2019年4月2日 報道ステーション

2019年4月2日 報道ステーション

4月2日の報道ステーションのレポートです。
この日の放送では、安保法制に基づく自衛隊の海外派遣について取り上げられていました。
今回の派遣によってさらに自衛隊の海外活動が「拡大」していくのは問題である、といった論調で放送されていました。
安保法制は審議中に共産党をはじめとした野党やテレビメディアによって「戦争法案」と呼ばれ、反対されてきました。
そういった点を踏まえると、放送で述べられている自衛隊の海外活動が拡大することの問題点は、いずれ日本が戦争に巻き込まれるのではないか、といったことであると考えられます。
そこで今回検証するのは
1. 日本の国際的な立ち位置について事実に基づいた報道がなされていたか
2. 多くの論点を提示した放送であったか
この2点について検証していきます。

まずは放送内容を確認します。

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【スタジオ】
徳永有美アナ:続いて、初めての任務で自衛隊が海外に派遣されます。

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【VTR】
岩屋毅防衛大臣:自衛官の人材育成という面においても大きな意義を有していると。

派遣先は、シナイ半島のリゾート地です。

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【スタジオ】
徳永アナ:陸上自衛隊が初めて、国連が関与していない多国籍軍の活動に参加することになります。2016年3月に施行された安全保障関連法に基づく、初めての活動です。

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【VTR】
ナレーション:政府はイスラエルとエジプトの停戦を監視する司令部要員として、陸上自衛隊2人をエジプトのシナイ半島に派遣する実施計画を閣議決定しました。

岩屋毅防衛大臣:必ずしも国連が統括をしている平和維持活動でなくても参加ができるということになったことによって、我が国の国際貢献の幅が広がったという風に考えております。

ナレ:政府は、これまでの現地調査で「治安が安定している」と判断して派遣を決定しました。

ナレ:自衛官二人が派遣されるのは、シナイ半島南部にあるシャルム・エル・シェイクです。過去にはしばしば戦場にもなりましたが、現在はこの地域屈指の観光地として発展を遂げています。自衛官二人はここに駐留する12カ国およそ1200人からなるMFO(多国籍監視軍)に参加することになります。日本はこれまでMFOとは31年間で2500万ドルの財政支援という形で関わってきました。それを”自衛官の派遣”へと変更したわけですが、その目的はと言うと。

岩屋毅防衛大臣:MFOに司令部要員を派遣することは、我が国の平和と繁栄の土台であります中東の平和と安定に対して、さらなる貢献を目に見える形で示すことに加えまして、自衛官の人材育成という面に置いても大きな意義を有していると考えております。

ナレ:派遣期間は今月19日から11月までの予定です。現場はどういう雰囲気なのでしょうか。実際に派遣されていたノルウェー軍の高官に話を聞きました。

ノルウェー陸軍 ウイエ大佐:MFO内では各国が仲良くやっています。お互いの言語を学んだりスポーツなどの交流イベントもあって素晴らしいですよ。夜は街に繰り出してポップミュージックを聴きに行きます。

ナレ:自衛官二人の任務は連絡業務係というものになりますが、それについては。

ノルウェー陸軍 ウイエ大佐:連絡業務係はイスラエルとエジプト当局者の訪問を調整します。海外派遣の経験がない士官ならMFOから始めるのは賢明です。非常に穏やかな環境のなか一から自分を磨くことができます。中東情勢を学ぶことは容易ではありません。現地で過ごさないと分からないですから。

ナレ:今回の派遣は、先を見据えての実績作りとの指摘もあります。

立憲民主党 本田平直衆院議員:こういうものに派遣する実績を残すとアフガニスタンでやっていた多国籍軍とか、そういう類型に初めて派遣するという一歩になるという点において、私は問題意識を持ってます。

岩屋毅防衛大臣:MFOはローマに本部事務所がありまして、イスラエルとエジプトに支所がある組織でございますので、私はMFOについても国際的な正当性を有するものではないかと考えております。

ナレ:今回は、国会承認のいらない自衛官の派遣だけですが、いずれは部隊派遣も検討していくのでしょうか。

菅義偉官房長官:MFOは司令部要員の派遣について要請をしてきており、部隊の派遣要請は含まれておりません。また政府内でも部隊派遣の検討は行っておりません。

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【スタジオ】
徳永アナ:今回は自衛官だけの派遣だったということですけど、今後要請があれば部隊の派遣という可能性もあるんですか。

後藤謙次氏:それはありうるのだと思いますね。このMFOをやろうということは3年前の、まさに安全法制が施行されてから初めてのケースなんですね。つまり、まずVTRにもありましたけれども、実績作り、3年間何もやってこなかったと、それで実績を作りましょうということは一つあったと思うんですね。それからさらにシナイ半島周辺の情報収集というのもある面で認められることがあるかもしれません。ただ一番問題なのはですね、いま国連自体がPKOをなかなか編成しにくくなってる。といいますのは、あらゆる安全保障に関するものについて、米ロ、そして中国がですね、それぞれ互いに牽制し合ってですね、国連のPKOとなかなか難しい状況になってる。と、結果的にこのMFOが表に出てくると。そして今日本は一人もPKO出してませんから肩身が狭い。なんとかそれを国際社会にアピールしたいと。そういう気持ちになってるんですが、安全法制・安保法案の審議の過程を思い出しますと、この問題についてほとんど議論されてないんですね。つまりどの範囲でこれを協力していくのかっていうのは、もう一度国会できちっと議論し直すと。そういう必要があるんだと思いますね。

徳永アナ:こういうことがあると実績が積み重なって拡大していく可能性があるということですよね。

後藤氏:そうです。いわゆるアリの一穴といってですね、小さな穴がどんどん拡大していく懸念というのが膨らんできてしまう。ですからもう一度原点に戻って国会で議論すると。そこをもう一度念を押したいと思いますね。

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放送をまとめると
1. MFO(多国籍監視軍)に自衛隊が初めて参加する
2. これを契機に多国籍軍などへの参加につながるのではないかという野党の主張を取り上げる
3. スタジオ解説にて自衛隊の海外活動の拡大を懸念する主張が取り上げられる

安保法制に基づく初めての活動となることで、このニュースが取り上げられました。
安保法制は集団的自衛権の容認、自衛隊の活動範囲や使用できる武器の拡大などが盛り込まれ、審議中であった2015年には、安倍政権に批判的な野党やメディアから「戦争法案」とレッテルが貼られ、連日報道されていました。

今回の放送で取り上げられていた立憲民主党の本田議員やスタジオ解説での後藤氏が問題視しているのも日本が戦争に巻き込まれるのではないか、という観点からであると解釈するのが自然です。

後藤氏の解説を振り返ってみます。

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徳永アナ:こういうこと(MFOへの自衛隊派遣)があると実績が積み重なって拡大していく可能性があるということですよね。

後藤氏:そうです。いわゆるアリの一穴といってですね、小さな穴がどんどん拡大していく懸念というのが膨らんできてしまう。ですからもう一度原点に戻って国会で議論すると。そこをもう一度念を押したいと思いますね。
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「拡大していく懸念」とは「戦争に巻き込まれること」であると考えられます。
この点について検証していきます。

戦後日本の安全保障体制は常にアメリカとともにあります。
1950年代の朝鮮戦争、1960年代のベトナム戦争、1990年代の湾岸戦争では常に日本はアメリカの味方であったと言えます。
日本の在日米軍基地から飛び立った米軍機が戦場へと向かっていたばかりか、アメリカに経済的な協力もしてきた、このような国が中立的で戦争に巻き込まれていない国だとは言えません。

こういった点を考慮すれば、アメリカと戦争をしてきた北朝鮮から日本は敵国と認識されていると考えるのは不自然なことではありません。
この事実を取り上げずに、日本がこれまで戦争に巻き込まれてこなかったという論調で取り上げるのは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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また今回の放送ではそもそもなぜ安保法制が必要なのかという論点が抜け落ちています。

安保法制成立の背景を簡単に解説します。

現在日本の安全保障上の脅威として中国の存在があります。
中国は尖閣諸島を「核心的利益」と位置づけ、軍備を拡大し海洋へ進出する姿勢をあらわにしています。この中国から尖閣諸島、日本を守るために必要になってくるのは抑止力です。
日本国憲法下の日本で抑止力とはつまりアメリカとの協力です。

中国に尖閣諸島は取れないと思わせるために、日本の安全保障をより確固としたものにすることが必要です。
つまり抑止力を得るためにはアメリカとの協力が不可欠なのです。

ではどうすればアメリカとの協力をより強くすることができるのか、それは集団的自衛権を憲法解釈によらず行使できることです。

アメリカは日本を守るが、日本がはアメリカを守るかはわからない、これではより強固な同盟関係を築くことはできません。

中国の軍事台頭、それへの対応としての安保法制、この重要な論点が述べられていないという点で今回の放送は以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けて参ります。

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