2020年9月20日 サンデーモーニング(前編)

2020年9月20日 サンデーモーニング(前編)

9月20日のサンデーモーニングのレポート前編です。

今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。


【VTR要約】
木曜日誕生した菅新内閣。その顔ぶれは、閣僚20人のうち8人が再任、3人が横滑り、4人が再入閣、初入閣は5人でした。国民のために働く内閣という触れ込みに街の人は、「新鮮味がない。政界でも女性は活躍していないのかな。よく言えばベテラン揃い」などと話しました。
立憲民主党・枝野氏は「安倍亜流政権、安倍亜流内閣」と述べ、共産党・小池書記局長は「見飽きた顔といつか見た顔が並んだ古色そう然たる面々、安倍さんのいない安倍内閣」と述べました。自民党内では会見中の茂木外相や麻生副総理が言い間違いをしていました。
水曜日、歴代1位の長期政権に幕を下ろした安倍内閣。大臣の引き継ぎ式では、退任する北村地方創生担当大臣が「随分47(都道府県)回って相当ホラ吹いてきましたから。後の始末よろしくお願いします」と坂本新地方創生担当大臣に述べました。国民をばかにするような発言などと批判の声が上がりました。

コロナ対策と経済再生を最重要課題に位置づける一方で、菅総理が強い意欲を示すのが規制改革です。目玉人事といわれるのが、防衛大臣から横滑りして行革担当大臣に就任した河野氏です。17日午前1時ごろ・首相官邸での就任会見では河野氏は「前例主義 既得権 権威主義の最もたるものと思いますので、こんなもの(首相官邸での会見)さっさと止めたらいいと思います。」と注文をつけました。
河野氏は就任の翌日、菅総理の指示に基づいて縦割り行政の弊害の実例を国民から受け付ける「縦割り110番」を自身のホームページに開設したが、4000件以上の投稿が寄せられたため一時停止しました。菅総理はデジタル庁の創設にも意欲を示しており、大臣に起用された平井氏は「一からベンチャー企業を立ち上げるような作業なので、大臣自ら一人のスタッフとして仕事をしないといけない。」と述べました。
安倍政権の継承を打ち出す菅政権が向き合うことになるのが安倍政権の負の遺産です。
立憲民主党・安住国体委員長「おかしいと思ったことはやると菅さん言っているんだから。一番最初にこのこと(桜を見る会)の再調査をお願いしたい。」
船出した菅政権は、こうした課題にどう向き合うのかも問われることになります。

スタジオでの水野アナによる説明
閣僚の顔ぶれは、再任や再入閣が多く、初入閣は5人にとどまり、女性閣僚も2人のみとなりました。菅政権が最優先したのは、新型コロナ収束と経済立て直し、縦割り行政の打破、デジタル庁創設などです。また、今後の政策の方向を占う官邸人事を見てみますと安倍前の総理の懐刀であった経産省出身の今井氏と、同じく長谷川氏は退任。一方、菅氏の側近とされる和泉氏、また、官僚トップの杉田氏、そして北村氏は、再任されています

【コメンテーター発言内容】
田中優子氏(全文):たぶん法政大学に注目していただけたと思いますので、誇りを持てる首相になっていただきたいと思います。でも、女性がちょっと少なすぎますね、閣僚に。6人は欲しかった。

寺島氏(全文):あえてスタートの時点で厳しいことを言う気はありませんけれども、世界の中の日本という視界がほとんど政策論の中にないという感じですね。それからもう1つ気になるのは政策思想の機軸が混乱してるんです。安倍政権の継承ということは安倍政権というのはわれわれが驚くような国家資本主義で中央銀行まで動員して、金融主導で経済を浮上させようということで、公的資金を突っ込んで株を上げるという国が正面から出てくるような国家資本主義みたいな政権だったとやがて歴史が総括しますよ。ところが持ち出してきたのは規制緩和だったので、この言葉というのは小泉政権ですよ。つまり新自由主義で世界のグローバリズムの中でと言っていた時代の規制緩和というものをポーンと持ち出してきた。この複雑骨折をどういうふうにしていくのかが注目点だと思いますね。

浜田氏(全文):菅さんはよく口癖で、人事は政権のメッセージということをおっしゃるそうなんですね。さらに安倍政権の継承ということをおっしゃっているのであれば、安倍政権というのは女性活躍というのを挙げて2020年の主導的地位の中で女性を30%にするとおっしゃっていたんです。 その目標はあっさりと先送りされて、でも、なるべく早く達成するというふうにおっしゃっていた。その政策の継承はどこにいったのかとまず思いました。女性閣僚がすごく少ないなというのがまず第一の印象です。それともう一つ、多様性というのが非常に低い内閣だなと。仕事ができるというのはたぶん、当選回数ではないと思うので本当に適材適所というなら若手の抜擢だったり、もっと言えば民間からの登用ということを、もう少し進めていただいてもよかったのかなという印象を受けました。

涌井氏(要約):非常に地味で具体的かなと。例えばデジタル庁の創設は非常に絞り込んでおられるなという印象を持っています。次の時代にどう備えるのかという備え方だけはできている。ただ、一方外交問題、さらには安倍政権が残してきた課題、これにごみ箱にふたをかけるようなまねだけはしてほしくないという印象を持っています。

松原氏(全文):寺島さんが新自由主義的なという言葉を使われましたが、確かに今、紹介があった官邸官僚を見ますと最側近の今井さんという方をはじめ、経産省色がものすごく薄まってるわけですね。経産省というのは、どうしても産業保護の面があるので、それが逆に菅さんになると中小企業の再編なんかも言われてますので小泉政権以来の新自由主義という部分がものすごく加速する可能性があるんだと思いますね。そこは行き過ぎないように、格差も拡大しますので、見ておきたいと思うのが一点と、もう1つは、上川法務大臣がこの間1回、廃案になった検察庁法の改正案をもう1回、再提出することを検討したいとおっしゃった。もちろん中身はまだ分からないですよ。そのまま出すのか、それとも単なる一律定年延長なのか。でも、もしそこに政治が検察をコントロールしようと思われるような内容がもし入っているとすれば、それは本当にそうなのか見極めたほうがいいと思うんですね。モリカケ、桜も説明しない、そしてもし、検察庁法もあきらめてないとすると、これは前の政権の体質を引き継いでいると言わざるをえないと思うんです。われわれ、つい苦労人であるとかあるいは携帯電話値下げとか、受けのいい言葉にとらわれがちですけど、でも、これからどんな政策をするかを含めてこの政権の体質というか、本質を見ていくことがとても大事なんです。

田中優子氏(全文):地方に力を入れていきたいということをおっしゃっているんですよね。これはもう、まさにやらなければならないことで特にこれから必要な生産性ということ、農業を含めた生産性ということ、地方が力をつけていくのはとても大事だと思います。ぜひ、それをやっていただきたい。それからあとは、ご自身の言葉で心からの言葉でもって皆さんに説明し、また語っていただきたいなと思います。

【検証部分】
今回検証するのは、寺島氏と浜田氏の発言に関してです。
寺島氏は、安倍政権では国家主導の金融政策を採っていたのに対し、菅政権の打ち出した規制緩和は、国家の介入をなるべく減らすという、いわば新自由主義的な発想を持ち出してきたとして、政策の軸がぶれている「複雑骨折」の状態であるとしています。
しかし、安倍政権期から行われてきた金融緩和と菅政権の打ち出している規制緩和は矛盾したものなのでしょうか。安倍政権の金融政策は、市中に出回るお金の量を増やし、経済を上向かせるというものです。一方で規制緩和は、産業、事業に対して政府が行っている規制を緩め、より自由な市場での活動を確保する政策のことをいいます。前者は金融、後者は市場における政策であり、相容れないものとはいえません。菅政権は日本の経済を回復させるという目標を持っており、そのための手段として金融、市場の二面からアプローチするというのが現在のスタンスです。そしてこの2つの手段は、それぞれ政府主導へ、民間主導へという異なる方向性のように見えますが、金融、市場の2つの領域は明確に分かれたものであり、2つが混在することはありえません。そもそも、経済の再建のためにどのような政策を採るのが適切かを考えたときに、金融、市場と一貫した方針を採る必要は必ずしもなく、むしろ分野ごとに分けて考えるほうが合理的です。分けて考えた結果、金融では大規模な金融緩和、市場には規制緩和が必要だとという結論に至ったのです。それぞれこの方針が正しいのかという議論はありますが、それを一括りにして矛盾しているという批判は十分な説得力を持っていないといわざるを得ません。
次に、浜田氏の発言に関してです。浜田氏は新内閣について、多様性がない、また適材適所の配置になっていないという指摘をしています。ここで、多様性と適材適所というのは、常に両立させることができるのかを考える必要があります。
多様性を重視した場合には内閣の顔ぶれは、浜田氏の言うように、女性や若手の増加などが考えられます。一方で、適材適所という場合には、行政の最高機関の構成員として、また各省庁のトップとしての資格があるかどうかというのが重要視されます。そのような場合には、ベテランや閣僚経験者が増加し、一方で新たな女性や若手の登用はされにくくなります。また浜田氏は当選回数が基準になっていることを批判していましたが当選回数は政治家、国会議員としてのキャリアを示す客観的な指標となります。個人の能力は客観的に判断することが非常に難しいため、当選回数というのを1つの基準に利用すること自体は一概に悪いとはいえません。つまり、適材適所という点を重視すると、年齢に偏りが生じるなど多様性が損なわれてしまう場合は十分に考えられます。今回の菅内閣は「仕事ができる人」を選定の基準として能力重視の登用を行いました。その結果閣僚経験者が多くを占め、また同じポストへの再任用も多くなりました。しかし浜田氏はそのような経緯を無視し、多様性と適材適所を両立させるべきと指摘し、また適材適所な人事配置を行えば若手の登用が増えるという非現実的な主張しています。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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