2018年1月16日 報道ステーション

2018年1月16日 報道ステーション

2018年1月16日 テレビ朝日「報道ステーション」の報告です。

今回の放送で一番時間を割いた話題は「芥川賞、直木賞発表」についてのニュースでした。
授賞式や受賞者へのインタビューの様子などがVTRで紹介されていましたが、特に放送法違反や印象操作は見つかりませんでした。

さて、今回の放送回で検証していきたいのは「ICAN事務局長訪日」について報じた部分です。

詳しく見ていきます。

【VTR前振り】
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小川アナ「去年国連で採択されました核兵器禁止条約。これに貢献したとしてノーベル平和賞を受賞した国際NGO、ICANのフィン事務局長が来日しまして国会議員との討論会を行いました。日本ほど核廃絶に取り組むのにふさわしい国はない、として条約への参加を強く訴えたんですけれども、これに与野党の議員はどう答えたのでしょうか。」
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小川アナが昨年ノーベル平和賞を受賞したNGO団体、ICANの事務局長の訪日を伝え、画面上のテロップには「平和賞ICANvs日本の議員」の文字が踊る中、VTRがスタートします。【VTR】
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フィン事務局長「日本が核軍縮問題でリーダーとなる素晴らしいチャンスです。」
ナレーターはフィン事務局長が与野党の代表者を前に、日本の核兵器禁止条約参加を訴えたと伝えます。
フィン事務局長「もしあなた方が金正恩委員長の核保有を不安に思うのなら、それは核兵器そのものに不安を抱いているからです。核兵器は平和と安定をもたらさないことをあなた方は知っているのです。アメリカも核抑止力も世界にある15000発の核兵器も北朝鮮の核開発を止められませんでした。核抑止が神話であることは明らかです。北朝鮮の核開発を抑止できず拡散を助長したのです。」
さらに、フィン事務局長は日本が条約に参加した場合の効果や影響についての調査を国会に依頼したと伝えられます。

これに対して、外務省の佐藤正久副大臣が
佐藤副大臣「核兵器禁止条約がいかに核廃絶という崇高な目的を掲げるものであっても、条約に参加すれば米国による核抑止力の正当性を損なうことにもつながります。これは日本国民の生命や財産が危険にさらされてもよいということと同じと考えております。日本政府とすれば我が国のアプローチと異なる核兵器禁止条約に署名することはできませんが、現実的に核軍縮を前進させる道筋を追求する考えであります。」
これに自民党も追随したと伝え
武見敬三議員「軍事的脅威にきちんと対応できるような抑止力を含めた我が国の防衛体制を整えないと国民の命をしっかりと守っていくことはできないわけであります。」
一方、連立与党の公明党は山口那津男代表が発言。
山口代表「核兵器を禁止するという起案が確立されたこと。これは人類史に画期的な意義がある。大局的な視野から核兵器禁止条約の趣旨に賛同いたします。国会で広い立場で議論を重ねていく。大いに議論を深めていくことにも賛同したいと思います。」

発言は野党議員へと続きます。
立憲民主党の福山哲郎幹事長は
「核兵器禁止条約がより現実的なアプローチだということを確認したのは、フィン事務局長から日本の今の現状についてしっかりとした情報分析がありその中でも核兵器禁止条約の有効性があるのだという主張をされたことは非常に大きな指摘だったと考えます。核兵器禁止条約の効果を調査していくということは日本としてのアプローチとして非常に有効だと考えました。」
希望の党の玉木雄一郎代表は
「フィン事務局長の活動には敬意を表します。条約の考え方と現実の溝を埋めるための解決策を見つけられるよう、解決策を目指して協力したいと思います。」

ナレーターは野党内でも立憲民主党や共産党が国会での議論に賛同する一方、希望の党はその問題に触れなかったと伝えます。

その後VTRは、小川アナによるフィン事務局長へのインタビューへと切り替わります。
小川アナ「佐藤外務副大臣と与党議員は核抑止力の重要性を訴え、北朝鮮の脅威に対し条約は非現実的だと述べたがどう思うか。」
フィン事務局長「日本政府がまだ条約に署名したくないということは分かっていたのでそうした考え方の政治家がいることは不思議ではありません。でも私たちは楽観的でもあります。結局は日本の人々が決めることですから。日本の人々には声を上げてほしいのです。大きな声で、そして政治家に人々が何を望んでいるのか知らせるのです。」

そして、フィン事務局長が日本に滞在する16日~18日の間で安倍総理との面会を要請していたことに触れました。また、ナレーターは東欧を歴訪後の安倍総理が17日の夕方に帰国することにも触れたうえで、「日程が合わない」として面会に応じなかったと伝えました。
菅官房長官「日程の都合上難しいということでありますし、それ以上でもそれ以下でもありません。」
その後、共産党の小池晃書記局長のコメントも伝えます。
小池書記局長「本当に恥ずかしいと言わざるを得ません。(フィン氏は)18日までいらっしゃるわけでしょ。安倍総理は17日に帰国するわけでしょ。会えるじゃないですか。なぜ会わないのか。あなたは本当にどこの国の首相なんですかと。」

再び、フィン事務局長が登場し
フィン事務局長「残念ながら日本の総理とは会えなかった。もちろん落胆している。日本は『橋渡し役』を目指しており独自の経験もある。だからこそ総理と日本政府と話をして今後の取り組み方や二度と原爆の被害が起こらないよう議論をしたかった。」
この発言を最後にカメラはスタジオへと戻ります。【スタジオトーク】
富川アナウンサー「今日は日程の都合上、総理はフィンさんと会えなかった。ということですね。」
後藤謙次氏「だけど非常に私一言で言うともったいないことをしたなと思いますね。アプロ―チは違うんだけれども、日本政府として核廃絶という目標は一緒なんだということを世界に向けて発信する、絶好の機会だったわけですね。それをあえて避けてしまった。おととしの5月ですけれども、安倍総理はオバマ大統領と一緒にですね、広島で核なき世界を目指そうと演説をしたわけですね。あの演説は何だったのかと。こういわれても仕方が無いと思うんですね。」
富川アナ「アプローチは違えど目標は一緒のはずでしたからね。」
後藤氏「それはぜひ言ってもらいたかったと思いますね。」
富川アナ「フィンさんもぜひ議論したかったと残念さを口にしていましたけれども、日本の人たちに対するメッセージも伝えていましたね。」
小川アナ「そうですね。世論の力を非常に期待されていまして、あとは私たちがどうやって受け止めて、どう考えていくのかということを非常に考えさせられたんですけれども、考えていくたびにももっともっと材料が欲しいなと今回改めて思ったんですね。各党の意見表明はなされていたんですけれども、今回討論会といえど討論までは行き着いていなくてですね、例えば佐藤外務副大臣がこの核兵器禁止条約に参加しているのは核の脅威にさらされていない国ばかりだと訴えたのに対し、フィン事務局長も反論というのを聞けずじまいでしたし、一方で野党議員が条約に日本が参加して失うものは何なんですかと訴えたところ、それに対する政府の説明もないままでそうしたところの先の深い議論というのをこうしたオープンな場で聞きたいなと。そしてそれを材料にして色々考えたいなという風に思ったんですね。」
富川アナ「もうちょっと先ね。そっから聞きたいんだというところが聞けなかった。」
小川アナ「建設的な議論というのは今回いかなかったのでそれをぜひ国会の場などで聞きたいですよね。」
富川アナ「普段からそうですよね。国会の場というのは。」
後藤氏「国会というのはどうしても一方通行になってしまうんですけれども、それでもいろんな工夫で議論を盛り上げていく、道があるんですね。」
富川アナ「唯一の被爆国としてやっぱりこういうしっかり皆さんがどう考えているのかというのを議論していただいて私も考えたいというのもあるんですけれども、唯一の被爆国としては、やっぱり安倍総理そこのトップですから、ノーベル平和賞受賞した方に対してね、団体に対しての祝辞っていうのはこれ聞きたかったかもしれません。」
後藤氏「そうですね。ノーベル平和賞っていうのは数あるノーベル賞の中でも特別なものですよね。このノーベル平和賞に対する敬意というものを表すべきだと思うんですね。安倍総理自身は自らの敬愛する岸信介、祖父のですね。元総理の弟の佐藤栄作さんがノーベル平和賞を受賞してるわけですね。それも普通の政治家と違う部分があってですね。この部分についても大きな失点をしてしまったと言わざるを得ないと思いますね。」

【検証部分】
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今回の放送で問題があると考えられる要因は、大きく分けて2点あげられます。
1点目が日本政府の核兵器への立場について、視聴者に誤った印象を与えること。
2点目が安倍総理の面会拒否を執拗に攻め立てていること。この2点です。

まず、冒頭から小川アナは、今回の討論を「平和賞」ICANと日本の国会議員との討論だと言及し、テロップも「VS」という表記を用いて対立を強調していました。「平和賞」という肩書きのあるICANと日本の国会議員を対局構造で描写することで、あたかも「日本の国会議員=平和を否定している」という誤った印象を与えてしまうように感じました。
これでは、佐藤副大臣や武見議員の発言も、「平和に対して否定的な発言」としてとらえられてしまう可能性があります。特に佐藤副大臣が主張していた「異なるアプローチでの核軍縮」はかねてからの日本政府の方針を主張したものであり、「核軍縮」という方向性はICANと共通しています。一部スタジオ内のトークで言及されていたものの、このままのVTRでは、核軍縮を目指すという点ではICANも日本政府も方向性が同じである、という事実が視聴者に正確に伝わらないのではないでしょうか?

また、討論後のフィン事務局長の声を聞きながら、他の出席者(武見議員など)の意見を聞かなかったのは、公平性の観点からも疑問を感じるものでした。スタジオで小川アナは「考えるための材料が欲しい」と言っていましたが、果たして報道ステーションはその材料を視聴者に提供しきれているのでしょうか。

 次に、安倍総理の面会拒否を否定的に論じていることについてです。富川アナや後藤氏は安倍総理の面会を繰り返し求める理由の一つをノーベル賞受賞団体への「敬意」だと述べていましたが、日本の国会議員が討論に応じていることは団体への敬意に値しないのでしょうか?しかも、政府は副大臣を討論に出席させ、「核廃絶への別のアプローチ」を説明させました。このような点からも政府はICANへの説明責任を果たし、尊重をしていると考えることは難しくはないはずです。

以上の2点の問題から、今回の放送は放送法や印象操作に抵触している可能性があります。

今後も監視を続けます。

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