2020年11月22日 サンデーモーニング(中編)

2020年11月22日 サンデーモーニング(中編)

11月22日のサンデーモーニングのレポート中編、アメリカ大統領選挙の再集計について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・政治的に公平な報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】(要約)
11月18日水曜日。アメリカ大統領選を巡り郵便投票などで不正があったと訴えているトランプ氏は、中西部ウィスコンシン州の2つの郡で再集計を申請した。ウィスコンシン州でバイデン氏はおよそ2万票、選挙人10人を獲得しているが、これは僅差でトランプ氏が逆転する可能性は低いとみられている。大統領選の結果を認めず各州で訴訟を続けるトランプ氏に対し、バイデン氏は『民主主義のあり方について信じられないほど有害なメッセージが世界中に送られている』と批判した。

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【コメンテーターによる解説】
寺島実郎 氏:今アメリカ大統領自身が自分の国の選挙がいんちきだなんていう、奇怪な行動に出てるわけですね。だけど、事実が証明しているんですね。トランプは7310万票取ったと胸張ってるんですね。だけど、バイデンが取ったのは7860万票で550万票、全米においてもバイデンが勝ってて州ごとの選挙人というやつも圧倒的にひっくり返ることはできない状況なんですよ。ワシントンの状況というのは回転ドアと言われて、トランプがいくらホワイトハウスにしがみついていても周りのスタッフ、それから弁護士も含めてものすごい勢いで、次の次期政権に向けてどんどん、どんどん代わっていくわけですよ、何千人という人が。ですから物語は完全に前に進んでいるんです。だけど今、アメリカにとってこれだけコロナが出ているときに移行リスク、トランジッションがスムーズにいかないことがアメリカのコロナ死者を増やしてしまうというまことに愚かなことをね。つまりアメリカがどれほど失望感を世界に対して与えているかです。

【検証部分】
今回は、アメリカ大統領選挙に関してトランプ氏がウィスコンシン州で再集計を申請したという報道を取り上げました。この報道では、寺島氏から政治的に公平でないコメントがなされました。

寺島氏はコメントの中で、再集計を求めるトランプ氏の行動を「奇怪」と表現しています。しかし、トランプ氏の行動が間違っていると「事実が証明している」と主張しています。そして最後には、「まことに愚かなこと」、「アメリカがどれほど失望感を世界に対して与えているか」と批判をしています。

まず、寺島氏のトランプ氏に対する「奇怪」という評価を検証します。寺島氏は「今アメリカ大統領自身が自分の国の選挙がいんちきだなんていう、奇怪な行動に出てるわけですね。」としています。
しかし、自国の選挙に不正があると訴えることは奇怪なのでしょうか。自国であろうと他国であろうと、選挙の不正は許されることではありません。そして政治的リーダーであればなおさら、自国でそのようなことが起きるのを見過ごしてはならないはずです。
このようなトランプ氏の行動を寺島氏は「奇怪」としていますが、この言葉にしたがえば、自国で選挙の不正があったとしても、大統領自身はそれを訴えてはならないということになります。こちらの方がはるかに「奇怪」ではないでしょうか。

さらに、寺島氏はトランプ氏の主張が間違っていることは「事実が証明している」としています。しかし、寺島氏のそれに続く発言は「トランプは7310万票取ったと胸張ってるんですね。だけど、バイデンが取ったのは7860万票で550万票、全米においてもバイデンが勝ってて州ごとの選挙人というやつも圧倒的にひっくり返ることはできない状況なんですよ。」という内容でした。これはトランプ氏とバイデン氏の差が開いているから、逆転が困難だという内容です。
しかし、バイデン氏がトランプ氏に大差で勝利したことは、選挙に不正がなかったことの証明にはなりません。トランプ氏が逆転できるかできないかという議論と、選挙に不正があったかどうかという事実検証は、分けて考えられなければなりません。そもそも票数のみを根拠に逆転の可否を論じることは安直ですが、それ以上に逆転が不可能であることを根拠に不正がなかったとみなすのは全く合理的でありません。
もしも「事実が証明している」の内容が選挙の不正ではなく、バイデン氏の勝利という選挙結果であったとすると、票数の差を用いて選挙結果は決定しているという説明はある程度筋の通った発言といえます。しかしこれでは、選挙の不正について言及した直前の発言との整合性がとれず、論点のすり替えとなってしまいます。

そもそも選挙の不正というのは、民主主義国家にはあってはなりません。万が一あった場合には厳正に対処しなければなりません。しかし現在のアメリカは不正の疑惑を検証しようとしていません。
寺島氏は不正を訴えるトランプ氏を「まことに愚かなこと」、「アメリカがどれほど失望感を世界に対して与えているか」と批判していますが、本当に愚かで、世界に失望感を与えるのは、アメリカが選挙の不正から目を背け、アメリカの民主主義が失われてしまうことではないでしょうか。

寺島氏の発言は、選挙の不正を訴えるトランプ氏を「奇怪」とし、根拠として成り立たない根拠を挙げて、事実は明らかだとの主張をしています。これらトランプ氏への批判は合理性を欠いており、政治的に公平であるとはいえません。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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