「日本列島4島を主体(チュチェ)の核爆弾で海に沈めなければならない」などと挑発を繰り返しています。

さらに北朝鮮は核廃棄をめぐる合意を何度も放棄し、今に至ります。
北朝鮮は軍事力を持たない国と交渉をする気を持っていないといえます。国際政治的には当たり前と言えますが。

2002年、日本の拉致被害者5名が日本へ帰国しました。評論家の江崎道朗氏によれば、この時日本はアメリカの軍事力を借りて交渉に臨んでいたのであり、アメリカの機動艦隊が待機していたといいます。
日本との交渉に応じなくてもアメリカとの交渉に応じるのは軍事力によるものです。

もう一つの脅威である中国はどうでしょうか。

中国は日本の領土である尖閣諸島近海で挑発行為を繰り返しており、今年も4月14日から8月2日まで111日連続で尖閣諸島近海を航行しました。

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尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海外側にある接続水域で、3日に中国海警局の船の航行が確認されなかったことが4日、海上保安庁関係者への取材で分かった。平成24年9月の尖閣諸島国有化以降、最長となっていた周辺海域での連続航行日数は111日で途切れた。

《産経新聞 8/4(火) 尖閣周辺に中国公船現れず 連続航行途切れる
https://news.yahoo.co.jp/articles/5a062f1f78f4228d3d4bc149b76d98c634df6719
》より抜粋
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この行為に対して日本は抗議を繰り返していますが、中国が挑発行為をやめないことから現状の日本政府の外交力が分かります。

北朝鮮によって日本国民の人権が蹂躙されている現状と、中国の日本への攻撃的な姿勢が変わることはありません。

国際情勢を我々が生活する町に置き換えて考えてみます。この町は国際情勢と同じく、警察が存在せず、自分の身は自分で守るしかありません。
もし近所に包丁を持った不審者がいたら、普通は玄関に鍵をかけます。鍵をつけるだけでなく、犠牲者が出ないように、身を守る方法も議論するでしょう。

このように安全保障の議論は命を守るためのものであります。決して「小手先の議論」とはいえないのです。

今回の放送はこのような日本の脅威について十分に取り上げた放送とはいえず、下記の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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