※自民党総裁選期間のため、報道監視レポートを全ての会員の皆様に公開しております。
2018年9月12日、報道ステーションの報告です。
この日最も多くの時間を割いて報道されたのは、今月行われる沖縄知事選挙関連の話題でした。
今回はこの話題を取り上げます。
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小川彩佳アナ:沖縄戦知事選挙です。明日、告示されます。こちら、前の宜野湾市長の佐喜眞淳さんと衆議院議員の玉城デニーさんが、事実上の一騎打ちとなるとみられています。最大の争点は、辺野古への普天間基地移設です。
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冒頭、小川アナが沖縄知事選挙が13日に告示されること、そして選挙戦はほぼ佐喜眞氏と玉城氏の一騎打ちになる見込みであることを伝え、VTRがスタートしました。
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【VTR】
ナレーター:今回の沖縄知事選挙は、翁長知事が任期の途中で死去したことに伴うものです。玉城デニー氏は、翁長氏を支えてきたオール沖縄の支援を受けての出馬です。
玉城デニー氏:米国人の父をもち、日本人の母をもつ私はある意味でいうと、翁長知事がおっしゃっていたように、戦後沖縄の象徴的な存在であるかもしれません。
ナレーター:玉城氏は、地元でロックバンドのボーカルや、ラジオDJとして活躍した後、政界入りし、自由党の幹事長を務めていました。
玉城氏:辺野古新基地建設阻止の決意と覚悟が県民とともにあることを、翁長知事は命を懸けて私たちに示しました。あらゆる権限を駆使して、辺野古の新基地建設を阻止していく・・・
ナレーター:陣営には、翁長知事の次男で、那覇市議の雄志市議の姿も。一方で、4年前、10万票の差をつけて翁長知事を誕生させたオール沖縄勢力は、その後、保守や経済界の一部が距離を置くなど、足並みが乱れ、名護市長選挙でも、敗北を喫しました。
呉屋守將氏:皆様がオール沖縄ということでくくっておられた内容がですね、やはり一人ひとり、「モノを言う」ということが出てきたのかなと思います。私は決して悲観はしておりません。
ナレーター:沖縄県は、先月31日、辺野古埋め立て承認を撤回し、それに対して国は、法的な対抗措置を取る構えです。
記者:国との対立の状態を、このまま続けていたらどうなるのかというような指摘もありますけれども・・・
玉城氏:我々はもう基地の被害も、その基地から受ける事件や事故も、もうこれ以上嫌だと。しかしそれは、反対側から見ると、分断を持ち込んでいるはずの側が、まるで私たちが対立を望んでいるかのことを言う。それは極めて不誠実であり、間違いです。
ナレーター:フランスに留学し、空手の指導もしていたという佐喜眞淳氏です。自民党、公明党などが推薦しています。
佐喜眞淳氏:県民とともどもに、普天間飛行場の返還に向けて全力を尽くして、知事として頑張っていきたいと思います。
ナレーター:佐喜眞氏は、2012年、普天間基地を抱える宜野湾市の市長に初当選し、2期目の途中でした。総理官邸や与党とも、太いパイプを持っています。
二階俊博氏:自由民主党は、中央政界において、責任をもって皆さんの期待に応えていきたい、こう思っております。
ナレーター:佐喜眞氏は、国との対話を訴えます。
佐喜眞氏:分断から何も生まれてはきません。対立から対話。皆様方が安心して暮らせる沖縄づくりを私は絶対にやりたいと・・・
ナレーター:佐喜眞氏は、普天間基地の早期返還を求めていますが、辺野古移設の是非は語っていません。
佐喜眞氏:裁判ということは、多分県民もそういうことはあまり望んでいなかったと思いますし、どうやったら解決できるかっていう和の心、対話というか交渉が必要だと思いますし、そういう意味で私自身は、対話を通して物事を解決し、実績を残す、結果を残す、そういうような思いであります。
記者:辺野古については、辺野古についてはいかがでしょうか?
ナレーター:辺野古移設の是非に、なぜ触れないのか。自民党の県連会長に聞きました。
国場幸之助氏:論点の設定の仕方がちょっと違うんですよね。つまり普天間の現状をどうするかっていうことですよ。
記者:辺野古問題がこれで解決するっていうふうにお考えになりますか?
国場氏:普天間問題って言葉がありますけれども、そういう問題は、手段の、方法論の話ですから・・・
ナレーター:事実上、一騎打ちの二人が直接対決しました。
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ナレーター:沖縄県知事選に立候補した二人が、論戦を交わしました。
玉城氏:今、佐喜眞さんは、この辺野古新基地建設に対する立場を明らかにしようとしていません。今回、有権者に対して示す責任もあると思いますが、どのように考えてらっしゃいますか?
佐喜眞氏:昨年12月には、(ヘリの)窓枠が落下するっていう事故がございました。普天間飛行場の危険性除去は一刻の猶予もないということで、普天間飛行場の返還が、まず優先すべきであると思っております。
玉城氏:佐喜眞さんは、基地問題、安全保障問題は国が決めること、つまり従来通りの国の専権事項であるということを述べ、我々の努力には限界があると。
佐喜眞氏:私ども宜野湾市民からしたら、どこでもいいというか、とにかく、皆さんがどこに持っていくかということをしっかりと保証してくれというようなものが必要なんですけれども、残念ながら玉城さんからは、じゃあどこに持っていくかっていうお話もないものですから、とにかく我々は普天間飛行場の一日も早い返還をしないといけないと思います。
ナレーター:沖縄県知事選挙には、ご覧の方々が立候補を予定しています。投開票は、30日です。
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【スタジオ】
富川悠太アナ:ポスト翁長さんは、誰になるんでしょうか。現状はどうご覧になっていますか?
後藤謙次氏:そうですね、今日の段階で、現地の情報を取材をしましたけれど、総合するとですね、やはり双方とも、翁長さんの急死を受けてですね、準備が整わないまま告示日を迎えると。スタートダッシュに至っていないと。ただ、相対的に言えるのはですね、組織票。公明党と自民党が手を組んだ佐喜眞さん。それから、玉城さんの知名度。こういう構図は変わらないんだと思いますね。で、沖縄の選挙というのは大体基本はですね、保守票4割。革新票4割。そして2割が浮動票だと。そしてこの2割の浮動票の行方がある面で流れを決めるんですが、今回のケースで言えば、玉城さんがですね、翁長さんの弔い選挙。この形に持ち込めるかどうか。これは基地問題と表裏一体の関係にありますから、そこにできるかどうか。一方、自民党側は、佐喜眞さんを担いでですね、徹底的な組織選挙に持ち込めるかどうか。そこがまあ、勝負の分かれ目になってくるんだと。ただ今のところ双方ともですね、様相は見えてきてないというのが現状だと思います。ただ、鍵を握るのは浮動票であり、そして女性票の行方なんですね。で、佐喜眞さん自身は、この普天間の辺野古への移設。辺野古移設についてはYES NOどちらとも指摘していませんね。これは新潟県知事選挙で、柏崎刈羽の原発について花角さんって現職市長が、今の知事が、YES NO言わなかったんですね。この、ある面で勝利の方程式を今回も踏襲してるということなんですが、ここはぜひはっきりしてもらいたいと思いますね。
富川アナ:ちょっと徹底的に避けている印象は受けてしまいましたね。
この富川アナの発言を最後に、このコーナーは終了しました。
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【検証部分】
今回の放送の問題点は大きく分けて2つあります。
1点目は、今回の知事選挙の争点を普天間基地移設についてのほぼ1点に絞ってしまっていること。
2点目は、米軍普天間基地移設問題に関しての玉城、佐喜眞両氏の立場についての報道姿勢が放送法違反に抵触する可能性があること。
以上の2点です。
まず、1点目についてです。
冒頭で小川アナが「今回の知事選挙の最大の争点が辺野古への米軍普天間基地移設問題である」と発言してから、番組はVTRや自民党沖縄県連会長へのインタビュー、あるいはスタジオでの富川アナと後藤氏のやり取りを通して「米軍普天間基地の移設の是非」にすべての時間を割いて報じていました。
しかし、お互いの候補は今回の選挙戦で普天間基地の移設問題だけに言及しているわけではありません。沖縄への振興予算や沖縄経済のこれから、そして今後のアジアとのかかわり方など多種多様な論点を両候補は提示しています。確かに、今回は普天間基地の辺野古移設に反対し続けた前知事の翁長氏が急逝してからの選挙戦であり、世論も候補者も米軍基地の問題に大きな関心を寄せているのは確かです。ですが、それを意識しすぎて多くの論点を提示しないというのは報道機関としてあるべき姿なのでしょうか。
次に2点目についてです。
スタジオにて富川アナと後藤氏はこんなやり取りをしていました。
富川悠太アナ:ポスト翁長さんは、誰になるんでしょうか。現状はどうご覧になっていますか?
後藤謙次氏: (中略)佐喜眞さん自身は、この普天間の辺野古への移設。辺野古移設についてはYES NOどちらとも指摘していませんね。これは新潟県知事選挙で、柏崎刈羽の原発について花角さんが、今の知事が、YES NO言わなかったんですね。この、ある面で勝利の方程式を今回も踏襲してるということなんですが、ここはぜひはっきりしてもらいたいと思いますね。
富川アナ:ちょっと徹底的に避けている印象は受けてしまいましたね。
ここで後藤氏は、佐喜眞氏が辺野古への移設について賛否をはっきりしていないと発言し、態度を明確にするべきであることを要望。これに富川アナも応じました。また、今年の6月に行われた新潟知事選挙で自民党が推薦した与党系の候補が勝利し、その際柏崎刈羽原発の再稼働への態度をはっきりしなかったことが勝利につながったのではないかという意見も併せて主張しました。
たしかに佐喜眞氏が辺野古への移設について賛否を明らかにしていないのは事実ですが、普天間飛行場の返還が最優先事項であることについては明言しています。また玉城氏は普天間飛行場の早期返還と運用停止を求め、基地の辺野古移設には反対しているものの、ではその後基地はどこに移転するのか、などの具体的な部分に言及しているわけではありません。
常に繰り返されてきた米軍基地の問題について玉城氏が具体的な方策を持ち合わせているわけではないのにもかかわらず、佐喜眞氏のあいまいな姿勢ばかりを追求するのは公平中立な報道と言えるのでしょうか。
したがって、今回の放送は今回の放送は放送法第4条2項「政治的に公平であること」第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に抵触している可能性があります。
今後も監視を続けます。