2020年8月16日 サンデーモーニング(前編)

2020年8月16日 サンデーモーニング(前編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年8月16日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
① 「風を読む」にて終戦記念日について報道された部分
② 新型コロナの感染拡大について報道された部分
③ 寿都町の核ごみ処理について報道された部分

を、検証していきます。

前編で検証するのは、
① 新型コロナの感染拡大について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
75回目の終戦の日を迎え、戦後生まれが日本人の85%に達するなど戦争の現実を語り継ぐ人々の数は年々減りつつあります。あの戦争をどう捉えるか先人たちが残したさまざまな声から考えます。

今年、1本の映画が公開されました。当時の若者らに語りかける作家、三島由紀夫氏。亡くなる9カ月前、「憲法9条ってのは全部いけないと言っているんじゃないんです。人類が戦争をしないということは立派なことです。(戦力を保持しないという)第二項がいけないでしょ。日本の変な学者がそれを逆解釈して自衛隊を認めている。日本人はごまかしごまかし生きてきた、二十何年間。僕は大嫌いなんですよ そういうことは。僕が死んでね 50年か100年経つとね「ああわかった」という人がいるかもしれない。」と語っていました。

官房長官や自民党幹事長などを歴任した野中広務さん。
2003年10月「私どもが経験したあの忌まわしい戦争の歴史が再び我が国で繰り返されないように」
アメリカ軍が沖縄の土地を使い続けられるようにする法律が沖縄県が反対する中、与野党の圧倒的多数で可決・成立したときこう訴えました。
1997年4月・野中広務氏「私たちのような苦しい時代を生きてきた人間は、再びこの論議を通じた国会の審議が大政翼賛会のような形にならないように」

副総理、官房長官などを務めた後藤田正晴さんです。
1997年1月「歴史はどこの国でもありうるが権力者が作り替えることがある。やはり事実に基礎を置いた正しい歴史認識をする。そして’負の歴史’についてはそれを繰り返さない。教訓にして生きていく。そういう歴史観を持っていないと国は永続しない。」

戦火が絶えないアフガニスタンで活動を続けた医師、中村哲さんです。
2013年5月「『もうあんなことは二度としたくない』というそのシンボル。その意味では憲法9条は一つの民族の理想でありそれと同時に世界の人たちの理想であるわけです。」

太平洋戦争開戦の年に医師として働き始めた日野原重明さんです。
2015年8月「命を守るということについてこれほどしっかりと作られた憲法は世の中のどこにもないので人間の根本にかかわることは憲法に書かれている。9条は(憲法の条項のうちで)最も中心になっている。」

映画化もされた小説「火垂るの墓」は14歳で空襲に遭い妹を栄養失調で亡くした作家、野坂昭如さんの実体験に基づいています。
1983年「かつて戦争で多くの子供がひどい目にあいました。何の責任もなくひどい目にあったのです。同じような愚を繰り返すことはやめましょう。」
野坂さんは亡くなる数日前の手紙にこう書いています。
「戦後の日本は平和国家だというがたった1日で平和国家に生まれ変わったのだから、同じくたった1日その平和とやらを守るという名目で軍事国家つまり戦争をすることにだってないかねない。ヒョイとあの時代に戻ってしまいそうな気がしてならない。」

筑紫哲也さんです。
2007年2月「私たちの国がさらに戦争がしやすい国に憲法を変えていく。そういうことに対してはよほど慎重に考えなければいけない。私にとって10歳までの少年時代は戦争に明け暮れていましたがその後の戦争によって誰も殺さず誰も殺されていない。これは日本の近代史でもあるいは今よその国を見回しても例のないことであります。あの戦争のことを記憶し続けるということが、この平和を終わらせないことに繋がっていると私は思います。」
終戦の日について書かれた原稿には、こうあります。
「変わらないのはあの戦争が二度と繰り返してはならない『国家的失敗』『国家的愚行』だという点。同じことを繰り返さないように努力することができるのも私たちだし、そのために歴史からどんな教訓を汲み取るかも私たち次第なのです。」

【コメンテーター発言内容】
関口氏(要約):私なんかは懐かしいなという感じと、何か言葉に重みがあったなという感じがしました。

姜氏(全文):先人の方は鬼籍に入ってるんですね。彼らは戦争体験の中に自分の身がねじれるようなそういうものを自分の中に持ちながらこれでいいんだろうかという絶えざる問いかけを遺言として残されたと思うんです。日本国民は恐らく近代になって初めて平和は豊かさに通じるんだということを学んだと思うんですね。平和であることが豊かである。だから数十年もこうやって戦後が守られてきたと。 今問われているのは豊かさというものがどうも怪しくなったときにそれでも平和ということを守るべきだと、そういうものが今問われているのではないでしょうか。体験というものはいつかは風化しますし、でもそのねじれというものを若い人が、どう受け止めるのか、そして自分たちが豊かでなくても平和であることを選択できるかどうか、今それが問われている。

安田氏(全文):映像に数々あった言葉を反すうすると、どうしても昨日の追悼式で安倍首相がおっしゃった言葉に違和感があるんですね。安倍さんどういうことをおっしゃっていたかというと、尊い犠牲のうえに今の平和と繁栄があるとおっしゃっているんですね。もちろん悼むということは大切なんですけれどもただ、そもそも戦争に突き進んで、奪われなくていいはずの命を奪われる状況を作り出したのは国家権力なわけですよね。その国の責任というのが尊い犠牲という言葉でくくられることによってあいまいになっている気がしますし、深い反省ということを拒んでいくことから恐らく次の戦争の足音が聞こえてしまうと思うんですよね。そうならないためにも映像に出てこられた著名な方々だけでなくて例えば女性たちがどのように過ごしていたのかだったりですとか男性中心主義の中で戦争が始まっていった背景を掘り下げていくことで、より戦争がどんな顔をしていたのかということが浮き彫りになるのではないかなというふうに私は思います。

佐高氏(全文):「戦艦武蔵」という小説とかを書いた吉村昭さんという作家がいらっしゃるんですけど、吉村さんがあの戦争は負けてよかったねというふうに問いかけるんですね。そうしたら、確かにもし勝ってたら軍人が幅を利かせる政治がそのまま続いていったというふうに城山さんが答えているわけですけれども、あの戦争負けてよかったというふうにいつまで言い続けられるかすごく今、考えさせられるようになってきていると思うんですね。戦争反対と言った人たちは、やっぱり戦争負けてよかったと思ってるわけですから、しかし今、戦争負けてよかったなんて言うのはとんでもないという風潮が強くなっているんじゃないか。城山さんは戦争はすべてを失わせる、あの戦争で得たものは憲法だけだとみずからの体験を通じて言っているわけですけれども、負けてよかった、そして今の憲法を得たんだということを改めてかみしめたいというふうに私は思います。

竹下氏(要約):当時若手や中堅の専門家できちっとした分析・調査をもとに、戦争は負けますよというシミュレーションもあった。データや幅広い議論ではなく、空気によって日本は戦争に進んでいったんじゃないかと思います。戦後75年たちますが、本当に私たちは空気による決定から脱却できているのか考えます。例えば、新型コロナにおいても専門家の意見をきちんと聞いているのか、あるいはビジネスの現場でも日本の企業は若手とか女性とか多様な意見を聞いたりきちんとしたデータを基に議論しているのか空気を元に決めていないのか改めて考えることがある思います。

青木氏(全文):昨日の式辞で総理が、課外の歴史に言及しなかったんですね。それから積極的平和主義と言ったんですね。さっきの野坂さんが平和を守るという名目でヒョイとあの時代に・・ということを思い出した人も多かったんじゃないかと思うんですね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、佐高氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
安田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

安田氏(抜粋):映像に数々あった言葉を反すうすると、どうしても昨日の追悼式で安倍首相がおっしゃった言葉に違和感があるんですね。安倍さんどういうことをおっしゃっていたかというと、尊い犠牲のうえに今の平和と繁栄があるとおっしゃっているんですね。もちろん悼むということは大切なんですけれどもただ、そもそも戦争に突き進んで、奪われなくていいはずの命を奪われる状況を作り出したのは国家権力なわけですよね。その国の責任というのが尊い犠牲という言葉でくくられることによってあいまいになっている気がしますし、深い反省ということを拒んでいくことから恐らく次の戦争の足音が聞こえてしまうと思うんですよね。そうならないためにも映像に出てこられた著名な方々だけでなくて例えば女性たちがどのように過ごしていたのかだったりですとか男性中心主義の中で戦争が始まっていった背景を掘り下げていくことで、より戦争がどんな顔をしていたのかということが浮き彫りになるのではないかなというふうに私は思います。

要旨をまとめると、
・戦争で奪われなくていいはずの命を奪われる状況を作り出したのは国家権力だ。
・この責任は国が背負うべきであるはずであるのに、尊い犠牲という言葉で責任の所在が曖昧になっている。
・深い反省を拒むと、次の戦争が起きてしまう。

しかしながら、
・朝日新聞などのマスコミが戦意を高揚するような記事を書き続けていたことが戦争を発生した一因でもあるとも言われており、「戦争を起こしたのは国会権力である」と主張するのは事実に反する恐れがある。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での安田氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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2、佐高氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
佐高氏は今回の報道で、以下のように述べています。

佐高氏(抜粋):「戦艦武蔵」という小説とかを書いた吉村昭さんという作家がいらっしゃるんですけど、吉村さんがあの戦争は負けてよかったねというふうに問いかけるんですね。そうしたら、確かにもし勝ってたら軍人が幅を利かせる政治がそのまま続いていったというふうに城山さんが答えているわけですけれども、あの戦争負けてよかったというふうにいつまで言い続けられるかすごく今、考えさせられるようになってきていると思うんですね。戦争反対と言った人たちは、やっぱり戦争負けてよかったと思ってるわけですから、しかし今、戦争負けてよかったなんて言うのはとんでもないという風潮が強くなっているんじゃないか。城山さんは戦争はすべてを失わせる、あの戦争で得たものは憲法だけだとみずからの体験を通じて言っているわけですけれども、負けてよかった、そして今の憲法を得たんだということを改めてかみしめたいというふうに私は思います。

要旨をまとめると、
・今後も、第二次世界大戦で日本が負けておいてよかったと言い続けられるのか。
・今、戦争を負けてよかったなんていうのはとんでもないという風潮が強くなっている気がする、
・戦争には負けてよかった、そして日本国憲法を得たことをかみしめたい
というものです。

しかしながら、
・日本国憲法は、現状の国際関係の緊張の中、安全保障上問題があると指摘はされており、「日本国憲法を得たこと自体が素晴らしい」としか述べず、日本国憲法の欠陥を指摘しないことは政治的公平性を欠く。
・また、「戦争に負けて良かった」という佐高氏の主張は、日本国の為に自らの命を削った当時の人への配慮を欠く。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での佐高氏の発言は政治的に公平でないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」に違反する恐れがあります

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「戦争反対、戦争には負けて良かった」「日本国憲法を守らねばならない」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「戦争は負けて良かったなどという自虐史観を改善していかないといけない」「対外諸国の冒涜から日本を守る仕組みづくりをしなければならない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 新型コロナの感染拡大について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 寿都町の核ごみ処理について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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