2019年1月31日 報道ステーション

2019年1月31日 報道ステーション

1月31日の報道ステーションのレポートです。
今回の放送では厚労省の不正統計問題に関して、公平な意見とは言えない放送があったので取り上げていきます。金融緩和と共に失業率を下げてきたアベノミクスであると思われますが、どのような報道であったか早速見ていきましょう。

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【スタジオ】
徳永有美アナ:厚生労働省の統計不正問題です。安倍総理はこれまで、「賃上げは5年連続で今世紀に入って最も高い水準だ」と、アベノミクスの成果を強調してきました。ところが今回の問題を受けて、生活実感に近いとされる実質賃金を計算し直したところ、去年一年間ではほとんどの月でマイナスになっていたことがわかりました。野党は今日の国会で、アベノミクスの根拠が揺らいでいると、痛烈に批判しました。

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【VTR】
国民民主党 榛葉賀津也参院議員:毎月勤労統計の問題によってアベノミクスが重視する賃金の動向に対しても疑義が生じています。伸び率はマイナスではないかとの報道もありました。

安倍晋三総理大臣:平成30年の毎月勤労統計の各月の伸び率の数値のみをお示しして、アベノミクスの成果であると強調したことはこれまでありません。

ナレ:安倍総理はこれまで、「賃金は上昇している」とアベノミクスの成果をアピールしてきました。

(去年1月の発言)
安倍総理:名目賃金でみれば賃上げは中小企業含め今世紀に入ってもっとも高い水準
(去年10月の発言)
安倍総理:賃上げは5年連続で今世紀に入ってもっとも高い水準

ナレ:しかし野党は、政府が公表した実質賃金の伸び率は、「実際にはマイナスなのではないか」と指摘しています。これは不正統計の発覚後、厚労省が再集計した、去年1月から11月までの実質賃金の伸び率です。5ヶ月でプラスとなっています。これに対し、総務省がより実態に近いとしている数値をもとに野党が試算したところ、ほとんどがマイナスとなったのです。野党からこの試算を示された厚労省は昨日――

国民民主党 山井和則衆院議員:これは間違っているのか正しいのかと。

厚労省 屋敷次郎参事官:計算をする必要があるかと思いますが……。

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【CM】
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ナレ:不正統計の発覚を受け、野党は厚労省に対し、去年の実質賃金は実際にはマイナスになるのではと指摘しました。

国民民主党 山井和則衆院議員:これは間違っているのか正しいのかと。

厚労省 屋敷次郎参事官:計算をする必要があるかと思いますが、おそらくであります。ちょっと明確に申し上げられませんが、この数字の幅の計算でございますので、おそらく同じような数字は出ることは予想されます。

ナレ:厚労省は、去年の実質賃金の伸び率が実際はマイナスになる可能性があると認めました。そして今日も――

国民民主党 山井和則衆院議員:マイナス基調だということはお認めになるということですね。

厚労省 屋敷次郎参事官:おそらく傾向としてはそのような状況というのは出てくるかと思いますが。

ナレ:賃金はプラスなのか、マイナスなのか。統計の不正が発覚してから、安倍総理が持ち出すようになったのは――

(昨日の衆院本会議)
安倍総理:連合の調査においては5年連続で
(午前10時半・参院本会議)
安倍総理:連合の調査においては5年連続で、今世紀に入って最高水準の賃上げが継続しており――

ナレ:安倍総理は賃上げの根拠として示したのは、政府の統計ではない「連合」の調査でした。安倍総理は実質賃金の伸び率を改めて計算できるかどうか、担当省庁で検討中としています。専門家は――

SMBC日興證券 宮前耕也シニアエコノミスト:昨年の賃金の伸び率はかなり高いと言われてきたと、実質賃金はプラスの状態と考えられてきたわけなんですけれども、実態としてはさほど伸びていなかった。賃金は増えているけれど物価の上がり方の方が大きいときもあって、生活が苦しいような局面も実はあったということは言えると思います。

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【スタジオ】
富川悠太アナ:うーん、あの、景気がいいと言う割にね、街の声を聞きますと実感がない、実感がないとみなさん仰ってましたけれども、その皆さんの感覚は正しかったということになりますよね。

後藤謙次氏:そうですね。次から次へ出てくるこの統計の不正、あるいは不適切な統計、これでいうとなんか逆に裏付けられてしまっている、実感なき景気拡大がですね、そして総理のですね、一連の代表質問に対する答弁なんですが、見てますとこう言えると思うんですね。すり替えと言い逃れ。すり替えは今何度も出てきましたように、この賃上げの基本的な数値を連合の調査に求めてるんですね。ただ連合というのはみなさんご承知のように、大企業が加盟している、労働者全体のなかではごく一部なんですね。ですから水準がきわめて高い。そこをベースに非常に賃上げができてるんだという統計を安倍総理は指摘した。それから言い逃れはですね、アベノミクスの成果を判定するのは勤労統計だけではない、こう言ってきてるんですが、連日のようにですね、次から次と、他の統計の不正、あるいは不適切な結果が出てきてるわけですから、これはまさに言い逃れでしかなくてですね、やはりきちっと、全体の検証をした数字を、安倍総理は政府として責任を持って出すと。そういう責任があるんだと思いますね。

徳永アナ:今回ほんとにいろんな問題あると思うんですけども、後藤さんは何が一番重大なとこだって思いますか。

後藤氏:やはり去年の一月のですね、2004年から始まった不正調査。それをこっそり修正しちゃったりですね、これによって賃上げがぐっと上がったような印象を与えるんですが、これがちょうど春闘のタイミングだったわけですね。今の春闘はかつての高度成長期と違ってですね、零コンマいくついくつ、千円二千円、と非常に小さい数字で賃上げが行われている。ですからそういうなかで安倍総理が言った数字が上がったという、修正によって上がったということは、結果として非常に大きな意味を持つことになってしまう。

徳永アナ:これはあの、国民としてはなんか騙されたような感覚になってもおかしくないんじゃないかなと思うんですけれども。

後藤氏:それは言えると思います。ですからこれはきちっとやっぱり総理に先頭に立ってですね、どういう手順、段取りあるいはやり方で実態を明らかにするかという、そういう責任が問われていますね。とりわけ今度の予算はまさにこの数値をベースに予算編成が行われているわけですから、これはこの予算委員会をつうじて、徹底的に明かしてもらいたいと思いますね。

今回の放送の問題点は2点あります。
1点目は事実を曲げた報道があったこと。
2点目は公正な報道であったかかどうか、1点目と2点目どちらも放送法に抵触する恐れがあります。

1点目に関してですが、今回の厚労省の問題で実質賃金が下がったというところを論点にしていますが、安倍総理は放送でも明確に以下のように述べています。

(去年1月の発言)
安倍総理:名目賃金でみれば賃上げは中小企業含め今世紀に入ってもっとも高い水準

安倍総理は名目賃金は上がっていると言っているのですが、野党・番組では実質賃金を論点にすり替えています。実質賃金と名目賃金は別物であるため同等に比較することはできません。このように事実を曲げた報道は以下の放送法に抵触する恐れがあります。

放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること

また2点目ですが、アベノミクスの成果として失業率を下げてきたことは間違いありません。失業率はほぼ最低となっています。これはアベノミクスの成果ですが、富川アナなどは以下のような発言をしています。

富川悠太アナ:うーん、あの、景気がいいと言う割にね、街の声を聞きますと実感がない、実感がないとみなさん仰ってましたけれども、その皆さんの感覚は正しかったということになりますよね。

実感ベースで経済を解説することはあまり意味がありません。
バブル期も多くの人が景気実感を感じていませんでした。もちろんアベノミクスに関してさまざま意見はあると思われますが、一方的な批判に終始していては放送として、適切ではありません。良数字を用いて、良い点・悪い点の両方を比較するなどするのが公正な放送でしょう。これは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにするこ

野党が提示してきた意見を中心に放送するのは公正とは言えません。

視聴者の会は公正な放送を目指して今後も監視を続けてまいります。

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