2018年1月29日 テレビ朝日「報道ステーション」の報告です。
今回の放送で一番時間を割いた話題は「金塊密輸」についてのニュースでした。
容疑者が日本に金を密輸する際の巧妙な手口などが紹介されましたが、特に印象操作や放送違反に抵触するような箇所は見当たりませんでした。
さて、今回の放送回で検証していきたいのは、当日の衆議院予算委員会での質疑について報じた部分です。
詳しく見ていきます。
【放送内容】
——–
小川アナ「続いてのニュースです。こちらは2014年の4月にですね、森友学園の小学校の建設予定地を訪れた籠池夫妻と安倍昭恵夫人の姿です。今日の国会の予算委員会では当時の籠池理事長が昭恵夫人の名前を出して国に土地の値引きを迫っていたのではないかという追求がありました。」
——–
冒頭、小川アナがスタジオに設置された籠池夫妻と安倍昭恵首相夫人が写る写真を紹介しながら、森友学園問題が国会で取り上げられたと発言。VTRがスタートしました。
——–
VTRは衆議院予算委員会での一幕に切り替わります。
立憲民主党長妻昭議員「昭恵夫人は棟上げ式に行くことになっていたんですか、総理。」
安倍晋三総理大臣「それは突然聞かれても私は答えようがありません。」
ナレーター「取り上げられたのは森友学園と国側の話し合いを録音した音声データ。昭恵夫人の名前を出しながら、土地の値引きを要求する森友学園側に国側が対応する様子が記録されていました。」
↓
~音声データの一部~
籠池理事長「(校舎の)棟上げの時に(安倍昭恵)首相夫人が来られることになっている。(日にちの)設定をしていてこないになってしまって、どうするの僕の顔は。」
森友学園側の弁護士「死ぬ気でその値段を下げることに取り組んでほしい。知恵を絞ってほしい。」
近畿財務局の担当者「(3mより)下にあるごみは国が知らなかった事実なので、そこはきっちりやる必要があるでしょうという、ストーリーはイメージしている。」
↓
VTRは再び予算委員会へ
長妻議員「学園側が『棟上げの時に首相夫人が来られることになっている』と言及して、昭恵夫人のことだと思いますけれども値段を安くするように求めた。昭恵夫人は棟上げ式に行くことになっていたんですか、総理。」
安倍総理「それは突然聞かれても私は答えようがありません。」
長妻議員「突然じゃなくて通告してますよ。」
「財務大臣、このテープの事実はどうですか。」
麻生太郎財務大臣「この音声データについてはすでに昨年報道されていると記憶していますが、前の国会で理財局長が答弁したとは思いますけれども、近畿財務局の職員に事実関係…え音声データの話でしょ?データの話だと…全然私は分かりません。私どもは伺っておりません。」
長妻議員のヤジ「棟上げ式の話、棟上げ式って言ったのかって」
↓
ナレーター「野党は事実関係を知る立場にあった当時の理財局長、今の佐川国税庁長官による説明を要求。」
長妻議員「就任記者会見、歴代の国税庁長官はみんなしている。ところが佐川さんだけが一度も記者会見していない。」
麻生財務大臣「国税庁の所管の行政以外に関心が集まっていたことから国税庁においては実施しないと決めたんだとあの時はそうだったと聞いております。」
長妻議員「これもびっくりしました。税以外の質問が飛んでくるから、一切自分は公の場には出ませんと。佐川長官はいったん辞任をする。身を引く。」
麻生財務大臣「国税庁長官としての職務を適切に行っていると考えており、引き続きその職責を果たしてもらいたいと考えています。」
↓
VTRは25日の衆議院本会議での志位和夫共産党委員長の代表質問の場面に切り替わります。
その場での当時の松本文明内閣府副大臣による「いったい何人死んだんだ。」というヤジを取り上げました。
ナレーター「副大臣の辞任につながった、このヤジの問題では。」
立憲民主党川内博史衆議院議員「沖縄県民、沖縄県に対しては大変な暴言冒涜ではないか。」
安倍総理「松本副大臣から先週金曜日、自らの発言によって沖縄県民、国民の皆さんにご迷惑をかけたので辞任したいと申し出がありましたので辞表を受理することとした。任命責任は当然、内閣総理大臣たる私にある。沖縄の皆さん、国民の皆様に深くおわびを申し上げたい。」
↓
ナレーター「その沖縄で相次ぐアメリカ軍のヘリによる不時着などのトラブル。アメリカ軍に対する不信感は政府からも。」
小野寺五典防衛大臣「米側からは『同型機のヘリすべてについて追加的な点検を行い、点検が完了するまで飛行を行わなかった。ヘリ部隊に対し抜き打ちの安全検査を行った。』との説明を受けておりますが、これ私どもそのまま受け取るわけにはいきません。」
「米側が実施した点検整備については防衛省として今後速やかに、自衛隊の専門的技術的な知見を活用して確認検証を行う予定です。」
小野寺大臣の発言を最後に、カメラはスタジオへと戻ります。
——–
富川アナウンサー「今日の予算委員会ご覧になっていかがですか。」
後藤謙次「そうですね、去年の通常国会からちょうど一年なんですけれども、森友学園問題及び沖縄問題、一歩も前に進んでないという印象ですね。とりわけ森友問題に関しましてはですね、安倍総理はこれまでも何度も、真摯に説明すると、こう安倍さんおっしゃってたんですがその説明がないがゆえにですね、行きつ戻りつの同じようなことの繰り返しになってしまっていると。特にですね、今日の国会でもこの問題になると安倍総理自身の言葉で
しゃべらずに、紙を見ながら下を向いて静かにこの局面をやり過ごそうとしているという思いが前に出てしまっている。そして議論が進まないということだと思いますね。」
富川アナ「変わらない姿勢のように思えてしまうということですね。そして一方で米軍ヘリについては小野寺大臣が、米軍が行った点検整備を防衛省として検証すると言っていましたが。」
後藤氏「強気な一歩を踏み込んだ発言に見えるんですけれども、結果として日米地位協定の壁に挟まれてですね、実際の機体に触れることもできないわけですからね、検証は不可能と言っていいと思いますね。」
~以下略~
——–
今回の放送で問題があると考えられる点は、主に2点あります。
1点目は安倍総理の発言を意図的に編集して否定の文言を多くしていること。
2点目は後藤氏が政府の対応を公平に伝えず、否定的に発言していること。
この2点です。
まず1点目についてですが、このコーナーの冒頭で番組は長妻議員による「昭恵夫人は棟上げ式に行くことになっていたんですか、総理。」という質問への安倍総理の「それは突然聞かれても私は答えようがありません。」という答弁を放映しました。
じつはこの流れでの発言、同じコーナーでもう一度登場します。しかも長妻議員の質問の部分は流れをわかりやすくするためか、冒頭よりも長めに切り取られていました。これでは、安倍総理の「答えられない」という否定的発言があたかも2度されたかのように視聴者は感じてしまうのではないでしょうか。確かに同じ質問者、同じ答弁者ということから気づく視聴者もいるのかもしれませんが、印象操作と言われても仕方がない編集方法です。
次に2点目についてです。後藤謙次氏はスタジオにて「森友学園問題及び沖縄問題、一歩も前に進んでないという印象がある」と発言しましたが、森友問題に関しては会計検査院による監査や検察の捜査が進み、多くの事実が明らかになっています。少しずつではありますが、事実が明るみに出ていることと後藤氏の発言は矛盾しているのではないでしょうか。
また、沖縄の米軍ヘリの問題についても同様です。先日、防衛省のカメラが普天間の小学校上空を飛行した様子を捉えたため、日本政府が米軍に抗議した、ということがありました。これはまさに小野寺大臣の言う「自衛隊の専門的技術的な知見を活用して確認検証を行う」の一つの形と言えます。後藤氏はこのような自衛隊や日本政府による安全確保策を「一歩も進んでいない」と断じたうえで「検証は不可能」と主張しているのです。
これらの発言も印象操作に抵触していると言えるのではないでしょうか。
以上、2点の問題から、今回の放送は重大な印象操作に抵触している可能性があります。
今後も監視を続けます。