2018年11月25日 サンデーモーニング(前編)

2018年11月25日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2018年11月25日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
「風を読む」にてゴーン会長逮捕について報道された部分
韓国の慰安婦団体が解散した件について報道された部分

以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
①「風を読む」にてゴーン会長逮捕について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容を見ていきましょう。

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【VTR】
・19日、カルロス・ゴーン容疑者が逮捕された。
・日本企業は「グローバル化を進めるべきだと思う」と答えた人の割合は79.5%
・ゴーン容疑者は、経営不振にあえぐ日産の業績をV字回復させてきた
・バブル崩壊で経済低迷が続くなか、日本経済はグローバル化の波に飲み込まれていった
・小泉政権以降は規制緩和進み、厳しい競争にさらされ非正規雇用も増加した結果、終身雇用・年功序列制が揺らいでいった
・企業トップに外国人をつける企業も増加(三菱自動車・ソニー)
・外国人社員の採用や社内公用語の英語化なども進んだ
・一方で、ゴーン容疑者の高額な報酬に批判の声
・グローバル化は格差拡大など負の側面がある
・専門家は、グローバル化は、強引な人員削減・下請けの切り捨て・非正規雇用など大きな問題を抱えていると指摘

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【スタジオ】
関口宏氏:情報が進めば進むほど、それはもうグローバル化していくのは仕方のないことかもしれないけども、なんか日本の良さが壊されていくのはたまらないなあ。なんか辛いものが私はありますが、どうでしょう。

寺島実郎氏:これ今、世界潮流を見るとですね、トランプ現象が象徴しているように、そのグローバル化を真っ向から否定するっていうエネルギーが世界潮流の中にあるわけですよ。で、そういうものとも呼応しながらですね、日本の現状を考えたときにね。実は進行してることはね、グローバル化でも何でもなくて、グローバル化疲れなんですよ。で、もう辟易としてるっていうのがね。で、経済界特にそうですけど、まるドメ派の逆襲って言葉がよく使われてるんですけど、まるでドメスティック。国内派の逆襲っていうことがですね。で、どういう意味っていうとね、例えば21世紀に入って、17年経ったところですけれども、海外からやってくる人はですね、21世紀始まったときは5倍になったんですよ。だけど日本人の海外に出る人ってのは全く横ばいで増えないんですよ。要するに、世界を見てる目線って意味からいったら、日本はむしろ内向してるんですね。で、僕は、もう次のステージの本当のグローバル化の光と影を見極めたね、グローバル化の新しい在り方についての議論を日本人がそろそろ始めなきゃいけない。このゴーンの問題が重要だっていうのは、それをきっかけにしてどう展開するかっていう。そういうことだと思います。

関口氏:大崎さんいきますよ。

大崎麻子氏:このグローバル化の負の側面っていうのはものすごく強調されてたんですけれども、あの、それはやっぱり終身雇用とか、年功序列とか、そういったものに恩恵を受けてきた人たちの視点だなっていうのを私はすごく思いました。もう別の視点から見れば、このいわゆる、暗黙の社会契約とおっしゃってましたけど、そこから女性は徹底的に排除されていましたし。で、ハラスメントとか不正とかを放置するような土壌っていうのも温存されてきたし、それから若い人たちの新しい発想とか、イノベーションを育むような、そういうことは起きにくいっていうこともあったわけですよね。なんで今は、活気のある企業はダイバーシティをちゃんと推進してると思うんですね。

関口氏:何ですか?

大崎氏:多様性です。多様性を担保してやってると思います。もっと言えば、株主とか投資家も、今、ものすごく変わってきていて、ESG投資って言ってますけれども、投資を決めるときに環境とか社会とかガバナンスにどれだけ配慮してるか、そういう情報とか。社員に対しても環境に対しても調達先に対してもフェアな企業を選んでいくって、そういう動きも出てきてますから、そういうポジティブな動きに注目することが、やっぱり次世代に希望のある未来を残していく私たちの責任じゃないかなと思いますね。

関口氏:チキさんいきましょうか。

荻上チキ氏:そうですね。今、経営と雇用のグローバル化という観点からのVTRからのコメントだったと思うので、ちょっと変えると、今、トマピケティという経済学者が出ましたね。彼が主張していたっていうことは、基本的にはこの資本主義経済のなかで、トリプルダウン。つまり、お金持ちがお金を儲けると、結果として皆に行き届きますよっていうのは、実証的に研究してみると、間違いだということが分かったと。でも、グローバル化が進んでいく中で、一つの国だけで再分配政策をやろうとしても、タックスヘイブン。ようは、脱税。結果的な脱税ですよね、を行っていくことによって、企業が太っていくっていう構図は、残ってしまうということがあるので、だから、長期的にみると、日本国内での格差を改善することも大事なんですけれども、長期的には、グローバル課税であるとか、タックスヘイブン対策であるとか、しっかりと、逃げ得を許さないような社会を作ることで、良いグローバリズムの連帯を作っていきましょうというようなゴールを作っていくのが大事なのかなと思いますね。

関口氏:それは言えてるような気がしました。涌井さん。

涌井雅之氏:あの、非常にグローバル化を一言で語るのは難しいんですけれどもね、今ずっと経済的な側面だけが強調されてるんですね。しかし一方ではですね、地球には、経済は成長しても地球は成長しないものですから、つまり地球環境に対してどうグローバリズムで対応するのか。あるいは地球人としての倫理観をどう対応するのか。それと経済がどうなるのかっていうのとですね、それぞれを同じように考えていかなえればならない。そこにグローバル化の価値があるはずだと。経済だけじゃないんだと。で、経済だけで言えばですね、結果としては、例のブルガリア大統領のホセ・ムヒカが言うように、一番貧しい人はもっともっと、持ってるにもかかわらず欲しいという人なんだと名言だと思うんですよ。それはまあ、ゴーンと同じようなタイプですね。だけども、その中でどんどん格差が広がっていってしまう。経済だけのグローバル化。これは非常に問題がある。この反動でナショナリズムみたいなものや、あるいは偏狭なパトリシズムみたいなものが出てくる。郷土愛みたいなものを強調した、そういった方向に行ってしまう危険性もある。倫理の面で言うとですね、例えばそこを突き付けられると思いますが、刑事訴訟法が推定無罪という前提に立たなければいけないにもかかわらず、現実には推定有罪の方向でものが進められているものあると思います。

(CM)

関口氏:カルロス・ゴーン事件について、青木さん。

青木理氏:皆さんのお話を伺ってて、VTRも難しいなと思ったんですよね。だからバブル崩壊後に、先度大崎さんから、守られていたのは、終身雇用とか年功序列で守られてたのは誰なんだってお話しもあったけれど。ただバブル崩壊後に起きたことってのは、いろいろ考えてみると規制緩和にしても新自由主義にしても、あるいは非正規雇用の増加にしてもね、やっぱ経営者視線だったなと思うんですよね。で、結局働く者の人権とかってのは守られなかった。今回の外国人の、その人材も、これ入ってくるの人間なんですよね。だから、人間なんだ、働くものも人間なんだってことを忘れないで、いろいろ思索をしないと同じことの繰り返しになるんじゃないかっていう懸念を僕は抱いてますけどね。

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、寺島氏の発言内容に、事実と違う事柄が含まれている恐れがある
2、涌井氏の発言内容に、事実と違う事柄が含まれている恐れがある

それぞれ順を追って解説します。

1、寺島氏の発言内容に、事実と違う事柄が含まれている恐れがある
寺島氏はこの問題について、以下のように発言しています。

寺島氏(抜粋):で、どういう意味っていうとね、例えば21世紀に入って、17年経ったところですけれども、海外からやってくる人はですね、21世紀始まったときは5倍になったんですよ。だけど日本人の海外に出る人ってのは全く横ばいで増えないんですよ。要するに、世界を見てる目線って意味からいったら、日本はむしろ内向してるんですね。

要旨をまとめると
・21世紀に入って、日本に海外からやってくる人は5倍に増えた
・しかし、日本から海外に行く人は増えていないので、日本は海外とは違い内向的である
というものです。

何をもって「海外からやってくる」「海外へ行く」と定義しているのかは不明ですが、①海外/国内への旅行、②海外/国内への移住、という2つの解釈が可能ですので、それぞれについての真偽を確かめてみたところ、
海外/国内への旅行…いずれも日本政府観光局より
外国人の国内旅行については、平成15年の521人から平成29年の2869人へと約6倍増。
日本人の海外旅行については、平成15年の1330人から平成29年の4658人へと約3倍増。
海外/国内への移住…出入国管理統計(法務省)、海外在留邦人数調査統計(外務省)より
外国人の国内移住については、平成元年の984455人から平成29年の2561848人と、ほぼ倍増。
日本人の海外移住については、平成3年の663049人から平成30年の1351970人と、ほぼ倍増。
このように、日本人の海外旅行者数並びに移住者数に大幅な増加が確認できました。
つまり、日本から海外へ行く人が増えていないという主張は、事実に基づかないものだといえます。

以上を踏まえると、寺島氏の抜粋発言は誤りを含み、事実と異なる認識を視聴者に与える恐れがあると言えます。
従って、この放送内容は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、涌井氏の発言内容に、事実と違う事柄が含まれている恐れがある
涌井氏はこの問題について、以下のように発言しています。

涌井氏(抜粋):経済だけのグローバル化。これは非常に問題がある。この反動でナショナリズムみたいなものや、あるいは偏狭なパトリシズムみたいなものが出てくる。郷土愛みたいなものを強調した、そういった方向に行ってしまう危険性もある。倫理の面で言うとですね、例えばそこを突き付けられると思いますが、刑事訴訟法が推定無罪という前提に立たなければいけないにもかかわらず、現実には推定有罪の方向でものが進められているものあると思います。

要旨をまとめると、
・経済だけのグローバル化はその反動としてナショナリズムや愛国主義を強調する恐れがある
・その影響で、カルロス・ゴーン容疑者の扱われ方は、刑事訴訟法の推定無罪の前提を無視したものになっている
というものです。

しかし、ナショナリズムや愛国主義の増長と刑訴法の推定無罪の前提軽視とは全く関係のない事柄であり、両者の間に何ら因果関係はありません。にもかかわらず、涌井氏は日本の刑事制度の問題点を政治的な理由と置き換えました。これは事実と異なる認識を与える恐れがあり、また政治的に偏ったものである可能性が高いといえます。

従って、この放送内容は放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」、同第3項「報道は事実を曲げないですること」、ならびに同第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
韓国の慰安婦団体が解散した件について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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