2020年10月25日 サンデーモーニング(中編)

2020年10月25日 サンデーモーニング(中編)

10月25日のサンデーモーニングのレポート中編、菅総理の直近一週間の動向について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・事実をまげない報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】(要約)
 菅総理は今週、就任後初の外遊となるベトナム、インドネシアへの訪問を行った。海洋進出を強める中国をけん制する狙いがあったと思われる。
 世論調査では、菅内閣発足の9月に比べ支持率が軒並みダウン。理由の一つと考えられるのが日本学術会議の任命拒否問題だ。10月23日金曜日、任命されなかった6人が初めてそろって意見を表明し、4人が会見で菅総理を批判した。また、菅総理が2012年に出版した自著「政治家の覚悟」に記した「政府は議事録を残しておくべきだ」という民主党政権への批判の発言者を2017年に記者に問われた際に「知らない」と答え、さらに20日火曜日に発売された同著の改訂版からはその記述が削除されていたことが物議をかもしている。
 野党の総理批判が強まる中、自民党の石破元幹事長が9月の総裁選で惨敗した責任をとり、派閥の会長を辞任すると表明した。一方、菅総理は26日からの臨時国会に向けて準備を進める。24日木曜には小泉環境大臣と会談し、温室効果ガスの排出量を2050年に実質ゼロにする方針を固めた。

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【コメンテーターによる解説】(一部要約)
姜尚中氏:インドネシアへの外交は中国へのけん制狙いだと言われているが、一方でインドネシアは日本のクアッド戦略(日米豪印の4国で中国に対し東アジア版NATOをつくる)を明確に否定している。日本は地政学的に、韓国から中国への大陸ルートと、北方のロシアと、南方の東南アジア、3つのベクトルがあるが、これまでの外交は大陸と南進のどちらかに偏っていた。菅総理は安倍前総理の外交を継承しているが限界もある。ロシアに関しては恐らくあきらめており、これからもう一度韓国と中国の方を向いていくのか注目したい。(要約)

法政大学総長 田中優子 氏:(もっとも関心が高いトピックは)任命拒否問題です。先ほど、青木さんがどういうデマがあったとかといってくださいましたが文科省が日本学術会議がどういう会議体なのかという、ちゃんとした説明をしてくださいました。そういうふうにして説明というのが今、とても大事で、1つは本来は内閣府だって学術会議というのがどういう姿をしているのかきちんとした説明をしてデマが流れないようにすべきだと思うんですね。それから任命拒否の理由もこれは違法ですから、今、私たちから見ると違法なんです違法じゃないということであれば、なぜ違法じゃないのかを説明していただきたい。あるいは違法だけれども、やらなければならないということがもしあるのであれば、それは説明するべきなんです。私たちは大学であっても企業であっても、ガバナンスコードを持っていて、このコードとかルール、実現できないことがあるんですね。でもそのときには説明をしなければならないんです。つまり民間では公正を保つためには常に説明を求められるんです。政府は当然、説明を求められるんです。もう1つ説明していただきたいことがあるんですね。今年の6月に科学技術基本法というものの中に、今まで排除されていた人文社会科学が不可欠であるということで、入れられたんです。今年の6月です。これは国会で承認されたわけです。そのことと今回の任命拒否が矛盾するんです。今、6名欠員状態ですから。じゃなぜその矛盾が起こっているのですかということを説明していただきたい。つまり、説明していただきたいことがたくさんあるのでよろしくお願いしたいと思います。

朝日新聞編集委員 高橋純子 氏:この1週間を見ると、学術会議の任命拒否にしても石破議員が会長を降りる決断をした経緯にしても、何事も一色に染めようとして多様性を失っているよう感じられ、今の日本の政治や社会を象徴しているように思う。また、菅総理が自著から公文書に関するくだりを削除した件は言葉を軽視している。本来、政治の原点とは言葉。明日からの国会で言葉というものがどう用いられるか、注視したい。(要約)

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【検証部分】
今回は日本学術会議の任命拒否問題に関しての田中氏の発言を取り上げます。

田中氏は次のように発言しています。
「任命拒否の理由もこれは違法ですから、今、私たちから見ると違法なんです違法じゃないということであれば、なぜ違法じゃないのかを説明していただきたい。」
「今年の6月に科学技術基本法というものの中に、今まで排除されていた人文社会科学が不可欠であるということで、入れられたんです。今年の6月です。これは国会で承認されたわけです。そのことと今回の任命拒否が矛盾するんです。」
一つ目の発言では任命拒否は違法であると、また二つ目では今回の任命拒否が科学技術基本法と矛盾するのではないかと主張しています。この点について順に見ていきます。

まず、任命拒否が違法であるという発言に関してです。
そもそも日本学術会議の任命権は内閣総理大臣が持っています。この時点で、仮に総理の決定が間違っていたとしても、「違法」ではないことは明らかです。「違法」というのは法に背いた行為を表す言葉で、個人の主観的判断とは切り離された客観的な事実に基づきます。田中氏は菅総理の決定を評価していませんが、あくまで「違法」であるか否かは法に照らして判断されるべきです。実際には先ほど述べたように、菅総理の行動を法に照らせば違法でないことは明らかです。
さらに、田中氏は違法でないことを説明しなければならないとしています。しかしそもそも、違法であるか否かという議論は、違法である根拠があって初めて可能になるものです。まず初めに、問題となる行為に関して違法である根拠を示さなければなりません。違法でないという説明は、その違法であるという根拠に反論する形でなければできません。
しかし田中氏は「私たちから見ると違法」と、極めて主観的に違法であると判断したうえで、根拠のないままに違法でない説明を求めています。

次に、今回の任命拒否が、科学技術基本法において人文社会科学が不可欠としたことと矛盾するという指摘に関してです。
科学技術基本法は、田中氏の指摘するように、今年の改正によりこれまで除外されていた人文科学が含められることとなりました。しかし、この件と今回の任命拒否問題はどのような関係があるのでしょうか。
そもそも、科学技術基本法は日本学術会議を対象としたものではなく、日本全体の科学を対象として、総合的な振興や効率的な研究の蓄積を可能にするための法律です。これまで科学技術基本法に人文科学が含まれていなかったのは、人文科学が軽視されていたからではなく、自然科学と明確に切り離された領域と考えられていたからでした。しかし近年は、研究の進展もあり自然科学と人文科学を連携させ、総合的に活用するべきだという考えが強まり、今回の法改正に至りました。
つまりこの法改正は、人文科学の重視に舵を切るというよりは、むしろ自然科学と人文科学の連携に主軸が置かれています。そして、今回の法改正により日本学術会議に新たな役割が求められるということもありません。そのため、科学技術基本法の改正と日本学術会議の問題は全く矛盾していないことが分かります。

田中氏からは、菅総理の行為を「違法」だとしている点、任命拒否と科学技術基本法の改正が矛盾していると主張している点で、事実と異なる発言が見られます。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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