2020年7月20日 報道ステーション

2020年7月20日 報道ステーション

7月20日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた放送であったか

まずは放送内容確認していきます。
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【スタジオ】
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):アメリカと中国。新型コロナや香港問題などで激しく対立する両国ですが、アメリカ政府は来月からファーウェイなど中国のハイテク企業と付き合いのある会社とは取引しないことを決めました。対立を深める両者の間で今、日本も難しい選択を迫られています。

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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):今月に入ってからずっと米軍の原子力空母2隻が南シナ海で演習を行っています。13日には、南シナ海で実効支配を強める中国を国際法違反と真っ向から批判するなどアメリカの対中姿勢がより鮮明になってきています。そして、米中が覇権を争っている次世代通信規格5G。その対立が新たな局面を迎えました。

トランプ大統領『私が率先して多くの国を説得してきた。ファーウェイ製品を使わないようにと。安全保障上の脅威なのは明らかで我々とビジネスをするなら使わないことだ』

ナレ:ファーウェイをはじめとした5つの中国企業の完全排除に動き出したのです。すでにこの5社はアメリカ政府との取引ができない状態ですが来月からは5社の製品を使っている全ての企業が政府との取引を禁止されることになります。更に、こんな措置も。

アメリカ・ポンペオ国務長官『ファーウェイなど中国の技術系企業の一部従業員に対してビザ発給を制限する。彼らは人権侵害をする体制を支援している企業だからだ』

ナレ:ここにきてアメリカに加勢した国があります。イギリスです。政府が国内の通信各社に対してファーウェイの5G設備の購入を禁止すると発表。すでに購入している場合も2027年までに排除しなければなりません。もともとイギリスはファーウェイ製品を容認する方針でしたが急に態度を一変させた形です。

イギリス・ダウデン“デジタル”担当相『米国がファーウェイに追加制裁を科し状況が変わったため、われわれの方針も変わった』

ナレ:方針転換の背景には国家安全維持法によって香港の自治権を骨抜きにしようとする中国に対する牽制の意味合いがあるとみられます。ただ、中国に対するアメリカの強硬姿勢の高まりとともに同盟国への圧力も強まっていたともみられています。ドイツなど、ヨーロッパにはファーウェイ導入派の国が多くありますがイギリスが排除に回ったことで追従する国が出てくる可能性も指摘されています。着々と進められる対中国包囲網。これに対し、中国は…。

中国外務省・華春瑩報道局長『アメリカは“子分”を集めて中国の民間企業の妨害を企てている。米国の行動は“クリーン”ではなく、本当に卑劣な手段、汚い手を使っている』

中国・劉暁明駐英大使 『ファーウェイに対するイギリスの決定には落胆しているし、間違っている。落胆というより胸が張り裂ける思いだ』

ナレ:日本も決して無関係ではありません。アメリカと中国どちらを選ぶのかと迫られている状況です。

【コメンテーターによる解説】
徳永アナ:太田さん日本は両国からこう迫られてどう対処していけばいいんでしょうか。

共同通信社編集委員・太田昌克氏:私はアメリカ主導の強硬路線一辺倒だけではだめだと思うんです。やっぱり結果を出すために日本は隠された役割があるんじゃないかと思うんです。対中融和というわけにはいきませんよ。しかし、日本独自の静かな外交を展開していくべきだと思うんです。もちろん、尖閣の問題とか譲れないところはしっかり主張して紛争回避のコミュニケーションをとりながら事態に対処していくんですけどこれから秋ですよ。例えばなんですけれどもASEANプラス日中韓とか東アジア首脳会議日中韓首脳会議これ、秋以降コロナもありますけれどマルチ外交の季節が始まるんです。そういった外交の場を使って安倍総理が水面下で静かなメッセージを送っていく行動変容を習近平さんに促すんですね。香港の国家安全維持法も運用をもっと自制してくれ、民主化を完全排除するんじゃないというメッセージをしっかり送りつけていく。サイバーや宇宙やAIそれから核の問題とかいろんな問題とかこれ対話していこうというメッセージです。閣僚や実務者財界もありますからいろんなレベルで水面下で静かな外交をやっていく欧米とは違って長い歴史を持つ日中関係ですからその日中関係をテコにした日本独自の外交。安倍総理の外交の集大成がまさに問われていると思います。

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【検証部分】
アメリカを中心とする中国への対抗姿勢を示す各国の様子が紹介され、日本はどのような立場を取るべきかという論点について解説が加えられていました。

太田氏は「私はアメリカ主導の強硬路線一辺倒だけではだめだと思う」となぜかアメリカに対して否定的な主張をします。なぜアメリカを中心とした対中強硬路線を「だめだと思う」のかは分かりません。

その上で「日本独自の静かな外交を展開」する必要があるとしています。

曰く、今秋以降に開催されるASEANプラス日中韓とか東アジア首脳会議日中韓首脳会議などの場所で「香港の国家安全維持法も運用をもっと自制してくれ、民主化を完全排除するんじゃないというメッセージをしっかり送りつけていく」ということが重要とのことです。

太田氏は「結果を出すために日本は隠された役割」を果たすためにこのようなことを行う必要があると述べています。

では次に気になる論点は中国が日本から発せられたメッセージで行動を変えたことがあったか?です。

日本が中国に対してメッセージを発して効果を発揮したことは皆無といってよいです。
特に近年、中国は日本に対してどんどん強硬的になってきています。最近も尖閣諸島周辺で中国海警局の船が領海侵入したことに日本が厳重に抗議しましたが、中国は「絶対に受け入れない」と主張し、その後も尖閣諸島周辺に中国船が幾度となく現れています。

日本がメッセージを発することも重要でしょうが、それだけで中国が動くと考える方がもはや不自然です。

それに対して太田氏が否定的なコメントをしたアメリカが行っている中国への対応はより効果があるものと言えます。

中国が制定した国家安全維持法に対して、中国当局や取引のある金融機関に制裁を加え、資産凍結やビザ発給停止、取引停止などが可能となる「香港自治法案」が米上下院で全会一致にて可決されています。
テキサス州ヒューストンにある中国総領事館もスパイ活動の拠点になっているとされ、閉鎖されました。
これほど強固なメッセージを発しているアメリカに同調しない理由がどこにあるのでしょうか。

アメリカだけでなく、イギリスやオーストラリアなど反中国的な国は少なくありません。
強調して中国を封じ込める戦略に日本も積極的に参加すべきといえるのではないでしょうか。

このような論点を紹介しない放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けてまいります。

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