2020年5月25日 報道ステーション

2020年5月25日 報道ステーション

5月25日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・政治的に公平な放送であったか
・様々な論点を取り上げた放送であったか

まずは放送内容を見ていきます。
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【スタジオ】
森葉子アナウンサー:賭けマージャン問題で辞職した黒川前東京高検検事長の処分について、法務省内では重い処分にするべきだといった意見もあったそうなんですが、最終的には総理官邸が懲戒処分は不要と判断していたことが関係者への取材で分かりました。

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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):賭けマージャン問題で辞職した東京高検の黒川前検事長。懲戒よりも軽い訓告という処分は一体誰が決めたのか。森大臣は先週、内閣が決めたと説明していました。

森雅子法務大臣(以下森大臣)『最終的には任命権者である内閣において決定がなされた』

ナレ:しかし同じ日、安倍総理は異なる説明をしていました。

安倍晋三総理大臣(以下安倍総理)『検事総長が事案など諸般の事情を考慮して、適切に適正に処分を行ったと承知している』

ナレ:検事総長が訓告を決めたとする安倍総理。しかし、関係者によれば法務省内では訓告より重い懲戒処分にすべきという意見があったといいます。関係者によればそれを官邸が懲戒処分は不要と判断したというのです。内閣が決めたとしていた森大臣は今日になって検事総長が判断したと説明を変えました。

森大臣『法務省としては訓告が相当であると考える旨を伝え、検事総長において「訓告が相当と判断した」という連絡をいただいた。総理のおっしゃった内容と私の答弁には矛盾はないと考えている』

ナレ:今日、安倍総理は…。

安倍総理『検事総長においても「訓告が相当である」との判断をして処分をしたものと承知している。もちろん対応を了承しているので、この処分について、総理大臣として行政の長として責任を持っている』

ナレ:いずれにせよ、訓告処分では黒川氏に退職金が支払われます。

安倍総理『退職金については訓告処分に従って減額されると承知している』

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【コメンテーターによる解説】
徳永有美アナウンサー:太田さん、総理なんですが今日の会見で責任は私にあるというふうにおっしゃっていたんですけれども本当に知りたいのはどういった経緯でこの処分が下されたのかという部分だと思うんですがいかがですか?

太田昌克氏:今日の森法務大臣の答弁も先週から少し変わってきましたよね。何が真相なのか。私は、まだ全然説明責任は尽くされていないと思うんですね。プロセスも大事なんですけど大事な、重要な事実は2つあると思うんですよね。2つの閣議決定ですよ。
1つは黒川さんを異例の定年延長として最初の閣議決定。
それから検事総長や検事長の役職定年延長という特例措置を決めた2つ目の閣議決定なんですよね。
この2つの決定はコロナ禍で皆さんが大変な中で行われた内閣による決定なんです。
内閣、すなわちその首班である安倍総理が責任を持って決定されたという事実は動かしようがないんです。
そうした中で今回法務省から訓告相当だと上がってきたとおっしゃいますけども任命権者は内閣であって安倍総理ですから、訓告相当が不適切だといったらプロセスもさることながら中身をひっくり返して懲戒にすべき内容なんですね。
やっぱりつまるところ事の重さの重大性、重要性ですよ。
それから、世論の声。ここに政治が真摯に向き合っていないんじゃないか。
総理の政治指導力が本当に問われていると思いますね。

【検証部分】
この日も黒川氏の処分が妥当であるか、という報道がなされていました。

しかし、前回のレポートでも取り上げたように、この日の放送ではこれまでの官僚の不祥事について取り上げることはしていません。

元文科省事務次官の前川喜平氏は組織ぐるみで天下りをしていた文科省の事務次官だった人物ですから、天下りの問題の責任があります。
前川氏は懲戒処分となっていますが、前川氏は国家公務員法に違反していることが大きな懲戒処分の理由であると思われます。
国家公務員法は省庁の斡旋や在職中の求職活動を禁止しているからです。
前川氏は5000万円以上の退職金も受け取っています。

一方の黒川氏が行なっていたとされる賭け麻雀も確かに違法行為です。
しかし、小額の賭け麻雀は罪には問われないケースは多いといわれています。
仲間内で少しお金をかけたりするといった行為の全てを罪に問うことは物理的にも難しいことは想像できます。
黒川氏の行為が違法性のあるものだったことは間違いありませんが、国家公務員法に違反して天下りを斡旋していた前川氏とは罪の重さが異なります。

前川氏の処分が妥当なものであったとするならば、黒川氏の処罰が懲戒処分となるのは処罰が些か重いと思われます。

次に太田氏は検察幹部の定年延長について言及していますが、この点は黒川氏の賭け麻雀や処罰とは切り離して議論すべき問題といえます。

検察と政治の問題はこれまでのレポートでも取り上げてきました。
組織図から見て検察は行政機関であるため、検察の人事に内閣が介入することはおかしいものではありません。
しかし、検察は司法の面もあるため露骨な人事介入は確かに望ましくない、という意見もあります。

また検察にはこれまでも不祥事がありました。
2009年の郵便不正事件では証拠物件のフロッピーディスクが書き換えられ、当事者の特捜部主任検事と上司の副部長、部長が逮捕されています。
小沢一郎氏の政治資金規正法違反事件では虚偽捜査報告書問題が発覚し、刑事告発を受けています。
このような経緯があるため、検察をきちんと管理監督していく必要があるのではないかという意見もあります。
検査と政治は非常に難しい問題を孕んでおり、こういった様々な論点があります。

このような論点を提示できていない放送は下記の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けて参ります。

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