2019年5月7日 報道ステーション

2019年5月7日 報道ステーション

5月7日の報道ステーションのレポートです。
この日の放送では、日朝首脳会談の実現についての報道がなされていました。

検証する点は以下の点です。

・後藤氏による、日米朝関係についての解説

まずは放送内容を確認します。

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【スタジオ】
徳永有美アナ:なんだか距離がありますね。「条件をつけずに向き合わなければならない」。安倍総理の昨日の夜の発言が波紋を広げています。これまで総理は、拉致問題の解決に資することを日朝会談実現への条件にしてきたはずでしたが。

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【VTR】
ナレーション:菅官房長官の会見で、繰り返し質問が飛んだのは。

安倍晋三総理大臣:私自身が金正恩委員長と向き合わなければならない。条件をつけずに向き合わなければならない。

ナレ:この安倍総理の発言についてです。

記者:安倍総理は条件をつけずに日朝首脳会談の実現を目指す考えを表明しました。従来の方針を転換したと言えますが、「条件をつけずに」というのはどういうことを意味するのでしょうか。

菅義偉官房長官:自分自身が金正恩委員長と直接向き合う決意を従来から述べておりました。条件をつけずに会談実現を目指すとは、そのことをより明確な形で述べたものであります。

記者:拉致問題の進展が日朝首脳会談を行う前提条件ではないという考えでよろしいでしょうか。

菅義偉官房長官:日朝首脳会談については決まっていることは何もありません。

記者:これまで総理は「拉致問題の解決に資する会談にしなければならない」というふうにおっしゃっていました。方針を転換しているという趣旨ではないということでしょうか。

菅義偉官房長官:金正恩委員長と直接向き合う。その決意を総理は従来から述べておりました。

ナレ:従来から、とのことですが、実際はどうだったのでしょうか。北朝鮮を巡っては、韓国の文在寅大統領が一昨年就任した際、対話路線を打ち出しました。対して安倍総理は。

安倍晋三総理大臣:対話とは、北朝鮮にとって我々を欺き時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった。対話による問題解決の試みは一再ならず無に帰した。必要なのは対話ではない、圧力なのです。

ナレ:少なくとも、去年3月までは「対話ではなく、圧力」という姿勢でした。

安倍晋三総理大臣:必要なことは、国際社会が一致団結して北朝鮮が具体的行動を取るまで最大限の圧力をかけていくことです。

ただ、その翌月、板門店で。そして、シンガポール。一連の動きの中で、安倍総理も対話の意思を明言しました。

安倍晋三総理大臣:北朝鮮が正しい道を歩むのであれば、日朝平壌宣言に基づいて不幸な過去を清算し、国交正常化への道も開けてくる。/最後は私自身が金正恩国務委員長と向き合い、日朝首脳会談を行わなければなりません。そしてこれを行う以上は、拉致問題の解決に資する会談としなければならないと考えております。

ナレ:「拉致問題の解決に資する」ことを条件としましたが、北朝鮮は「拉致問題は解決済み」との立場を崩していません。ただ、米朝首脳会談で金正恩委員長は日本と話し合う可能性も示しています。その金正恩委員長は、積極的に国外に出て外交を展開しています。先月には初めてロシアのプーチン大統領とも会談しました。6カ国協議参加国のうち、北朝鮮と首脳会談をしていないのは日本だけになりました。そして飛び出したのが、「条件をつけずに向き合う」という発言です。

安倍晋三総理大臣:条件をつけずに向き合わなければならないという考えであります。あらゆるチャンスを逃さないと。しかし、首脳会談が実現する見通しはあるのでしょうか。

政治部 官邸キャップ 吉野真太郎氏:安倍総理の最近の発言の特徴なんですが、「核問題では日・米そしてロシア、中国の立場は一致している」と強調していまして、最終的に6カ国協議で解決することを視野に入れているんです。安倍総理としてはその議論のテーブルに拉致問題も乗せたいと考えていて、まずは金正恩委員長と会わなければ事態を打開できないとして、今回「無条件で会う」と今まで以上に踏み込んだわけなんです。北朝鮮からも前向きなシグナルはないわけではないようですが、たとえば参議院選挙までに北朝鮮を訪問する形でといった見通しが今の時点であるわけではありません。

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【スタジオ】
富川悠太アナ:後藤さん、日朝首脳会談が実現する見通しがないなかで、なんで今安倍総理はハードルを下げるようなことを言ったんですかね。

後藤謙次氏:一つはやはり日本の立場、これをとにかく強くアピールしたいというのがあるんですが、その以前に政府高官によると、今年の2月、米朝首脳会談の前の拉致被害者家族会、この方針転換が非常に大きいということなんですね。何が起きたかというと、拉致被害者家族会と救う会が合同で会議をしまして、金正恩委員長宛にメッセージを送ってるんですね。そのなかで、「望むのはただ一つ。拉致被害者の帰国です」と、つまりそれ以上のことは何も望まないと。それまで安倍総理はやはり家族会のためにも強く出なければならないと、そう思っていた。ある面で、制約が解かれたという意味では、自由に外交がやれると、フリーハンドを得たと、いうのがたぶん安倍さんの立場だと思うんですね。そして今のこのタイミングっていうのは、一つはやはり今VTRにもありました、プーチン大統領が金正恩委員長と会ったということですね。それによって日本だけが取り残されてしまった。この状況を早く打開しなければならない。これが一つ。そして日本だけが残された上に、トランプ大統領はどこまで信頼できるのかと。急に気が変わってしまってですね、――

富川アナ:もうすでに興味関心が北朝鮮から離れてるとみられていますよね。

後藤謙次氏:――今は中国とイランの問題。これが最大関心事だと言われてますが、となると日本が置いてけぼりを食う可能性があると。それともう一つは参議院選挙ですよね。参議院選挙にむけて今のところ外交的成果がほとんどない、こういうなかで対北朝鮮外交で先頭に自分が走ってるんだと、そういう姿勢を国民あるいは拉致被害者家族の方たちに強くアピールすると。そういう政治的な思惑が絡み合ってこのタイミングで「無条件で会う」と。ただ無条件で会うということは、金正恩委員長に条件を突きつけられた場合に、それに対する答えあるんですかというところが、ぜひ聞いてみたいところですね。

富川アナ:水面下では進んでないんですか。

後藤氏:水面下はほとんど進んでないんじゃないかと。模索はしているけれど大きなアクト、という事態には至っていないというのが、取材の結果ですね。

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【検証部分】

放送内容をまとめます。
①安倍総理が条件を付けずに日朝首脳会談を開催することを表明
②従来の「圧力路線」から「対話路線」へと変更されたと報道
③路線変更がなされたことについて背景などを解説

今回検証する後藤氏の発言で問題だと思われるは以下の2点です。

1.「圧力路線」から「対話路線」への路線変更に関する解説が事実と異なる恐れがある。
2.米朝関係に関する解説が事実と異なる可能性がある。

1点目から順にみていきます。
検証する発言は以下の部分です。

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富川悠太アナ:後藤さん、日朝首脳会談が実現する見通しがないなかで、なんで今安倍総理はハードルを下げるようなことを言ったんですかね。

後藤謙次氏:一つはやはり日本の立場、これをとにかく強くアピールしたいというのがあるんですが、その以前に政府高官によると、今年の2月、米朝首脳会談の前の拉致被害者家族会、この方針転換が非常に大きいということなんですね。何が起きたかというと、拉致被害者家族会と救う会が合同で会議をしまして、金正恩委員長宛にメッセージを送ってるんですね。そのなかで、「望むのはただ一つ。拉致被害者の帰国です」と、つまりそれ以上のことは何も望まないと。それまで安倍総理はやはり家族会のためにも強く出なければならないと、そう思っていた。ある面で、制約が解かれたという意味では、自由に外交がやれると、フリーハンドを得た、というのがたぶん安倍さんの立場だと思うんですね。そして今のこのタイミングっていうのは、一つはやはり今VTRにもありました、プーチン大統領が金正恩委員長と会ったということですね。それによって日本だけが取り残されてしまった。この状況を早く打開しなければならない。これが一つ。そして日本だけが残された上に、トランプ大統領はどこまで信頼できるのかと。

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要旨をまとめます。
①安倍総理は「拉致被害者の帰国」だけを求めるという方針転換を行ったが、これは今年の2月に開催された拉致被害者家族会との会議があったからである。
②この方針転換によって自由に外交が行えるようになった。
③もう一つの理由としては6か国協議国の中で金正恩氏と会談していないのは日本だけであるから、安倍総理は焦りを感じ、日朝首脳会談の実現を望んでいる。

では、そもそも今年の2月に「拉致被害者の帰国」だけを求めるという方針に転換するまで、日本はどのような方針をとっていたの検証していきます。

平成27年10月5日に外務省が出している日朝関係に関する基本方針を見てみます。

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我が国は,日朝平壌宣言にのっとり,拉致,核,ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し,不幸な過去を清算し,日朝国交正常化を実現することを基本方針としています。

 拉致問題は,我が国の主権に関わる重大な問題であるとともに,基本的人権の侵害という国際社会の普遍的な問題です。一日も早い全ての拉致被害者の帰国につながるような成果を早期に得るべく,あらゆる外交上の機会を捉えて拉致問題を提起し,諸外国からの理解と支持を得つつ,北朝鮮による具体的な対応を引き続き強く求めていきます。

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日本はこれまで、日朝関係における問題の一丁目一番地として拉致問題を挙げてきたのです。今年の2月から「拉致被害者の帰国」だけを求めるという方針になったわけではないため事実と異なる可能性があります。

拉致被害者の帰国を長年求めてきたという路線に大きな変更はないため、後藤氏が述べている、安倍総理が外交において「フリーハンドを得た」とはどういったことを指しているのか、分かりません。

以上のように、事実を曲げての発言は以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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続いて2つ目の問題点について検証していきます。
検証する発言は以下の部分です。

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後藤謙次氏:(北朝鮮との首脳会談において)日本だけが残された上に、トランプ大統領はどこまで信頼できるのかと。急に気が変わってしまってですね、――

富川アナ:もうすでに興味関心が北朝鮮から離れてるとみられていますよね。

後藤謙次氏:――今は中国とイランの問題。これが最大関心事だと言われてますが、となると日本が置いてけぼりを食う可能性があると。それともう一つは参議院選挙ですよね。参議院選挙にむけて今のところ外交的成果がほとんどない、こういうなかで対北朝鮮外交で先頭に自分が走ってるんだと、そういう姿勢を国民あるいは拉致被害者家族の方たちに強くアピールすると。そういう政治的な思惑が絡み合ってこのタイミングで「無条件で会う」と。ただ無条件で会うということは、金正恩委員長に条件を突きつけられた場合に、それに対する答えあるんですかというところが、ぜひ聞いてみたいところですね。
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冨川アナと後藤氏の述べているアメリカは北朝鮮の関心がないということを述べていますが、それらは主観で述べているに過ぎません。

アメリカは北朝鮮が発射した飛翔体について、いち早く分析し、弾道ミサイルが発射された可能性について言及しています。今後アメリカ大陸に届く、ミサイルの開発を進める可能性も十分にあることから、関心が離れているとは言えません。

このような発言も以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は、公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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