2020年9月27日 サンデーモーニング(後編)

2020年9月27日 サンデーモーニング(後編)

9月27日のサンデーモーニングのレポート後編、人種差別への抗議デモについて報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。


【VTR要約】
ケンタッキー州で誤って警官に射殺された女性の事件で州の大陪審が発砲した警官の掲示責任を問わないと判断し、抗議活動が再び活発化しています。
デモに強硬な構えを崩さないトランプ大統領の支持率が、フロリダでの最新世論調査でバイデン氏を上回りました。拡大した抗議デモから街を守ろうと呼びかけている民間の自警団ミリシアは全米で勢力を伸ばしており、多くがトランプ氏を支持する保守派です。先月ウィスコンシン州で起きた抗議デモで参加者2人を射殺した17歳の少年は200近くもありミリシアの一つに所属していました。
なぜ差別に抗議するデモを攻撃するのか、ミリシアリーダーの1人は「人種差別抗議デモはある種の反体制的革命であり、彼らは暴力を公然と擁護している。選挙が行われる11月までに我々は(左派との)内戦に備えておく必要がある。」と話しました。抗議デモを社会秩序を乱すものと位置づけ敵視しており、こうした人々にトランプ大統領は時に理解をのぞかせてきました。17歳の少年についてトランプ氏は「デモ隊は彼に暴力を振るった。彼はトラブルに巻き込まれたのではないか、殺されていてもおかしくなかった。」と述べました。ミリシアリーダー クリス・ヒル氏は「(トランプ氏は)自分たちのことしか考えていない金持ち連中を追い出して、新鮮な顔ぶれでアメリカを運営していこうと(言ってくれるだろう)」とトランプ氏に期待を寄せ強く支持してきました。
22日の国連総会でトランプ氏は「我々は’’中国ウィルス’’という見えない敵と激しく戦っている。我々は中国の責任を問わなければならない。」と演説し、中国に対し強気な姿勢を貫きました。みずからの支持基盤である保守層にアピールする狙いも透けて見えます。
これに対し、中国・習近平国家主席は「(コロナウィルスの)政治問題化や汚名を着せることに反対する。大国の責任を果たすべきだ。」と習主席は反論しました。
29日には1回目の大統領候補討論会が行われ、大統領選は終盤の戦いに入っています。

スタジオでの杉浦アナの説明
大統領候補の支持率ですが勝敗のカギを握るとみられる激戦州、フロリダ州とアリゾナ州で大きな動きが出ています。注目のトランプ大統領の支持率ですが、ABCニュースと「ワシントン・ポスト」の共同調査ではリードする結果となったのです。VTRにあったように全米に広がった人種差別への抗議デモは保守層の一部に強い反発を招いていてミリシアと呼ばれる自警団は勢力を増す一因ともみられています。それを示すように世論調査で、犯罪対策で信頼できるのは?との質問に対し、強硬な構えを崩さないトランプ氏がバイデン氏を上回っていて、支持率上昇の背景の1つになっています。

【コメンテーター発言内容】
藪中氏(全文):あと5週間なんですね、アメリカ大統領選挙まで。日替わりに大きな事件が起きているというか、事件というよりも、まず民主党としてはコロナ、コロナについて大きな数字として20万人死亡者が超えたと、あれが大ニュースになるはずだったんですね。そうしたら、次にギンズバーグさんという最高裁の判事が亡くなってしまったと。これはトランプさんに対しては大変な追い風になったんですね。これで彼が3人目の保守派の判事を任命できると、これで一気に、大統領選挙の前に承認まで持ち込んでしまうと。アメリカ社会を完全に保守回帰にしようと。今まで9人しかいませんから、今度それで6人と3人になるんですね。保守派が6人になる。先ほどのテイラーさんの事件というのは亡くなったことについて警察の責任が問われなかったということでデモが起きるわけですけれども、これは逆にトランプさんからすると、法と秩序ということが大事だということで。ただ、実際に今、アメリカの中で大きな関心を持たれているのは11月3日、トランプさんが居座るんじゃないかと。実際投票に行く人はトランプさんに投票する人がより多いだろう。しかし、郵便投票になるとバイデンさんだと。そうすると、その日のうちには郵便投票の結果は分からないものですからトランプは自分が勝ったと言うと。そのあとに郵便投票の結果がどんどんくると。やっぱりバイデンさんだということになりかねないんですが、ういうときにトランプさん、あんなのは無効だ、不正だと、居座るんじゃないかと。そうすると最後は最高裁で決めるということもありうるんですね。だからそういう意味で、これから実際に大統領選挙どういうふうになっていくのかが大変大きな関心事だと思います。
関口氏:そういうことになったら、何だか見苦しい選挙になりそうだね。
藪中氏(全文):何が民主政治か分かりませんからね。

姜尚中氏(全文):僕は保守対リベラルの対立ではないと思っているんですね。トランプという希代の狂言回しによって、アメリカの中に本来あったヤーヌスというか両面性が一挙に飛び出してきたという、だからこれは決してトランプが原因というよりはそれを出す一つのきっかけにはなったと思うんです。結局、オバマ政権のリベラルの時代は一体何だったのかという。 黒人問題もたくさんあったはずなのに表面に現れてこなかった。現れてこなかっただけであって、アメリカにはその2つの流れがずっとあるということですよね。それから同時にトランプ政権によって、実は対外的にパトリオットミサイルをぶち込むということがほとんどないわけですよ。つまり民主党政権のオバマのほうがむしろ対外的には局地戦争的なものをトランプよりはやっている。 対外的には死傷者は少ないわけです。だから、今トランプの世界がもう1回繰り返されたときに、僕は、反動的な政権ですけれども、意外と東アジアではむしろいい方向に向かうんではないかと僕は思っているんです。つまり彼はディール、取り引きができれば決してイデオロギー対立は避けたいと思っているんじゃないかと。ですからもうちょっとアメリカを等身大に見るべきじゃないかと思っています。

大宅氏(全文):私、そこまでの見方はできなくてやっぱりあのトランプっていう、言ったことが1時間もしたら全然まっさかさまになるというような人があと4年リーダーになるというのは、とても恐ろしいし、世界中が壊れちゃうんじゃないかという気がするんですよね。そのトランプを支持している人たちというのは、もう一つ、さっきミリシアっていう話ありましたけど、キューアノンというグループがあって、全部民主党が悪い、ハリウッドが悪いっていう人たちが妙に全面に出てくるようになった。そういう変な陰謀を持っている人たちを守れるのはトランプしかいないんだというような、万一トランプが負けた場合には自分たちの聖地が奪われたのと同じだという言い方で、FBIもついに変な狂信者たちではなくて、国内のテロ組織だという言い方をし始めている。勝っても負けても勝ったとトランプは言うだろうしこんな憲法違反みたいな選挙はだめだってもうすでに言ってるわけですから、大統領自身が、物凄い大混乱になるんじゃないかと思います。

【検証部分】
今回検証するのは、大宅氏の発言「トランプを支持している人たちというのは、もう一つ、さっきミリシアっていう話ありましたけど、キューアノンというグループがあって、全部民主党が悪い、ハリウッドが悪いっていう人たちが妙に全面に出てくるようになった。」に関してです。
大宅氏は、トランプ大統領がミリシア、キューアノンなどのある種過激ともいえる人々によって支えられているとしています。しかし本当にトランプ大統領を支持する人はそのような人々なのでしょうか。
ここで、放送日の数日前の世論調査におけるトランプ大統領の支持率を確認します。アメリカのエマーソン大学の調査によれば、9月22-23日時点での支持率は44%となっています。
(出典:https://emersonpolling.reportablenews.com/pr/september-2020-biden-holds-his-lead-voters-split-on-supreme-court-nominee-timetable)
もちろん、世論調査によって数値に多少の差はありますが、トランプ大統領がアメリカ国民から一定の支持を得ていることは明らかです。
ということは、トランプ大統領を支持する国民がどのような人々で、彼らがどのような点を支持しているのかについて知るには、一部の過激ともいえる人々の考えではなく、より広くアメリカの世論を捉える必要があるのではないでしょうか。
トランプ大統領が支持率を維持している要因として、まず経済再建の実績が考えられます。経済面では、グローバル化によって不安定化した若者の雇用を確保し、失業率を大きく減少させました。そして同時に経済力の低下に対する国民の不安感を払しょくしました。現在は新型コロナウイルス感染症の影響で停滞を余儀なくされていますが、大統領就任から約3年間で着実な成果を上げてきたといえます。
またトランプ大統領の掲げるアメリカ第一主義も、国内からの支持の要因となっています。トランプ大統領は自身の任期の間にTPP離脱などの保護主義的な貿易政策を採用し、中東地域のアメリカ軍の駐留といった国外への投資や支援の縮小などを行ってきました。これまでの自由貿易、海外の米軍駐留などの政策はアメリカの国益に直結しないものであり、さらにはアメリカが孤立主義的な性格も持っていることもあり、トランプ大統領の一連の政策は国民の支持を得るものとなりました。
これらのことから、トランプ大統領は、一部の過激ともみられる人々だけでなく、広く国民からの支持を得ていることが分かります。しかし今回の報道では、そのようなことには言及されずに、トランプ大統領の支持者は過激な考えを持った人々であるとしか報道されませんでした。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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