2019年6月2日 サンデーモーニング(前編)

2019年6月2日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年6月2日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 冒頭にて川崎での事件について報道された部分
② トランプ米大統領の訪日について報道された部分
③ 「風を読む」にて川崎での事件について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 冒頭にて川崎での事件について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
 事件直後の映像とともに、事件の状況が説明される。犠牲になった栗林さんと小山さんの写真が映し出され両親のコメントや小山さんの経歴等が伝えられる。その後、近所の住民のインタビュー映像とともに、岩崎容疑者の家族構成や経歴など人物像が伝えられる。

【アナウンサーによるパネル説明】
・幼い頃両親が離婚し、伯父夫婦に引き取られる。
・いとこ(伯父夫婦の子ども)はカリタス小学校に通っていたが、岩崎容疑者は公立の小学校に通っていたことが動機につながった可能性がある
・職業訓練校に通い学校が斡旋した機械関係のところに就職したが、長期間就労なし
・事件に使われた包丁は今年2月に購入しており、以前から計画していた可能性がある
・海外の殺人事例が書かれた雑誌2冊が見つかっている
・パソコンや携帯電話などは見つかっておらず、インターネットの利用環境はなかったとみられる

【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(全文):これは特異な事件だというふうに、皆思いたいところなんだけど、そうでもないっていうかですね。大都市郊外にある大学を僕、率いてるもんだから、東京を取り巻く大都市圏。かつてベッドタウンと言われたところにですね、やっぱりある種の人間関係の軋み。例えばね、この人を育ててくれた伯父さん・伯母さんが一気に高齢化してきてるってかですね。自分達で面倒をみきれなくなる。そういうことに対する不安感とかね。それから今、大都市郊外から都心に働いてる40代から50代にかけての人達にですね、右肩下がりにあった日本のですね、ある種の軋みを背負ってね、ある種の屈折感とかですね、達成感のなさみたいなフラストレーションみたいなものがある。例えば千葉で起こった、自分の娘を虐待死させたなんていう事件もですね、背景をずっと読み込んでてですね。こういうところの構図が起こってるんだと。ですからこれね、ある種のやっぱり日本の社会が背負ってる問題の中に、これがあるんだっていうことを我々は敏感に感じ取らなきゃいけないと思いますね。

藪中三十二氏(要約):本当に無防備な子たちを襲った恐ろしい事件で言葉もない。小山さんは非常に優秀で、素晴らしい人。本当に痛ましく、残念な限り。

安田菜津紀氏(全文):あってはならないことが、またこうして起きてしまったと思いますし、例えば、大切な方を失った方だったり、身近な方々へのケアというのが本当に不可欠。急務だと思うんですね。で、一方でこの、犯行に及んだ男性に関して、引きこもり傾向にあったっていうことが、今週繰り返し報じられてきたと思うんですよね。で、あの、私の身近にも引きこもりだった方がいますし、いま現在もそういった傾向にある人達がいるんですね。そういった方々の社会的な孤立に目を向けるというのは本当に大切な視点だと思うんですけれども、ただ一方で、引きこもりだから今回の事件を起こしたというふうに、安易な結びつきができないということも、これ、慎重に伝えなければならないと思うんですよね。で、引きこもりっていう大きな主語でくくって、憶測で結論を急ぐんではなくって、この男性に関しては、どの段階でどういう介入が必要だったのか。可能な限りの事実を拾い集めての検証というのが今求められてるんじゃないかというふうに思います。

松原耕二氏(要約):ショッキングな事件だったから、容疑者に対する憶測や感情的な言葉が飛び交ってしまう。「引きこもり」というキーワードが独り歩きすることで偏見を生まれ、トラブルを誘発してしまうかもしれない。メディアも専門家の声をきちんと伝えることをベースにした方がいい。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。

寺島氏(抜粋):これは特異な事件だというふうに、皆思いたいところなんだけど、そうでもないっていうかですね。大都市郊外にある大学を僕、率いてるもんだから、東京を取り巻く大都市圏。かつてベッドタウンと言われたところにですね、やっぱりある種の人間関係の軋み。例えばね、この人を育ててくれたおじさん・おばさんが一気に高齢化してきてるってかですね。自分達で面倒をみきれなくなる。そういうことに対する不安感とかね。それから今、大都市郊外から都心に働いてる40代から50代にかけての人達にですね、右肩下がりにあった日本のですね、ある種の軋みを背負ってね、ある種の屈折感とかですね、達成感のなさみたいなフラストレーションみたいなものがある。例えば千葉で起こった、自分の娘を虐待死させたなんていう事件もですね、背景をずっと読み込んでてですね。こういうところの構図が起こってるんだと。ですからこれね、ある種のやっぱり日本の社会が背負ってる問題の中に、これがあるんだっていうことを我々は敏感に感じ取らなきゃいけないと思いますね。

要旨をまとめると、
・これは特異な事件ではなく、東京を取り巻くベッドタウンにおける人間関係の軋みによって起きた事件である
・高齢化の進行によって面倒を見切れなくなるという不安や、右肩下がりにあった日本に生きた40~50代の世代の屈折感といった日本社会の構造によって引き起こされた

というものです。

しかしながら、
・今回の事件が発生した川崎に人間関係の軋みが存在するという主張には全く根拠はない
・また高齢化の進行や屈折感が今回の事件を引き起こしたという主張には全く根拠がない

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「今回の凶行の背景には日本社会の歪みが存在する」「引きこもりだから今回の事件を起こしたに違いない」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「引きこもり全てが危険人物だというわけではない」「日本社会の背景はまったく関係ないのではないか」といった反対の意見があります。
実際、今回の報道では出演者からも

安田氏(抜粋):一方でこの、犯行に及んだ男性に関して、引きこもり傾向にあったっていうことが、今週繰り返し報じられてきたと思うんですよね。(中略)引きこもりだから今回の事件を起こしたというふうに、安易な結びつきができないということも、これ、慎重に伝えなければならないと思うんですよね。で、引きこもりっていう大きな主語でくくって、憶測で結論を急ぐんではなくって、この男性に関しては、どの段階でどういう介入が必要だったのか。可能な限りの事実を拾い集めての検証というのが今求められてるんじゃないかというふうに思います。

など、放送の姿勢を疑問視するコメントも見られました。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② トランプ米大統領の訪日について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 「風を読む」にて川崎での事件について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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