TBS「サンデーモーニング」、2020年7月19日放送回の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① 「風を読む」にて米軍基地とコロナについて報道された部分
② 看護師の待遇、Go Toキャンペーンについて報道された部分
③ コロナウイルスの感染拡大と後遺症について
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
① 「コロナの後遺症と感染拡大」について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
新型コロナの感染拡大によって沖縄が抱えるさまざまな問題が浮き彫りになりました。
今月4日、アメリカの独立記念日に合わせて行われた沖縄県うるま市のバーベキューイベントでは、音楽に合わせ密な状態で体を揺らし踊る人々の動画が撮影されました。参加者はおよそ700人、多くのアメリカ兵が含まれていました。米軍基地で起きているコロナ感染拡大の要因ではないかと物議を醸しましたが、イベント主催者は「動画内のようなダンスは短時間で、会場内には消毒液の用意や手を洗えるトイレもあった。ソーシャルディスタンスを取ることもできた。」と否定します。一方で、沖縄の米軍幹部は大人数による集会でソーシャルディスタンス確保の指示に従わなかったことなどが感染拡大の要因と指摘しています。沖縄県内では今月に入り普天間飛行場とキャンプ・ハンセンなどで米軍関係者の感染が拡大しており、現在その数は143人に上っています。さらに、感染した米軍関係者のうち46人が基地の外で行動していたことも明らかになっています。
15日沖縄県・玉城知事は「アメリカ合衆国独立記念日の前にパーティーやイベントが行われ、そこから爆発的な感染に広がったのではないかと懸念から考えると防疫態勢が本当に完全なものであるどうか大きな疑念を持たざるをえない」と述べました。
16日には、基地に出入りしていたタクシー運転手の感染が判明し、米軍関係者から県民に感染した初めてのケースとみられます。現在沖縄県内の感染者数は149人となっています。県民は不安を口にし、感染経路など情報開示を求めています。
米軍基地での感染拡大の背景について防衛ジャーナリストの半田さんは「7~8月にかけて世界規模の人事異動があり、大勢の米兵や家族 軍属などが日本にやってきている。基地から基地にきた場合だと症状が出ていなければPCR検査を受けることがない。表の扉を政府が閉めているが、裏口に米軍用の入り口があってそこは全開。」と話しました。
現在、感染者・死者数とも世界最多のアメリカは日本への入国拒否の対象国となっています。しかし、米軍関係者は軍の航空機などで直接、沖縄の基地に入ることができます。それを可能にしているのが日米地位協定で、第9条には「合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される」とあり、米軍人はパスポートがなくても自由に出入りできることから、日本の検疫も免除されています。
当初米軍は感染者数など非公表としていましたが、沖縄県の強い要請によってようやく公表に踏み切るとともに、今後入国する全ての軍関係者にPCR検査を義務づける方向で調整中です。
これとは対照的だったのが韓国駐留の米軍です。在韓米軍は感染者の身分や行動を説明した資料をホームページで明らかにするなど、積極的な情報公開を行っています。
半田氏は「在韓米軍と在日米軍はまるで違う国の軍隊に思える。なぜかと言うと相手国政府の対応だと思います。韓国の場合どれだけ観光政府が駐留経費を負担するか、そういうやりとりを巡って緊張関係にある。一方日本の場合だと米軍が使っている施設について建設費も負担する。世界一手厚い特別協定と言われている。そう言った対応をしている。与しやすい日本政府というふうに見られている。」と話します。
さらに今、米軍基地で広がるコロナ感染は別の社会問題まで引き起こしています。
現在、沖縄の基地で働く日本人従業員はおよそ9000人。こうした基地従業員の子どもに対し、県内にある2つの学校が登校自粛を呼びかけていました。 全駐労沖縄地区本部の書記長は「こうしたケースが風評被害につながる。子どもたちに被害がないようにしてほしい」と訴えています。16日、米海兵隊は感染者の基地内での行動履歴をホームページ上に公開しましたが、厚木や岩国でも感染確認されており、改めて日米地位協定の問題が問われています。
関口(要約):沖縄の問題だけじゃなくて、日本全国に基地はありますからね。こうなると必ず地位協定の問題が出てきて、これが解決できないですね。
寺島氏(要約):地位協定というものと真剣に向き合わなければならない。 1点すごく気になること、大統領選で追い詰められているトランプが切ってくるカードとしての戦争カード。イランか北朝鮮か台湾海峡か、何らかの形で起死回生のカードとして戦争内閣という形でもって戦うのが一番有利に、逆転できる。極めて今、議論されているんです。
目加田(要約):防衛予算の使い方、日米関係の「言われたら何でもアメリカ側の意向に従う」と見える日本の安全保障の在り方が、日米地位協定に当然影響を及ぼしていると思う。アメリカ側と交渉して米軍、沖縄や岩国など米軍が駐留している地元の方たちの不安を拭い去る努力を政府には是非してほしいと思います。
安田氏(全文):沖縄取材でお世話になっている方なんかに伺うと、米軍というのは、よき隣人というふうに言っておきながら結局自分たちのことしか考えていないんだと、憤りの声なんかを耳にしたりするんですよね。感染拡大の懸念ももちろんなんですが、例えば、基地の中で適切に対応しない、情報を適切に共有しないことによって、米軍基地内で働いている市民の方、基地の外でも米軍関係者と日常的に接する人たち、その家族があの人たちも感染しているんじゃない? ということで、冷たい目で見られる、排除されるということが現に起きてしまっているわけですよね。こうした偏見を助長しているということも含めて、沖縄県が要請していくことももちろん大切なんですが、やはり日米の協定の前で立ち尽くすということではなくて、こういうときこそ政府が毅然としてアメリカ側に対応していく必要があるのではないかと思います。
涌井氏(要約):首都圏の空の半分ぐらいを横田空域が占めて、現実には米軍管理になっている。同じ敗戦国でもイタリアやドイツはとっくに大使館の土地以外、管理権を回復している。
明治5年に岩倉具視以下、閣僚のほとんどが2年間もかけて不平等条約改正のためにヨーロッパやアメリカに行った。こうやって36年間かけてようやく不平等条約を改正した。その努力を学んでほしいと思います。
青木氏(全文):VTRにもありましたけど、在韓米軍と在日米軍の違いが一つの大きな焦点なってましたけれど、僕韓国に長く暮らしたので実感として分かるんですけど、韓国って首都のソウルにも米軍基地が大きいのあるんですよ。だから市民も基地の矛盾とか、基地のありようにしばしば問題化してデモとか反対運動をやっているんですね。だけどそれが米韓関係に軋みを生じさせるんだけど、やっぱり基地の問題を市民が多く関心を持って政府も対応している。ところが日本は全部沖縄に押し付けてきちゃったていうことの矛盾がやっぱりここにも出ているんですね。我々真剣に向き合わなくちゃいけないと思います。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
安田氏は今回の報道で、以下のように述べています。
安田氏(抜粋):沖縄取材でお世話になっている方なんかに伺うと、米軍というのは、よき隣人というふうに言っておきながら結局自分たちのことしか考えていないんだと、憤りの声なんかを耳にしたりするんですよね。感染拡大の懸念ももちろんなんですが、例えば、基地の中で適切に対応しない、情報を適切に共有しないことによって、米軍基地内で働いている市民の方、基地の外でも米軍関係者と日常的に接する人たち、その家族があの人たちも感染しているんじゃない? ということで、冷たい目で見られる、排除されるということが現に起きてしまっているわけですよね。こうした偏見を助長しているということも含めて、沖縄県が要請していくことももちろん大切なんですが、やはり日米の協定の前で立ち尽くすということではなくて、こういうときこそ政府が毅然としてアメリカ側に対応していく必要があるのではないかと思います。
要旨をまとめると、
・米軍は結局自分のことしか考えておらず、日本のことは考えていないという憤りの声を耳にする。
・偏見を助長しないために、沖縄県が米軍に要請することも大切だが、政府はアメリカに毅然とした対応を取るべきだ
というものです。
しかしながら、
・「自分の知人による」という安田氏の個人的な交友関係を根拠に、米軍は自分のことしか考えていないと一般化して主張するのは、根拠の妥当性に乏しく事実に反する恐れがある。
・
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での安田氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋):VTRにもありましたけど、在韓米軍と在日米軍の違いが一つの大きな焦点なってましたけれど、僕韓国に長く暮らしたので実感として分かるんですけど、韓国って首都のソウルにも米軍基地が大きいのあるんですよ。だから市民も基地の矛盾とか、基地のありようにしばしば問題化してデモとか反対運動をやっているんですね。だけどそれが米韓関係に軋みを生じさせるんだけど、やっぱり基地の問題を市民が多く関心を持って政府も対応している。ところが日本は全部沖縄に押し付けてきちゃったていうことの矛盾がやっぱりここにも出ているんですね。我々真剣に向き合わなくちゃいけないと思います。
要旨をまとめると、
・在韓米軍と在日米軍の違いが大きい。
・それは、韓国は首都のソウルにも米軍基地がある点だ。
その為、米軍基地の在り方について問題意識が強く、デモ活動などの反対運動を行っている。
・韓国のソウル市民の問題意識が強いから、政府も対応している
・ところが、日本はすべて在日米軍の問題を沖縄に押し付けてしまっている。
というものです。
しかしながら、
・日本にも、首都東京に横田基地が存在しており、「日本と韓国では首都に在韓米軍基地があるかないかの違いが大きい」という青木氏の主張は明らかに事実に反する。
・政府も、普天間帰途を辺野古基地への移設等の対応を講じ、近隣住民の安全確保を図っていることなど行っており、「日本はすべての在日米軍基地問題を押し付けている」という青木氏の主張は事実に明らかに反し、また政治的にも公平ではない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「在日米軍のコロナの対応は誤っている」「在日米軍の在り方について見直すべき」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「在日米軍の存在は安全保障上必要不可欠である」「コロナの感染拡大と安全保障は切り離して考えるべき」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 看護師の待遇、Go Toキャンペーンについて報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ コロナウイルスの感染拡大と後遺症
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。