2020年9月20日 サンデーモーニング(中編)

2020年9月20日 サンデーモーニング(中編)

9月20日のサンデーモーニングのレポート中編です。

今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。


【VTR要約】
40日余りに迫った大統領選。選挙戦が激しさを増す中、トランプ政権の内幕を描いた本がアメリカに衝撃を与えています。著者は、アメリカの歴代政権を長年取材してきた記者、ボブ・ウッドワード氏「トランプ氏は私に何度も、’’我々がどれほど戦争に近かったか知らないだろう’’と話した。」北朝鮮がICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験を行い、米朝の緊張が高まっていた2017年。18回にわたるトランプ大統領へのインタビューを元に執筆されたこの本では、トランプ政権が北朝鮮に対して80発の核攻撃を含む軍事計画を検討していたことを明かしました。当時、マティス国防長官は、核兵器の使用は狂気のさただと思いながらも想定外の事態に備えておく必要があるという認識だったとしています。さらにトランプ大統領は、キム・ジョンウン党委員長からアメリカと戦争する用意があったことを伝えられていたといいます。
ウッドワード氏は本の中で新型コロナウイルス対策についても言及。「ワシントン・ポスト」紙が公開したインタビューの音声の一部では、トランプ大統領は「厄介なインフルエンザより致命的だぞ。」と述べていました。トランプ大統領は、早い時期から危険性を認識していたにもかかわらずパニックを避けるため国民に向けて、うその説明をしたと暴露。ウッドワード氏「彼はコロナに対応することも真実を伝えることもできなかった。」ウッドワード氏はトランプ氏は大統領に適していないと結論づけています。

18日、アメリカ連邦最高裁判所の判事で、リベラル派の重鎮だったギンズバーグ氏が死去。女性やマイノリティーの権利向上に尽力し、若者にも愛されてきました。最高裁の判事は終身制で、長期にわたり影響力を持つことからトランプ大統領は就任後、保守派の判事2人を指名し過半数を保守派で固めてきました。大統領選の前に後任として保守派の判事を選びたい与党・共和党と、それを阻止したい民主党の対立も激しくなりそうです。

スタジオで杉浦アナの説明。
この4カ月余りの支持率の推移をみるとバイデン氏のリードは続いていますがトランプ大統領との差が縮まっています。熱狂的なトランプ支持者、いわゆる岩盤支持者に支えられていると言われていますが、背景には共和党員が望む政策を実行しているからという見方もあります。銃規制に反対、強硬な治安対策、人工中絶に反対してキリスト教保守派の支持を固めることにつながっています。経済の活性化を目指し法人税の大幅減税なども実施してきました。共和党、民主党、両陣営の攻防が激しさを増し、大統領選は終盤戦を迎えています。

【コメンテーター発言内容】
寺島氏(全文):大統領選ってまさに第4コーナーを回ったところに入ってきたんですね。問題は激戦州なんですね。全体の支持率の差よりもね。6つの激戦州というのが、前回の大統領選挙で300万票も実際に全体にはヒラリー・クリントンのほうが多かったんだけれども1%以下の差でトランプが取ったことによって、当選をもたらしたという激戦州が、非常に今後、焦点というか、もみ合ってくると思うんですね。そうすると一番注意しておかないといけないのはオクトーバー・サプライズと今、ワシントンから伝わってきますけれども、10月に、直前に、トランプって素直に敗れていくような性格の人じゃないわけですよ。形勢逆転を狙った手を打つというんですね。その一番避けてもらわなきゃいけない手が戦争カードなんですよ。あるいは極端な体外対立を演出して、対立を演出することによってこんな緊急事態の大統領選挙なんだって現政権が有利だという方向に持っていこうとする、このカードを何らかの形で切ってくるという、中東についてなのか、あるいは南沙諸島とか、台湾海峡も実はここのところものすごく緊張感が高まっているんです。そういう意味合いにおいて、オクトーバー・サプライズがどういう形で出てくるのかが来月に向けての注目点ですね。

松原氏(全文):最高裁判事のギンズバーグさんが亡くなられたということですがこれはものすごく尊敬されていた人なんですけど、すごく大きな意味を持つんじゃないかと思うんです。価値の問題という投票行動だけじゃなくて、トランプ大統領、実は負けても勝つシナリオを考えているんじゃないかとささやかれているというのが一つあるんです。もし僅差で負ければ、郵便投票というのがものすごく今、コロナで投票所へ行けないからと郵便投票を広める州が今増えているんですね。それに対してトランプ大統領は、それはインチキだ、不正がいっぱいあるんだと文句をつけているわけですね。つまり、実際、僅差で負けたら、いや、これは不正、もう一回やり直そうと裁判所に訴えるんだと。最高裁までいったときに最高裁がどう判断するか。最高裁が、トランプ大統領に有利に判断して、これは負けとは認めないと判断したらそのために最高裁の判事、すごく大事なんです、トランプ大統領にとっては。その場合、今度は議会で決めるということに持ち込むというシナリオもあって僅差で負けても勝つぞというシナリオの中で最高裁の判事が大きな役割を果たすという意味でもギンズバーグさんが亡くなったことは今回の大統領選に直接的な影響を与える可能性がないわけではない、あるというシナリオが実はアメリカで囁かれているんですね。

【検証部分】
今回検証するのは、寺島氏と松原氏の発言に関してです。両氏とも今後のトランプ大統領がどのような行動をとるのかについてシナリオを描いています。当然、現段階ではさまざまなシナリオが考えられ、どのような筋書きであっても絶対に起こるとも絶対に起こらないともいえません。しかし、報道をする際には現実的に起こりうるか、起こる可能性が高いかどうかを考える必要があります。

ここで、両氏の発言を順番に検証します。寺島氏の発言では、トランプが戦争に踏み切る可能性に言及しています。たしかにトランプ大統領はこれまで、過激な言動で他国を威嚇したり緊張を高めたりしてきました。しかし一方で、戦争に踏み切ることにはかなり慎重であった面があることも事実です。トランプ大統領以前のアメリカは、世界各地で戦争を起こしてきました。大規模なものとしては2001年のアフガニスタン侵攻や、2003年のイラク戦争などがあります。直近のオバマ大統領期も、中東やリビアで紛争が発生しました。しかし、トランプ大統領はそのような戦争に踏み切ったことはこれまでにありません。そもそもトランプ大統領は世界でのアメリカの軍事的負担を減らすべきという主張をしており、実際に、2020年1月にイランとの関係が悪化し戦争勃発の直前にまでなったときも、最終的には戦争には至らずに収めることができました。またシリアのアサド政権を攻撃する際も、軍事基地のみを標的として、紛争を最小限に抑えようとしています。
このような点を考慮したときに、トランプ氏が支持率ほしさに戦争に突き進むというシナリオは現実的ではないと考えられます。

次に、松原氏の発言に関してです。松原氏は、最高裁判事の顔ぶれがトランプ大統領に有利なのを利用して、選挙の不正に訴えるのではないかと指摘しています。しかしこれには、司法権の独立という大きな壁があります。民主主義国家には、行政が簡単に司法に介入できない仕組みが備わっているのです。アメリカでは、最高裁判事は終身制で、一度任命されてしまえば政治の干渉なしに判断することが可能であり、実際に判事が任命者に不利な判決を下す事例はしばしばあります。
さらにはそもそも司法というのは、憲法や法律に忠実であることが原則となります。とりわけ最高裁判事となれば、自身の政治的信条ではなく、憲法に基づいて客観的に判断するはずです。もちろん、憲法解釈などは判事や学者の間でも意見が割れることはありますが、政治的信条によって根拠のない判断を下すことはできません。
このような点を考えると、松原氏の指摘もまた、現実的なものでないということが分かります。もちろん、トランプ大統領が敗れ裁判を起こす可能性はありますが、最高裁がトランプ大統領を贔屓して有利な判断を下すことは考えられません。

寺島氏、松原氏ともに、これらの事実を考慮せずに、トランプ大統領は戦争に踏み切る、選挙の不正を訴え、最高裁の判事を味方につけて思い通りに進めようとしていると発言をしています。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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