2020年2月9日 サンデーモーニング(前編)

2020年2月9日 サンデーモーニング(前編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年2月9日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 新型コロナウイルスの感染拡大について報道された部分
② 検事総長の定年延長について報道された部分
③ 桜を見る会の問題紛糾について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 新型コロナウイルスの感染拡大について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
先週のこの時間にお伝えした感染者数よりも、中国ではおよそ3倍に増えました。死者は八百人にのぼります。SARSの時に、世界全体の死者が774人でしたので、それを越えました。また昨日、武漢市で新型ウイルスに感染した疑いのある日本人男性が亡くなりました。日本での感染者数もクルーズ船の64人を含めると90人になります。
クルーズ船で待機する人たちから悲痛な声が上がります。横浜港で足止めされてから6日目、乗客の健康状態が危ぶまれています。デッキには、深刻薬不足と書かれた日の丸が。乗客の半数近くが、70代以上の高齢者だといいます。番組スタッフに、電話で持病の薬がないという窮状を伝える乗客も。乗客乗員の中から、次々と新型ウイルスに感染する人が見つかり、その人数は今日までで64人にのぼります。この他の乗客も、経過観察のため、14日間船内に待機するように求められています。乗客は原則、部屋からの外出が禁止。スタッフも中に入ることは出来ません。
先月25日に香港で降りた80歳の男性が、今月1日に新型コロナウイルスに感染していたことが判明。乗客にその事実が伝えられたのは、その二日後。さらに、二次感染が判明するまで、乗客たちはレストランや劇場などを自由に行き来していました。乗客のうち、日本人はおよそ半数の1281人。残る乗客は、55の国と地域から集まっています。木曜日には、安倍首相がクルーズ船ウエステルダム号に乗船する外国人の入国を拒否すると表明。今後、更に3隻のクルーズ船が入港する予定で、政府は対応を迫られています。そして昨日、新型ウイルスの感染の疑いのある日本人が初めて死亡しました。中国の武漢市で昨日、新型コロナウイルスに感染した疑いの強い60代の日本人男性が死亡しました。日本大使館によると、この男性は、先月23日に重度の肺炎で入院。日本人で死亡が確認されたのは初めてです。更に金曜日、4便目となるチャーター機の乗客からも一人の感染者が見つかりました。
中国では、新型コロナウイルスに感染したとされる男性が、強引に連行される様子がインターネット上に上がっています。中国各地で大規模な消毒作業が行われています。感染の中心となった武漢市では、母子感染も見つかりました。武漢市当局は、今も入院できず、二万人もの人が自宅待機をしているとしています。その武漢市で、最初に新型コロナウイルスを訴えた医師が死亡しました。当初、デマの情報を流したとしていた当局は、死を受け一転、功績をたたえています。しかし、市民からは自分たちに不都合な情報も受け入れるべきなどの厳しい意見も。
一方韓国では、政府が感染者の行動歴を公開。その内容は、映画館の座席番号までと非常に詳細です。ただ、やりすぎではないかという声もあります。

【アナウンサーによるパネル説明】
・国内で感染が確認されたのは90人
・クルーズ船内で二次感染、三次感染が起こった可能性。
・免疫の持続期間が短く、繰り返し感染する可能性がある。
・世界の医療現場からは、既存の治療薬が効いたとの報告も。
・日本ではコロナウイルスの対策が、インフルエンザの感染数を抑えている可能性も。
・WHOは感染のピークはまだであるという認識。

【コメンテーターの発言】
中島一敏氏(要約):当初より、いろいろなことが急速にわかってきている。どのくらい移りやすいのか、どのくらい重症なのか。既存の対応は有効なのか。広がり方は、ほっておけば勝手に広がるのは間違いない。ただ、それぞれの地域で蔓延しているという程ではない。症状の重さは、SARSやMERSよりは軽い。中国では毎日の患者の数が減ってきている。対策は有効に機能している可能性が高い。ただ、警戒を緩めることは出来ない。

寺島実郎(全文):これあの当然大変だってことですね。誰にも緊張が走るんですけども。僕はこの議論をですね一歩踏み込んで、対策から今後の長い目線での政策論に視界を広げるべきだと思うんですね。というのは、例えばまず武漢に対してね、中国に対して日本が医療機器だの物資だの含めて支援っていう行動を起こすですね、いい機会だと思うんでね。しかも東アジアの連携でね、共同研究で、どういうふうにこういう感染症に立ち向かっていくかということ、韓国中国に呼びかけてですね、一つのスキームを作るきっかけにすると。日本の次元の高さを見せるべきだと思うんですね。でね、医療体制についても当然お金かかるわけで、前回にここに出た時に僕が言ったですね、財源確保のために、日本だって出ていく人と入ってくる人が五千万人って時代になっちゃてるんですよ。でそれらの人たちにですねまあ要するに、国際連帯税の話をしたと思いますけども、一人千円でもですね、こういうものに体系的な体制を整えるための財源確保して、WHOと一緒になってやるんだってことをね、政策構想をこれそろそろ議論しないといけないときにですね大変だ大変だだけでは済まないと思いますね。

幸田真音氏(要約):アメリカが中国に支援物資を送るという話を見たが、これが米中の対立を和らげるきっかけになるかもしれない。私がこのコロナウイルスで感じたのは、よくも悪くも中国の存在が大きくなっているということ。中国の経済をみれば、湖北省というのは、中国の中でも製造業の工場などが多い地域。実体経済への影響が出てくるのはこれから。マーケットの反応をみると、暖かくなれば終息するとも考えられている。とは言っても、油断は出来ない。

安田菜津紀氏(全文):あの感染そのものももちろん深刻ですし、お二方がおっしゃったように、他国とどう連携していくかもこれから問われていくと思うですけども、それと同時に気がかりだったのが、日本政府がこの間どう対応をしてきてという、日本国内での動きもそうだと思うんですよね、で、例えばこうした事態にあたって、あの一部の議員さんからは緊急事態条項が必要ではないか、つまり憲法改正して、日本政府にもっと権限を集中できるようになった方が、対応できるんではないか、そうではないと対応できないんではないか、というような発言があの相次いだと思うんですけれども。ただ、権限を集中させればじゃあ的確に対応できるのかといったら必ずしもそうとは言い切れないじゃない状況だと思うんですね。で、例えばその中国の場合は強い力で情報統制して的確にそれを出してこなかったことによって初動の対応が遅れたんではないかという指摘もなされていますし、やはりこうやって、人が恐怖を感じる事態こそ、例えば権力側が力を拡大していこうとするような動きに対しては、同時に注意深く見ていかなければいけないことじゃないかとは思います。

涌井雅之氏(要約):私はこの問題は、人間らしい不安に怯えるという側面もわかるんですが、これを科学的に考える、つまりは統計的に考えるということが重要ではないかと考える。WHOなんかでもピークは4月と言われていますが、急な角度で感染者が増えては大変なことになる。これを抑えるいちばん重要な手立ては自己防衛。社会的には初動の対応をどうするのか。科学的にしっかり考えることが大切だと考える。

松原耕二氏(要約):日本では、クルーズ船で次々と集団感染が起きていて、うわこんなにたくさんと恐れを持つ方も多いと思う。ただ、閉鎖空間での集団感染を広がりと普段の生活を分けて考えるべき。中国では死者が湖北省に集中しているが、湖北省では感染者が多く、医療が間に合わなかった側面もある。日本では重症者は少なく、時間が経つにつれて、治ってきている。振り返ると、2009年の新型インフルエンザの時も日本は致死率がものすごく低かった。これは医療機関が優秀だから。もちろん警戒を緩めないことも大事。ただ同時に、冷静に見て、自己防衛をしながら重症者を防いでいくということを淡々とやるだけだと思います。

中島一敏氏(要約):新しい病気のときにはどう広がるかわからない。一方で、強力な対策を行っているのでその効果を見ていくことが大切。日本の患者の状態がわかってきた。重症になっている人はいない。こうしたところから病態がわかってくる。保健所が、濃厚接触者を観察しているが、半数近くが経過観察を終えたが、その中からは二次感染者は見つかっていない。遠くの情報だと情報が限られ、重い情報が切り取られてしまう。目の前の情報をみればああこういうことなんだとわかる。それに基づいて、日本で今行われていることが有効に機能しているか見ていくことが大切。

涌井雅之氏(要約):武漢市で数台で消毒している動画が先程流れていた。ああいうのは、可視的には安心感をもたらすが、生態系に大きな歪をもたらす可能性がある。自然化の競争の中でどうやって抑えていくかということ私達は考えなきゃいけない。ああいうのが妥当なのかどうか疑問に思った。

中島一敏氏(要約):国の機関など公的な機関が遺伝子検査をしなければならない。精度の管理や機械の都合で、数は限られるので、優先順位をつけなければいけない。

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。

寺島氏(抜粋):これあの当然大変だってことですね。誰にも緊張が走るんですけども。僕はこの議論をですね一歩踏み込んで、対策から今後の長い目線での政策論に視界を広げるべきだと思うんですね。というのは、例えばまず武漢に対してね、中国に対して日本が医療機器だの物資だの含めて支援っていう行動を起こすですね、いい機会だと思うんでね。しかも東アジアの連携でね、共同研究で、どういうふうにこういう感染症に立ち向かっていくかということ、韓国中国に呼びかけてですね、一つのスキームを作るきっかけにすると。日本の次元の高さを見せるべきだと思うんですね。

要旨をまとめると、
・この議論を長い目線での政策論として捉えるべき。武漢、中国に対して日本が医療機器や物資を手厚く支援し、中国韓国を含めた東アジアでの共同研究を提案することで一つのスキームを作るべき。

というものです。

しかしながら、
・新型コロナウイルスの対策で求められていることは国内での感染拡大を最小限に食い止めるための緊急的な対応であり、「長期的な視野」という大義名分のもと国内への措置より武漢への支援を優先すべきだという主張は事実に即していない。
・日本は既に国内における物資不足を省みないレベルでの支援を武漢に対して実施しており、支援を実施すべきだとする寺島氏の主張は事実に即していない。
・新型コロナウイルスのワクチン開発などの研究には全世界的な協力が必要不可欠である。したがって中国韓国のみにパートナーを限定した共同研究の実施は明らかに不合理であり、またウイルスへの対処より中国韓国との関係改善を優先したもので政治的に公平とは言えない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
安田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

安田氏(抜粋):あの感染そのものももちろん深刻ですし、お二方がおっしゃったように、他国とどう連携していくかもこれから問われていくと思うですけども、それと同時に気がかりだったのが、日本政府がこの間どう対応をしてきてという、日本国内での動きもそうだと思うんですよね、で、例えばこうした事態にあたって、あの一部の議員さんからは緊急事態条項が必要ではないか、つまり憲法改正して、日本政府にもっと権限を集中できるようになった方が、対応できるんではないか、そうではないと対応できないんではないか、というような発言があの相次いだと思うんですけれども。ただ、権限を集中させればじゃあ的確に対応できるのかといったら必ずしもそうとは言い切れないじゃない状況だと思うんですね。で、例えばその中国の場合は強い力で情報統制して的確にそれを出してこなかったことによって初動の対応が遅れたんではないかという指摘もなされていますし、やはりこうやって、人が恐怖を感じる事態こそ、例えば権力側が力を拡大していこうとするような動きに対しては、同時に注意深く見ていかなければいけないことじゃないかとは思います。

要旨をまとめると、
・憲法改正をして緊急事態条項を作り権限を集中すべきだという議論があったことは気がかりだ。権限を集中させれば的確な対応ができるかと言えばそうではない。
・中国では強い力で情報統制したせいで初動が遅れたという指摘がある。人が恐怖を感じる事態こそ権力が力を拡大する動きに警戒すべきだ。

というものです。

しかしながら、
・今回の事態は非常事態における日本の危機管理を再考する機会を提供するものであり、緊急事態条項の制定を含めた憲法改正の議論が発生することは自然なことである。したがってこれを「気がかり」とする安田氏の主張は事実に即していない。
・緊急事態条項の議論は「権限を集中させれば的確な対応が必ずできる」という必要十分条件の議論ではなく、「権限を集中させればより迅速で柔軟な対応が可能になる」という必要条件の議論である。したがって、「権限を集中させれば的確な対応ができるかと言えばそうではない(ので緊急事態条項は不要)」という主張は事実に即しておらず、また緊急事態条項不要の立場に偏ったもので政治的に公平とは言えない。
・日本に比べ極めて強権的な中国における情報統制は、日本における緊急事態条項制定の是非についての議論の参考になるものではない。したがって安田氏の主張は事実に即していない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日本は中国への手厚い支援を実施すべき」「緊急事態条項の制定はするべきではない」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「日本はまず自国での感染拡大を抑えることを最優先すべきだ」「迅速かつ柔軟な対応のためには緊急事態条項の制定は必要だ」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 検事総長の定年延長について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 桜を見る会の問題紛糾について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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