2020年6月9日 報道ステーション

2020年6月9日 報道ステーション

6月9日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは下記の点です。

・様々な論点を取り上げた放送であったか

まずは放送内容を見ていきます。
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【スタジオ】
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):拉致被害者の横田めぐみさんの父・滋さんが亡くなったあと初めて母の早紀江さんが会見に臨みました。会見には、めぐみさんの弟拓也さんと、哲也さんも同席して滋さんの最後の様子、その人柄これからについて語りました。

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【VTR】
横田早紀江さん(以下早紀江さん)『この度、主人の滋がだんだん衰弱いたしまして5日に永眠しました。長い闘病生活でしたが、本当に苦しいとか痛いとは言わないでいつも笑顔をもって元気に意識もあったんですが、だんだん衰弱して突然、静かに息を引き取りました。弱ってきた時に看護師さんが「何でもいいから声をかけてあげてください」「気持ちよく眠ってください」大きな声で言いまして「私が逝くときは忘れないで待っててね」大きな声で言ったらちょっと片方の目を開けてうっすらと涙を浮かべたような、眠るように亡くなっていきました。それだけ耳元で言ったのが最期でした。(Q.早紀江さんにとって滋さんは戦友だと思うがどのような旦那さんだったか?) 主人は朴訥な人で器用な方ではなかったんですが、自分の全身全霊を打ち込んで、本当にまっすぐに正直に頑張れるところまでは頑張ろうと」

早紀江さんの弟・横田拓也さん『私から見た父親の印象は正直者でまじめで優しくて、でもとても強い大人で父親であった。酒を飲みながら会話した時ですが――「金正日が許せない」「ボコボコにしてやりたい」と話したのですが、珍しく父は「そんなものでは済まされない」とても強い父親であった』

早紀江さん『苦しい時間、人生を過ごした人たちを取り返すっていうことだけ…私は体も弱ってきますのでどこまで頑張れるか分かりませんが、力のある限り子供たちの力を借りながら、先生方の力を借りながら頑張っていきたい』

【コメンテーターによる解説】
徳永アナ:いつも滋さんの隣で本当に気丈にされていた早紀江さんが、本当にここまで憔悴されながらも力の限り頑張り続けたいんだとおっしゃっている。本当に重い言葉ですね。

太田昌克氏(以下太田氏):まず、心よりご冥福をお祈り申し上げたいと思います。そして、これは横田家だけの問題じゃないんですよ。日本全体の問題なんです。私は、やっぱり問われているのは日本の外交力と戦略だと思います。思い起こせば2002年9月17日最初の日朝首脳会談私も同行したんですけれども、5人の拉致被害者の方が帰ってこられた。私はピョンヤンから第一報を入れるのに本当に心臓がバクバクしながら国際電話で震える声で第一報を入れた記憶がまだ鮮明に残っているんですけど、この時も緻密である意味、大胆な戦略的な外交があったんです。1年近くをかけて当時の外務省幹部田中アジア大洋州局長が中国を舞台に秘密交渉を繰り広げた。拉致・核・ミサイル。これを包括的に解決すると。自分の交渉の相手、ミスターXが金正日に通じているかどうかそれを何度も試しながらまずは元新聞記者の解放交渉。元日経新聞さんの記者を解放するところから始まってこのルートは使えるというふうな瀬踏みをしながら非常に慎重な外交を進めていったんです。

徳永アナ:そう考えると今、早紀江さんの祈りをかなえるためにも日本政府としてはどのようなやり方を、具体的には進めていけばいいでしょうか。

太田氏:トランプ大統領が3度米朝首脳会談をやってそのたびに拉致をお願いしたいと安倍総理もトランプさんを使いながらうまく北朝鮮を動かそうとしているんですね。しかし、残念ながら今のところ我々の目には結果が見えてきていないですよね。安倍さんは本当にしっかりと頑張っておられると本当に私、思います。やっぱり、ここで大事なのは日本自身の外交力と戦略であると。ミサイル発射を繰り返していますからもちろん制裁も圧力も必要なんです。この制裁も、てこにしながら中国、韓国、アメリカ関係国と連携しながら外交解決の道、糸口をなんとか見いだしていく。今日、めぐみさんの弟さんの哲也さんが日本国内には敵も味方もないんだとおっしゃっていた。野党も与党もないと。この言葉の重み、訴えをぜひ我々、一人ひとりがかみしめていきたいと思います。

【検証部分】

横田めぐみさんの父親である横田滋さんがご逝去されたという報道です。

拉致被害者の奪還は最大の外交課題です。
2002年に拉致被害者を5名だけですが、奪還できたことは日本に大きな衝撃をもたらしました。
太田氏もこのことについて取り上げ、評価をしていますが、この2002年の出来事の意義について十分に解説できているとはいえません。

なぜなら、2002年までの日本では拉致被害者が存在していることすら認知されていなかったからです。
メディアは北朝鮮による拉致を報道するどころか、一部メディアでは北朝鮮を「地上の楽園」として扱っていたほどです。
横田滋さんの御子息である哲也さんは6月9日の会見で以下のように発言しています。

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(前略)

 ■「拉致するはずないでしょ」と言ってきたメディア 横田哲也さんの発言

 「一番悪いのは北朝鮮であることは間違いないが、拉致問題が解決しないことに対して、あるジャーナリストやメディアが『安倍総理は何をやっているのか』という方もいる。北朝鮮問題が一丁目一番地で掲げていたのに『何も動いていないじゃないか』という発言を、ここ2、3日のメディアで私も見て耳にしている。安倍首相、安倍政権が問題ではなく、40年以上、何もしてこなかった政治家や、『北朝鮮なんて拉致をするはずないでしょ』と言ってきたメディアがあったから、ここまで安倍首相、安倍政権が苦しんでいる。安倍首相、安倍政権は動いてくださっている。何もやっていない人が政権批判をすることは卑怯(ひきょう)だと思います。拉致問題に協力して、さまざまな角度で動いてきた方ならまだ分かりますが、的を射ていない発言をするのは止めてほしいと思っている」

抜粋:「拉致などないと言ってきたメディアが…」横田滋さん遺族の言葉を隠し続けるメディアの異質さ 報じないなら存在価値なし! 作家・門田隆将氏が言及
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200612/dom2006120005-n1.html
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2002年までは拉致被害者の存在すら認識していませんでした。
それを北朝鮮に拉致を認めさせたばかりか、拉致被害者を実際に奪還することができたのですから、その衝撃は計り知れません。

しかしこの日のVTRや太田氏の解説ではメディアが2002年まで拉致を報道していなかったことに触れていません。
ここは拉致問題に関わる重要な論点です。
メディアが拉致問題について事実を伝えてこなかった責任は相当に大きいといえます。ネットもなかった時代、メディアの報道が世論を左右していたともいえる時代です。
そんな時代に拉致被害者の報道が正しくされていればどれほど状況が違っていたかわかりません。

メディアはこの問題に関して事実を伝えてこなかったことに向き合うべきでしょう。

このような放送は下記の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送のため、監視を続けて参ります。

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