2020年6月8日 報道ステーション

2020年6月8日 報道ステーション

6月8日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・様々な論点を取り上げた放送だったか
・事実と異なる発言がなかったか

まずは放送内容を見ていきます。
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【スタジオ】
小木逸平アナウンサー:アメリカで黒人男性が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件のデモはこの週末、ヨーロッパや南米など各地で行われました。いまだ残る人種差別への抗議の動きはアメリカの事件をきっかけに世界中に広がっています。

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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):7日、イギリスである奴隷商人の銅像が引きずり下ろされました。17世紀およそ8万人の黒人奴隷をアメリカ大陸に送ったといわれる貿易商です。

(銅像を川に投げ込む市民の映像)

ナレ:ロンドンでは数万人とみられる市民が抗議の行進。一部では衝突も起きましたがほとんどは平和的なデモでした。

ロンドンの黒人男性『もうたくさんだ。私は声を上げる。感染のリスクがあっても価値あることだ』

パリの黒人男性『黒人が野たれ死ぬのを見るまで問題に気づかないなら、あなたも当事者のひとりだ』

ナレ:アメリカに端を発した抗議活動を後押しする動きが世界中に広がっています。現在も各国で暗い影を落とす人種差別に対し今こそ世界を変えよう。私たちが変わろうという声の高まりです。

ローマの黒人女性『息子たちは30年前の私たちと同じ目に遭ってるの。同じ抑圧、同じ暴力、同じ侮辱、あり得ないわ』

ロンドンの黒人女性『警察の暴力だけでなく人種差別の問題です』

サンパウロの黒人男性『私たちは長い時間人種差別というウイルスに殺されている』

ナレ:アメリカ国内の勢いも衰えません。この週末、全米の各都市で数千から数万人規模の市民が集まり抗議の声を上げました。略奪などを行う者は、なりを潜めむしろ、より平和的な抗議が行われるようになっています。ジョージフロイドさんが殺されたミネアポリスでは、市民の声が一つの結果をもたらそうとしています。警察組織の解体です。

(事件当時の映像)
警察官『離れて、下がって!』
警察官『そいつを押し戻せ!』
(映像に入り込んだ声)『彼、出血しているぞ! 耳から血が出ているぞ!』

ナレ:ニューヨーク州で75歳の男性を突き飛ばし重傷を負わせた2人の警察官は暴行の疑いで訴追されました。ニューヨークではデモに参加する市民に対し過剰ともいえる警察の対応が問題に。組織改革も現実味を帯びてきました。

ニューヨーク市・デブラシオ市長『ニューヨーク市警の財源を若者と社会事業に分配することに決めた』

ナレ:更に大きな動きが起きようとしているのが事件発生の地、ミネソタ州。7日、ミネアポリス市議会が市の警察への予算を打ち切り、警察を解体する見通しであると明らかにしたのです。

ミネアポリス市議会・ベンダー議長『ミネアポリス市警との毒された関係を絶つのです』

ナレ:人種差別をこれ以上野放しにさせない。国民にその思いが高まるとともに、トランプ大統領への風当たりも強くなります。

トランプ大統領のtwitter『州兵をワシントンから撤退する指示を出した』

ナレ:必要になったらすぐまた配備できると牽制したうえで、批判された州兵の配備をやめました。CNNによると今週中にもトランプ大統領が国民に向けて演説を行う方針だといいます。

【コメンテーターによる解説】
徳永アナ:トランプ大統領は州兵の撤退を指示したということなんですがこの方針の変化に関してどのようにご覧になりますか。

太田昌克氏:先週ですよね。軍隊を出すぞと言い出してそれでマティス前国防長官はずっと沈黙を保っていたんですけど、辞めたあとですね、反トランプの姿勢を明確にされましたよね。それから、あとはもう1人、ご紹介したいのがパウエル元国務長官。この方はアメリカの英雄ですね。軍のトップも務められた黒人の方なんですけどね。彼がトランプさんには投票しないと共和党員なんですがはっきりおっしゃったんですね。政治と軍の問題だと思うんですね。政治家が簡単に越えてはいけない森っていうものがあるんですよ。それはやっぱり軍をどう使うか。ましては政治利用しちゃいけないんですね。パウエルさんという方はこういうことをおっしゃっているんです。軍を使う場合、軍事介入をする場合は、脅威が明確であって国民の支持がなければいけないし最後の手段だと。軍事力行使は戦略目標を明確にして使う場合は圧倒的な兵力を投入する。これはもちろん戦争の話ですが政治家と軍は越えてはいけない政治家の一線を明確に線を引かれて、軍の運用を慎重にしてこられたんです。こういう方々共和党の穏健保守なんですね。それが皆さん、今トランプさんに投票しないとおっしゃっている。トランプ大統領がこのまま分断をあおって国際協調路線から背を向けてしかも、軍の政治利用をやる。恐らくトランプ政権の凋落の始まりというものは近づいていると思いますね。

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【検証部分】

アメリカでの人種差別をめぐるデモとそれに関連してトランプ大統領の評価についての放送を取り上げます。

今回の放送では今般のアメリカでの騒動からトランプ大統領の対応が良くないという解説がなされています。
軍の政治利用、アメリカの分断、国際協調路線からの脱却、トランプ政権の凋落などといった言葉から太田氏の解説はトランプ大統領に対して終始、批判的な論調だったことが分かります。

しかし、トランプ大統領の支持率の推移を見ても分かるように、トランプ大統領の行動が全く支持されていないという訳ではありません。

多くのアメリカ人が軍による騒動の鎮静を支持しているという調査もあります。
(参考:【世論調査】アメリカ人の過半数が米軍による暴動鎮圧を支持https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/post-93583.php

トランプ大統領に対して批判的な解説を行うこと自体は問題ありませんが、賛否があることには触れるべきでしょう。
このような放送は下記の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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またトランプ政権の凋落が始まっていると解説していますが、トランプ氏の支持率の推移を見てみると、この騒動による大きな変化は見受けられません。
(参考:支持率|アメリカ大統領選挙2020|NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/special/presidential-election_2020/election-data/

こちらのサイトを見て分かるようにトランプ大統領の支持率は元々安定している訳ではありません。
最も支持率が低かったのは2017年12月ごろの37%程度、最も支持率が高かったのは2020年の3月で47.3%です。

確かに2020年5月から6月にかけて支持率は低下してきていますが支持率42%程度で底をつき、若干ですが6月19日の数字ではすでに支持率を取り戻しはじめています。
支持率を見る限り、トランプ政権の凋落とは言い難く、事実と異なる可能性があります。
これは下記の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は公正なテレビ放送のため、監視を続けて参ります。

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