2019年4月8日 報道ステーション

2019年4月8日 報道ステーション

4月8日の報道ステーションのレポートです。
この日の放送では先日行われた地方統一選前半戦の結果に関して放送がされていました。

今回の地方統一選では自民党が勝利したといえる結果でした。
野党としては、1つにまとまることができず、統一候補を立てて戦うことができていなかったことが敗因の1つであるとの解説が番組内ではなされていました。実際、野党が統一候補を打ち立てて与党対野党の構図となったのは北海道知事選挙のみで、自民党が支援する候補が当選しました。

今回の報道では、麻生氏・菅氏・二階氏に注目して各々の明暗を解説する、というものでした。内容を調査したところ、「保守分裂」などのワードが強調され、自民党の足並みがそろっていないなどという批判的な論調で報道されていました。

そこで、今回検証する点は2点あります。
1. 様々な論点から報道がなされていたか
2. 事実を曲げた報道がなされていなかった

この2点について検証していきます。

まずは放送内容から確認していきます。

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【スタジオ】
富川悠太アナ:全国各地で統一地方選の前半戦が行われました。ダブル選挙、保守分裂、参院選の前哨戦といろんな戦いがあった訳なんですけれども、私たちが注目したのは、安倍政権を支えるこちらの三人。麻生副総理、菅官房長官、二階党幹事長です。今回の選挙結果は、この三人の力関係にも影響を与えそうだというんですね。どういうことでしょうか。

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【VTR】
大阪市 松井一郎新市長:政党が右向け右と言えばね、左向いていただくほどね、世の中の有権者の皆さん馬鹿じゃないですよ。ちゃんと見てると思います。

ナレーション:維新と反維新が激突した大阪春の陣は、知事選・市長選ともに維新の圧勝に終わりました。

森葉子アナ:なんば駅前です。大勢の人が集まっています。入れ替え選挙に打って出た松井氏、最後の演説が始まります。

大阪市 松井一郎新市長:“大阪都構想”っていうのは、それぞれ大阪府と大阪市、要は1+1にするとこれが2じゃないんです。3にも5にもなってきてるんです。

ナレ:大阪都構想実現を賭けて、維新がしかけたのが今回のダブル選挙です。

森葉子アナ:演説終わりましたけど、聞いててどうでしたか。

大阪市民:やっぱりおかしいので。「維新」対「反維新のかたまり」なので。大阪といえば大阪維新。

ナレ:知事が市長選に、市長が知事選に。それぞれ入れ替わって立候補するというやり方に。

自民党 二階俊博幹事長:遠慮なく言わせてもらえば、いささか思い上がっているんじゃないですか。

ナレ:自民・公明の推薦候補に、共産党などが相乗りする形で反維新陣営ができ、ダブル選はそれぞれ一騎打ちの構図となりました。とりわけ二階氏は3度も大阪入りする力の入れようでした。

自民党 二階俊博幹事長:この選挙はただ単なる選挙ではなくて、大阪府民の心意気が問われる選挙ではないでしょうか。

ナレ:これに対し、維新は。

大阪市 松井一郎新市長:相手陣営はえげつない組織ですから。自民党、公明党、共産党、立憲民主、すごいよこれは、野合・談合組織。

ナレ:「反維新は野合だ」と切り捨て、批判を繰り広げました。一方、選挙期間中、安倍総理も菅官房長官も大阪入りすることはありませんでした。維新は、安倍総理が悲願とする憲法改正などで、歩調を共にする存在でもあります。

自民党関係者:維新と官邸が蜜月なのは誰でも知っていますからね。本腰を入れて応援はしていないというか、できないでしょうね。

記者:官邸と維新の関係が良いために、あえて応援に入らなかったとの見方もできますが、その点についてはいかがでしょうか。

自民党 二階俊博幹事長:それは、真相はどうか分かりませんが、もしそうだったのであればけしからん話です。党が真剣にやっている最中に、そのぼやぼやしたことで選挙をサボタージュするという。あったとしたら、それはけしからんことです。

ナレ:苦言を呈された格好の菅官房長官は。

菅義偉官房長官:地方自治体の選挙というのは、それぞれの自治体、地域の住民がその課題について選択をする。政府としてはコメントは控えたいと思います。

ナレ:福岡では。

麻生太郎副総理:残念ながら当選させきれなかったということは誠にふがいなく、我々の力不足だったと改めて心からおわび申し上げる次第です。

ナレ:麻生氏が支援した、自民党推薦の候補が、現職の小川洋氏に知事選で惨敗を喫しました。勝った小川氏はもともとは麻生氏が後ろ盾でしたが、その後関係がこじれ、今回自民党は、麻生氏が全面的に推す新人に推薦を出したのです。

麻生太郎副総理:自由民主党の推薦を頂いて、私どもはこれをきっちりやらせていただいた。福岡も新しい知事のもとによろしくお願いします。

ナレ:この党本部の決定に、地元の重鎮・山崎拓氏や古賀誠氏らが反発し、現職を指示。二階派からも応援が駆けつける、保守分裂選挙となりました。こうした動きに、麻生氏は。

記者:党内で分裂している状況があるということについてどう考えるか。

麻生太郎副総理:分裂とは思いません。造反とは思いますけど。

ナレ:そんななかで飛び出したのが、あの発言です。

塚田一郎国交副大臣(当時):「これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と私は凄く物わかりが良いんです。すぐ忖度します。「わかりました」と。

ナレ:いわゆる「忖度」発言で、麻生派の塚田国交副大臣が辞任に追いやられる自体に。

麻生太郎副総理:本人ははっきり自分として「ご迷惑をおかけしましたので」ということではっきりしていましたから、それ以上言うことないんじゃないですか。

記者:ご迷惑をおかけしたと……。

麻生太郎副総理:はい? 大きな声で言えや。

ナレ:蓋を開ければ、麻生氏が支援した候補は4倍近い差をつけられ、惨敗したのです。対立候補を支援した、山崎拓氏は。

自民党 山崎拓副総裁:県民の民意というものを無視した形で押し通そうとすればしっぺ返しを受ける。つづめて言えば麻生さんのオウンゴールでしょうね。

ナレ:自民党は、11の知事選のうち、4つで保守分裂選挙となり、島根県でも党本部が推薦した候補が敗北しています。

自民党 二階俊博幹事長:県連が分裂したところは当然ではあるが厳しい結果になった。参議院選挙に向けて一枚岩で取り組んでいくことに、改めてこのことを考え直していかなきゃいけない。

ナレ:ちなみに、二階幹事長のお膝元、和歌山県の御坊市では二階氏側近の現職県議が、共産党の候補に敗れました。北海道で勝利を収めたのは、自民・公明が推薦した、前の夕張市長・鈴木直道氏です。全国最年少、三十代の知事が誕生しました。

鈴木直道氏:ピンチをチャンスに変えて、活力あふれる北海道を作っていく。

ナレ:選挙戦の最終日には、菅官房長官も鈴木氏の応援に駆けつけました。

菅義偉官房長官:財政再生のめどをつけたのが皆さんの鈴木候補なんです。

ナレ:全国唯一の与野党対決型となった北海道では、夏の参院選挙の前哨戦として、野党5党が共闘し、統一候補を擁立しました。

立憲民主党 蓮舫副代表:どうか皆さん方の力をよりいっそう結集していただいて。

国民民主党 玉木雄一郎代表:持ち上げていきましょう。みんなで力を合わせて頑張りましょう。

ナレ:野党勢力が強いとされる北海道でしたが、結果は与党の圧勝に終わりました。

立憲民主党 長妻昭選対委員長:大変残念で、多くの皆さまにおわびを申し上げたいと思います。

ナレ:統一地方選挙の後半戦と、衆議院の大阪12区・沖縄3区の補欠選挙は、今月21日に行われます。

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【スタジオ】
富川悠太アナ:今回の統一地方選の前半戦。安倍政権を支えてきたこの三人にとってどんな影響が出たのか、改めて後藤さんの解説を交えて見ていきます。

——-以下要約——-
■選挙結果まとめ(後藤謙次氏解説)
□大阪:ダブル選挙(知事選・市長選ともに維新VS反維新の構図で維新が勝利)
麻生副総理:関係なし。

菅官房長官:見えない白星。新市長となった松井氏、前市長・橋下徹氏らは菅官房長官の古くからの盟友にあたる。自民党を裏から支える維新の会は、この松井氏をキーマンにして動いている。という意味では、菅官房長官も自民党内で影響力を保持し続けることになる。

二階幹事長:黒星。維新体制を崩し、大阪での自民復権を望み、自身も3回にわたって大阪入りする力の入れようだったが、失敗。

□福岡:分裂選挙
麻生副総理:黒星。麻生氏の推薦候補が落選。2016年の福岡6区補欠選挙においても分裂選挙になったが、そこでも麻生氏は敗北しており、今回で二連敗という結果に。

菅官房長官:見えない白星。麻生・菅は自民党内で政策についてよく対立していたため、その麻生氏が力を落とすことによって相対的に菅氏の力が強まる。

二階幹事長:可もなく不可もなく。麻生氏に付き合った形での推薦だったため、今回はどちらでもよかった。

□北海道:参院選の前哨戦
麻生副総理:特に言及なし。

菅官房長官:二重丸。今回当選した鈴木直道氏は前夕張市長だったが、その復活のきっかけはふるさと納税(夕張メロン)。そのふるさと納税を作ったのが菅氏であり、鈴木氏は菅氏のことを師匠と仰いでいる。

二階幹事長:白星。自民・公明らが推薦した鈴木直道氏が当選。

□総括
麻生副総理:今回の敗北で政治的影響力が非常に落ちてくる可能性がある。ポイントは「消費増税」。未だに10月実施の延期論がくすぶるなか、財務省を背に麻生氏がこれを押し切れるかどうかという力関係が微妙になってきた。

菅官房長官:ポイントは「官邸主導」を貫けるかどうか。令和効果で知名度も上げたが、今後も補欠選挙・参議院選挙を勝ち抜かなければならない。統一地方選挙を終えて、今回の野党のふがいなさから衆参同時選挙論がくすぶってきており、それも一つの焦点になる可能性も。

二階幹事長:ポイントは選挙で勝てるかどうか。それによって二階氏の目指す党主導型の政権運営が可能になる。沖縄・大阪、二つの補欠選挙を勝ち抜いた上で参議院選挙をどう戦うかがかかっている。

——-以上要約——-

富川悠太アナ:自民党はどう足並みを揃えられるかだし、野党は野党でどう力を結集していくのかっていうところですね。

後藤謙次氏:今回やっぱり野党が統一候補を立てられなかったというのが、今回の統一選挙の欠陥につながってますから、そこがポイントですね。

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放送をまとめると、
1. 大阪W選挙で維新の吉村知事と松井市長が当選(国政自民は維新寄りだが、関西の自民党は反維新)
2. 福岡県知事選で麻生副総理支援の候補が敗北
3. 与党対野党の構図で戦った北海道知事選では自民党支持の候補が当選

VTRはこのような内容でした。

スタジオでの麻生氏、二階氏、菅氏に関する解説を簡単にまとめると、
・麻生氏:お膝元の福岡県知事選挙で支持していた候補が落選
・二階氏:大阪で結果を残せず
・菅氏:大阪の選挙には口を出さず、応援した候補が北海道知事選挙で当選
この3人を見ると、菅氏が最も良い結果を残したと言えるでしょう。

しかし、自民党が残した結果そのものに関する言及は非常に少なかったと言えます。

この一連の選挙で自民党は、2015年の選挙に引き続き過半数を維持しました。
一方野党を見てみると、2015年旧民主党が獲得した264議席を下回り、国民民主党と立憲民主党合わせて200議席にとどまりました。
自民党が圧倒的に国民から支持を得ている証であります。
この日の放送ではこの重要な論点が抜け落ちていたといえます。
これは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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2つ目の検証点として、事実に基づかない、不適当な解説があったと思われます。
それが以下の解説です

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後藤謙次氏:今回やっぱり野党が統一候補を立てられなかったというのが、今回の統一選挙の欠陥につながってますから、そこがポイントですね。

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後藤氏は野党が1つにまとまれなかったことがポイントと述べていますが、野党の統一候補と与党の一騎打ちともいえる北海道知事選挙では自民党支持の候補が勝利しました。
もともと野党系の支持が強いと言われている北海道でも、このような結果に終わったことから野党の敗因は統一候補を立てられなかったことだけではないといえます。

またVTR中の以下の部分に関しても検証が必要です。

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ナレ:そんななか(福岡知事選挙で自民党の支持が割れた候補が出ている)で飛び出したのが、あの発言です。

塚田一郎国交副大臣(当時):「これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と私は凄く物わかりが良いんです。すぐ忖度します。「わかりました」と。

ナレ:いわゆる「忖度」発言で、麻生派の塚田国交副大臣が辞任に追いやられる自体に。

麻生太郎副総理:本人ははっきり自分として「ご迷惑をおかけしましたので」ということではっきりしていましたから、それ以上言うことないんじゃないですか。

記者:ご迷惑をおかけしたと……。

麻生太郎副総理:はい? 大きな声で言えや。

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記者と麻生副総理のやりとりも麻生副総理の印象を悪くするような印象操作を行なっているともみえますが、問題なのは塚田氏の忖度発言だけを切り取った報道です。

この「忖度」発言は安倍総理のお膝元の山口県と麻生副総理のお膝元福岡県をつなぐ道路に関して塚田氏の忖度があったとするものですが、この発言だけを切り取り、忖度があったとするのは事実に基づいていない可能性があります。

それはなぜかというと、この下関北九州道路が最初に持ち上がったのは1980年代後半のことであり、関門海峡道路整備促進期成同盟会という、この道路を作ろうとする会議が立ち上がったのも1991年のことで、この道路を作ろうとする運動は長年に及ぶものといえるからです。
塚田氏の初当選が2007年であることからも、塚田氏の忖度によってこの話が持ち上がったわけではないことがわかります。

このような放送は以下の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は公正な報道を目指して今後とも監視を続けてまいります。

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