2020年10月6日 報道ステーション

2020年10月6日 報道ステーション

10月6日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・様々な論点をとりあげた放送であったか

まずは放送内容を見ていきます。
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【スタジオ】
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):菅総理が日本学術会議の新たな会員候補6人の任命を見送った問題です。政府は今日推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと記された2年前の文書を公表しました。野党は過去の政府の答弁との矛盾を追及しています。

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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):今日明らかになったこの文書。日本学術会議の会員の任命を巡り2年前に政府がまとめた文書です。この中で総理の任命権のあり方について…。

政府が公表した文書『内閣総理大臣は推薦のとおりに任命するべき義務があるとまでは言えない』

ナレ:政府は過去、国会で推薦された者は拒否しない。形だけの任命をしていくと答弁していました。野党が指摘したのは答弁の整合性です。

立憲民主党 黒岩字洋 衆院議員(以下黒岩議員)『解釈の変更になるんじゃないかですか。端的に法解釈の変更ですか』

内閣府大臣官房 矢作修己 参事官(以下矢作参事官)『この考え方については従来から一貫しているものと理解している』

黒岩議員『解釈の変更ではないということですね。法制局どうですか』

内閣法制局 江崎崇 参事官『解釈の変更ではありません』

ナレ:内閣法制局は憲法の規定に基づき公務員の任命権は国民にあり総理が最終的にその責任を負っているという前提で、過去の国会答弁もなされたと説明しました。野党側は、明らかな解釈変更で理由を説明すべきだと批判しています。今日、もう1つ分かったこと。今回の任命拒否より前にも官邸側が学術会議の人事に関与していたことも判明しました。前回の会員交代に先立ち学術会議の当時の会長が官邸の杉田官房副長官と面会。その際、杉田氏が実際に交代する105人よりも多い人数のリストを出すよう求めていたというのです。更に、その前の年には欠員を補うため学術会議が挙げた人事案に対し官邸が難色を示し補充が見送りになったといいます。その前後には安保法制やいわゆる共謀罪法が成立。今回、任命を拒否された6人にはこうした法整備に反対の立場を表明していた人もいます。最大の焦点は、なぜ6人の任命を拒否したのかです。先月24日、内閣府が菅総理に新たな会員候補のリストを示しましたがこの時すでに6人は除外されていました。

社民党 福島みずほ 党首『9月24日以前に菅総理と話し合いをしたことはありますか』

矢作参事官『決済の過程において総理、官房長官にご説明をしているということです』

ナレ:事前に菅総理と加藤官房長官に説明したことは認めましたがそれ以上の詳細は明らかにしませんでした。

菅義偉 総理大臣『まさに総合的・俯瞰的活動を確保する観点から判断をした。これに尽きます』

ナレ:昨日、具体的な理由を述べなかった菅総理。政府は今日も…。

加藤勝信 官房長官『総合的・俯瞰的に活動していただく。そのためにどうあるべきなのかという観点から任命をさせていただいた。総合的・俯瞰的に活動することを期待しているわけですから』

ナレ:野党は…。

立憲民主党 枝野幸男 代表『総合的とか俯瞰的とか何をおっしゃっているのか分からない。全く説明になってない説明しかされていないところ。なぜこの6人の方が外されたのか。きちっと説明していただかなければ、とても納得できる話ではない』

ナレ:野党側は明日、開かれる内閣委員会に加藤氏の出席を求めていましたが与党側は応じず、副大臣が出席することとなりました。

【コメンテーターによる解説】
徳永アナ:今日、新たな情報も出てきたりもしたんですけど太田さん、この問題ですがどんなふうに捉えたらいいんですか。

共同通信社編集委員 太田昌克氏(以下太田氏):まず任命拒否がどうして行われたかというこの任命拒否のプロセスの問題がありますよね。これが、総合的俯瞰的とどこまで関係しているか分からないですけど、もう1つは70年を超える学術会議の組織運営のあり方という問題2つありますよね。全く次元が違う話でセパレートで、まず、論じなければならない話だと思うんですよね。

徳永アナ:そうなってくると明日、国会も開かれますけれどもどんなことが話されていくかですよね。

太田氏:前任者の任命拒否のプロセスについてしっかり審議しなきゃいけないですね。
菅総理もおっしゃってましたけど政府に反対したからといったこととは拒否のことは関係ないんだと政府が言っているわけですけれどもだとしたら、やっぱり関連文書を全て示して証拠を見せてほしいと思うんですよね。それが、おっしゃっている丁寧な説明だと思うんですよ。それができないと、やっぱりああ、自分は政府に異論を唱えたから排除されたのかな排除されるんじゃないかなって。そういう言ってみればつまらない疑念というか懸念が学術会に広がる可能性があるわけです。私はそんなことは絶対にあってはいけないと思いますしやっぱり、任命権の行使、権力行使には説明責任という義務が伴わなくてはならないんですね。私はこれは民主主義の鉄則だと思います。

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【検証部分】
今回検証したい点は、過去の答弁と矛盾しているという指摘についてです。
中曽根元総理は「形だけの推薦制であって、学会のほうから推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」と答弁しています。

この答弁を踏まえて、「今回の任命拒否は矛盾している、法解釈が変更されている」という批判が野党中心に展開し、番組でも批判的に扱っています。

公開された文書には『内閣総理大臣は推薦のとおりに任命するべき義務があるとまでは言えない』と前に次のように記載されています。

(引用開始)
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 学術会議が首相の所轄下の国の行政機関であり、憲法65条、72条の規定に照らし、首相は、会員の任命権者として、学術会議に人事を通じて一定の監督権を行使することができる。
 憲法15条第1項の規定で明らかにされている公務員の終局的任命権が国民にあるという国民主権の原理からすれば、任命権者の首相が、会員の任命について国民および国会に対して責任を負えるものでなければならない。首相に学術会議の推薦通り会員を任命すべき義務があるとまでは言えない。

《東京新聞2020年10月6日 政府、任命拒否可とする内部文書を18年に作成 国民には説明せずhttps://www.tokyo-np.co.jp/article/60126》より引用
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(引用終了)

憲法65条は行政権について、憲法72条は内閣総理大臣の職務に関する条文です。
つまり任命する権限がということは任命しない権限もあるということになります。
例えば、公務員を志してもなれない方はいらっしゃいますが、その場合「公務員になれないのはおかしい!!」という話にはなりません。
それは任命する権限もあれば、任命しない権限もあるからです。

学術会議の任命に関しても同様と考えることが可能なのです。

こういった考え方について放送で紹介されることはありませんでした。
このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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また視聴者の会では複数回指摘していますが、政府に対して批判的であるから任命拒否されたという見方は事実に基づかない可能性があります。
それは政府に批判的な主張をしている人物も任命されているからです。

(引用開始)
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菅義偉首相は日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人を任命しなかった。政府に批判的な学者が外されたとも言われるが、任命された99人の中にも「安全保障関連法に反対する学者の会」の声明に署名した人が少なくとも10人いる。

《東京新聞2020年10月11日 任命拒否6人 目立った人狙われた? 任命99人の中にも安保法反対声明<学術会議問題>https://www.tokyo-np.co.jp/article/61138》
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(引用終了)

以上のように政府に対して批判的だから、という理由だけで任命拒否された訳ではありません。
しかし、放送では任命拒否の理由について「政府に批判的であったから」ということが強調されており、事実をねじ曲げた放送であった可能性があります。
このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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