2018年8月30日 報道ステーション

2018年8月30日 報道ステーション

※自民党総裁選期間に限り、報道監視レポートを全ての会員の皆様にしております。

2018年8月30日、報道ステーションの報告です。
今回取り上げるのは、番組が原発について取り上げた部分です。
詳しく見ていきましょう。

——–
富川悠太アナ:さて、この後は福島第一原発で、増え続ける汚染水の処理の問題です。どうなるんでしょうか。
——–
【VTR】
小野春雄さん(公聴会の出席者):賠償金をもらいたくて、賛成するなんて、絶対そんなことあり得ませんから・・・

(CM)
【スタジオ】
小川彩佳アナ:今日は、原発をめぐって二つの動きがありました。まず、福島第一原発。どんどんどんどん汚染水が増え続けているわけですけれども、こちら敷地内に並んでいるおびただしい数の、このタンクの中にはですね、処理された水が入っています。900基にも及んでいるんですね。で、この水を薄めて海に流すという案について、今日、住民の意見を聞く会が開かれました。
 一方こちらはもんじゅです。福井県のもんじゅ。国費が1兆円以上も投入されながらも、ほとんど稼働しないまま、廃炉となりましたけれども、今後、30年とかかるという廃炉作業の第一歩となる、核燃料の取り出しの作業が、今日、始まりました。
——–
【VTR】
小野さん(公聴会の参加者):福島県の海に放出することだけは、絶対に反対です。

ナレーター:福島第一原発には、放射性物質、トリチウムを含む水がタンクに入れられて、大量に保管されています。既に、100万tを超えています。2020年には、137万tにまで増えて、置き場所を確保するのが非常に困難になるため、トリチウムを薄めて海へ流す案を中心に、検討が進んでいます。今日、初めて開かれた公聴会では。

大槻宗司さん(公聴会の参加者):海洋放棄が一番、経済的にも優れた方法であろうと思っております。

ナレーター:容認する意見もありましたが。

小野さん(公聴会の参加者):トリチウムを海洋放出して、それが安全で(あろうと)なかろうと、それを放出した時点から、さらに風評被害を上乗せされます。賠償金をもらいたくて賛成するなんて、絶対そんなことあり得ません。

渡辺和則さん(公聴会の参加者):風評被害は拡大するんだと思います。やはり、そういった海産物を口にしたくないとか、海水浴をしたくないっていうようなイメージが先行してしまうのは必至だと思います。

傍聴した人:海洋放出については、私は今、いわきに避難してるんだけれども、やっぱ、帰ってくるっていうような認識が、そういうことやられると、また遠のいちゃうよね・・・

ナレーター:政府は、ヒアリングを重ねながら、処理方法を決めていきたいとしています。
一方、福井県では、一昨年廃止が決まった、高速増殖炉もんじゅで、今日、核燃料を取り出す作業が始まりました。核燃料をつかむ装置にナトリウムが付着するなど、準備段階でトラブルが相次いだため、廃炉作業の開始は1ヵ月遅れました。一昨日の、安全監視チームの会合では。

原子力規制庁担当者:安全上、問題はないかもしれませんけど、全体としてみたときには、もっとちゃんとやれば、工程にあまり影響を与えずにできていくわけです。こういうことが、これから先、度重なっていくと、問題が生じる可能性もあります・・・

ナレーター:廃炉の完了は30年後。3750億円かかると見込んでいて、まず、4年後までに530本ある核燃料を取り出す予定です。ただ、これまで核燃料を取り出した実績は2本だけで、計画通り進まない可能性もあります。

【スタジオ】
富川アナ:しかも、もんじゅから取り出す核燃料の処分方法も決まっていないと。これも大きな問題ですね。

後藤謙次:そうですね。今日、2つの大きなことがありましたけど、日本の結局原子力政策の行き詰まり、矛盾の象徴ですよね。特に2011年、3.11以降、あの段階で大きく原子力政策も変換できたんですけれども、そのままズルズルズルズル、ツケを先送り、先送りでやってきた。その代償だと思いますね。特にこのもんじゅについてはですね、日本でプルトニウムがどんどんできちゃってるわけですね。47t以上。核兵器にして、6000発分ぐらいあるという。こう言われているんですが、そのプルトニウムの保有が認められるのは、その核燃料サイクルというシステムが。この一つの核がそのもんじゅだったんですね。で、もう一つがプルサーマル。これも再稼働であまり動いてない。これも十分使い切れてない。つまり、一つの車の両輪で言えば、片っぽが脱輪したのにもかかわらず、まだこの政策を維持し続けるんですかと。そういう疑問を投げかけてるんですね。ただ政治の方はその決断、方向性、工程表。一切示してないという矛盾が今日見事に露呈したと言っていいと思いますね。

富川アナ:根本的部分から考えるべき・・・

後藤:その時期に来てると思いますね。

富川アナ:はい。
この富川アナの発言を最後にこのコーナーが終了しました。

——–
【検証部分】
今回の放送の問題点は、原子力に関する知識について事実と異なるとも思われるものが放送の中に含まれていたことです。
詳しく説明いたします。

まず大前提として今回公聴会のテーマとして取り上げられたトリチウム水の海中放出についてですが、トリチウムは原発を稼働すれば必ず放出されるものです。そのため、世界中の原発から海中への放出が行われています。これは世界中の正常に稼働している原発からも放出されているものです。ここに関して全く言及がされていませんでした。確かに、福島第一原発の事故後の処理ということでその影響や風評被害が懸念されるものではありますが、そのような基本的な事にも触れるべきだったのではないでしょうか。
また、後藤氏はスタジオにて
後藤謙次:そうですね。今日、2つの大きなことがありましたけど、日本の結局原子力政策の行き詰まり、矛盾の象徴ですよね。(中略)その代償だと思いますね。特にこのもんじゅについてはですね、日本でプルトニウムがどんどんできちゃってるわけですね。47t以上。核兵器にして、6000発分ぐらいあるという。(以下略)
と発言していますが、これについても、プルトニウム自体の純度の問題や性質の違いから、原発利用後のプルトニウムでは核兵器開発には利用できないという意見もあります。多くの視聴者を持つ報道機関としては「核兵器何個分」というわかりやすさだけではなく、それが可能なのかという部分までの丁寧な説明が必要なのではないでしょうか。

したがって今回の放送は、放送法第4条第3項「事実は曲げないで報道すること」第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に抵触している可能性があります。

今後も監視を続けます。

報道ステーションカテゴリの最新記事