2018年6月17日 サンデーモーニング

2018年6月17日 サンデーモーニング

サンデーモーニング、2018年6月17日放送回の検証報告です。

今回の報告では、
・日朝関係について報道された部分
・IR法案と参院6増法案の可決について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

最初に検証するのは、米朝首脳会談関連について報道された部分となります。
では、さっそく放送内容を見ていきましょう。

司会 関口 宏(以下、関口氏):米朝を受けて、日朝、と
水野真裕美アナ(以下、水野アナ):はい、お伝えします。拉致問題や戦後補償など様々な問題を抱える日朝関係。水面下での接触がある一方で、北朝鮮からの揺さぶりもかけられています

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【VTR】
・米朝首脳会談の場でトランプ大統領は日朝間の拉致問題に言及
・北朝鮮は拉致問題は解決済みとの姿勢を示してきたが、今回の米朝首脳会談ではこの見解を示さなかった
・さらに金党委員長は安倍総理との首脳会談についても前向きな態度を示していた
・安倍首相はこれを機会ととらえ、日本が主体となって取り組むと拉致被害者家族に発言。家族側は、確実に日本に拉致被害者を返すという約束と共に確認の訪朝を要請
・同日行われていた日米間の三か国外相会談の席で、河野外相は北朝鮮と拉致問題を含む様々な懸案事項を話し合う用意があると発言
・日本は、モンゴルで行われた国際会議の場をはじめ、水面下での接触を図っている。ロシアで行われる国際会議で日朝両首脳が接触する可能性も
しかし、北朝鮮は国営メディアを通して拉致問題は解決済みという主張を再び展開し、日本を批判。
・安倍首相は「相互不信という殻を破って踏み出したい」と日朝首脳会談での問題解決を呼びかける一方、「拉致問題が解決されなければ経済支援は行わない」との考えを改めて示す
・トランプ大統領が記者会見で日本と韓国が非核化の費用を負担すると発言したことに関しては、安倍首相は「我々は非核化によって利益を得るわけだから、そういうことについては考えなくてはいけない」と発言
【VTR終】
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関口氏:その、日朝首脳会談が行われるとまずこの話は必ず出てくることになってるんですな

水野アナ:はい。トランプ大統領の『非核化の費用は日本と韓国が支援するだろう』という言葉を受けて、安倍総理は昨日民放のテレビ番組で『核の脅威がなくなることで平和の恩恵を受ける日本などが費用を負担するのは当然なんだろう』と述べた上で、費用の内容についても言及しました。また、 IAEA の査察にかかる費用や、さらに各施設の凍結解体については1994年のKEDO=朝鮮半島エネルギー開発機構を例に説明しました。北朝鮮の核施設の代わりとなる軽水炉二基の建設費およそ4000億円のうち、およそ1000億円を日本が負担。アメリカが50トンの重油を提供したように、国際的な枠組みを設けることを示唆しました。また、経済支援については『拉致問題が解決され国交正常化された時に行う』と述べました

関口氏:えー、藪中さんね、北朝鮮が豹変したでしょ、ピョンヤンオリンピックを挟んでね。やっぱり経済的に相当制裁が聞いてたと

元外務事務次官 藪中 三十二(以下、藪中氏):あの、それは間違いないと思いますね。もう一方で、もう核は相当開発したと自信持ったと、核ミサイルは。その両方があったと思いますね。で次は経済だと、そんなことじゃないかと思いますね

関口氏:で、今我々が想像するに、こういうのはどう考えたらいいんですかね」

藪中氏:やっぱり核の問題、核ミサイル問題で日本が入んなきゃいけないと。日本が当事者だと。私がずっと言ってますのはそういうこともあるんですね。勝手に決められて、アメリカと北朝鮮で…

評論家 大宅 映子(以下、大宅氏):請求書だけ来たんじゃ困りますからね

藪中氏:そうなんですよね。1994年はそういうことですからね。それとお金もさることながら、今トランプさん『もうミサイル飛んでこないから安心だろ』と。そんなことじゃないよ、と。完全な撤廃じゃなくても、制限でいいのかわかんないと思い始めてるかもわかんない。日本はそれじゃ困るんですよ、と。まさに核について、核ミサイルについての中身と、それからそういう意味でいろんな負担をするんなら日本は当事者二ならんと行けないと思いますね

関口氏:秀征さん拉致のほうはどういう風に考えてますか

福山大学客員教授 田中 秀征(以下田中氏):だから、今のように、あの拉致を全面に出して、行って、それで通るかって言ったら、こう、首かしげますよね。だから、あの、解決済みって言わなかったからこっちは喜んだよね、それですぐにまたそれを否定してくるっていう形になって。やっぱりね、あの、今回のことで、一番、あの、なんとか期待しているのは北朝鮮なんですよね。あの、追い詰められて、長い間経済的にもそうだし、軍事的にも精神的にも。で、そういうの中で日本がその、あってくれあってくれって、そういう話で動かないと思うんですよね。

関口氏:じゃあどうするんですか

田中氏:だから、そういえば何て言うかね、全体的に他の国と組んでね、言うべきことは言ってくってことであって。ただ、その、日朝会談が一番肝心になっていう感じで行くとね、やっぱり北朝鮮が今最近また変わってきた、そういう態度に出てくるんで、もっと毅然としてもらいたい。そういうことはないと思うけれども、物腰になってるように見られたくない、と。絶対ないと思うけど、とにかくあってはならないという風に僕は思ってますね

関口氏:大崎さん

関西大学客員教授 大崎 麻子(以下大崎氏):非核化っていうのは日本が恩恵を受けるだけではなくて、国際的な問題だと思うんですね。で、過去に非核化が完了した事例って例えばリビアとか、それから南アフリカがありますけど、どちらもまあ2~3年くらいのスパンで、そのプロセスが完了していて。で、ただその、北朝鮮に関してはものすごく数も多いし、本当に開発が進んでましたから、もうどれぐらい大きなオペレーションであるのかというものすごく大きなお話になると思うので、そこにやっぱり日本も人的な貢献もそうでしょうし、まあ財政的にも支援していくってのは私は重要だと思ってます。で、どれだけかかるかっていうのも北朝鮮がどれだけ協力するかというとこにもかかってると思うので、そのまま経済制裁も含めて国際社会でこうちゃんと注視していく枠組みってことが重要かなと思います

関口氏:青木さんにも伺いましょう

ジャーナリスト 青木 理(青木氏):2002年の9月の日朝首脳会談っていうのが、まあこれ画期的な会談だったんですけれど、その時に、その、いわゆる妥協は良くないと、強硬派として安倍さんというのはもうすごく注目を集めて、当時官房副長官でしたけれども、それでこう政界の階段を一気に駆け上ってこう首相になっていくんですね。で、その後の安倍さんの政治の足取りをたどってみると、やっぱり北朝鮮に対する強硬姿勢っていうのが、一貫して、まあ言葉を悪く言えば、誤解を恐れずに言えば『利用してきた』ところがあって、去年の、その選挙も何が国難かと、北朝鮮情勢が国難なんだと言って圧勝したわけですよね。そういう意味じゃ、やっぱりこの北朝鮮の問題というのが、拉致問題ってのは、まあ安倍さんのある種ライフワークっていう所なので、これはその、逆に、今ちょっと非常に厳しい局面に来ているわけですね。むしろトランプさんに引きずられる形で対話局面に入ってきた、っていうところを見ると、安倍さんにとってちょっと辛いところがあるのかもしれないけれども、特に拉致問題に関しては、だからこそ安倍さんがこの間ちゃんとケリをつけるというかね、決着をつけてもらわないと。このまま引きずると、この問題、その、例えば次がどんな政権になるか、なったとしてですよ、いつ変わるかも別としてですけれども、誰がやってもね、すごくこれ辛い問題になるんですね。なので、ライフワークとして取り組まれてきた安倍さんが、任期いつまでかどうかは別として、この問題については、きちんと決着をつけて次の政権にバトンを渡してもらいたいなと僕は思いますよね

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の点です。

・青木氏の発言が政治的に偏っている可能性がある

では、順を追って解説します。
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています

青木氏(抜粋):やっぱり北朝鮮に対する強硬姿勢っていうのが、一貫して、まあ言葉を悪く言えば、誤解を恐れずに言えば『利用してきた』ところがあって、去年の、その選挙も何が国難かと、北朝鮮情勢が国難なんだと言って圧勝したわけですよね。そういう意味じゃ、やっぱりこの北朝鮮の問題というのが、拉致問題ってのは、まあ安倍さんのある種ライフワークっていう所なので、これはその、逆に、今ちょっと非常に厳しい局面に来ているわけですね。むしろトランプさんに引きずられる形で対話局面に入ってきた、っていうところを見ると、安倍さんにとってちょっと辛いところがあるのかもしれないけれども、

要旨をまとめると、
・安倍首相は北朝鮮問題を利用してきた
・去年の選挙も北朝鮮問題を国難だと言って圧勝した
・ところが、今米朝の融和路線で安倍首相は辛い状況に追い込まれている

というものです。

しかし、安倍首相はあくまで北朝鮮問題に厳しく取り組んできただけであり、安倍首相が政局を目的に利用したという主張は根拠に乏しく、非常に主観的なものです。また、安倍首相としてはあくまで米国との協調を掲げて動いてきているので、今回のトランプ米大統領の発言によって窮地に追い込まれたというのも同様に主観的な観測にすぎません。

よって、今回の青木氏の発言は「安倍首相は北朝鮮問題を政治利用した」という根拠のない主観的観測によって視聴者の印象を誘導する恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」に違反する恐れがあります。

続いて、IR法案と参院6増法案の可決について報道された部分についての検証です。
順にみていきましょう。

関口氏:はい、続けていきましょうか
伊藤友里アナ(以下、伊藤アナ):はい、重要法案を巡って攻防の続く、波乱ぐるみの国会。会期延長の可能性も強まってきました

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【VTR】
・政府与党がカジノを含むIR法案の今期中の成立を狙っている
・立憲民主党などの野党は石井国交相の不信任決議案を提出して抵抗するも、与党の圧倒的多数で否決される
・政府は成長戦略の目玉と考えているが、野党は現行の日本の法律では違法とされている賭博が合法化されることを問題視している
・政府はIR法案と同時に参院定数6増の公職選挙法改正案の成立を目指す
・野党はこの法案を党利党略だとして批判、内閣不信任案の提出も視野に徹底抗戦の構え
【VTR終】
——–

関口氏:数の力で、っていう話が延々と続いていますが、大宅さんからお伺いしましょうか
大宅氏:両方文句ありますが、カジノですけど、要するに目的は何か。経済効果ですよね。だけど政府は何にも数字で確たる試算をしてないんですよ。まだ不安定な、不確定な部分がいっぱいある。つまりこれは不確実なんですね。でも一方で、依存症についてはこれ確実なんです。だからわかってるから、週3回に制限するとか、上限をいくらにするとか、週三回ってもう依存症じゃないですか

関口氏:週三回って言ったらもうね

大宅氏:全体のリゾートのなかでも、カジノのパーセンテージをちっちゃくするとかね、いろんな規制をかけてる。そんなにまでしてマイナス面があるものをやらなきゃいけない理由がどこにあるんだろうって。どうも外国人はそんなに日本にカジノ期待してくるわけじゃないと。もっと美味しいものだとか、美しい景色だとかそういう日本的なものを求めてくる、そっちの経済効果ならわかるんですけれども、それを、その、しかもこんなに重宝する…何なんですか

関口氏:秀征さん、数の上ではしょうがないかもしれないけど、次々強引に仕掛けてるって感じがしますが
田中氏:だから、どうして強引なのか、どうして急ぐのか。その理由がわからないから、そうでしょ?カジノでも。それで僕は定数の問題でいうと、やっぱりあの、衆議院の定数、選挙区制、参議もそうですが、両方には背景に哲学とか理想があるんですよ。それがもうどうしようもない形で、なんというかツギハギだらけになっていて、全体的に壊れてる。だから、こういう状態がいつも続くとしたら、もうあの衆議院も参議院も抜本的な選挙制度の改革、もう衆議院だったら小選挙区制をやめるとか、そういう抜本的な改正の時期に来てるんだなぁとつくづく思いますよね

関口氏:そういう声はチラチラ出だしてますよね。どうも諸悪の根源は小選挙区だったんじゃないか。それ、青木さんどう思われますか

青木氏:まあね、選挙制度の問題はね、確かにそうなんですが。ただこれ、カジノに関して言うとね、僕実は結構カジノ好きで。特に僕、韓国にいた時なんかは、都会にいたときなんかはよくカジノ行ったんですけれど。ただね、そのいくら綺麗事言ってもこれ爆博打なんですよね。で、博打で金儲けしようじゃないかっていう話なんですよ。で、参院6増案もこれ根本的な選挙制度の見直しならともかく、これ完全に党利党略でしょ。で、まあ安倍政権になって特に第二次政権になってからもう強行ってのはいっぱいあって。安保法制もそうだし、特定秘密保護法もそうだし、共謀罪もそうだし。みんな強行でやってきたんですよね。しかしこの、本当に単なる党利党略、それから突き詰めれば博打で金儲けしようっていうのも、これ与野党の交渉もなくてそれから審議時間も非常に短くて強行するって言うのはどうなんですかね。僕は、政治記者じゃないんですけれど、これは意外とこの後またねその本会議とか参院とかっていう過程の中で、これ以外と政権与党にダメージになるんじゃないかって気がするんですけどこれはどうなんですかね。どうなんですかね、その、博打で金儲けしようってのを強行するってのは、あまりこの、一般の人達は…僕はカジノ好きですけど、よろしくないんじゃないかなと思いますよね

関口氏:まあ、そんなことが続いておりますが…

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは次の2点です。
1、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

では、順を追って解説します。

1、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
大宅氏は今回の報道で以下のように発言しています。

大宅氏(抜粋):両方文句ありますが、カジノですけど、要するに目的は何か。経済効果ですよね。だけど政府は何にも数字で確たる試算をしてないんですよ。まだ不安定な、不確定な部分がいっぱいある。つまりこれは不確実なんですね。でも一方で、依存症についてはこれ確実なんです。だからわかってるから、週3回に制限するとか、上限をいくらにするとか、週三回ってもう依存症じゃないですか

関口氏:週三回って言ったらもうね

大宅氏:全体のリゾートのなかでも、カジノのパーセンテージをちっちゃくするとかね、いろんな規制をかけてる。そんなにまでしてマイナス面があるものをやらなきゃいけない理由がどこにあるんだろうって。どうも外国人はそんなに日本にカジノ期待してくるわけじゃないと。もっと美味しいものだとか、美しい景色だとかそういう日本的なものを求めてくる、そっちの経済効果ならわかるんですけれども、それを、その、しかもこんなに重宝する…何なんですか

要旨をまとめると、以下のようになります。
① 政府はIRの経済効果を試算していない、よってメリットは不確実である。一方で依存症についてはその被害が確実である。そこまでマイナス面のあるものをやる必要はない
② 週三回規制とあるが、週三回も行くのはギャンブル依存症である
③ 外国人は日本にギャンブルを求めてきているのではなく、美味しいものや美しい景色などを求めているのに、ギャンブルを進めるのはおかしい

しかし、
① デロイトトーマツコンサルティングによると、世界各国でカジノ市場は拡大しており、意外なことにその中でも最大の市場は5.7兆円の市場規模を誇るアジアということがわかっています。同時に、2005年にカジノを合法化したシンガポールでは、GDPの増大と海外観光客の増加があったことがわかっています。
② ギャンブル依存症の医学的な定義としては、アメリカ精神医学会が発行した精神障害の診断と統計マニュアルに記載がある「ギャンブル障害」と、WHOが提示する疾病及び関連保健問題の国際統計分類に記載のある「病的賭博」、サウスオークス財団が作ったSOGS、自助団体GAが作った基準があるが、そのいずれにも「週3日以上カジノに行く」という診断基準は存在しません。
③ IR法案はカジノ単体で設置する法案ではなく、MICEビジネスの振興もその目的の一つとされています。MICEとはMeeting(会議)、Incentive/Travel(企業報奨・研修旅行)、Convention(学会、学術会議)、Event(文化・スポーツイベント)などの総称で、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントのことです。つまり、ただの観光客向けの施設ではないため、この批判は不適当であると言えます。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「IR法案は危険である」「参院6増案は自民党の党利党略である」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「カジノは地方創生につながる」「参院6増は2県で代表者が1人しかいない今の状況を改善するものだ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまでIR法案は危険だ、参院6増案はおかしい、という論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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