2020年11月2日 報道ステーション

2020年11月2日 報道ステーション

11月2日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは次の点です。

・さまざまな論点を取り上げた放送だったか。

まずは放送内容を見ていきます。
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【放送内容】

小木逸平アナウンサー(小木アナ):続いてですけれども廃案が決まりました、大阪都構想です。この結果を受けまして大阪市の松井市長は任期を残り全うしたうえで政界を引退する考えを表明しました。そして、大阪維新の会の代表を辞任する方針も固めたということです。菅総理ともつながりが強いこの維新の会。政界への影響は。

【VTR】
松井一郎大阪市長:全て私の力不足。市長の任期をもって僕の政治家としての任期を終了とします。

ナレーター:結果はわずか1万7000票差でした。東京都をモデルに大阪市を廃止して、新たに4つの特別区を設置する大阪都構想。その是非を問う住民投票は2015年の前回に続き再び僅差での否決となりました。

吉村洋文大阪知事:僕自身が大阪都構想に政治家として挑戦することはもうありません。もうやりきったという思いです。

ナレーター:都構想では大阪市と大阪府で意見が対立することもあった都市開発などの成長戦略を大阪府に一元化します。維新の会は、二重行政が解消され大阪の発展につながると訴えてきました。なぜ、それが受け入れられなかったのか。松井市長が繰り返したのは住民の不安でした。

松井市長:(都構想の)デメリットはないと今でも思ってます。でもやはり不安なところ、変わることへの不安を解消させるだけの僕の説得力が不足していたと思います。

ナレーター:9月中旬から毎週実施した世論調査では当初、賛成が大きく上回っていました。しかしその後、差は詰まり始め最後には賛否が逆転します。この間、反対派は教育や福祉などの住民サービスが低下するといった懸念を強く訴えました。

自民党大阪市議団北野妙子幹事長:住民サービスが低下するからこそ、みなさんが問われているということで。何度も何度も申し上げましたけどそのことが少し浸透したのかなと思っています。

ナレーター:今回の結果賛成が上回ったのはビジネス街や繁華街が広がり若い世代も多い市の中心部や北部の区です。一方、比較的高齢化が進み中心部から離れた南部や湾岸部では反対が上回っています。唯一、前回と賛否が逆転した東成区で住民に話を聞きました。

住民1:二重行政どうのこうので押していっても解決する方法は他にもあるんじゃないか。

レポーター:もともとは賛成だったんですよね?

住民1:そう。それで最後変わってしまったな。

住民2;これといったメリットがみえない。都構想に変わってどう良くなるのか全然わからなかったので、現状のままキープでいいんじゃないかなと、思って反対にいれました。

ナレーター:更に維新の会にとって誤算だったのは公明党支持層の動向です。朝日新聞の出口調査によると賛成票を投じたのは公明党の支持層のうち46%でした。

公明党山口那津男代表:府と市がお互いに見合っていたり、足を引っ張っていたり、足並みが揃わずこけてしまってはダメなんです。どうぞみなさん、賛成。勝たせてください。勝たせてください。

ナレーター:前回反対だった公明党は今回、賛成に回り山口代表まで大阪入りするという異例の態勢を取りました。背景には次の衆議院選挙を見据え維新の会を敵に回したくないという事情もあります。こうした公明党の対応に対し…。

公明党の支持者だった保志学さん:5年前に「二重行政はそもそもない」と言っていたのが、5年経ったらこの内容で「二重行政がなくなります」なんてそんな非論理的なことは通りますかと。普通、誰が聞いてもおかしいやんかと。

ナレーター:保志学さんは50年以上公明党を支持してきました。しかし、党が方針を一変させたことに失望。街宣車にも乗り反対を呼びかけました。

公明党の支持者であったけども、もう無党派になりました。これから政治に対しては人物を見ていこうと。党派でみていったら妥協もあるし、色々な総合的な判断もあるでしょうからね。

ナレーター:維新の会が取り込んだはずの公明党の力は生かしきれませんでした。今回の結果に、菅総理は…。

菅義偉総理:地域の判断でありますので、政府としてコメントは差し控えますけども、大都市制度の議論において、一石を投じることだったと思う。

ナレーター:都構想の否決は菅総理の政権運営にも影を落とす可能性があります。菅総理は、松井市長と良好な関係を築き維新の会は野党でありながら政権に協力的な姿勢を示してきたからです。

ジャーナリスト後藤謙次氏:菅さんという政治家自体も維新の存在によって中央政界に対する影響力を持っていた。いわば維新っていうのは菅さんの懐に入っているジョーカーみたいなものだったんですね。維新というカードを失うことによって政界全体が違う動きに転じていく。そういう意味で大きな節目になる。

【スタジオ解説】
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ)大阪市民の方々は本当に悩みに悩んだという方が多いと思うんですけれども最後は結局否決という形になりましたね。

太田昌克共同通信編集委員(以下太田氏):私は敗因の1つは説明不足だと思うんですね。ちょうど東京で1週間前に共同通信が行った世論調査では、70%の方がやっぱり府も市も説明が十分でないとそういう判断を示されておられて今日、大阪の政界関係者に少し電話で取材したんですが最後まで決めかねた方が多くて最後までよく分からない。投票所行って、別に今困っているわけでもない。だから反対票を投じておこうかというのでブレーキ役になった可能性が大きいんではないかという解説でしたね。

徳永アナ:そして国政への影響というのも考えられますかね。

太田氏:私は少なくとも大阪での自公協力は影響大だと思うんですよね。世論調査さっきVTRにもありましたが出口調査では公明支持者の賛成票が5割未満であったということで今回、公明党は維新と来年の衆院選で小選挙区で大阪、関西で戦いたくないから維新とくっついて対決を回避したわけなんですよね。しかし結果がこれだったということで。どうも自公のしこりだけが残ったんじゃないかという印象を受けます。

【検証部分】
大阪都構想は大阪市を東京都のように特別区という形に編成し、二重行政を防ごうとする試みです。
非常に賛否が分かれた問題であり、2015年の住民投票に続き、僅差で再び否決となりました。
否決となった要因について放送では都構想についての説明不足・説得力不足などといった点が挙げられていました。それはその通りでしょう。

ただ、否決の要因として見逃してはならない報道がありました。
毎日新聞・朝日新聞などが報じた218億円問題です。

これは投票日1週間前の10月26日に毎日新聞が一面で報じた「市4分割 コスト218億円増 大阪市財政局が試算」という記事が発端です。
この記事は大阪市を4つの“政令市”に分割した場合、コストが218億円増加すると報じたものですが、都構想は大阪市を4つの“政令市”に分割するものではありません。

要するに今回の都構想とは関係のない試算をあたかも都構想のコストが増加するようにミスリードを行ったのです。

またこの記事のソース源にも問題があります。この218億円のコストが増加すると試算した大阪市財政局は松井市長の預かり知らぬところで試算を行い、試算結果を報道機関に渡していたのです。
この独断を行なったのは大阪市財政局長とされています。

上記のように問題だらけの毎日新聞の報道に続き朝日新聞やNHKも同様の報道を行いました。一連の報道は投票結果に大きな影響を及ぼした可能性があります。

毎日新聞などの一連の報道について高橋洋一氏が以下の記事で詳述していますので、ご覧ください。

《現代ビジネス 高橋洋一 大阪都構想「否決」、マスコミ「疑惑の報道」がミスリードした結果だ
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/76959?imp=0

《現代ビジネス 高橋洋一 毎日新聞「大阪都構想」ミスリード報道で露呈した、マスコミの「勘違い」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/77623

この日の放送ではこれだけ重大なメディアのミスリードについて何も触れずに、都構想否決の要因を語っています。
このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

(引用開始)
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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