2018年6月14日 報道ステーション

2018年6月14日 報道ステーション

報道ステーション、2018年6月14日分の報告です。  
今回の報告は、6月12日に開かれた米朝首脳会談についてのものです。
では、順にみていきましょう。

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富川悠太アナウンサー(以下、富川):こんばんは。まずはこちらをご覧ください。今日午後3時にですね、北朝鮮に、このような映像が流れたんですね。金正恩委員長がシンガポールを訪れた際に、観光客から手を振られては手を笑顔で振り返したりですね、夜景を見ながら説明を受けている様子も映っていました。
そしてホテルでは、こうやって、ソファーに座って笑顔を見せていたんですね。
どのような意図でこのような映像を北朝鮮に流したんでしょうか。そしてですね、拉致問題について、金正恩委員長が会談でトランプ大統領に、安倍総理と直接対話することに前向きな姿勢を示したともとれるような発言をしていたことが分かったんですね。
さあ、日朝会談に向けて、進んでいくんでしょうか。
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富川アナが冒頭、トランプ大統領が金正恩委員長の発言として安倍総理と拉致問題を話し合う余地があることを示したことを伝え、VTRがスタートしました。
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【VTR】
(朝鮮中央テレビの映像)
朝鮮中央テレビのアナウンサー(字幕):和解に向け大きな一歩を踏み出し対話の場で向き合うことになろうとは誰が想像できたでしょうか

ナレーター:動き始めた米朝関係。日本も流れに乗り、拉致問題を解決できるのでしょうか。

(拉致被害者家族会の会見映像)
拉致被害者家族会 飯塚繫雄代表:日本政府もですね、あれだけのイベントをしながら今後黙っているわけにはいかないと・・・

(朝鮮中央テレビの映像)
ナレーター:今日午後3時の朝鮮中央テレビ。特別番組として、先日の金正恩委員長とトランプ大統領との会談の様子を動画で初めて公開しました。

朝鮮中央テレビのアナウンサー(字幕):敬愛する最高指導者同志がセントレジスホテルに到着されました

ナレーター:BGMは、恋はみずいろです。北朝鮮側が記録した金正恩委員長のシンガポール訪問映像には、これまで見たことのない様子が収められていました。
例えば、到着直後にホテルのスイートルームでくつろぐ金正恩委員長。滞在二日目の夜に、リゾートホテルの、マリーナベイ・サンズを視察する様子、などなどです。

朝鮮中央テレビのアナウンサー(字幕):いたるところでシンガポール人民は最高指導者同志を熱く迎えました 最高指導者同志はマリーナベイ・サンズの展望台に上がり、市内の風景をご覧になりました 最高指導者同志はシンガポール港も参観されました
「シンガポール経済力と発展の様子がよく分かった」と述べられました

ナレーター:トランプ大統領との会談については、これまでアメリカ側からは出てこなかった内容もありました。

朝鮮中央テレビのアナウンサー(字幕):非核化を実現するには 互いに相手を理解して敵視しないと約束し それを担保する法的・制度的措置が必要であると金委員長は述べた

ナレーター:非核化のためには、体制保障を担保する法的制度が必要、というものです。
法的制度とは、平和条約や不可侵条約の締結を求めていたと思われます。

朝鮮中央テレビのアナウンサー(字幕):敵対と不信 憎悪の中で生きてきた両国が 不幸な過去を伏せ 互いに利益になる 誇らしい未来へと力強く進み 朝米協力の新時代が開かれる

ナレーター:非核化は今後、いつまでに、どのような形で行われていくのか。朝鮮中央テレビでは、そのあたりの言及はありませんでしたが、アメリカのポンペオ国務長官は、訪問先の韓国で。

ポンペオ国務長官(ナレーター):トランプ大統領の1期目終了となる2021年1月までに非核化の大部分を達成できる。

ナレーター:一方で、日本にとっては、拉致問題も最重要課題の一つです。

(アメリカの記者会見の映像)
質問する記者:日本人拉致問題についてお聞きします。先の米朝首脳会談において、トランプ大統領からどのような提起があって、金委員長からどのような返答があったのか。

ポンペオ国務長官(字幕):確かに大統領は安倍総理の拉致被害者帰国に関わる北朝鮮への期待について 大統領は金委員長に明確に語っていた

ナレーター:両者の間で何が語られたのか。

(総理官邸 午後1時すぎ)
安倍晋三総理大臣:拉致問題というのは、日朝の問題でありますから、日本が主体的に責任をもって解決していかなければいけない問題だと思います。

横田 早紀江:今まできた長い年月を思いながら、本当に大きく動いたなと実感しております。みんなが無事に帰ってくれれば、私たちは何も言うことがございませんので・・・

ナレーター:今日、総理官邸に、拉致被害者家族が招かれ、米朝首脳会談についての説明が行われました。総理との面談後。

救う会 西岡力会長:総理が話されたことは、今後の交渉に関わることなので、すべてオフレコにしてほしいということでありました。そういうことであっても、機微に触れることはまだ話されていませんので・・・

拉致被害者家族会 飯塚繫雄代表:我が日本政府もですね、あれだけのイベントをしながら、今後黙っているわけにはいかないという雰囲気すごく感じられて、今後とも日本の立場から考えた拉致問題、これは、きちっとフォローしていきますよという態度がうかがわれました。まあそういうことでは、ますます期待はするわけですけれども・・・

ナレーター:日本政府への取材によると、首脳会談の場でトランプ大統領は、金正恩委員長に、拉致問題に関して、このように伝えたとされています。

トランプ大統領(ナレーター):本格的な経済支援を受けたいなら、拉致問題を含め、日本と協議するべきだ。安倍総理は、拉致問題の解決なしに支援に応じることはない。

ナレーター:それに対して、金正恩委員長は、「拉致問題は解決済み」という従来の主張はせず、こういう趣旨の答えを返したそうです。

金正恩委員長(ナレーター):安倍総理との対話には、オープンな姿勢だ。

ナレーター:直接会談に前向きともとれる内容です。

菅義偉官房長官:拉致問題については、トランプ大統領の強力な支援をいただきながら、我が国としては、北朝鮮と直接向き合って解決すべき問題である。そのような決意で今臨んでいるところです。

質問する記者:北朝鮮側との調整ですとか交渉というのはすでに始まっていると考えてよろしいでしょうか。

菅義偉官房長官:問題解決につながる首脳会談が実現すればいい。こういうふうに思っています。

ナレーター:状況の変化の中で、安倍政権は、圧力という言葉を控え、従来の強硬路線を弱めています。ただ、冷めきっている北朝鮮と対話にこぎつけられる交渉ルートはあるのでしょうか。

河野太郎外務大臣:状今の時点で、何か日朝の直接のハイレベルでの対話を検討していることはございません。

ナレーター:モンゴルの首都、ウランバートルでは、今日。

記者:これから安全保障に関する会議が始まります。あ、今北朝鮮の関係者と中国の関係者がにこやかに話をしています。日本政府は、北朝鮮の担当者とここで接触をしたい方針です。

ナレーター:しかしこの場で、中国やヨーロッパの出席者が北朝鮮の関係者と名刺交換をしたり話し込むのを、日本政府関係者は、後ろから眺めているだけ。エレベーターに乗り合わせても、カメラの前ではお互いに硬い表情を崩しませんでした。

質問する記者(字幕):日本の代表団に会う予定はあるか

北朝鮮関係者(字幕):その予定はありません。

質問する記者(字幕):日本側から提案があれば会うか

北朝鮮関係者(字幕):会っても話すことがない

質問する記者(字幕):提案があっても受け入れないのか

北朝鮮関係者(字幕):話すことがないのに会ってどうするのか

富川:それではですね、モンゴルのウランバートルで取材をしています政治部の前田洋平記者と中継を結びます。
前田さん、北朝鮮の関係者は日本政府関係者と会うつもりはないと断言していましたけれども、日本政府関係者は接触できたんでしょうか。

前田洋平記者(以下、前田):はい、先ほどですね。日本政府から発表がありまして、日本の外務省の清水参事官とですね、北朝鮮のキムヨングク北朝鮮外務省軍縮平和研究所の所長がですね、短時間意見交換をしたということです。今後の立場を伝えたということです。おそらくですね、ランチのタイミングか何かで、短く意見交換をしたとみられます。ですが、ある政府関係者はですね、まだこれからさらに会談も続くであろうというふうに言っています。実際にですね、こちらは日本政府関係者と北朝鮮の関係者が一緒に宿泊しているホテルなんですけれども、先ほどちょうど2時間ほど前にですね、清水参事官がですね、記者がいる正面口ではなくて、脇の人目につかない出口から走って出てきて車に駆け込んで、どこかに行ったというシーンがありました。おそらくですね、新たな会談が行われているという可能性もあり得ます。

富川:なるほど、意見交換はできた、接触はできた。ただ、パイプ作りというところまではまだいってないというような状況ですかね。

前田:そうですね。おそらく、ランチのタイミングですと、他の関係者もいろいろいた中での接触だったと思われます。そうした中で突っ込んだ話し合いができたとは、なかなか難しいと思います。

富川:なるほど。いったんここで後藤さん、意見交換はできて、このあと裏口から出て行って、また接触してるんじゃないかというリポートでしたけれども、そこまでしてパイプはやっぱり作ったっていうことなんですね。

ジャーナリスト後藤謙次(以下、後藤):そうでしょうね。今回見てますとやはり急場しのぎといいますか、米朝首脳会談を受けてですね、事態が急転してる中で、事後的に、満を持して接触したというよりは、事後的であったと。これからパイプ作りだと、そういう場面だと思いますね。とにかく置き去りにされないようにしたい。そういう思いが非常に伝わってきますね。前田記者の報道もそうでしたけれども、やはり今ここで、何とか糸口をつかもうと。そういう姿勢が伺えますよね。

富川:非核化はもちろん大切なことですけれども日本としては最重要課題、拉致問題も取り上げてくれないと困るということで、もう一度前田さんにいきます。前田さん。
日朝首脳会談に向けて、どうでしょう。進んでいきそうですか。

前田:そうですね、こうやって日本政府としては、あらゆる機会を利用して、とにかく直接接触をして積み上げていきたいということなんですね。まあ9月には、ウラジオストクの国際フォーラムではですね、金正恩委員長も招待されています。そこには当然安倍総理も行く予定です。どうにかしてそこで日朝首脳会談を実現させる。そのために一つずつ積み重ねていきたいというのが政府の考えだと思います。

富川:なるほど、9月になんとか日朝首脳会談を実現させたいと。

後藤:そうなんですね、ただ・・・

富川:動き出したのは間違いないわけですね。

後藤:間違いないと思いますが、今回は入り方ですね。安倍総理としては米朝首脳会談の中で、トランプ大統領の圧力によってですね、ぜひ、会いたいと。会ってほしいと。こう、金正恩委員長に言わせたかったと思うんですが、今回は逆でですね。なんとなくニュアンスとしては会ってやってもいいよ、という形だと思うんですね。あの12日の米朝首脳会談の後、安倍総理は記者団の前でインタビューを受けました。あのタイミングで日朝首脳会談をやると言ってもよかったわけですが、その段階ではまだ米朝首脳会談の評価が定まっていないと。ここで日本だけ飛び出してもどうなのか、という部分があったと思うんですが、昨日から非核化について急速に今、世論的には、歓迎の方向がでてきた。ここで出なければ拉致の前に行けないと。そういう判断があったんだと思うんですね。ただこれまでの日朝の交渉というの下から積み上げていくもので、今度は米朝のトップ同士の合意を受けてやるということでは全くやり方が違うわけですね。ですから安倍総理としては、日本の経済支援、それからトランプ大統領の後押し、この二本柱で進めていくと、いうしか道がないんだと思いますね。

富川:今、政府関係者がなんとか接触をして、意見交換をしてパイプを作ろうとしている。このまま、直接やるから、トランプ大統領、横から支援してくださいねっていうことなんですね。

後藤:そうでしょうね。先ほど政府高官と電話で話しましたけれども、まあ大変な問題だと。課題だと、いうふうに溜息をついていましたから、相当大変なんだと思いますね。

富川:9月までは3か月しかありませんからね。

後藤:そうですね。
この後藤氏の発言を最後にこのコーナーは終了しました。

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【検証部分】
今回の放送の問題点は大きく分けて2つあります。
1点目は富川アナが、前田記者とのやり取りの中で誘導ともとられかねない発言をしていること。
2点目はスタジオでの後藤氏の発言に放送法違反に抵触する疑いのある箇所があったこと。
以上の2点です。

まず、1点目についてですが、富川アナは前田記者とのやり取りの中で
前田洋平記者(以下、前田):はい、先ほどですね。日本政府から発表がありまして、日本の外務省の清水参事官とですね、北朝鮮のキムヨングク北朝鮮外務省軍縮平和研究所の所長がですね、短時間意見交換をしたということです。今後の立場を伝えたということです。おそらくですね、ランチのタイミングか何かで、短く意見交換をしたとみられます(以下略)
富川:なるほど、意見交換はできた、接触はできた。ただ、パイプ作りというところまではまだいってないというような状況ですかね。
前田:そうですね。おそらく、ランチのタイミングですと、他の関係者もいろいろいた中での接触だったと思われます。そうした中で突っ込んだ話し合いができたとは、なかなか難しいと思います。
富川:なるほど。いったんここで後藤さん、意見交換はできて、このあと裏口から出て行って、また接触してるんじゃないかというリポートでしたけれども、そこまでしてパイプはやっぱり作ったっていうことなんですね。
と発言しています。このやり取りの中で「パイプ作り」という言葉が二回出てきました。どちらも正反対の趣旨の発言をしており、どちらが富川アナの発言の真意なのかは不明です。そもそも、「~ですかね」という発言からも記者を誘導しているような印象を受けました。
また、2回目の発言では「そこまでして」という言葉を使っていますが、国交がない国との交渉の際にパイプを作ることには相当の労力が必要だと思われます。それを「そこまでして」と形容してしまうのは本当に適当なのでしょうか。

2点目についてですが、後藤氏はスタジオの中で
ジャーナリスト後藤謙次(以下、後藤):そうでしょうね。今回見てますとやはり急場しのぎといいますか、米朝首脳会談を受けてですね、事態が急転してる中で、事後的に、満を持して接触したというよりは、事後的であったと。これからパイプ作りだと、そういう場面だと思いますね。とにかく置き去りにされないようにしたい。そういう思いが非常に伝わってきますね。
と発言しています。具体的には、今回の日本政府の行動を「急場しのぎ」と形容し、「置き去りにされないようにしたい」と政府の姿勢を指摘している点が気になりました。証拠や論拠もないまま、日本政府の行動を稚拙というのはやや視聴者への配慮に欠けているように感じました。

また、その後
富川:動き出したのは間違いないわけですね。
後藤:間違いないと思いますが、(中略)あのタイミングで日朝首脳会談をやると言ってもよかったわけですが、その段階ではまだ米朝首脳会談の評価が定まっていないと。ここで日本だけ飛び出してもどうなのか、という部分があったと思うんですが、昨日から非核化について急速に今、世論的には、歓迎の方向がでてきた。ここで出なければ拉致の前に行けないと。そういう判断があったんだと思うんですね。ただこれまでの日朝の交渉というの下から積み上げていくもので、今度は米朝のトップ同士の合意を受けてやるということでは全くやり方が違うわけですね。ですから安倍総理としては、日本の経済支援、それからトランプ大統領の後押し、この二本柱で進めていくと、いうしか道がないんだと思いますね。
と発言していますが、なぜ首脳会談も行っていない日本を「飛び出した」と表現するのかという点については非常に疑問が残りました。

以上のことから、今回の放送は放送法第4条2項「政治的に公平であること」、第3項「事実は曲げないで報道すること」に抵触している可能性があります。

今後も監視を続けます。

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