2018年4月5日 テレビ朝日「報道ステーション」の報告です。
今回の放送で一番時間を割いた話題は「当日の国会」についての話題でした。
今回はこの話題について検証していきます。
詳しく見ていきましょう。
【放送内容①】
——–
小川アナ「続いては国会です。今日の国会。本会議が一時開かれない事態となりました。どうしてなのかと言いますと、こちら。イラクの日報問題、森友問題、そして働き方改革に関して、いずれも政権に都合が悪いことが隠蔽されているのではないか、と野党が厳しく追求したからです。」
——–
コーナーの冒頭、小川アナが、今日の本会議が一時的に開かれない事態となったこと、その理由にイラクの日報問題などへの疑念が関わっていることを伝えた後、VTRがスタートしました。
——–
まず、イラクの日報が見つかったことに関する陸上幕僚長の会見からVTRがスタート。
陸上自衛隊・山崎幸二幕僚長「陸上自衛隊のみならず、防衛省、自衛隊全体に対する国民の皆様からの信頼を揺るがす事態となってしまいましたことにつきまして、陸上幕僚長として深くお詫び申し上げます。」
ナレーター「陸上自衛隊トップが頭を下げたのは、これまでないとしていたのに見つかったイラク派遣時の日報について。陸自は去年3月に見つけていたにもかかわらず、 1年以上も大臣に報告していなかったことが昨日明らかになりました。およそ23万人の実力組織を抱える防衛省で起きた、隠ぺい疑惑。小野寺大臣の認識が問われました。」
↓
続いて、当日の参院外交防衛委の質疑の様子が放映。
民進党・牧山弘恵参院議員「大臣はシビリアンコントロールは機能しているという風に思ってらっしゃるんでしょうか。」
小野寺五典防衛大臣「これがシビリアンコントロールが機能していなければ、公表されていなかった可能性もあります。これは私がおかしいと思って直ちに調査をさせ、その結果上がってきたことが今回判明した内容であります。」
民進党・小西洋之参院議員「大臣、バカにされてると思いませんか。小野寺大臣のシビリアンコントロールは全く機能していない。」
小野寺大臣「知っていたのに、それを報告しなかったということ。これは私ども厳正に対応する必要があると思っています。」
↓
ナレーター「去年防衛大臣だった稲田氏。」
昨年3月の衆院安全保障委の答弁が放映され
稲田朋美元防衛大臣「しっかりシビリアンコントロール、また意思疎通はできている」
ナレーター「としていましたが日報の存在を知らされていませんでした。」
続いて今日の稲田氏の会見の様子を放映。
稲田氏「非常に驚きと同時に怒りを禁じ得ません。」
記者「報告が上がっていなかったということをどう考えるか?」
稲田氏「そういった点も含めて、事実関係を解明して欲しいと思ってます。」
↓
続いて当日の河野克俊統合幕僚長の会見を放映。
ナレーター「責任が問われている自衛隊トップは」
河野統合幕僚長「大臣及び国会に対して背信的な行為を行ったと言われてもしょうがない。シビリアンコントロールに疑義が出ているという批判があることについては、真摯に受け止めなけばならない。」
ナレーター「今回、陸幕衛生部に残されていたイラク日報は、保存期間が2021年3月31日までとされていました。なぜ保存期間中であるにもかかわらず、ないとされたのでしょうか。そもそも永久に保存すべきものではないのでしょうか。」
↓
続いて当日の野党合同ヒアリングの様子を放映。
共産党・赤嶺政賢衆院議員「最初からイラクの活動について、国会で議論された中身とあまりにも違いがありすぎて隠す結果になったんじゃないかと。」
防衛省統合幕僚監部・鈴木敦夫統括官「用途さえ済んでしまえば破棄してしまったというとこもあった。今回見つかっているものについてもすべてというわけではございません。その一部にしか過ぎない。」
民進党・杉尾秀哉参院議員「実は私、イラクサマワ派遣の時に取材していたんですよ。私がいたときもロケット団が飛んできた。異常な緊張状態でしたよ。(帰還後)公式的に30人近い自衛隊隊員が自殺されている。人の命までかけたものすごく重い派遣。こんなものは意識して残すのは当たり前じゃないですか。」
鈴木統括官「それ(日報)を材料にいわばエッセンスを抜き取って残している。ですから元のやつをどうしているか。用済み後破棄ということで、破棄してもいい文書として処理している。」
ナレーター「防衛省は今月中に見つかった日報については公開するとしています。」
【放送内容②】
ナレーター「次に、森友文書の改ざん問題。財務省の答弁が一変しました。問題となっているのは本省相談メモ。森友学園から土地の貸付を求められていた最中、近畿財務局が財務省本省に相談した記録と見られます。参照と書かれているので決裁文書に添付されていた可能性がありますが、未だに公表されていません。日付は籠池氏が昭恵夫人と撮った写真を財務局に示した日から始まり、1ヶ月に渡っています。この期間を挟んで財務局の姿勢は、答申を得る前の契約はできないとして断る、から売払いを前提とした貸付については協力させて頂く旨を回答、に変化しています。財務省は先週。」
↓
続いて先月(3月)29日の答弁を放映。
民進党・古賀之士参院議員「本省の相談メモというのは確認ですが公文書ですか。」
財務省・太田充理財局長「調べをつけたうえでないときちんとしたお答えはできないかもしれませんが、公文書だろうと思っております。」
ナレーター「こう答えていました。しかし翌日麻生大臣が否定します。」
麻生太郎財務大臣「公文書と太田が答えていますが、ご指導いただいておりますけども『え?相談メモが公文書?』っていうのが正直私としての感じ。」
ナレーター「すると今日。」
太田理財局長「推測めいた話をしたのは大変不適切だと思っております。間違ったことをしたらすぐきちんとはお詫びするということだと思ってますので、そこはおわび申し上げて訂正させていただきたいと思います。」
ナレーター「メモが公文書とは言えないと答弁を訂正しました。」
「働き方改革を巡ってもある疑念が出ています。」
加藤勝信厚生労働大臣「過労死を伏せたままって言う事と特別指導実施したということと二つ別だと思っております。」
この加藤厚労大臣の発言を最後に、番組は一旦CMに移ります。
↓
CMが明け
ナレーター「安倍政権肝いりの働き方改革をめぐって浮上している問題。発端は去年12月、厚労省が野村不動産での特別指導を公表したことでした。」
厚労省東京労働局・勝田智明局長「野村不動産社長に対して是正を行うよう特別指導を行ったところです。」
ナレーター「裁量労働制を悪用したというのが特別指導の理由でしたが、企業名が公表されるのは初めてで異例の対応でした。年が明け、国会では裁量労働制の対象を拡大すると長時間労働や過労死が増えるのではないかという懸念が指摘されました。これに対し政府は」
↓
続いて1月29日の安倍総理の答弁の様子を放映。
安倍晋三総理大臣「野村不動産においては法の趣旨を大きく逸脱していたことから、政府としては制度が適正に運用されるよう今後とも指導を徹底してまいります。」
加藤厚労大臣「野村不動産を始めとして適切に運用していないこうした事業所等もございますから、そういったものに対してはしっかり監督指導を行っている。」
ナレーター「野村不動産への特別指導を、裁量労働制を乱用している企業に対する取り締まりの実績として紹介したのです。しかし、会社への調査が始まったのは、社員が過労自殺し遺族が労災申請したことがきっかけだったことが発覚します。特別指導という実績だけをアピールして、裁量労働制の拡大に都合の悪い過労自殺は伏せたということなのでしょうか。」
↓
続いて、当日の参院厚労委の様子を放映。
共産党・倉林明子参院議員「裁量労働制拡大のために、野村不動産での過労死を伏せたまま特別指導で企業名の公表まで行った。これ恣意的にやられたのではないかと。」
加藤厚労大臣「過労死を伏せたままということと、特別指導を実施したということと2つ私は別だと思っています。今後もですねこうした事案があれば、こうした対応ということも当然考えていく必要があるわけであります。」
倉林議員「過労死の申請と特別指導との関係。あったのかなかったのか。ここは明らかにすべきじゃないかと思うんですね。」
加藤厚労大臣「過労死についてはこちらから個別に触れることができない。特別指導を行った理由については最終的には東京労働局長が判断して実施したということでございます。」
ナレーター「働き方改革の関連法案は裁量労働制の拡大の部分を切り離したうえで明日閣議決定されます。」
このナレーターの発言を最後にカメラはスタジオへと戻ります。【放送内容③】
富川アナ「防衛省も財務省も厚労省もどうなってるんですかね。」
後藤謙次氏「そうですね。そこで先ほどなんですけども、公文書管理法の生みの親とも言える福田康夫元総理大臣に取材したんですね。質問は一連の公文書をめぐる各省庁及び政治の混乱をどう思うか。答えはですね、付ける薬はない。それだけ呆れ果ててると。そもそもですね、森友文書の改竄の後、行政の長として責任を痛感してるとお話したのは安倍総理自身だったんですね。その安倍総理の顔がですね、この日報問題が表面化してから一向に見えてこないですね。今度の行政文書の問題というのはですね、国権の最高機関である国会、ひいては国民が愚弄されている。そういう問題なんですね。そこに総理が全面に出てこないということ自体に問題があると。それと政と官の関係で言えばですね、この間に信頼と緊張関係。これがないと成立しないんですね。ところが政治の側。例えば大臣が省内をまったく掌握しきっていない。一方で公務員の方ですね。意識が著しく低下している。双方に問題があると、言っていいと思いますね。」
富川アナ「どうしていけば政と官の関係を本来あるべき姿に戻せるんですか。」
後藤氏「私はですね、今回防衛省の問題が表面化して、小野寺大臣は政務官をトップにする調査チームをつくると、こういってるんですが、この感覚がよくわからないんですね。政務官のクラスでこの問題に果たして対処できるか。総理大臣の統治能力そのものが問われている問題ですから、安倍総理が全面に出てきてすね、政権全体としてこの問題にどう対応していくのか。そういう組織作りをした上でですね、徹底的に膿を出す。この膿というのについても小野寺さん言ってましたけども、ひとつはまだ文章があるんじゃないかっていう膿の問題ですね。それから体質の問題、それから意識の問題。こういう問題全体を取り込むためには、やはり安倍総理自身が前面に出てくるとそういう仕組み作りでもやらなければですね政権全体が問われてる問題に答えが出ないんだと思います。」
富川アナ「なるほど。今の政と官の関係だからこそ、国会で改ざんされてしまった文書で一年間議論したり、あるはずのものがないと言われたまま議論を続けなければいけなかったりっていう時間の無駄が出てきてしまったということですよね。」
後藤氏「それで安倍総理は解散をしてますね、そういう問題を抱えたまま。そういう点を国会できちっと究明してもらいたいと思いますね。」
この後藤氏の発言を最後に、このコーナーは終了します。
【検証内容】
今回の放送の問題点は大きく分けて2点あります。
1点目は番組の放送が野党議員による発言に多くの時間を割いていること。
2点目はスタジオでの後藤氏の発言に疑いがあること。
以上の2点です。
まず、1点目についてですが、番組では当日の国会の予算委員会や各委員会(防衛、財務金融など)の質疑の様子が放映されました。今回の放送で名前が紹介されたのは、共産党の議員が2名(赤嶺政賢衆院議員、倉林明子参院議員)。民進党の議員が4名(牧山弘恵参院議員、小西洋之参院議員、杉尾秀哉参院議員、民進党・古賀之士参院議員)。自民党からは、南スーダンPKOの日報が発見された際に防衛大臣だった稲田朋美衆院議員の名前が出されました。この時点ですでに人数に偏りがあるように思えるかもしれません。
まず、最後に紹介された共産党の倉林参院議員が発言していた厚生労働委員会。ここではその日、日本維新の会や社民党の議員も発言を行っていました。しかし、彼らの発言が放映されることはありませんでした。
また、放送時間を計測すると、その偏りはより顕著です。安倍総理や麻生大臣ら閣僚の答弁時間を与党側の議員の発言として足したとしても、野党議員と与党議員の発言時間は大まかに言って1:3。今回はそのグラフも作成しましたので、ご確認ください。
確かに、その日の国会で交わされた議論の関係上、野党側の質問が多くなることは仕方が無い部分もあるとは思いますが、少し時間が野党側に偏り過ぎているように感じます。このことから、今回の放送は放送法第4条2項「政治的に公平であること」に抵触している可能性があります。番組に対しては、より多様な意見をくみ取れるような番組構成を求めていきたいと思います。
次に2点目についてですが、後藤氏はスタジオでのコメントの中で
後藤氏「それで安倍総理は解散をしてますね、そういう問題を抱えたまま。そういう点を国会できちっと究明してもらいたいと思いますね。」
と発言していました。後藤氏は、その前の富川アナの
「今の政と官の関係だからこそ、国会で、改ざんされてしまった文書で一年間議論したり、あるはずのものがないと言われたまま議論を続けなければいけなかった」
という発言を受けてこの発言をしたように思えます。確かに、財務省によって書き換えられた文書に基づいて国会審議が進められていたこと自体は非常に問題が残ります。だからこそ、現在財務省では、なぜ、誰が、どのような形で書き換えを行ったのか、ということの調査が進んでいます。
問題は「そういう点を国会できちっと究明してもらいたいと思いますね。」という部分です。昨年の安倍総理による衆議院の解散を問題視したうえで、このような発言をすることは、視聴者にこの問題(公文書の管理問題)全体が安倍総理自身の責任であるという印象を与えかねません。確かに、行政の長として安倍総理には責任の一端があります。しかし、森友学園への国有地売却やイラクPKOの日報問題などに直接かかわっていたと判明したわけではありません。印象操作が疑われる以上、今回の放送は放送法第4条3項「事実は曲げないで報道すること」に抵触している可能性があります。
今後も監視を続けます。