2018年6月11日 報道ステーション

2018年6月11日 報道ステーション

報道ステーション、2018年6月11日分の報告です。
今回の報告は、新潟県知事選で自民公明両党が後援する花角氏が勝利したことに関するニュースについてのものとなります。

同番組は以前、選挙の意義や争点について公示日の5月24日に報道を行っていますが、6月11日にされた報道の内容はそれとは全く違ったものでした。
いったいどのような主張の転換があったのでしょうか。5月24日の報道と6月11日の報道とを比較することで、この報道の問題を探りたいと思います。

それでは、まず5月24日の報道から見ていきましょう。
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小川アナ「こちら、1ヵ月前のことです。女性問題でわずか就任から1年半で知事が辞職した新潟県。今日新しい知事を決める選挙が公示されました。事実上の与野党一騎打ち、原発再稼働も争点です。」

【VTR】
VTRは、米山前知事の辞任記者会見の様子から始まりました。
米山前知事「私の一身上の都合ということで、辞職させて頂きました…」
ナレーター「米山隆一前知事が女性問題で辞職したことに伴う、新潟県知事選挙。自民公明両党が支援するのは花角英世候補、60歳です」

花角候補の街頭演説の様子が映されます。
花角候補「36年間、国の行政機関・行政実務に携わってまいりました。そのネットワークがあります。霞が関にも、永田町にもあります。新潟県民丸の船長の役を任せてもらえませんでしょうか」
続いて、海上保安庁の制服でスピーチをする花角氏の昔の様子が映されます。
ナレーター「花角候補は国土交通省のキャリア官僚で、海上保安庁の前次長。自民党の二階幹事長が運輸大臣の時には、秘書官を務めていました」

自民党の二階俊博幹事長の発言が映されます。
二階幹事長「私の時の、あの、秘書官をやった人ですが、大変立派な人ですね。必ず勝利すると…」

ナレーター「花角候補は自民党の支援を受けますが、選挙戦では県民党を掲げ、政党色を薄める方針です。一方、野党5党が推薦するのは、池田千賀子候補、57歳です」
池田候補の演説が映されます。
池田候補「安心、安全の基礎となる原子力発電所の課題であります。米山前知事が始めた三つの検証を継承していくということは、基本中の基本でございます。途中をはしょったり、いい加減にしたり、これはあってはなりません、そうですよね」
ナレーター「池田候補は、立憲・国民・共産・社民の推薦を受ける野党統一候補です」

続けて、ナレーターの発言に合わせて、小泉純一郎元首相の発言が映し出されます。
ナレーター「脱原発のため、新潟を訪れたこの人からも…」
小泉元首相「新潟は原発があるんだから、ただちに廃炉、やめるべきだ、そういう候補に当選してもらいたい」
池田候補「頑張ります、ありがとうございました」

ここで、新潟県にある刈羽原発の様子が映し出されます。
ナレーター「東京電力の柏崎刈羽原発を抱える新潟県。池田候補は県独自で行う原発事故などの検証作業に、3年以上かけると主張。再稼働の判断をする際には、県民投票を行う考えも示しています」

ここで、それぞれの候補の考えが流されます。
池田候補「県民の考えを十分に組んだ判断をするかどうか、というところだと思っています。国の政策の方に判断の基準を置くということなのか、そうではないのか…」
ナレーター「花角候補は、原発問題については2~3年かけて検証作業を行い、その上で再稼働の是非を判断。改めて選挙で民意を問うと言います」
画面が自民党のマニフェストに変わります。
ナレーター「ただ、自民党は去年の衆院選の公約で原発の再稼働を進めることを明記しています」
花角候補「県民の気持ちに納得感が得られたかどうか、それを確認するということでしか判断はできないと思います」
記者「自民党が花角さんの支援に回るということは、再稼働に向かうのではないかというような…」
花角候補「これはもう私の気持ちを申し上げるしかないですよね、私は私ですと」

ここで話題は別の候補へと変わります。
ナレーター「元五泉市議の安中聡候補、40歳。原発の即時停止を訴えています」
安中候補「万が一の事故も起きないんだ、ずっと安心して生活できる、そうなってはじめて子供達に新潟県に住んでいてほしいと言える…」

ナレーター「投開票は、来月10日です」

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【VTR終了】
富川アナ「柏崎刈羽原発を抱える新潟県の知事選挙、注目ですね」
後藤謙次氏「非常に注目したいとおもいますね。これ、与野党激突型の選挙になるんですね。これ、焦点二つあるんですね。一つは何度も出てますよね、東京電力柏崎刈羽原発再稼働にどう向き合うのか。ところがこれ非常に分かりにくかったと思いますが、両方ともですね米山知事が掲げた三つの検証、この路線を継承すると言ってるわけですね。その三つの検証と。一つは福島第一原発事故原因の検証、それからもう一つは健康と生活への影響事故による検証ですね、三つめは避難計画の実効性、これを担保できるかどうか、この三つの検証をやることは一緒なんですが、問題はそっから先の行程表について、双方ともまだ今のところ明確になってきてない、そこをやっぱり選挙戦を通じてですね、両方とも県民投票やるんだというところまで一緒なんですが、そっから先はやはり選挙戦中で詰めてもらいたいと思いますね。それからもう一つ、焦点は国民民主党が誕生してですね、初めての与野党激突型の選挙だという点なんですね。一人の当選者を争う選挙という意味では、国政の対立の構造がそのままこの選挙に反映されたと。しかも今年は自民党の総裁選もある、来年は参議院選挙もある、そして与野党が激突型のパターンですから、この選挙結果がですね、その国政にも影響を与えると、そういう意味で非常に注目される、リトマス試験紙になるといってもいいと思います。」
富川アナ「それは自民党にとってみれば、安倍総理のままで勝てるかどうかっていうことにもつながってくると」
後藤氏「そこにもつながって来ると思いますね。安倍総理の、安倍政権の信任の意味を持つ、47都道府県一つの選挙ですけども、一つの結果として出てくるという面で注目されると思いますね」
富川アナ「柏崎刈羽という大きな原発を与えてますから、今後への影響というのも大きいですね」
後藤氏「ありますね。国のエネルギー計画、これについてもですね、割合含めてどれだけの原発を再稼働すればそこに達するのか、原発ゼロを目指すのかという、そういう方向性にも大きな影響を与えると。とりわけこの柏崎刈羽という巨大な原発の再稼働ですから、国政にも直結するような、そういう影響を与える選挙だと思います。政府は2030年の電源構成目標としまして原発比率20%から22%としていますから、この柏崎刈羽原発を再稼働するかどうかっていうのが大きな影響を与えるようになってますね」
富川アナ「県民の皆さんはどう判断するんでしょうか」

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後藤氏のコメントをまとめると、論点は以下の通りとなります。
・与野党それぞれ1人ずつ候補がいるので、選挙の結果が国政へのリトマス試験紙となる
・この選挙の結果は、安倍晋三首相の信任選挙の意味合いを持つ
・この選挙の結果は国の原発再稼働の方針に影響を与える
では、新潟県知事選の結果が出た6月11日は、どのような取り上げ方をしていたのでしょうか?当日のニュースを見てみましょう。
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小川アナ「当選後も、原発の再稼働には慎重な姿勢を示しています」

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【VTR】
ナレーター「昨日、前知事の辞職に伴う新潟県知事選挙が行われ、自民・公明両党が推薦した花角英世氏が当選、野党5党が推薦した池田千賀子氏に37000票余りの差をつけました」

開票翌日の街頭で県民にお礼を述べる花角氏の様子が映し出されます。
ナレーター「一夜明け…」
花角氏「責任の重さをですね、実感しているところでありまして、気持ちが引き締まってきた感じがしますね」
場面は続けて、争点となった柏崎刈羽原発の様子へと変わります。
ナレーター「柏崎刈羽原発の再稼働を巡っては、両候補とも新潟県が独自に行う検証結果を待って判断するとし、際立った違いが見えないままの選挙戦となりました」

場面は花角氏が記者の質問に応じている様子に変わります。
ナレーター「当選したばかりの花角氏ですが、再稼働の是非を次の知事選に委ねる可能性を示しています」
花角氏「結局、リーダーとしてある意味全責任を持って一定の判断をする、と。それが受けられるかどうかをしっかり確認をする。まずは県民の納得をいただけるかどうかっていうことだと思ってます」

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【スタジオ】
場面はスタジオに変わり、小川アナが後藤謙二氏に話を聞きます。
小川アナ「国政の代理戦争という風にも言われた今回の選挙ですけれども、どういう風にご覧になってますか」
後藤氏「あのー、これ与党が勝ったというよりは負けなかった選挙なんですね。あの、選挙というのは大きく分けて、まあ「風」と「運動量」、これが勝敗を分けると言われてるんですか、今回風についてはですね、吹くとすれば「原発」とそして「女性」だったんですね。そのいずれも吹かなかったんですね。とりわけ原発については、当選した花角さん、米山前知事の姿勢を引き継ぐということで、争点化を避けてしまいましたから、この部分よりやっぱり雇用とかですね福祉、そこに焦点が当たってしまった、と。女性についても、池田さんがその、女性ブームを巻き起こすことできなかった、と。これ与党もですね、この一点ですから集中できたですね、新潟に。それが、全体の参議院選挙の時、果たしてこの、集中できる…できないわけですね。ですからまだまだ安倍政権が信任されたというわけではないと。
一歩で野党側も、5党が共同しながら勝ち得なかった、という意味ではですね、野党側も剔出だけではダメですよ、新しいビジョンを打ち出せなきゃだめですよと、双方が、まあ反省点・問題点を残した、そういう選挙だと言っていいと思いますね」
小川アナ「双方とも、課題を残してしまったと、そういうことですね」
後藤氏「これから新たな安倍政権として総裁選に有利だと、二階幹事長発言をしていますけど、やはりこの森友・加計問題、これによって国民の不信はまだ消えてませんから、そこをどう払拭してるか課題は残ったと思いますね」

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以上が6月11日の報道となります。
ではここで、5月24日の報道と6月11日の報道とを比較し、どのような変化が現れたのかを整理してみましょう。
〇5月24日
・与野党それぞれ1人ずつ候補がいるので、選挙の結果が国政へのリトマス試験紙となる
・この選挙の結果は、安倍晋三首相の信任選挙の意味合いを持つ
・この選挙の結果は国の原発再稼働の方針に影響を与える
〇6月11日
・原発問題が争点化せず、雇用や福祉が争点になってしまった
・女性という強みを生かせなかった
・新潟県1県の選挙だけだから与党は集中できた。全国での参院選では集中できない
 →だから安倍首相が信任されたわけではない
・森友加計学園問題の不信はぬぐえていない

つまり、この報道は「選挙前に『国政や安倍政権への信認投票の意味合いを持つ』と言ったにもかかわらず、野党側の候補者が負けると今度は『安倍政権が信任されたわけではない』と表現を改めた」ことになります。
また、後藤氏のコメントが池田氏の側に立った発言に偏っている点も問題と言えるでしょう。雇用と福祉の問題も重要な論点であるはずですし、池田氏の敗因(女性という強みを生かせなかったこと)だけをするのではなく、花角氏の勝因についても分析すべきではないでしょうか。
上記のような、いずれか一方の視点に偏ったと受け止められるような報道をすることは問題ではないでしょうか。
今回の場合、選挙結果によって事前の報道内容と食い違うことを報道したり、以前の発言を無視したりするようなことが見受けられました。

以上のことから、今回の放送は放送法第4条2項「政治的に公平であること」、第3項「事実は曲げないで報道すること」に抵触している可能性があります。

視聴者の会は今後も監視を続けます。

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